2023年7月19日水曜日

最古の和歌に込められた讃美とは – 日本とユダヤのハーモニー&古代史の研究

最古の和歌に込められた讃美とは – 日本とユダヤのハーモニー&古代史の研究

最古の和歌に込められた讃美とは

ヘブライ語で紐解く「八雲立つ」の意味

八重垣神社 鳥居

「八雲立つ」の由来

須佐之男命と櫛名田比売 国輝画
須佐之男命と櫛名田比売 国輝画
日本最古の和歌として、「八雲立つ」という歌があります。 「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠めに 八重垣作る その八重垣を」 夜久毛多都 伊豆毛夜弊賀岐 都麻碁微尓 夜弊賀岐都久流 曽能夜弊賀岐袁 この歌は古事記の物語に由来し、歌の作者は建国の神、スサノオと言い伝えられています。

歌詞に含まれる言葉のルーツは古事記に記載されています。古事記によれば、スサノオが八岐大蛇を退治してクシナダヒメを救った後、新居の土地を探し求めて須賀の地を見出し、そこに宮を建てた際に、八色の雲が立ち上がるのを見て、この歌を詠んだと伝承されています。よって、歌、そのものが古事記の神話と結び付いていると言えます。この歌の歴史は古いことに違いはなく、それが最古の和歌と言われる由縁です。

「八雲立つ」の一般的な解釈

出雲大社の広大な参道
出雲大社の広大な参道

「八雲立つ」の歌の意味は、幾重にも湧き出る雲が八重垣となる出雲の地において、妻を籠らせて幾重にも囲い、共に住む、と解釈するのが通説です。つまり、八重垣のように重なる雲を、スサノオが自らの結婚の祝福として受け止めている最中、歌われた文言と考えられてきたのです。

こうしてスサノオの結婚に結び付く歌として知られるようになったことから、いつしか「八雲立つ」は、婚礼の際にも詠われるようになりました。そして繰り返し使われた「八重」という言葉は、新妻を籠ることを示唆していると考えられ、しかも「垣」という文字が垣根や壁を言い表していることから、「八重垣」という言葉自体が神聖な場所に囲まれた結婚に纏わる表現として理解されるようになったのです。

不可解な言葉が連続する「八雲立つ」

八重垣神社 歌碑
八重垣神社 歌碑
日本で最も古い歌であるだけに、もし、その歌詞の意味が理解できれば、古代の人々の思いに少しでも寄り添うことができるでしょう。しかしながら歴史が古い和歌だけに、その歌詞は難解であり、定説の解釈も果たして作者の意図を汲んでいるか、疑問が残ります。何にもまして、日本語としての不自然な言葉の響きが気になります。

例えば八雲に続き、3回も「八重垣」が繰り返される文脈は一見、短絡的であり、強引な言葉の羅列にも見えます。しかも結果として頭に「ヤ」がつく言葉が4回も連呼されているのです。これほどまでに「ヤ」にこだわるからには、何らかの強い意図が込められていたに違いありません。

また、雲を垣に例えてそれが重なり「八重(ヤエ)」になるという表現も不自然です。雲が実際八段に重なっているように見えたのでしょうか?それとも八色の雲が重なって空に現れたのでしょうか。虹ならば7色が限度です。また、八重ではなく、三重でも良いのではないでしょうか。なぜ、「八重」、「ヤエ」に作者はこだわったのでしょうか。

ヘブライ語で読み解く和歌のことば

須佐神社の美しい拝殿
須佐神社の美しい拝殿
これらの疑問を解決するための鍵が、ヘブライ語にあることがわかってきました。まず、「八雲立つ」という言葉から検証します。出雲風土記や古事記によると、国引きをした神ヤツカミズが「八雲立つ」と語ったことから、「八雲立つ出雲」と詠まれるようになったと記されています。その言葉の原型は「ヤツメサスイツモ」です。一見、不可解な言葉ですが、ヘブライ語で読むと、元来込められていた意味が浮かびあがってきます。

まず、「ヤツメ」は八の目を意味すると言われています。しかし、ヘブライ語では全く異なる意味となります。まず「ヤ」は、神を指す יה(ya、ヤ)です。その語尾に、「大きくなる」を意味するצומח (tsomeakh、ツォメッ)をつけると、「ヤツメ」と同等の発音になります。するとヘブライ語で「ヤツメ」とは、神が大きくなる、という意味になります。

「ヤツメ」はその後、何故かしら「ヤクモ」という言葉に差し替えられることになります。そして「神が大きくなる」、という意味に類似する表現として、「神が立ち上がる」という意味になるように新たに言葉が選別されたようなのです。そのために用いられたヘブライ語は、「立ち上がる」「起き上がる」を意味するקום(kum、クム)です。神が大きく見えてくるということは、神が立ち上がり、その姿を見せることでもあります。よって、神が立ち上がり、その存在を示すことを言い表すことが目論まれたと想定されます。

そして「ヤツメ」の後には「サス」という言葉が続きます。これはצץ(tzatz、ツァツ)と発音し、「現れる」を意味するヘブライ語です。「ツァツ」の発音は、「サス」「タツ」に類似しています。

天岩戸神話の天照大御神
天岩戸神話の天照大御神
これで文脈の流れが見えてきました。「ヤツメサス」の意味はヘブライ語で、神が段々と大きく見え、ついに現れることを意味します。これは正に岩戸の神話に記されているアマテラスのことを指しているのではないでしょうか。つまり、アマテラスが岩から少しずつ出現することを「ヤツメサス」と言い、そして岩間から現れて立ち上がる姿を強調して「ヤツメ」が「ヤクモ」になり、「ヤクモタツ」と歌うようになったと考えられるのです。

神によって導かれた地「出雲」

須佐神社
須佐神社
岩戸の神話にちなんだ「ヤツメサス」という言葉の後には、出雲という地名が続きます。この「イズモ」という言葉は、「雲」が「出る」という文字で表記し、単なる当て字と考えられています。ところがこの漢字の組み合わせは、旧約聖書でイスラエルの民がエジプトから約束の地に導かれる際、神が「雲」となって「出現」し、常に民の先頭に立って群集を導いたことに関連していると思われます。

案の定、「イヅモ」という発音を持つヘブライ語が存在し、2つの関連した言葉でつながっています。ひとつはעצום(itzum、イヅム)であり、大きな、巨大な、偉大な、もしくは素晴らしいことを意味します。もうひとつはその言葉とルート語を共有するבעיצוםו(bitzumo、ビズモ)という言葉です。後者は「最先端」「ピーク」「クライマックス」を意味します。つまりイズモとは、神が常に先頭となって民を導き、その「最先端」に立った神が「巨大」な雲の姿をもって出現したことから、出雲と書き記したように思われます。

それ故、日本列島の中でも、国生みがはじまった淡路島から見て最北端にあたる出雲は、雲によって導かれたかのごとく、神が示された素晴らしく偉大な聖地であり、それらの背景をもって、出雲という地名があてがわれたと考えられます。その言葉の背景には、いつも神の存在があったのです。

「ヤツメサスイズモ」は讃美の歌!

「ヤツメサスイツモ」という一見不可解な表現の意味が浮かびあがってきました。それは、アマテラスが岩の間から徐々に出てこられ、その姿を現わした後、民の先頭に立って、イスラエルの民が雲によって導かれたように、大勢の群集を導いたことを語り告げる、讃美の歌だったのです。

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