https://youtu.be/xFuyx7aCbTM
以下、『トラ・トラ・トラ』関連の小ネタです。島敏光『黒澤明のいる風景』(1991年、84~85頁より)。
《「トラ・トラ・トラ」の話もよく聞かせてくれた。
黒澤明は、山本五十六は立派な軍人であり、本当は戦争に反対をしていた、と力説していたようだったが、僕はあまりそういうことには、興味がなかった。むしろ、僕の印象に残っているのは、話の本筋とはあまり関係ないギャグの話だった。追撃された一機の戦闘機がゴルフ場に不時着する話だ。黒澤明もこの話が気に入っていたらしい。
戦闘機は着陸と同時に、ゴルフ場の芝生を引きはがしながら前進を続け、ようやく停止をする。命びろいをしたパイロットが戦闘機からはい出して来ると、その目の前に、「ターフは元に戻して下さい」という看板がある。スケールの大きなギャグだ。
ターフとはゴルフ用語で、ショットの際に引きはがされてしまった芝生の一片のことで、それを元に戻すのがゴルファーのエチケットなのだが、残念ながら僕はこの時、ターフの意味を知らず、笑うことが出来なかった。
黒澤明は少しシラけたが、結局は親切に、その意味を説明してくれた。
僕は意味がわかったとたんに、「それは面白いから、ぜひ取り入れてくれ」とはしゃぎまわった。
しかし、黒澤明は、
「でも、お金がかかりすぎるから、ちょっと無理かもしれないんだ」
と残念そうに言った。
僕はその時、「芝生って高いんだなぁ」とつくづく思ったものだ。》
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