2023年7月26日水曜日

新しいページ 2 純粋ネットワーク理論では,現実世界に存在するネットワークは多様で巨大で複雑な構造をしているが,「スケールフリー性(次数分布のべき乗則)」,「スモールワールド ...

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純粋ネットワーク理論では,現実世界に存在するネットワークは多様で巨大で複雑な構造をしているが,「スケールフリー性(次数分布のべき乗則)」,「スモールワールド ...

https://www.gakushuin.ac.jp/univ/eco/gakkai/pdf_files/keizai_ronsyuu/contents/contents2006/4701/4701tatumi/contents/4701tatumi_main.htm

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ITを利用して組織や企業同士を連結するのが事業ネットワークと呼ばれる。たとえば,原材料サプライヤーや流通業者をEDIなどでネットワーク化し,資本関係を超えてグループを構築する場合(サプライ・チェイン,バリュー・チェインなど)がある。また,企業のコア技術を相互に連結・補完したり,市場情報を共有する,ことにより新しい企業能力と技術を創造し,市場における競争力の向上を図る事業ネットワークもある。これらは,いずれも産業構造を変える位大きな影響を持っている。

また最近では,多くの金融証券取引はコンピュータ・ネットワークのシステムで行われており,こうしたシステムは広く情報システムと呼ばれている。

図表1は,旧来の証券(特に株式)取引の典型的な注文の流れを示している。投資家から出された注文は,まず証券業者へ出され,しかる後証券業者から取引所へと,流れは大きく2段階に分かれている。ブローカー証券業者は取引所会員と同非会員の2つに別れて,後者に来た注文は前者に繋がれ,最終的にどの取引も取引所で執行されるのが原則だった。

取引所のなかでの売買付け合わせは,取引形態や取引技法などに応じて高度なシステム化がなされているが,詳細に見れば国ごと取引所ごとに様々なタイプが存在している。この点に関してはマイクロ・ストラクチャー分野の研究者やシステム・ベンダーが迅速性,安全性,公平性などの基準を満たすシステムを競って提案している。

20歳から40歳代の投資家を中心とする進取な精神に富んだ人の間では,証券業者への注文15頁】もネットを通じるネットワーク証券取引(海外における,いわゆるe-trade)の比率が高くなってきている(1

情報システムのうち,金融情報システムには,銀行のATMやインターネット・バンキングなど人々に身近なものから,金融機関相互間の決済などを行う日銀ネットワークや国際金融取引に使われるSWIFTネットワークまで,様々なものがあり,昔と比べると現在高い技術レベルに達している。地方の金融機関に目を向ければ,遠隔地同士で広く,同じメガバンク系列内の金融機関の間だけでなく,通信系ベンダーや総合ベンダーをコアに,コンピュータ・システムの共同化が進んでいる。

さらに,20023月に発生した,「みずほグループ」の銀行システム障害と200512月に発生した,みずほ証券の東京証券取引所における誤発注事件を契機に,金融証券分野における情報システムの重要性が改めて認識された(2

さらに事例として,図表11)と図表12)には,米国航空会社2社(United AirlineUS Airways)の通称ルートマップ,米国内航路ネットワークを図示した。現実のネットワークの複雑さ,さらにはハブ(機軸空港)とスポーク(末端)の関係,がわかる。さらに,2社はスターアライアンスというグループに属するメンバー会社であり,共同運航(3などで相互のネットワーク(の一部)を共有している。グループは多数の航空会社から成っているので,実際のネットワークはさらに多層で複雑である。

以下では,まずネットワークの価値の基礎的考えを,情報の価値の展望から始めて,考察しておく。そしてネットワーク分析概念,ネットワークの純粋理論,バイアーとセラーのネットワークの分析,共有の経済の分析,金融ブローカー・ネットワークの理論,などを展開しよう。

本稿は,辰巳(2008)と辰巳(2009a)の続編と位置付けできるが,概念や分析技法の上では独立な論考である。

ネットワーク形成の理論やそのセキュリティ,なども極めて重要な分野である。ネットワークが接続されているが情報流通がないのでは経済的意味はない。その意味でネットワークの強さと弱さの分析が必要になるが,この点は稿を改めて解説・展開したい。

16頁】

17頁】

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2 ネットワークと情報そしてそれらの価値

 

2-1 情報の価値を形成するメカニズム

情報の経済学の系譜に属し,関連する先行研究は多くある。本稿が取り扱うテーマはそれらを適切に取り込み,展開するべきだ,と考えられる。

1)情報の経済学の要約

情報的(informative)な価格の意味を始めて分析したStiglitz-Grossman(1976)は,価格の情報性の問題点を明らかにし,現代の経済学とファイナンスに大きな影響を及ぼしている。1982年にノーベル賞を受賞したStiglerによる1961年論文「情報の経済学」のなかで,情報探索の理論が提案され,情報に係わる分析のあるべき出発点が明らかにされた。つまり,情報探索等の費用を前提に経済主体の行動を分析しなければならず,情報を持たないのも合理的な選択の結果である場合があるという事実である。

売り手(つまり一般の商品の場合,供給者)と買い手(つまり同じく,消費者)の間で持たれている製品に関する個別の情報を取り扱い,情報の格差の効果を初めて本格的に分析したのがAkerlof(1970)のレモンの市場の分析である。

これらの先駆的研究によって,情報の非対称性という概念の重要性が明らかになった。情報の非対称性の分析がシグナリング,スクリーニングと自己選択という新しい概念を生み,不確実情報下での最適行動を考察する道筋を示した。自らの行動によって自らの(質)情報をあらわにすることを自己選択(self selection)と言う。この言葉を用いると,シグナリングとは自己選択をすることである。また,スクリーニングは,自己選択に代わる手段で,情報を持っていない者が情報を持っている者に対する選択を行う際に重要になる。

買い手の間での情報勝者の行動分析も進んだ。情報を持っていない入札者は,良い商品・会社を落札できず,質の悪い商品・会社に対しては高い買い物をし,損失を蒙る。Rock(1986)はこれを「勝者の呪い」と呼び,米国新規公開普通株のデータで検証した。

情報伝播のプロセスとその効果を明らかにしたのは一連の情報カスケード(informational cascade)の理論(Bikhchadani-Hirshleifer-Welch(1992)(1998)参照)で,これは,取引している他の人(それは身近にいる,あるいは隣の投資家)の行動を見ている次の投資家がそれを真似して行動することから始まる現象である。

本小節の以上の記述は辰巳(2008)と辰巳(2009a)の展望部分の要約である。

情報システム,ネットワーク,情報セキュリティなどの分野には,ハードの技術者からシステム設計者までの様々な分野の多く実務家がおり,評論的な論考が商業雑誌やネットに散見される。これらの論考は経済学的ではないが,参考になる点もある。

それによると,ネットワーク,「ギガビット,テラビット,ペタビット」のブロードバンドや並列処理などに代表される情報技術の進歩は,グローバル企業内では情報やビジネス・プロセスなどを瞬時に世界中で共有できるようにするなど,産業と金融のグローバル化を推進させた。

この情報技術の発達によって,確立し維持できる「接続(研究分野によって,リンクあるいはコネクションともいう)」の数が劇的に増加した。つまりネットワークの形成が飛躍的に進んだ。こうした接続によって,生産だけでなくサービス分野のプロセスにおいても専門化,細19頁】分化が可能になった。

とりわけ顕著な進歩が見られるのが金融サービスである。資本の可動性と,相互に接続した無数の経済主体・組織(研究分野によって,結節点と呼ぶ)の間を行き交う情報の可動性は,時に各国政府の規制などによって制限されつつも,今日の「結びつきが多すぎて切り離すことができない」金融システムを構成している。つまり,金融ネットワーク時代を生み出すとともに,金融のグローバル体系を大幅に狭めることに貢献し今日に至っている。

このようななかで,情報の接続と伝達に係る,情報発信コストと情報受信コストを区別することの重要性が注目される。

2)情報発信コスト

インターネットなどのネットワークの普及と発展とともに情報の価値を形成するメカニズムあるいはルールは大きく変わってきた。それは,情報発信コストと情報受信コストの2つの概念から捉えることができる。

マスコミ等情報伝達機関によってばら撒かれた,誰もが知っている情報は,最近,価値がなくなってきたと言われる。言い換えると,共有された情報には価値がない。言わば,希少性がないからである。共有情報が増えたのはネットワークの発展による。それゆえネットワークの普及と発展は情報の価値の見直しを迫ったわけである。

その原因には,ネットワークの世界では情報を発信するコストは限りなくゼロに近づいた,ことがあげられる。ブログあるいはHPという手段を用いれば誰もが情報発信できる時代になったことも影響している。多様な価値観を持つ多くの人々が自身の価値観を従来と比べると比較的簡単に満たすことができ,世の中にはそれを享受する人であふれている。情報発信コストの飛躍的低減に基づき,情報伝達の経路・チャネル数は無限になったのである。

ちなみに,情報発信コストが限りなくゼロに近づいたといっても,それは同じ質の情報を発信する場合である。同時に進行した現象はコンテンツ(受信する情報の中身)への要求の高まりである。例えば,静止画よりは動画さらにはより鮮明な動画という風に利用者の要求はエスカレートし,質への要求が高まっており,情報発信コストは上昇しているのが現状である。

いずれにしても,ネットワーク化が究極に行き着いた世界は,情報が均質化した社会になりえるかもしれない。しかしながら,このような社会は様々な理由から実現不可能である,ともいわれる。筆者も主として次の理由で実現不可能と考えている。

3)情報受信コスト

ネットワーク世界では,情報発信コストは限りなくゼロになったが,他方で,情報を受信するコストは限りなく高くなった,といえるのではないかと思う。それは,情報の経路・チャネル数は無限に多くなった(情報が多すぎると,何が重要なのかがわからなくなる)こと,(ネットにはゴミ情報が転がっていると言われるように)質の低い情報の発信であっても内容や発信自体の規制は十分できないこと,また悪意の発信者が多数出ること,などによる。これらのために,情報を分析し,それらを選りわけるのに非常に高いコストがかかるのである。

企業のサイトは既に膨大な情報を発信している。一方,ユーザーの嗜好も多様化しサイトを訪問する目的は様々になっている。検索エンジンや外部のリンクを通じて流入するにしても,サイトがとても大きくなって求める情報にたどり着けなくなっている(4

また更に,悪意の発信者が攻撃して我がシステムを破壊するのに対抗する(防衛する)ためには,高いコストがかかるからでもある。これはセキュリティのコストと呼ばれる問題である。20頁】このコストも情報を受信するコストに入れて考えることができるであろう。

さらに敷衍すれば,通信手段は実に多様化し,企業や個人がそれらを利用する手段は分散化した。その結果,通信手段間の競争は激化した。これらによって,情報送信コストは益々低減し,重要度が低い情報も気軽に受信できるようになり,ユーザーは情報を重要度に応じて受け流したり受け取ったりしている。その気軽さ程には,情報受信コストの低減は進んでいないように思われるのである。

 

2-2 情報とネットワーク

1)情報伝達とネットワーク

情報には収集されるものと収集されないものがあるように,情報には伝達されるものと伝達されないものがある。情報には,経済主体が意図して伝達するものだけでなく,意図されずに(意図せず)伝達されるものもある。

情報が伝達可能な状態になることを接続(あるいはリンクあるいはコネクト)するという。あたかも道路や鉄道・空路が開通する状態を指す。情報が伝達されるとは,そこに交通量がある,つまり便があって乗客がいることである。接続されていても,情報が伝達されない場合がある。伝達されないとは交通量がゼロである,つまり便があっても乗客がいないことである。

接続され,情報が伝達されると,伝達元と伝達先の間にネットワークができる。ネットワーク内で意図的に接続された主体の間では情報は共有されるが,意図せず接続された主体の間では情報は一方的に流れ,情報は共有されない。情報は一方的に流れても認識されない場合もある。

ネットワーク内の意図的に直接接続された主体の間では(多くの)情報は共有される。ある特定の情報が共有されるとは情報の一部あるいは全体について共に所有することを意味する。その結果,情報はネットワークの内部を(相互に)移動する。これが情報とネットワークの関係である。

ネットワークには,既述のように,電話網,インターネット網,鉄道,商取引などと,親族,商取引における信用など,種類の異なる幾種類かのネットワークがある。

2)ネットワークに伝達する情報

情報をたくさん公開していても,誰もが重要な情報,例えば商品のリスク,を理解できるわけではない。むしろ情報が多すぎると,何が重要なのかがわからなくなってしまう嫌いもある。

情報を公開する側,伝達する側には,その受け手がきちんと理解できるようにする必要がある。逆に,受け手にはその情報をきちんと把握し,相手が信頼できるかどうかを判断する力を持つことが求められる。これら両者の意識と能力があって初めて,ネットワークは成功する。

3)情報ネットワーク社会と個人

伝統的な製造業では,工場などに集まり皆一緒になって汗を流して労働し製品を作って売るという仕組みが基本である。農業においても耕作地で同じ傾向がある。この仕組みは,生産性を高めるためである。大型設備などに資本を投下するのも,このような様式を前提になされ,21頁】生産性を向上させる狙いで行われる。この場合個人的能力には大きな差がないよう,そのような者だけを採用したり,そうなるよう社内教育を行う。

そのため,伝統的な製造業では,チームワークが重んじられ,所属という概念が生産性という概念に次いで重要になる。インセンティブ(と生産性)を高めるために成績の良い労働者に高い報酬を与える,のは事実である。しかしながら過度に報いるのはチームワークを乱すため好まれない。

これに対して,ソフトウェアやインターネットが中心の情報化時代には,個人の活躍が求められ,競争の中から優秀な人をどう選出し,資本をどう投下できるかによって競争力に差が出てしまう,といわれる。また,能力を持つ人が自由に仕事ができる方が良い仕組みであって,その才能を発揮し,より良い成果が出せるため,組織作りが重要になる,といわれる。

しかしながら,情報化時代に関するこれらの意見はすべてがすべて正しいのであろうか。人が同時進行で複数のプロジェクトを進めたり,遠隔地にいる人同士でも情報などのやり取りができるためには,単なる組織作りよりは組織間のネットワーク作りの方が重要になるのではあるまいか。

 

3 ネットワークの記述方法と基礎理論

 

3-1 ネットワークの捉え方

ネットワークをどう捉えるか,に関してはいくつか方法がある。ネットワーク参加者を括弧付き番号で示し,社会を示すために()のように()のカッコで囲むことにして,展開しよう。

3-1-1 ネットワークの記述方法

Jackson(2005)などによる,ネットワークで結ばれる組み合わせを示す方法として,次の各小節がある。ネットワークのデータが存在すれば,これら以下の尺度でネットワークを記述し,分析できる。ネットワーク記述統計量と呼べる。次の例で各種ネットワーク記述統計量を計算してみよう。

 

0①②③④)。                    ローカル・ネットワークの数は3

1①②②③③④④⑤)。        ローカル・ネットワークの数は4

2①②③④⑤)。                         ローカル・ネットワークの数は1

3①③②③④⑤③⑤)。        ローカル・ネットワークの数は4

4①③②③③⑤③⑤)。        ローカル・ネットワークの数は4

 

ここで,ローカル・ネットワークとは(・,・,・,・,・・・)の社会における部分的なネットワークである。接続していることを示すには,上とは別に,のような矢印無しのバーを付ける方法がありうる。例0は(①―②③―④)で表わされるが,図表2の(a)でも表せる。例1は,(①―②―③―④―⑤)で図表2の(b)になる。例2,例3,例4をわかりやすく図示するには図表2のそれぞれ(c)(d)(e)で表わすしかない。(d)を(d')で表わす方がわかりやすいかもしれない。例2は完全ネットワークと呼ばれる。

この方法で接続の方向(directionを記述するためには,,などの矢印を付ければ22頁】よい。双方向接続の場合矢印を付けない方法でその事実を示す。

例えば,例1で,ネットワーク化されていない経済での交換のプロセスを示すためには,(①→②②→③③→④④→⑤)とすればよい。同じネットワークの組み合わせで,(①→②②→③③←④④←⑤)とすれば例えばを社長,を部長とする企業組織の下から上へ上がる情報を示している。

3は上の取引所の図表1を簡単化したケースである。一般にハブ・スポーク(Hub & spoke)のシステムと呼ばれる。例4を(①③②③③④③⑤)に変更すれば,例えばがディラーになり開設する私的取引所を示すことになる。

1)次数あるいは程度

次数(degreeは一人が幾人に接続しているかで示す方法で,程度ともいう。

0→①の人は各10。平均は1x4/5+0x1/54/50.8

1→②の人は各2の人は各1。平均は2x3/5+1x2/51.6

2すべての人は4(一般には,n-1)。平均も4になる。

3→①の人は各132。平均は1x3/5+3x1/5+2x1/58/51.6

4→①14。平均は1x4/5+4x1/58/51.6となる。

しかしながら,この方法では接続の強さstrength,接続の最大容量あるいは実際の接続量)を記述できない。矢印に数字を添える,あるいは視覚にうったえる(可視化する)には矢印に太さを付ければよい。

2)クラスター係数

クラスター係数は一人が接続している人数をすべての接続可能な数で割る方法である。ネットワーク内の繋がりの強さ,つまり密度を測る。

0すべての接続可能な数は4で,の人は各1接続し,1/40. 250。平均的なクラスター係数は,平均から計算でき,0. 25x4/5+0x1/50. 20

1すべての接続可能な数は4で,の人は各2接続し,2/40.5の人は各1接続し,1/40.25。平均は0.5x3/5+0.25x1/5+0.25x1/52/50.4

2すべての人は各4接続で,すべての接続可能な数は4なので,4/41。平均も1

3→①の人は各1接続し,1/40.253接続し,3/40.752接続し,2/40.5。平均は0.25x3/5+0.75x1/5+0.5x1/52.5/50.5

4すべての接続可能な数は4で,の人は各1接続し,1/40. 254接続し,4/41。平均的なクラスター係数は,平均から計算でき,0. 25x4/5+1x1/50.4

これらの例で,クラスター係数を小さい順に並べると例0,例1=例4,例3,例2である。

3)接続性

接続性connectivity)とはネットワークの平均的な密度である。ネットワークの参加者が平均的に接続している人数をすべての接続可能な数で割る方法。数値例では接続性の値はクラスター係数の値と近くになっている。程度は経済社会の大きさに依存するが,これら223頁】の尺度はそれを規準化している。具体的な数値は次のようになる。

00.8/40. 2

11.6/40.4

24/41

31.6/40.4

41.6/40.4

4)影響範囲

影響範囲influence domain)とは,ある人から,無制限な回数,接続を辿っていき接続可能な人の数である。程度(degree)概念の一般化になる。程度の概念では,ネットワーク全体の構造が見えてこないが,想定している経済社会のなかで構成員が相互に影響を及ぼす程度を測る影響範囲というこの概念を用いれば全体を見渡す手段の1つになる。ちなみに,n影響範囲n-influence domain)とは,ある人から,n回,接続を辿っていき接続可能な人の数である。

影響範囲を上の数値例で計算すると,

0→①4人は各1の人は0。平均は1x4/5+0x1/50.8

1すべての人は4(一般には,n-1),それゆえ,平均は4

2すべての人は4(一般には,n-1),それゆえ,平均は4

3すべての人は4。一人ひとり,図を描くなどして他の4人に行き着くルートを確認すればよい。

4すべての人は4

これら2つの尺度は経済社会の大きさに依存するので,それらを規準化する方法も考えられる。規準化影響範囲は,

00.8/40.2

14/41

24/41

34/41

44/41

となる。

5)距離

距離distancei, j))とは最短距離である。何回接続してiからjへ到達可能か,その最小回数である。これによって伝播のスピードを測れる。ネットワーク全体の構造を知るための,もう1つの概念になる。

ちなみに,i平均距離distancei))はiからすべての人へ至る距離の平均である。また,diameterはネットワーク内参加者のすべてのペアの内の最大距離である。

0distance, )=1distance, )=,・・・,

1distance, )=1distance, )=2distance, )=3,・・・,

2distance,)=1,それゆえ平均のi平均距離(distancei))も1diameter1

3distance, )=distance, )=1distance, )=3dis

24頁】

25頁】tance, )=2,・・・,

4distance, )=distance, )=1,・・・,

2以外は,の距離が含まれる(つまり,到達する手段がなく,到達できない)ので,i平均距離(distancei))も,diameterである。これらは伝達に無限の時間を要し,情報が隅々まで伝播しないネットワークなのである。

3-1-2 ネットワークの分析方法について

ネットワークを記述するこれらの方法を用いれば,ネットワークのそれぞれの局面を理解することができる。上の例では,数値計算の後その一端を説明した。

ネットワークの特性を記述する方法として,任意の2つの主体を結ぶ経路の数としての概念がある。インターネットで使われるが,この数が多い程冗長性が高いと言い,接続の安定性が保たれる。グローバルには,今や,その数は数十万経路に達している。

また他には,リンク(接続)の数と方向を考慮したページランクPageRankTMとハブ度・オーソリティー度,などがある。これらは,インターネットのページ間の関係を記述する数学的に多少複雑な方法であり,図示するのは簡単ではない。しかしながら,経済分野へも応用されだしている。

他にもネットワーク構造の記述方法がある。いくつかは,以下の本文のなかで紹介しよう。また,これらのネットワークが具体的にどんな経済を示しているのかも,後述することにする。

3-2 純粋ネットワーク理論:要約

ネットワークがある結びつき方のパターンを持っていると,ネットワーク全体にある法則性が出てくる,とある研究分野では考えられている。そのような法則性は,経済であれ,自然界であれ,社会であれ,共通しているような普遍性をもっていることが明らかにされてきた(典型的には,バラバシ(2002),ワッツ(2004)(2006),ブキャナン(2005),などを参照)。文献の多くが重要であると判断され,多くが翻訳されている。

そのなかの経済現象については,それが経済学の諸法則から独立に見出される,とこれら研究者の多くは主張する。しかしながら,著者の意見では,どう考えても,それらを経済学の体系のなかに組み入れ経済学的分析の発展に貢献できるとは思えない。また,その後独自の発展もない。それゆえ,ここでは,これらの自然科学系の法則を純粋ネットワーク理論と呼び,経済理論的背景を持つ経済ネットワークや金融ネットワークの法則とは区別して展開することにしたい。

純粋ネットワーク理論では,現実世界に存在するネットワークは多様で巨大で複雑な構造をしているが,「スケールフリー性(次数分布のべき乗則)」,「スモールワールド性」,「クラスター性」と呼ばれる3つの共通する性質が見出されている。それらを順に説明しよう。

なお,本3-2節の以下に続く文章は,参考文献だけでなく,いくつかのネット論考から,趣旨を抜き出し,著者の意見として構成して組み直したポイントもある。

3-2-1 純粋ネットワーク理論の構成要素

1)スケールフリー性とその頑強性と脆弱性

スケールフリー性は,一部のノード(意志決定する経済主体のことである)が他のたくさんのノードと繋がり,大きな次数を持っている一方で,大多数のノードはごくわずかなノードとしか繋がっておらず,次数は小さいという性質である。次数の大きなノードは「ハブ」と呼ば26頁】れ,ネットワークにおいて重要な役割を果たす。少数のリンクを持つノードと膨大なリンクを持つノードが共に存在する結果,リンク数を表現する代表的なスケールが存在しないネットワークである(その結果,ネットワーク独特の特徴的なスケールを決定することができない)。そのため「尺度がない」(scale-free と呼ばれる。

スケールフリー性は,ノードが次数 k を持つ確率 p (k) の分布が p (k) k-γ の関数形のべき乗則になる,と表現される。(各ノードが持つリンク数と特定のリンク数を持つノードの割合の関係がベキ分布となる。)このような次数分布では,分布の偏りを特徴付ける平均的な尺度(スケール)が存在しない。また,確率分布がこのようになる時,分散 V は無限大となる。

ところで,完全ネットワークやランダム・ネットワークではどうであろうか。まずn 個のノードから成る完全ネットワークKn を考えてみる。完全ネットワークでは全てのノードの次数は,上で既述のように,n-1 であるからスケールフリー性を全く満たさない。

ランダム・ネットワークとはリンクを生成確率 p でランダムに張るネットワークである。ノード数を n とするとノードの次数が k となる確率は p (k) n-1Ck pk (1-p)n-1-k 2項分布となり,n→∞p0np→λ の極限では p (k) e-λλk / k! のポアソン分布となる。ポアソン分布では全てのノードの次数は平均値の周辺に分散 λ で分布しており,べき乗則の分布には程遠い。それゆえ,完全ネットワークやランダム・ネットワークはスケールフリー性を持たない。

スケールフリー性が持つ注目すべき特性として,ネットワーク障害に対する頑強性が高いことがあげられる。どのノードで起こるか,故障は区別して起きないので,小さなノードも大きなハブも同じ確率で故障は発生する。したがって位相学的な堅牢さはスケールフリー・ネットワークの構造的な不平等性から来ている。それは故障が起こっても,多くの場合,小さなノードに影響を与えるだけである。スケールフリーのネットワークはハブが支配している。

スケールフリーなネットワークでは,全ノードのうちの5%がダウンしたとしても,多数ある代替経路の存在によってノード間の接続を維持でき,ネットワーク全体の平均最短距離はほとんど変化しないのである。同じノード数,同じリンク数でトポロジーが異なる他のネットワークではこのような特性は見られない。

他方で,しかしながら,ハブでショックが起きた場合ネットワーク全体に瞬時に広がるおそれがある。スケールフリーなネットワークは,特定の重要なハブをピンポイントで狙った攻撃に対しては脆弱であるという弱点も併せ持っているのである。次数の値が大きい,ネットワークのリンクが集中した,上位5%のノードがダウンしたとすると,系全体の平均最短距離は約2倍にまで増大してしまうという実験結果(Albert, et al. 2000))が報告されている。

べき乗則やスケールフリー性は自己相似性を指している。自己相似性とは,大きさは変わっても自身の形を変えないという性質で,物理学分野でよく議論されるフラクタルやf分の1ゆらぎと同じ内容である。べき法則に従う社会現象にも,自己相似性が見られるというわけである。大企業と小企業などのように大組織と小組織という全く規模の異なる組織が同時に存在する経済社会システムを描いている,と考えられている。

しかしながら,スケールフリー性の妥当性を否定する研究も出だしている。Amaral, L.A.N. et al 2000 によれば,現実世界の全てのネットワークが完全なべき乗則の次数分布となるわけではない。リンクが集中することで混雑などのコストが発生する場合,集中は頭打ちとなる。典型的な例は航空路線のネットワークである。空港がある程度以上に大きくなりすぎると,空港として機能できなくなる。管理や管制が極端に困難になるのである。ネットワークの脆弱27頁】性と言われる現象である。その結果,似たようなサイズの空港が別の場所にできる。そこで全体としては,むしろ,ネットワークには平等性が出てくる。

2)クラスター性

クラスター性とは,「例えば,「自分と知人Aさんがいるときに,自分もAさんもどちらも知っている共通の知人Bさんのような人が1人もいない」という状況はまずありえない」という性質である。

クラスター性は上のクラスター係数C が十分大きな値を取ることで表現される。クラスター係数は現実世界の各種のネットワークにおいて計測されており,それらの値は0.1から0.7程度と報告されている(Albert, et al. 2000))。

3)スモールワールド性

スモールワールド性は,任意の2つのノードが中間にわずかな数のノードを介するだけで接続されるという性質であり,平均最短距離(直径ともいう)L がノード数 n の大きさに比べて小さい値となることで表現される。多くの要素がその全構成要素数に比べて,非常に少ない数の要素を介してつながるネットワークはこの性質を持つ。

比較的密なネットワークは,おおよそ6人経由すればほとんどすべての人(ノード)に行き着く。多くのネットワークでこの現象が確認されているが,ネットワークによってアプローチの仕方(例えば3人後の接続される人の数)は違う。いずれにしても,これは直接的には確かに経済現象ではなく,それを超えている。

ちなみに,「スモールワールド性」という用語の定義に関しては曖昧さがある。単にネットワークの平均最短距離が小さい状態を指す場合もあれば,小さな平均最短距離と大きなクラスター係数とを共に満たすネットワークを指す場合もある。ランダム・ネットワークは,前者の定義に従えばスモールワールドであり,後者に従えばスモールワールドではない(5

3-2-2  純粋ネットワーク理論の分析成果~創業者利得

バラバシ(2002)は次のようなリンク(接続)のメカニズムを持つネットワークを例示した。BAネットワークと呼ばれる場合がある。

新たなノードは2つのリンクを持てると仮定される。そのリンクはランダムになされるとする。まず,第1と第2のノードが存在する。第3のノードは第1と第2いずれのノードともリンクするしかない。第4のノードはリンクを張るノードを既に存在する3つのノードから2つランダムに選択する。このプロセスを際限なく繰り返すと,新たなノードを付け加える毎に,それにランダムに選択した2つのノードにリンクを張ることになる。この単純なアルゴリズムによって生成されるネットワークは,拡張のプロセスがランダムであるにも関わらず,ランダムなネットワークとは異なる。

このネットワークの最初の2つのノードは最もリッチになる。それはこれらがリンクを張っ28頁】てもらえる機会が度々あったからである。最も貧弱なノードはこのシステムに最後に参加したノードであり,それは2つのリンクしかない。この事実はネットワークの大きさが無限大に大きくなっても続く。

最初の2つのノードは,いわば創業者であり,このメカニズムは創業者利得を指している,と解釈したい。もちろん実際のネットワークのリンク接続はランダムになされるわけではない。それゆえ,リンクのメカニズムによっては創業者利得が実際上現れない場合がありえる。

なお,実際のネットワークはランダムではない。それゆえ,成長(ノードが一定率で増えていく)と優先接続のいずれかでべき乗則が説明できると,バラバシ(2002, p.127)は考えた。

3-3 ネットワーク理論に対する本稿の立場

以上が,ネットワークの純粋理論の基礎の展望である。Goyal(2007)Caldarelli(2007)Jackson(2008)では,幾つか経済的な定理や命題がネットワーク理論により証明されている。残念ながら,経済学における他の定理や命題と直接比較できる形では提示できていないのがほとんどである。ネットワーク理論がもっと経済学に近づいてくるか,経済学がネットワーク理論をもっと取り込むか,どちらかでないとネットワーク理論が経済学の基本的分析ツールになるのはずっと先のことになるように思える。それゆえ,本稿では,これ以上,ネットワークの純粋理論は触れない。

 

4 ネットワークの経済学的視点

 

4-1 経済ネットワーク

4-1-1 経済ネットワークの分析例

現実の世界に存在する巨大な多次元で多層なネットワークの姿を捉えるのは一般に困難であることが多い。ここで,多層とは次のような意味である。どんな人・組織も,複数のネットワークに参加し,どのネットワークにどれ位の時間や金額を投入するかを決めて,活動している,はずである。

20098月時点で存在するウェブサイト22600万サイトのうち活動しているサイトのいくつかがリンクで結ばれ,サイトがすべてネットワーク・ユーザーで結ばれる可能性があるとすると,ネットワーク記述統計量の計算は大変なものになり,更にそれを分析することになると大変な作業になる。米国でも,実際の大規模ネットワークの構造を把握する作業は十分行われていないものと思われる。そのような現実のなかで仮設的なネットワークを設定しそれを分析する分析方法は重要である。

1)物々交換経済から市場経済(取引所)に

先の例1は物々交換経済の,例3は取引所さらには市場の,例2は取引所内の小さなネットワークであるピット,さらには極めて大きなインターネット(www)の,ネットワークを表している。

先に計算したように,規準化影響範囲の値は物々交換経済が1,取引所が1,取引所内のピット(インターネット,www)が1でまったく同じになっている。それに対して,クラスター係数の値や接続性の値は,物々交換経済がともに0.4,取引所が0.50.4,ピット(インターネット,www)がともに1で,この順に大きくなっている。

29頁】

物々交換から始まる人類の経済取引活動は,自然に,市場経済に進み,さらに資本主義に到達した。資本主義経済の深化はネットワーク記述統計量の変化として現れていると考えることができるであろう。

ここで,注意するべき点は2つある。物々交換経済が市場経済(取引所)になり,ネット・オークションに変化するなど,売買形態は進歩してきた。そのなかで,ピットが人の手で運営される形態からコンピュータ・システムに取って代わられた。ネットワークは密になるようになっているが,その運営費用も重要視されていると考えられる。まずこれが第一点である。

第二に,資本主義の繁栄とネットワークの密度の関係は必要条件ではあるが,十分条件ではない点があげられる。ネットワークに繋げば,あるいはネットワーク接続の濃度を高くすれば,経済が必ず発展するわけではない。この点は必ずしも自明ではないようである。ネットワークに接続されていなければ経済の発展はないが,経済の発展がネットワークを接続させネットワークを太くするのである。地方自治体が,高速道路や空港の建設やその維持(航空便の採算率維持のため搭乗率保証する財政補助などが例にあげられる)に熱心になり,そのこと自体が目的化してしまい,その他の経済インフラを蔑ろ(ないがしろ)にしてしまっているケースがみられる。

2)情報カスケード

前稿の辰巳(2009a)で展開した情報カスケードは上の例1の系譜に属するが,最もスムーズに,しかも最小規模で伝播した場合情報カスケード・ネットワークは(①→②②→③③→④④→⑤)で記述できる。あるいは次のようなプロセスになる。

①→②①→③②→③①→④②→④③→④①→⑤②→⑤③→⑤④→⑤)。

これらに対してもネットワーク統計量の値を計算でき,その変遷を見ることができる(計算は省略)。ここでも注意するべき点があるが,前稿で詳述したので,ここでは省略する。

3)破綻の伝播

ネットワークは破綻の伝播に次のように係わる。ある主体がネットワークに繋がれている場合はまずどうであろうか。この際,よい主体と繋がれているならば,困難なときに助けてくれる。しかし,悪い主体ならば困難なときに共倒れする。

この主体が逆にネットワークに繋がれていない場合はどうであろうか。悪い主体と繋がれていないならば困難なときに共倒れを避けられる。困難なときに助けてくれる主体はいなくなる。このように,ネットワークのあり方はそのセキュリティに強く係わってくる。

たとえ,あるべき主体にネットワークが繋がれていても,通信の故障や妨害で通信遮断が起こることも考えられる。この時,ネットワークに適切に繋がれているということ自体が無駄に30頁】なってしまう。ネットワーク内通信遮断は避けるべき大きな事柄になる。

ネットワークが何時,どこで,どのような理由で遮断されるかどうか,は誰も予測できない。遮断された場合,どういう経路でネットワークを繋いでいくかを都度解いていくかがシステム化されていれば,それは最適化されたネットワークと呼ばれる。

 

4-1-2 ネットワークの経済学の基礎

1)ネットワーク設立のコスト

ネットワークの経済的特徴としては,それを構築しようとした場合,初期投資が非常に高額になることがあげられる。そのため,ネットワークの組成あるいはネットワーク産業への新規参入が進まないという問題が起こる。

ネットワーク産業では,そのため,自然独占が発生する傾向にある。独占価格が設定されることによる価格の高騰を防ぐため,政府による価格設定が法的に認められているのもこのネットワーク産業分野の特徴と言える。

それゆえ,かつては,ネットワークの研究対象には自然独占に関する価格設定の議論が主題になった。しかしながら,後述のネットワーク外部性という概念が登場してからは,マイクロソフトとアップルコンピュータのOS競争や,セガサターンとプレイステーションなどの規格争いも主題となっている。これは,デファクトスタンダードを獲得した規格が,最終的には一人勝ちする傾向にあるからであり,自然独占によく似ている産業であるからである。

このようなハードのコストだけでなく,ソフトのコストもかかる。一般に,取引を行うには,取引相手を探すコスト,成約に至るまでの交渉コスト,契約コスト,意思決定コストなどさまざまなコストが発生する。ネットワークの組成のコストも同様である。

ネットワーク証券取引を例にあげれば,その一番大きなコストは証券取引口座の開設にある,といわれる。そもそも,口座を開設するには手間がかかり投資家にとってハードルは高い。記入書類の不備などで断念する投資家もいる。これはネットワーク設立・拡大そのものである。ちなみに口座を開設した後では,実際に商品を買い付ける際銀行に代金を入金する手間がある。

ネットワーク組成には,さらに,本来のコストがかかる。つまり,関係するネットワーク参加者全員で情報を共有化するために,情報をデジタル化したり,蓄積された文書情報を分析することによって企業の知識やノウハウを形式化・標準化する,のにコストがかかるのである。

2)ネットワーク外部性

ネットワーク外部性とは,電話などのネットワーク型サービスにおいて,参加者数(加入者数)が増えれば増えるほど,参加者(利用者)当たりの便益が増加するという現象である。参加者(利用者)数が増えることによって,ますます参加者(利用者)数が増えるという,正のフィードバックが発生する。

例えば電話網への最初の加入者の便益は明らかにゼロである。2人目の加入者には,1人目の加入者と通信ができるという便益があるため,この便益を加入に伴う費用と比較して,実際に加入するかどうかを決定することができる。しかしながら2人目の加入が1人目の既加入者に与える便益を2人目加入者は考慮しないため,ここに外部性が発生する。

同様に,3人目の加入者は,先の2人と通信できるという便益と加入の費用とを比較して,実際に加入するかどうかを決定することができる。しかしながら3人目の加入者が先の2人に与える便益は考慮されないため,ここにも同じく外部性が存在する。

31頁】

相互接続ネットワークにn台がつながっている場合,n(n-1)÷2通りの相互アクセスが可能となる。接続した場合の有用性はそれぞれのアクセスで同一であると仮定すれば,ネットワーク全体の価値はn(n-1)に比例し,nが十分大きければn2乗に近似する。ネットワークから得られる価値が等比級数的に増加するのに対して,コストは台数に比例する。

これを1990年代に未来学者ジョージ・ギルダー(George Gilder)は「メトカーフ(ロバート・M・メトカーフ(Robert M. Metcalfe))の法則」と呼んだ。

ネットワーク外部性が存在する場合,新規参加者(加入者)にとっての便益は既存参加者(加入者)の数に依存するために,参加者(加入者)数の少ない間はなかなか普及しないが,参加者(加入者)数がある閾値を超えると一気に普及するといった現象が発生する。

以上は,いわばネットワークの外部性の古典モデルである。それ以外に,Katz-Shapiroモデル,Farrell-Salonerモデルなどがある。Katz-Shapiro(1985)は,ネットワーク外部性を「供給者側の外部性」と「需要者側の外部性」に分け,さらにKatz-Shapiro(1994)でネットワーク外部性を次の「直接的」と「間接的」の2つに類型化している。邦文での展望は依田(2003)でなされている。

直接的ネットワーク外部性では,電話のような通信ネットワークで,需要が価格のみならずネットワークの規模の関数になる。私的限界便益が社会的限界便益を下回るので,ネットワークの私的な規模は社会的に最適な規模に比して過小となる傾向がある。

間接的ネットワーク外部性は補完財の供給が増えることによって起こる。消費者間のシステムの選択が効用に直接影響を及ぼすわけではないが,間接的ネットワーク外部性は,コンテンツの多様性や価格を通じて間接的に効用に影響を及ぼす。例えば,特定のハードウェアにのみ使用できるソフトが充実している場合,そのためだけが理由で,そのハードウェアの市場優位が確立してしまう,いわゆる「ロックイン(lock-in)」されてしまう現象が起こる。

3)ネットワークの規模の経済性

ネットワークの規模の経済性はネットワーク外部性とは,類似している局面が存在するが,独立な概念である。この点を次に示めそう。

まず,ネットワークの外部性を先の例で示しておこう。ネットワーク拡大のプロセスは,先の例を使えば,次のように記述できる。

①―②①―②―③①―②―③―④①―②―③―④―⑤

各ステップで接続の数を数えてみれば,飛躍的に増加していくことがわかる。これらに対してもネットワーク統計量のその他の値を計算でき,その変遷を見ることができる(計算は省略)。

さて,図表3では,(①―②―③⑤―⑥)の社会において,右グループの大きなネットワーク(①―②―③)と左グループの小さなネットワーク(⑤―⑥)の,どちらに接続しようかと主体が決定を迫られている。この決定に重要な役割を果たすのが,規模の経済性と接続のメリットである。

右グループへの接続コストを一件あたりbとし,左グループへの接続コストを一件あたりaとすると,規模の経済性はbaを意味する。大量接続が実現し,一件あたり接続コストは安くなっているのである。主体が捉える,それぞれのネットワークへの接続のメリットをそれぞれBAとすると,BAとなる。

32頁】

ネットワークへの接続にあたって,もしそれぞれのネットワーク内の一主体に接続すれば他のすべての主体にリレー形式で接続していける方式がとられている(この方式の場合主体間のトラフィックは膨大な量になるので,このリレーが無視できるくらい安い運営費用で行える)ならば,ネットワーク接続のコストはそれぞれbaになる。その結果,費用は安く,メリットも高く,右グループのネットワークBへの接続は確実になる。ネットワークの規模の経済性とネットワーク外部性はこの場合同じ方向に作用することになった。

ところが,右グループへの接続コストを一件あたりbであるとしても,すべての参加者に個別に接続する必要があるとすると総コストは3bとなる。同様に,左グループへの総接続コストは2a,となる。図表3は,個別接続の場合を図示している。規模の経済性がbaを意味しても,3b2aが成立するかもしれない。その結果,baBA4つの大きさに依存してどちらかに接続することになるのである。

以上の考察は,誰に接続するかによって接続コストが異なるケース(その方が現実的である)を無視しているなど幾つか仮定を置いた議論であるが,ネットワークのあり方,さらに具体的にはネットワーク内の接続のあり方がネットワークの形態を決めることを示している。

4-1-3 ネットワークと市場の失敗

ネットワークの拡大にはさまざまな限界が存在する。それらの点を詳しく展開しよう。

1)ネットワークの失敗

小規模事業者や個人の一部には,PCやネットの知識の保有が少ない,それらのコンサルタ33頁】ントを受ける費用やシステム費用を負担できない(さらには,PCを持てない,あるいはネットに接続するコストを負担できない,という場合も含む。)という現実が存在する。これらは,市場の失敗をもたらす要因となることが考えられる。

ネットワーク拡大にこのような限界が存在すると,市場に任せていたままでは,市場は機能できなくなるという失敗を起こす。市場のこの失敗に対しては,何らかの方法で補う政策が必要であるという論拠に使われる。

ちなみに,このような事態は市場の失敗というより,諸般の事情で仕事ができなくなって生活が困難になり,生活保護給付を受ける,という事態に相当する。

2)ネットワーク維持のコスト

ネットワークの運営費用は,組成のコストに劣らず,重要である。ネットワーク組成の平均コストはネットワークが大きくなるにつれてどんどん小さくなっていくが,ネットワーク運営費用は低減することはない。ネットワークの規模が極めて大きくなれば,場合によっては,運営費用が逓増することも考えられる。

ネットワークの組成コストが高くなればネットワークが設立されないことが起こるように,運営費用が高くなれば,ネットワークの切断,(他の)ネットワークへの切り替えあるいはネットワーク利用率の切り下げが起こる。

ネットワーク切断は,また,新たなネットワークを組成するためのコストが高ければ,起こらない可能性がある。しかしながら,例えば技術進歩が絶えず起こっている経済では,ネットワーク組成コストが低下し続けているので,ネットワーク切り替え・切断が生じる可能性は高くなる。

ネットワーク・システムの運営費用が企業の利益を圧迫する場合,それが株価低下に結び付けば,ネットワークの切り替えあるいはネットワークの切断が起こり易くなるかもしれない。株価が低下しなくても,競合他社の株価が上昇しているなかで当該会社の株価上昇がなければ,同じことが起こる。ネットワーク・システム運営の機会費用として,競合他社の株価上昇も含まれる,ということである。

3)ネットワークの遅延~逓増するネットワーク運営費用

ネットワーク運営費用は,もしネットワークが大きくなれば,低減するよりも,むしろ逓増するのが実際である。ネットワークの使い勝手が良く,通信の内容(コンテンツ)もユーザーの好みに合えば,ネットワークはユーザーを増やしていく。このため流通するデータ・トラフィック量も加速度的に増大する。ネットワークは拡大すれば拡大するほど,外部性によってデータ・トラフィック需要が増大するだけでなく,ユーザーを満足させるためのコンテンツの大容量化はとどまるところを知らず進み,ネットワークには大きな課題となって迫ってくる。逆に表現すると,この課題を解決しない限りネットワークに接続する利益とそれを継続する魅力は極めて大きく下がってくるかもしれない。

改めて別稿を考えている通信量やコンテンツに関する議論を先取って,この点を敷衍すると,通信業界で2009年に話題になった,モバイル・ブロードバンドでの報道や議論を参考に組み立てて展開してみると,次のようになる。

ネットワークにおいてユーザーがストレスなく利用できるようにするためには,伝送速度を高速化(6するだけでなく,ネットワークにつながるまでユーザーを待たせない(接続遅延の低減),つながってからも応答で待たせない(伝送遅延の低減)といったネットワークの遅延回34頁】避もネットワークにとって重要な課題になる。

ネットワークの遅延は大別すると「接続遅延」と「転送遅延」の2つになる。接続遅延は,通信を開始する際にネットワークとのコネクションを設定するのに要する時間である。われわれが頻繁に使っている携帯電話においては,端末が基地局をサーチしたり,通信に必要な情報をやりとりしたりするのに要する時間である。転送遅延は,通信中にネットワーク内でデータを転送するのに要する時間である。ネットワークの遅延回避も高速化の課題の1つである。

以上の事柄を考慮すると,ネットワーク維持のコストには大きな課題が,技術的にも,制度的にも,存在することになる。

4)ネットワーク外部性から来る市場の失敗~既得基盤の優位性と過剰慣性など

ネットワーク外部性が存在する場合,次のようなネットワーク特有の問題が重要になる Katz-Shapiro(1985), (1986a), (1986b))。

まず,既得基盤 installed base の優位性があげられる。ネットワーク外部性が存在する場合,ネットワーク需要側に規模の経済性が発生する。もし消費者がある企業規格やあるネットワーク構造が優位になると予想すれば,消費者はその規格やそのネットワークに対する支払意志額を高め,実際上その規格やそのネットワークが優位になる。

次に,互換性が達成されない問題があげられる。ネットワーク外部性が存在する場合,規格やネットワーク間の互換性を設定するための適切な誘因を企業は持つか否かという問題が発生する。実際,互換性に対する企業の私的誘因と社会的誘因との間では乖離が生じ,互換性は社会的に過小な水準しか達成されない傾向を持つという「互換性の社会的誘因」の欠如が生じるようになる。

さらに,ネットワーク外部性が存在する場合,ネットワークでは市場メカニズムが必ずしも社会的に望ましい資源配分を保証しないという次のような市場の失敗が起きる Farrell-Saloner(1985), (1986))。

非効率的な旧技術が既得基盤を持つ可能性があるために,効率的な新技術の採用が将来おこなわれない場合がある。これは,いったん普及した技術はより優れた技術に移行するのが困難になるという意味で,過剰慣性(excess inertia)という。いわゆるデファックト・スタンダード(事実上の標準化)で市場を圧倒する売り上げシェアをとれば,効率的な新技術であってもなくても,他の技術の採用が将来おこなわれない場合がある。デファックト・スタンダードは必ずしも最適な技術を体現していないのである。

金融分野では,紙と郵送に依存する米国の決済手段である小切手の普及が銀行自動振替・引落の発展を妨げている事例がある。また日本では,個人の小売売買に利用可能で便利なデビットカードが普及しないのは,街角の自動販売機の普及から小銭使用が苦にならない慣行が出来上がってしまったからではないのかと想像させる,などという事例も関係しているだろう。

35頁】

セキュリティ分野でも市場の失敗の事例は多い。例えば,偽造やなりすましなどのカード犯罪を防ぐ,IC(集積回路)チップ搭載型カードや2004年ごろから導入が始まった生体認証機能付きキャッシュカードは対応する現金自動出入機(ATM)の普及が日本で進んでいない。これらには,他の要因も絡んでいるが,ATMシステム技術の過剰慣性現象とみることができるかもしれない。

逆に,非効率的ではあるが新しい技術が将来何らかの理由で普及すると予想されれば,効率的な旧技術が駆逐されてしまう場合がある。これを過剰転移(excess momentum)という。市場参加者の意図や希望に反して,非効率的な技術が優勢になる,という意味で市場の失敗に繋がる。

いずれも市場参加者の本来の意図や本来の希望に反して,非効率的な技術が優勢になりえる,という意味で市場の失敗に繋がるようになる。

5)ネットワーク外部性から来る市場の失敗~経路依存性と過小資本

ネットワークでは,ネットワークが拡大する初期段階に導入された技術が後々の発展経路まで影響する,いわゆる経路依存性が指摘される。ほんの初期段階であれば,効率的な新技術に改定することはまだまだ可能であるが,拡張期になってネットワーク規模が巨大になってしまえば改定に多くの費用がかかってしまう。これが,過剰慣性を引き起こす1つの原因にもなっていると解釈される。

ネットワークでは,4-1-2小節の(1)で既述のように,その外部性のため私的限界便益が社会的限界便益より小さく評価される。そのため,私的な投資に委ねると社会的に最適な資本規模まで投資がなされず,過小資本になる傾向がある。

4-1-4 ネットワークの中立性と接続料の負担

1)ネットワークの中立性

ネットワークではもう一つ,中立性(Network Neutrality)という概念が語られる。科学的分析がなされるというより,政策決定者や実務家が議論する時に用いる(7。議論の経済学的背景はまだ十分確立していないように思われる。それゆえ,このテーマについては少し触れるに止めておこう。

ネットワークはどんなユーザーやアプリケーションからも中立であるべきであるという意味でネットワークの中立性という言葉・概念は使われる。経済的に平等に扱う「ネットワーク利用の公平性」を原則とするべきで,これが延いてはネットワークの効率化をもたらす。効率化とは,利益を生む,それゆえ損失から破綻することがないという意味である。

利用の公平性とは,また,単なる公平ではない。「ネットワーク・コスト負担の公平性」の元での利用の公平性である。コスト負担を正当に行わずにネットワークのインフラを利用する,インフラただ乗りは不公平で許されない。ネットワーク・インフラを活用して収益を上げるなら,それに応じた料金を負担すべきだという考え方である。

2)ネットワーク接続業者の行動

次に,この議論に,後段の議論を先取りして,ネットワーク接続を業とする専門業者の行動36頁】を視野に入れてみよう。

ネットワークの中立性が米国や日本において実際上問題となったのは,インターネット接続事業者(プロバイダ)が,自社(自分自身),関係者や追加料金を払ったものを優先するなどして,ユーザーやアプリケーション,追加料金の有無などによって通信の取り扱いに差を付けるのではないかという懸念が高まってきたことが背景にある。

インターネット上でさまざまなサービス活動を展開している企業にとって,プロバイダが特定企業のサービスの通信を排除したり差別したりすると,経営上深刻な問題を引き起こす(8ことになるからである。

3)接続料問題

通信のネットワークにおいては,競争的な価格決定ができない(なされない)。価格は競争的に決められない。二人から始まるネットワークが大きくなっていくプロセス(先の4-1-2節(1)と(2)の議論)を想起してみれば,その理由を理解できよう。ネットワークにおける価格とは具体的にはネットワーク接続料である。

それは,政策的介入がなければ,コスト・アップに独占的要素が加味されて決まる。このような市場構造の結果,社会的に最適な構造を目指して政策的な干渉が政府・政策当局によって行われる。

社会にいくつかサブ・ネットワークが存在し,そのなかの最小のサブ・ネットワークをAとし,最大のサブ・ネットワークをBとしよう。小さなサブ・ネットワークAが大きなサブ・ネットワークBに接続する際には,Aが得る着信接続料をBが得る着信接続料より高く設定する形で,社会全体としてAのサブ・ネットワークの成長を図る,という産業政策がとられることが多い。

この産業政策の根拠は次のようになる。サブ・ネットワークAでは,あまりにも規模が小さいため,Aのなかでのメンバー相互の通信量がABとの間の通信量と比べると格段に少ないだろう。また,BからAへの着信はAからBへの着信よりも少なく,着信接続料を同じにする(着信接続料が同じ水準に決まる)とAには多額の純支払いが生じ,Aに付随する接続業者自体の経営が盤石ではなくなるからである。そして,政策的に非対称な着信接続料になる結果,Aに属するメンバー・ユーザーが支払う料金が低下し,Aでの通信量が増えて接続業者が得る通信収入が増大すると考えられる。

この説明のなかで,Aを移動体通信,Bを固定通信,それぞれの事業者が運営していると解釈すれば具体的な事例になる。ちなみに,事業者間の接続料金の決定に際しては,多くの国で,37頁】長期増分費用方式がとられる(9

(本小節了。次小節以降は続編(II)に続く)

 

 

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