「九マイルは遠すぎる」(ハリイ・ケメルマン著、永井淳訳、深町眞理子訳、早川書房刊)
「九マイルは遠すぎる」(ハリイ・ケメルマン著、永井淳訳、深町眞理子訳、早川書房刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!ネタバレあります!!注意!!
<あらすじ>
通りがかりに漏れ聞いた一言だけを頼りに、推論を展開し、殺人事件の犯人を指摘したニッキイ・ウェルト教授! 純粋な推理だけを武器に、些細な手がかりから、難事件を鮮やかに解きあかし、次々と解決していく教授の活躍。MWA受賞作家の手になる、本格推理小説のエッセンスとも言うべき珠玉の八短篇を収録!
(早川書房公式HP)
<感想>
古典中の古典。
まさにロジックの発展の見本ともいうべき作品。
一部に矛盾、論理の飛躍、かなり強引な「風が吹けば桶屋が儲かる」的な展開もあるものの、それなりに説得力があり面白い。
ミステリ者ならば一度は目を通しておくべきか。
<ネタバレあらすじ>
表題作「九マイルは遠すぎる」をご紹介!!
尚、かなりアバウトにした点あり。注意!!
ニッキイ・ウェルト教授は友人と談笑しながら英語にして11語か12語の言葉をひとつ云ってくれたらその額面通り以外の意味をその言葉から抽出してみせると提案。
友人から、「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ」という言葉を引き出す。
ここからニッキイ・ウェルト教授の本領発揮。
まずは、この言葉の主は九マイル歩くことに辟易としている。
次に九マイル歩くことを負担に感じているということは普段歩かない人物、あるいはスポーツ等を嗜まない人物。
教授はその文章を推理し、発展させていく。
「まして雨の中では」という文言から男が歩いた日には雨が降っている。
次に「九マイル」に注目。
「十マイル」でも「およそ九マイル」でもなかったことからピタリ九マイルと断言できたと推理。
つまり、「街からどこか別の場所」ではなく、「どこか別の場所から街へ」向かったと推理する。
さらにわざわざ徒歩で九マイルを踏破しなければならなかったことから、途中で車を拾うことが出来なかった―――目立つことも出来ない後ろ暗いところがあると推理。
雨の中、ヒッチハイクもせず歩くことには犯罪の影がある。
加えて、公共交通機関の無い場所だったのでは―――と、推測。
近隣で以上の条件に合致する都市は―――ハドリーの街ならば条件に符合する。
さらに教授は友人がすらすらと「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ」と云う文言を引き出したことから、無意識のうちにその言葉をどこかで聞いたのだろうと推理。
それを聞いた機会は教授が席を外した間しかありえない。
友人に確認したところ、喫茶で入れ違いになった二人組がそんな会話を交わしていたという。
教授は新聞を調べてニヤリとほほ笑む。
「見てご覧。ハドリーで殺人事件が起こっているよ」
それは列車内での殺人事件を伝えるものだった。
そのまま警察に通報する教授。
教授によればひとりが出発駅でターゲットの乗った列車をもう1人に伝え、そのもうひとりが実行犯となり成功の報告と報酬を受け取る為に九マイルを歩いたのだろうということだった。
後日、教授の情報により犯人二人は逮捕されたとのことだ。
「で、私たちは結局何をやっていたのだっけ?」
友人の問いに「偶然なんてないということを証明しようとしていたんじゃなかったかね」と答える教授―――エンド。
「九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)」です!!
九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)
九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)
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