2023年6月22日木曜日

日本の歴史を解明します 天の香具山1

日本の歴史を解明します 天の香具山1
九州説では香春岳…

天の香具山1

万葉集の情景から天の香具山を比定するということは、大杉氏等の阿波の古代史研究家もされていますが、九州王朝説の古田武彦氏も同じことをしているようですね。(古代史の十字路 万葉批判 古田武彦著)

いつも使わせていただいている万葉集検索システムによると訓読で"香具山"がヒットしたのは13歌ありました。
内、一番有名な、舒明天皇(629-641年)の国見の歌について、阿波説の立場に立って、解説してみたいと思います。

原文
山常庭 村山有等 取與呂布 天乃香具山 騰立 國見乎為者 國原波 煙立龍 海原波 加萬目立多都 怜A國曽 蜻嶋 八間跡能國者

訓読
大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は

通釈
ここ大和には、山がたくさん寄り集まっているが、とりよろふ(語義未詳)天の香具山、その山の頂に登り立って領土を見渡せば、人の住む広々とした平野には、靄が立ちこめている。広々とした海では、あちこちで鴎が飛び立つ。豊かなよい国だよ、蜻蛉島すなわち、日本の国は。


みなさん仰られるのが、奈良にある天香久山からは、海原は見えないし、ましてやカモメが飛び立つのを見ることができないからして、天の香具山は、通説の奈良にある天香久山ではないということです。

これに対して、通釈では、奈良盆地はこのことは湿地帯であったから海原といえる、とか、奈良盆地にある池(どこの池?)を海原としたとか、苦しい解釈をしていますね。

では、阿波説に立って訳してみます。

私見
大和(奈良)には、山がたくさん寄り集まっているが、おいといて(笑)、天の香具山(眉山or津田山or気延山のどれか)に登り立って国見をすれば、陸の方では煙がたって、海原ではカモメが飛んでいる。豊かなよい国だよ、蜻蛉(トンボ)の様な島の大和(阿波)の国は。
眉山からの国見

最初の"山常"は大和(奈良)のことですね。次に"とりよろふ"とは、現代風にはおいといてと訳しました。一般には取り分けてよいのがと訳すみたいですが、自説にたつと、大和(奈良)の山も良いですが、という前置きになります。次に、天の香具山として、3つの山を候補にあげました。
最後に、"蜻嶋 八間跡能國者"解釈ですが、これは正直苦しい解釈になりそうですね。蜻嶋、これは徳島平野を指すことばと思うのですが。徳島平野は、吉野川の両岸、北に讃岐山地、南に四国山地に囲まれて、西から東に向けて細長く広がり、更に河口付近において南北に平野が広がります。ちょうど"とんぼが羽を広げている"様です。

では何故、徳島平野を嶋とするのでしょうか。柿本人麿呂の回で解説したのは、嶋とは水で隔てられていなければならないといったばかりなので、その回の説とは矛盾することになるかと思われます。しかし、これは、柿本人麿呂は倭(阿波)の人で、舒明天皇は、大和(奈良)とすると矛盾はないと思います。
http://awanorekishi.blog.fc2.com/blog-entry-6.html

つまり、この歌は徳島の眉山等に登って国見をした時の歌ではなく、大和(奈良)の宮中にて、倭(阿波)での国見をした時を懐かしんで歌っているのです。
聖徳太子が倭→大和へと遷都したとの説があります。そうすると、年代から考えると、舒明天皇の幼少期のころを懐かしんでいるのではないでしょうか。
このころは奈良も阿波もいずれも大和(天皇の直轄地)であったから、阿波の方を"蜻嶋八間跡能國"とし、自分が住んでいる都の方は、単に"山常"と同じ大和でも使い分けたのだと思います。

そしてもう一度読んでみて下さい。おそらく、都が遷都してから数十年は立っているので、阿波を知る宮人は少なかったのでしょう。そういった人に対して、奈良も良いけど、阿波も海があって良かったでぇと懐かしむように歌って聞かせたものではないでしょうか。

阿波古事記研究会では天の香具山を神山にある元山としています。理由は、阿波国風土記に次のように記されているからです。 「そらより降り下りたる山のおおきなるは、阿波国にふり下りたるを天の元山と云い、その山のくだけて、大和国に降り着きたるを天香久山というなんと申す」

しかし、元山は佐那河内村の山奥で、海原は見えても、さすがにカモメは見えないですね。とすると、めぼしいところで、上記の3つの山が候補ですね。天の香具山とはなにかというと、大杉氏によると天の欠く山らしく、木の生えていないはげ山のことをいうとのことです。つまり、一つの山を指していないのですね。

その他の歌にでてくる天の香具山は具体的な山を指すのですが、おそらく阿波の山というくらいのニュアンスで歌われているのでしょう。阿波の固有名詞を出しても奈良の人はわからないですからね。

次回は持統天皇の天の香具山について解説したいと思います。

映画 眉山

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