徳島県阿南市|舎心ヶ嶽は太龍寺ではずせないスポット!若き日の弘法大師が見た景色
2019.06.28
四国八十八か所霊場第21番札所太龍寺には弘法大師にゆかりが深い奥の院があります。
ロープウェイ乗り場を下りてすぐ、本堂へ向かわず左へ進むと見えてくる「舎心ヶ嶽(しゃしんがたけ)」。なかなかハードな道のりですが、19歳の弘法大師が100日間の修行をしたという聖地なので、お遍路をするならぜひ訪れたい場所です。
若き日のお大師さんが見た景色を同じ目線で見ることができますよ。
舎心ヶ嶽へのアクセス
太龍寺までのアクセス方法については以下の記事をご参照ください。
太龍寺ロープウェイを下りて、本堂に向かわず左へ進むと舎心ヶ嶽へ行けます。
距離としては680メートルなので、それほど遠く感じないですが『そんなもん徒歩10分もかからんやん、余裕やん』とか思って軽い気持ちで行くと絶対後悔するからね(戒め)。
舎心ヶ嶽の御朱印
舎心ヶ嶽の納経は太龍寺の納経所でいただけます。納経料は300円です。
ロープウェイで行く場合は、舎心ヶ嶽→本堂・大師堂の順で参拝して納経所へ行くのがおすすめです。
舎心ヶ嶽の御影
舎心ヶ嶽で納経をすると、御本尊のお姿を描いた御影(おすがた・おみえ)が無料でいただけます。
御影のお大師さんはほうれい線が気になるあんまり若くないお姿でした。
舎心ヶ嶽について
舎心ヶ嶽は弘法大師が19歳のときに虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)修行をした聖地で、虚空蔵菩薩の御真言を1日1万回唱えることを100日間続けるという、とても難易度の高い厳しい修行です。
虚空蔵菩薩御真言
のうぼう あきゃしゃ きゃらばや おん あり きゃまり ぼり そわか
求聞持法を修めると見聞きしたすべてのことを理解し、記憶する力が身につくといわれ、この修行は弘法大師の青年期の思想形成に大きな影響を及ぼしました。弘法大師は舎心ヶ嶽だけでなく室戸岬の御厨人窟(みくろど)でも求聞持法修行をしていて、御厨人窟で口に明星が飛び込んでくるという体験をして悟りを開いたといわれています。
太龍寺には今も求聞持法修行専用の「求聞持堂」があり、チャンレジする僧侶がいるとか。
以前は崖の上に小さなお堂がありましたが、弘法大師入定1200年を記念して青銅製の「求聞持法修行大師像」が建立されました。大師像は東向きに安置され、虚空蔵菩薩の化身とされる明けの明星を拝しているお姿をしています。
舎心ヶ嶽の「舎心」とは"捨て身"の当て字というだけでなく、"ここに立つ人の心を舎(とど)める"という意味もあります。
舎心ヶ嶽の見どころ
参道にはミニ霊場あり
舎心ヶ嶽は向かう道もハード。
かなりの急角度な坂道で、途中から舗装があったりなかったりとランダムになります。大きめの石がゴロゴロ落ちているので、地味に足の裏にダメージが蓄積されていく…。
かなり過酷な道ですが、道中は四国八十八か所の御本尊が見守ってくれるミニ霊場となっています。
結願の功徳がさらに増えるボーナスステージ。レアな御本尊を探して、気分転換しながら登りましょう。四国八十八か所霊場でひとつしかない激レア御本尊をご紹介します。
まずは安定の安眠スタイル、9番札所法輪寺の涅槃釈迦如来。この像は足の裏にある例の模様「足下二輪相(そくげにりんそう)」がなかったです。ワクワクして見たのに残念…。
14番札所常楽寺の弥勒菩薩、31番札所竹林寺の文殊菩薩、55番札所南光坊の大通智勝如来、63番札所吉祥寺の毘沙門天(吉祥寺では毘沙"聞"天と書く)、70番札所の馬頭観音も四国霊場唯一の激レア御本尊ですよ。
お大師さんの送迎つき
途中に「ここからはお大師様がお迎えにこられます」と書かれた石碑があり、ここを境に空気感が変わります。「南無大師遍照金剛」と唱えながら進みましょう。
この石碑があるのは馬頭観音(70番札所)のあたりなので、もう少しでゴールです!
反対側はこんな感じです。
登りきると遠くにお大師さんのお背中が見えてきますよ。
選べる難易度
こちらには「南の舎心嶽」と書かれていて、お察しのとおり北にも舎心ヶ嶽があります。かつては東西南北に舎心ヶ嶽があったそうですが、現在は北と南だけ。
北の舎心ヶ嶽は仁王門側にあり、不動明王に仕える八大童子を祀った祠が岩の上にあるそうです。仁王門は納経所の奥の奥、坂道を下ったところにあってロープウェイで太龍寺に登ると通らないルートなので、北の舎心ヶ嶽はあまり訪れる人がいないとか。
南の舎心ヶ嶽ではお大師さんがとんでもないところにお座りでいらっしゃいますが、近くまで行けます。なんなら隣に座れます。『こんな岩場を正気か?』と思うかもしれませんが、鎖か歩道の二つがあって難易度が選べますよ。
岩にさらっとかけられたこの鎖、わかりますか?岩の下は崖、周りには柵とか何もないので落ちたら余裕で死ねます。昔はロープが張られていたようですが、今はありません。やや高所恐怖症ぎみな私は鎖の前まで行くのも無理でした。
『鎖はちょっと無理…』と思うあなたには、親切に歩道が用意されているので安心してくださいね。
↓歩道(歩けるとは言ってない)
歩道ルートで行きましたが、岩がむき出しでもちろん手すりなどもなく、道なき道を進んで最後はよじ登る感じ。鎖よりもかなり遠回りですが、体力に自信がない場合は歩道がおすすめ。歩道ルートにも昔はロープがあったようですが、現在はありません。
舎心ヶ嶽は現代でも身を捨てる覚悟でないと近寄れない聖地、くれぐれも無理をしないように。無理だと思ったら引き返す勇気もときには必要です。
いざ、お大師さんのもとへ
覚悟を決めて進むと、お背中がすぐそこに見えてきます。
あらためて、とんでもないところで修行されたことを実感しました。何もない岩場には恐怖感しかありませんが眺めは最高、まさに絶景です。遠くには太平洋が見え、山が果てしなくどこまでも続いています。
岩場の一段高いところにお座りで、近寄るのはここまでが限界。
像の周囲には人が立てるほどのスペースがあり、本当はもっと近くまで行けます。私は写真を撮る余裕もないほど足がプルプルで無理でしたが。
お大師さんは御厨人窟で虚空蔵求聞持法の修行をしたときに岩の隙間から見える空と海だけの風景を見て「空海」と名乗るようになったといわれていますが、"空"は舎心ヶ嶽が由来という説もあります。そうかもしれないと納得するほど、ここは空が高くて広くて印象的。
花粉シーズンだったので、ちょっとかすんでいるのが残念。舎心ヶ嶽周辺の山にはえているのは杉とヒノキなので、花粉症の人は春には近寄らないほうがいいかも。
1000年以上前にお大師さんが見た景色、一生に一度は見たい絶景パノラマビューです。ここに100日いればガチで悟りが開けそう。
舎心ヶ嶽にある「求聞持法修行大師像」のお大師さんは一般的な修行大師像より若い感じのお顔です。
景色を堪能したら、帰りも地に足がつくまで気を抜かずに戻ってくださいね。
こんなところに天照大神
舎心ヶ嶽には求聞持法修行大師像のほかにもふだらく彦命、不動明王、神武天皇、天照大神がお祀りされています。
他ではまったく聞いたことがない謎の「ふだらく彦命」ですが、ふだらく(補陀落)=観音さまが住む世界のことで、太龍寺がある太龍寺山の別名は「補陀落山」といいます。単純にこの山の神さまをお祀りしているのか、何か深い意味があるのかは謎です。
天照大神は少し離れた一番高いところにお祀りされていました。木の根っこが階段がわりのワイルドなルートです。
謎のオブジェ「山さきもり」
舎心ヶ嶽には求聞持法修行大師像のほかにも見どころがあります。忘れちゃいけない、ロープウェイから見えた謎のオブジェ「山さきもり」です。
山さきもりへ行く道はきちんと整備されていて、楽々行けました。
山さきもりは世界的な彫刻家・流 政之氏の作品。
雷で倒れた御神木を型にして作られたそうで、太龍寺の守り神的存在として鎮座しています。独特の力強いフォルムですね。高さは3.1メートルあり、近くで見るとかなり大きいです。
こちらは足元がしっかりしているので、景色をゆっくり楽しむ余裕があるのが嬉しい。
こちら側も遠くまで山が続いているのが見渡せる絶景でした。ロープウェイが通るのも見えますよ。
まとめ
太龍寺は阿波の難所「遍路転がし」といわれますが、奥の院・舎心ヶ嶽もたどりつくのが難しい難所です。たどりつけるか本気で心配でしたが、高所恐怖症ぎみなインドア派でも歩道ルートなら意外と行けました。
弘法大師が見た舎心ヶ嶽の景色、一生忘れられないほどの絶景なのでおすすめです。
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