2023年6月13日火曜日

【医療新世紀】進行がんも手術可能に 分子標的薬など新しい治療薬が奏功、縮小で切除に「転換」膵臓や胃で成果報告も(2/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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進行がんも手術可能に 分子標的薬など新しい治療薬が奏功、縮小で切除に「転換」膵臓や胃で成果報告も1/2ページ

膵臓がん患者にコンバージョン手術を行う富山大病院の藤井努教授(左から2人目)=同病院提供
膵臓がん患者にコンバージョン手術を行う富山大病院の藤井努教授(左から2人目)=同病院提供

病状が進行し「切除できない」と判断されたがんでも、手術が可能となるケースが増えている。治療薬の効果で、切除できるほどがんが縮小した人たちで、薬物療法から手術への「転換」を意味する「コンバージョン手術」と呼ばれる。膵臓や胃のがんで成果が報告されており、新たな治療薬が登場すれば、対象患者は今後も増えそうだ。

がんは、早期なら手術で取り除く治療が有力な選択肢になる。しかし進行して、重要な血管を巻き込むなどしていたら、他の臓器への転移がなくても切除不能とされる。

状況を変えたのは、分子標的薬など新しい治療薬の登場だ。現場の医師によると、薬で予想以上にがんが小さくなる患者が増え始め、2010年ごろから、食物の消化吸収に関わる消化器のがんを中心にコンバージョン手術が広まったという。

富山大病院消化器・腫瘍・総合外科の藤井努教授
富山大病院消化器・腫瘍・総合外科の藤井努教授

成果が出ている病気の1つが膵臓がんだ。早期発見が難しく、国立がん研究センターの統計によると、診断5年後の生存率は12%台にとどまる。

コンバージョン手術に積極的な富山大病院消化器・腫瘍・総合外科の藤井努教授によると、対象になり得るのは、がんの広がりは大きくても他臓器への転移はない「ステージ3」の膵臓がん患者。「治療開始前に肝臓などへの転移がないことをしっかり見極めることが重要だ」と藤井教授。

CTやMRIなど複数の検査で転移なしと判断したら、抗がん剤を6~8カ月続ける。がんが縮小し、本人の体力に問題がなければ、血管に巻き付いたがんに放射線を当てて取りやすくした上で手術に切り替える。

https://www.zakzak.co.jp/article/20230612-ODDDK4TTU5JU7EXHSX55WAP64I/2/

進行がんも手術可能に 分子標的薬など新しい治療薬が奏功、縮小で切除に「転換」膵臓や胃で成果報告も2/2ページ

藤井教授らが昨年発表した論文によると、富山大病院で14~20年にコンバージョン手術を実施した41人を分析すると、14人は後に転移が見つかったが、手術した全員の5年後生存率は58・6%だった。

手術に進めるのは、ステージ3と診断された患者の10~30%程度だが、藤井教授は「切除不能だった人でも長期に生存できる例が出てきた。大きな変化だ」と説明。一方で「血液中にがん細胞が残っているためか、離れた臓器に飛んで再発する人もいる。それをいかに早期に見つけて治療するかが課題」と指摘する。

胃がんでは、比較的早くからコンバージョン手術が実施されてきた。腹膜や肝臓に転移している「ステージ4」の患者が対象となるという。

国立がん研究センター東病院胃外科の木下敬弘科長によると、複数の転移がある人でも、半年程度の薬物治療によって転移したがんが消えたり、数が減ったりする場合がある。安全に切除できる状態までステージが下がって、悪化せずに維持されていれば、手術に方針転換する。必ずしも胃を全摘する必要はなく、「がんを取り切れれば長期生存が見込める。非常に有望な治療法だ」と語る。

治療薬は、分子標的薬の後に免疫チェックポイント阻害剤も登場し選択肢は増えた。効果は患者によって異なるため、現状で手術できるのは、当初切除不能と判断された胃がん患者の10%程度。コンバージョン手術によって全体として長期的な生存率がどれだけ改善するのかなど、医学的な評価が定まるまでには時間がかかる見通しだ。

コンバージョン手術を行えるのは複数の診療科が連携できる大学病院やがんセンター、民間の大きな病院に限られる。地域の小規模な病院からの患者紹介を含め「いろいろな意味での連携が必要だ」と木下医師は話す。

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