台湾有事で〝中国崩壊〟シミュレーション・ゲームの顛末 追いつめられた日本の最後のよりどころは財政金融1/2ページ
今週月曜、「『台湾有事』における日本危機への対応」をテーマにしたシミュレーション・ゲーム(「日本外交政策学会」主催)が衆院第二議員会館で開かれた。
ゲームは日米中台の閣僚に扮した専門家などが各チームを組み、有事の段階に即応し、そのつど相互に策をぶつけ合うプロセスを経て結果を導き出す。以下は拙論が役割担当した「日本国財務相」の目からみた危機の顛末である。
ゲームは、独立を宣言した台湾に対し、中国が海上封鎖する事態から始まる。軍事面での米国、日本の協調行動が当初の焦点になるが、米軍は基本的にウクライナ方式をとる。ロシアが侵攻したウクライナに対してと同じく、台湾に軍事支援しても自らは核保有国中国との軍事衝突を避ける構えを崩さない。代わりに自衛隊の台湾有事への積極関与を求めてくるが、日本政府は慎重だ。
中国側は日本を揺さぶる。中国本土での日本企業資産の全面的な接収や在住日本人の強制収容に乗り出した。専守防衛の日本は単独で軍事対決する能力はもとよりない。経済面ではかつてない危機が日本を襲う。台湾封鎖以降、始まっていた株式など国内金融市場の動揺はパニックに突き進み、円資産は暴落する。
追いつめられた日本が最後のよりどころとするのは財政金融である。国際金融市場は大荒れだ。中国からの製品や部品の供給は途絶え、世界経済は新型コロナ・ショックの数倍ほどの不況に見舞われそうだ。
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中国も例外ではない。不動産バブル崩壊後、景気の低迷は続いているものの三期目に入った習近平政権は不況対策を取れない。通貨金融制度はドル準備依存しているのに、ドルの流入源である貿易黒字が激減しているうえに、外国からの投資引き上げが加速し、富裕層の資本逃避も爆発的に増加しているからだ。いくら資本規制を強化しても、人民元の急落に歯止めがかからない。
グラフは世界経済における中国のプレゼンスの大きさを端的に示す。中国からの輸出は世界の14%以上を占めて日米を圧倒する。米国に次ぐ国内総生産(GDP)は同18%を超える。モノとドル金融を通じてグローバル経済にどっぷりと浸かっている中国は世界を壊せば、自身も崩壊する。その点はエネルギーや食料資源が豊富なロシアとは大きく違う。
ここで、日本は提案する。100兆円規模の基金を捻出し、国際通貨基金(IMF)に拠出し、金融難に陥った発展途上国を支援する。その代わりの条件として中国の人民元をIMF特別引き出し権(SDR)構成通貨から排除する。SDR通貨は国際決済通貨の証なのだから、この決定で元は単なる紙切れと化してしまう。世界最大の貸し手である日本の発議でG7(先進七カ国)は即座に同意する。中国も万事休すだ。
そして、米国、日本が台湾独立を支持しないのと引き換えに中国は台湾封鎖を解除する暫定合意が成った。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
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