天王山のカエル(京のカエル大阪のカエル)
江戸時代に柴田鳩翁という心学者が書いたお話しの中に、天王山にまつわる、「京の蛙と大阪の蛙」というお話があります。
むかし、京に住む蛙が、大阪を見物したいと望んでいました。この春に思い立って、難波など名所を見物しようと言い、
西の明神から、西国街道を山崎へ出て天王山に登りました。また、大阪にも京都を見物したいと思い立った蛙があって、これも西国街道を瀬川、芥川、高槻、山崎と出かけ、天王山へ登り山の頂で両方が出会いました。互いに仲間同士であるからして、その志しをいいます。「これほど大変な苦労をして来ても、まだ道半ばじゃ、ここから京、大阪に行けば、足も腰ももつまい。名に負う天王山の頂上、京も大阪と相互互いに相談して、立ち上がり、足を爪先立てて、向こうをきっと見渡した。
京の蛙が言うには、「音に聞こえた難波の名所も見れば、京に変わりがない。どうしよもない目をして行くよりも、今からすぐに京に帰ろう」という。大阪の蛙も目をぱちぱちさせて、あざ笑うように言う。
「花の都と音には聞くけど、大阪も少しも違いはせぬ。それならば私も帰るべし」と互いに会釈して、またのさのさと這って帰りました。これが、面白い例えでございますが、つまり蛙は向こうを見渡したつもりではありますが、目の玉が背中についてあるので、見たものは下の古さをみただけでございます。どれほど見つめていても、目の場所が違っているからには気がつきません。うろたへた蛙の話をよく聞いてくださいませ。 鳩翁道話より抜粋
間の抜けた蛙の話ですが、つい自分の目はいったいどこについてるのか?ちゃんと物事を見ているのか?と自問したくなる話でもあります。
柴田鳩翁は道話の神様といわれ、鳩翁道話の正編は1835年(天保6),続編36年,続々編38年刊。ベストセラーになりました。
蛙の像は大山崎ふるさとセンター内、大山崎町歴史資料館へ行く2階階段手前にあります。
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