2023年11月14日火曜日

巨大権力に抵抗する思想――プルードンの反骨精神に学ぶ/金山準/橋本努(ホスト) - SYNODOS

巨大権力に抵抗する思想――プルードンの反骨精神に学ぶ/金山準/橋本努(ホスト) - SYNODOS

プルードン 反「絶対」の探求

プーチンはウクライナに暮らす人々をネオナチから解放すると言っていますが、もしウクライナがロシアに併合されたら、ウクライナの人たちは専制国家の下で不自由な生活を強いられてしまうでしょう。ロシアによるウクライナ侵攻を阻止するために、いま私たちはどんな思想を必要としているのでしょうか。ウクライナ侵攻の背後にある問題は、現代のロシア人が、なぜプーチンのような独裁者を許してしまったのか、という政治社会の経緯です。なぜロシア人は、「大いなる権威」に対抗できない社会を作ってしまったのでしょうか。

この問題を考えるとき、19世紀フランスの思想家、ジョセフ・プルードンのアナキズムに学ぶべきことがたくさんあります。プルードンは、権威主義そのものよりも、権威主義の体制を支えるふつうの人たちの心理に焦点を当てました。私たちは、自分と同じレベルの人たちと交わるよりも、自分より大きな存在と、想像上の一体化を求めることがあります。例えば、偉大な指導者、偉大な思想家、偉大な祖国、偉大な帝国などに、私たちは一体化しようとすることがあります。

しかしこうした偉大なものに一体化する心性こそが問題であり、それはとても危険な社会を生み出すというのがプルードンの主張です。最近刊行された、金山準著『プルードン 反「絶対」の思想』(岩波書店、2022年刊行)は、プルードンを、「大いなるもの」に抵抗する思想家として読み込んでいます。プルードン研究に新たな光を当てた、すぐれた著作です。シノドス・トークラウンジでは、著者の金山先生をお招きして、いまプルードンに何を学ぶべきなのかについて議論します。

プルードンは、「所有とは盗みである」という警句によって知られる思想家です。あるいはまた、プルードンは、マルクスの著作『哲学の貧困』で、批判の対象となった本(『経済的矛盾の体系、あるいは貧困の哲学』)を書いた著者としても知られています。マルクスはプルードンを批判しましたが、しかしマルクスよりもプルードンのほうが、新たな社会構想について、いろいろなアイディアをもっていた面があります。

プルードンは、国家、市場、教会、普通選挙、人民主権、共産主義、等々、当時の政治経済思想の主要な理念を根本的な次元で批判しました。その一方で、新たに「連合主義」と呼ばれる社会を構想しました。それは自由なアソシエーションの連合体を建設するというものでしたが、しかしプルードンは、社会主義者たちが掲げるアソシエーションの構想に対しても根本的な批判を投げかけました。人類は全体として、資本主義を超えて社会主義に向かわなければならないという考え方は、「絶対」的な真実を掲げる絶対主義です。この絶対主義を超えて、私たちはいかなる社会を築くべきなのでしょうか。トークラウンジでは、プルードンの思想に改めて学びたいと思います。皆さま、ぜひご参加ください。

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