2023年11月28日火曜日

阿波市阿波町の「伊勢神社」 - まほろば・どなり

阿波市阿波町の「伊勢神社」 - まほろば・どなり

阿波市阿波町の「伊勢神社」

別の記事のついでにとり上げたのですが、とても大事な内容を含んでいる気がしてきたので、独立させておきます。

阿波市役所の北東2kmに、こんな神社があります。

まいったか~なんてことは申しません。

いくらなんでも、お伊勢さんまで阿波がもとだった、だなんて。

 

社殿、というもはばかられる、近所の寄り合い所のような建物です。

とても とても・・・

 

かたや、こちらはお正月の 伊勢神宮・内宮・・・

伊勢神宮公式サイト(English ver.) http://www.isejingu.or.jp/shosai/english/isemairi/isemairi.htm

でも、ちょっと待ってください。

伊勢国造って・・・

伊勢国造(いせ の くにのみやつこ/いせこくぞう)

伊勢国・伊賀国・志摩国を支配した国造。

本姓は 中臣 氏。
祖先
天日別命 または 天日鷲命 (同神説と別神説あり)。

前者は天御中主尊の12世孫、後者は神皇産霊尊の5世または7世孫という。

神武天皇東征 の際、伊勢津彦 を追って 伊勢国 を平定し、その娘の 弥豆佐々良比売命 を娶って彦国見賀岐建与束命(伊勢神宮外宮摂社・度会国御神社の祭神)を生ませたという。

おや?

神武東征が奈良盆地をめざしていたのなら、どうして途中で三重県を攻めたりしたんでしょうね。

その敵の娘を妻にしたということは、その後は協力関係に入ったということでしょう。

天日別命(または天日鷲命) の妃という 弥豆佐々良比売(ミツササラヒメ)、聞いたような名前だと思ったら、鵜野讃良皇女(ウノササラヒメミコ)がおられました。

のちの 持統女帝 です。

なにやら 藤原氏 がにおってきました…。

伊勢の国名の由来を個人のホームページ 「露草色の郷」 さんの 「国土としての始原史~風土記逸文」 から転載させていただくと:

伊勢國號 ( 萬葉集 註釋 卷第一)


伊勢の國の 風土記 に云はく、夫れ伊勢の國は、天御中主尊
(あめのみなかぬしのみこと)の十二世(とをまりふたつぎ)の孫、天日別命 (あめのひわけのみこと)の平治(ことむ)けし所なり。
天日別命は、倭磐餘彦の天皇( 武天皇 )、彼の 西の宮 より此の 東の州
(くに)を征ちたまひし時、天皇に隨ひて 紀伊の國 熊野の村 に到りき。

時に、(こがね)の烏 の導きの隨(まにま)に中州(なかつくに)に入りて、菟田(うた)の下縣に到りき。
天皇、大部
(おほとも) の日臣命に勅りたまひしく、「逆ふる黨(ともがら)、膽駒(いこま)長髓(ながすね)を早く征ち罰(きた)めよ」とのりたまひ、且(また)、天日別命に勅りたまひしく、「天津 の方に國あり。其の國を平(ことむ)けよ」とのりたまひて、即ち標の劔を賜ひき。
天日別命、勅を奉りて に入ること數百里
(いくももさと)なりき。


其の邑にあり、名を 伊勢津彦 と曰へり。

天日別命、問ひけらく、「汝(いまし)の國を天孫(あめみま)に獻らむや」といへば、答へけらく、「吾、此の國を覔ぎて居住(す)むこと日久し。命を聞き敢へじ」とまをしき。
天日別命、兵を發
(おこ)して其のを戮(ころ)さむとしき。

時に、畏み伏して啓(まを)しけらく、「吾が國は悉に天孫に獻らむ。吾は敢へて居らじ」とまをしき。
天日別命、問ひけらく、「汝の去らむ時は、何を以ちてか驗と為さむ」といへば、啓しけらく、「吾は今夜
(こよひ)を以ちて、八風(やかぜ)を起して海水(うしほ)を吹き、波浪(なみ)に乘りて東に入らむ。此は則(すなは)ち吾が却る由なり」とまをしき。
天日別命、兵を整へて窺ふに、中夜
(よなか)に及る比、大風四もに起りて波瀾(なみ)を扇擧(うちあ)げ、光(てり)耀きて日の如く、陸(くが)も海も共に朗かに、遂に 波に乘りて東にゆきき
古語
(ふること)に、風の伊勢の國、常世の浪寄する國と云へるは、蓋しくは此れ、これを謂ふなり。

(伊勢津彦のは、近く 信濃 の國に住ましむ。)


天日別命、此の國を懷(なづ)け柔
(やは)して、天皇に復命(かへりごと)まをしき。
天皇、大く歡びて、詔りたまひしく、「國は宜しく國
(くにつかみ)の名を取りて、伊勢と號せよ」とのりたまひて、即(やが)て、天日別命の封地(よさしどころ)の國と為し、宅地(いへどころ)大倭 の耳梨(みみなし)の村に賜ひき。
(或る本に曰はく、天日別命、詔を奉りて、熊野の村より直に伊勢の國に入り、荒ぶるを殺戮し、遵
(まつろ)はぬものを罰(きた)し平げて、山川を堺ひ、地邑(くにむら)を定め、然して後、橿原の宮に復命まをしき。)

さあて多くのキーワードや連想されるエピソードが出てきました。

土成に関する地名として、菟田(うた) とは (うのたお)峠 のことだと、たしか岩利大閑氏が指摘しておられます。

阿波説でも諸説あるようですが、神武帝の行程を岩利氏が下のように想定しておられます: 

『道は阿波より始まる(その二)』 p.18

一旦瀬戸内側から峠を越えて攻め込もうとしたものの、北からの侵入が "太陽に向かう"逆光であったこともあり、退却。コースを変えたという可能性があるのではないでしょうか。

高木隆弘氏はJR高徳線がトンネルで抜けている大坂峠を越えて板野町川端(富の谷;現在の 板野IC あたり)がはじめの戦闘の場所だったのではないか、とされています(『記・紀の説話は阿波に実在した』 p.114)。

ちなみに(阿波説をご存じの方にはご承知の通り)、近畿地方に大坂や奈良、難波などという地名がつけられるのは記・紀が書かれる頃まで後のことだそうです。

地名の考証は のらねこ先輩がとても詳しく書かれています:

→ 仁徳天皇は讃岐の天皇 3 http://blogs.yahoo.co.jp/noranekoblues/49899722.html

東征というのですから、神武軍の拠点は阿波西部の山間部ではないかと想像するのですが、いずれにせよ、日向から奈良までの大遠征などではなく、もっと狭い範囲でおこった部族間の (それも族長どうしの話し合いが中心の) 抗争だったというのが現実的ではないでしょうか。

また、物語の展開は国譲りでの 建御雷之男(タケミカヅチオ)の活躍と 神武東征 での 天日別命 の話が重なっているように見えます。

ひとつの傍証として、三重県桑名市、伊勢湾の最深部にある 「桑名宗社」 という神社を挙げておきます。

この神社は 「桑名神社」「中臣神社」 の両社が合祀されたもので、古来桑名の総鎮守として桑名首(くわなのおびと)の祖神を祀っているとされます。

桑名神社は平安時代、延喜式神名帳にその名の見える古社で、御祭神は 天照大御神 の第三御子 天津彦根命 と、その大神の御子 天久々斯比乃神 の二柱です。

天津彦根命は国史にも見えた様に御子孫の殊に御繁栄になった神であり、また天久々斯比乃命は神徳霊妙な神で、桑名首(上代桑名の豪族)の祖神であるので桑名の開祖として仰がれています。

中臣神社も延喜式神名帳にその名を見える古社であり、桑名神社と共に延喜式内社とされています。中臣神社は神護景雲三年(769年)に常陸国鹿島社(茨城県の鹿島神宮)より建御雷神霊が御通過になった基址に祀られるようになりました。

御祭神 天日別命 は神武天皇御創業の時の功臣で 伊勢国造の遠祖 として仰がれています。

中臣神社は山上にありましたが、正応2(1289)年に桑名神社の境内に遷し奉り、永仁4(1296)年に奈良 春日大社 から春日四柱神を勧請合祀してからは「春日さん」と呼ばれています。

その後、御社は繁栄の一途をたどり、織田信長・徳川家康などより神領の寄進、本田忠勝・松平定綱などの歴代桑名城主から篤く崇敬され、明治になってからも元年の御東行・二年の東京遷都と、共に天皇・勅使が御泊り するなどされました。

「桑名宗社」ウェブサイトより http://www.kuwanasousha.org/

中臣~ 天日別命 ~伊勢国造。

そこに合祀されてくる 春日大社 の4柱とは、藤原氏が崇敬する 建御雷神(タケミカヅチ)をはじめとする神々。

やはり重なっていると、だれもが思ったのでしょう。

 

天日鷲と天日別が同神とは思えないのですが、それもまた今後のテーマに。

岩利大閑氏は 「神武天皇は事代主命の投影ではないのか」 と書いておられます。

それがほんとうなら、とってもややこしいことになりそうです。 

 

阿波町のすぐ東が、これまた重要な遺跡や神社が居並ぶ脇町。

どんどん想像(妄想) が膨らんでゆきます。 

見渡す限り、気持ちいい田園地帯。

 

高越山ウォッチャーのすえドン先輩が周辺を含めて詳しく紹介されています。

→阿波市伊勢の「伊勢神社」と「古賀茂神社」と「高越山」♪  http://sueyasumas.exblog.jp/16744060/

 

古賀茂神社・・・?

次々と現れる、足跡。

この鳥居の横の古い木の鳥居が、はるか 気延山 に向いているとは気付きませんでした。

「八倉比売神社」 との関係は・・・。

さらに日開谷川を越えて市場町に入ってすぐ、尾開おばり八坂には 「天皇神社」 だなんていう神社まで。

そういえば、タケミカヅチの父は 伊都之尾羽張(イツノオハバリ) というのですが、関係あるのかな。

いやはや、ほんとうにキリがないので、とりあえずここまで。

:伊勢神社

 

 

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