燃料の一部を「バイオコークス」に置き換え南部鉄器を製造する実証、近大など
近畿大学は、南部鉄器を製造する「及富」の工房において、南部鉄器の製造工程で燃料として使用される石炭コークスの一部を、同大学開発のバイオリサイクル燃料「バイオコークス」に置き換えて南部鉄器を製造する実証実験の実施を発表した。
バイオコークスは、リンゴの搾りかす、樹皮、稲わらなどのバイオマスを原料として製造する固形燃料で、2005年に近畿大学バイオコークス研究所所長の井田民男氏が開発に成功した。光合成を行う植物資源などを原料としているため、CO2排出量が実質ゼロカウントとなるカーボンニュートラルな次世代エネルギーとして期待されるという。
南部鉄器の製造工程では、鋳鉄をコシキ炉(小規模キュポラ)で溶かす燃料として石炭を高温で乾溜させたコークスを用いるが、南部鉄器業界においては環境への配慮、SDGs達成への貢献が課題であり、CO2排出削減に取り組むことが急務。しかし電気炉など設備の入れ替えにはコストがかかるなど、実現へのハードルは高いのが現状だという。
1848年創業の南部鉄器工房である及富は、環境に配慮しCO2を削減することでSDGs達成にも貢献しながら、岩手県の伝統的工芸品である南部鉄器を持続的に後世に残すことをめざして、バイオコークスのキュポラ溶解の経験があり岩手大学名誉教授で水沢鋳物工業協同組合技術アドバイザーでもある堀江皓(ほりえひろし)氏に監修・指導を依頼し、この課題に取り組んでいるとのことだ。
及富は近畿大学の技術協力のもと、南部鉄器の製造工程で鋳鉄の溶解に燃料として使用している石炭コークスの一部をバイオコークスに置き換える試験を検討している。同実証では、リンゴの絞りかすと樹皮を1:9の割合で原料としたバイオコークスを、コシキ炉に入れる燃料の10%に置き換えて使用し、溶かした鋳鉄で急須の蓋を鋳造する計画だとしている。
南部鉄器の製造工程でのバイオコークス使用により、CO2排出量の削減と硫黄の減少による不良低減効果のほか、鋳鉄の高強度化、薄肉軽量化も期待されるとのことだ。
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