淀川長治、落合信彦対談「映画は頭脳の共産主義です」「サンサーラ」1991年6月号
落合[信彦] 先生はしかし、僕に『映画之友』を
通じて大切なことを教えてくれましたね。先生はいままでずっと、映画をけなしたことがなかったんですよ。
淀川[長治] そう、けなしたことないの。好きなことは好きなの。
落合 それは先生の人間の見方と一致すると思うんですよ。どんな人間でも必ずいいととろがあると、そういう発想で僕も生きてきました。だから先生が好きだ
ったんです。
淀川 僕はどうして映画が好きかいうた
らね、みんなと一緒に見るでしょう。あんたみたいに偉い人も見るし、田舎のおっさんも見るし、八百屋のおっさんも見るし。その人たちがみんな一緒に見ると
いうことが好きなの。一人だけ威張った
ものを読んで威張ってるの、嫌いなの。
映画は、だから一種の頭脳の共産主義なのよね。アメリカ人も、フラン ス人も
イタリア人も、一緒に見るでしょう。それが好き。で、落合さんも映画に負けないくらい好きなのね。だからもっともっと、これからもつきあってね。
落合 こちらこそ。
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