2022年12月16日金曜日

御成敗式目51ヵ条

御成敗式目

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ずいけん
⁦‪@hamakkoryusan‬⁩
御成敗式目の面白ポイント、「人の土地を奪うなよ[38]」「私闘はやめろ[50]」「朝廷や寺社に難癖つけるなよ[37]」「相続はよく考えて決めろ[20]」「上もちゃんと審議するから裁判結果には従え[31]」という荘園経営実務&御家人統率上の規定が並ぶ中で燦然と輝く「人妻に手を出すな[34]」
#鎌倉殿の13人
 
2022/12/18 21:20
 
 

https://twitter.com/hamakkoryusan/status/1604451464331419648?s=61&t=EVEkTsvCqn-hmEqFpddIOQ


『北条泰時のその後』歴史を変えた御成敗式目の凄さ!!#鎌倉殿の13人









林修の今知りたいでしょ!
#TVer
https://tver.jp/lp/live/simul/ley69txa04










御成敗式目五十一ヵ条

条項 原文 〈 〉内 読み下し文 
条文 読み下し文・現代語訳(難解箇所) 〈注〉筆者注釈・説明事項    
(=)意味を付す 漢字旧字体は新字体で記す  

承久の乱-800年前の真実!-明恵上人の教えと「御成敗式目」-齊藤-紀夫-ebook/

http://www.tamagawa.ac.jp/SISETU/kyouken/kamakura/goseibaishikimoku/index.html


鎌倉時代にできた法律といえば「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)です。それまでの日本には主に貴族が用いていた「律令」(りつりょう)がありましたが、武士の生活にあった法律はありませんでした。御成敗式目は武士と庶民に影響(えいきょう)を与えた法律であり、それ以後の室町幕府や戦国時代の家法(かほう)にも強い影響を与えました。※「ごせいばいしきもく」または(貞永式目=じょうえいしきもく)


御成敗式目は51箇条あります。ここでは分かりやすいように、現代の言葉に直してあります。法律は世の中を映しだす鏡です。みなさんもこの式目から当時の社会のありさまを読み取ってください。



注意 分かりやすくするために、原文とは違った文言や言い回しを用いている部分があります。

神社・寺のこと(1条・2条) 
幕府と朝廷・本所との関係(3条~6条)  
裁判上の2大原則(7条・8条) 

刑法(9条~17条) 家族法(18条~27条) 
訴訟法(28条~31条・35条)

追加刑法(32条~34条) 
朝廷領地と名主・地頭の関係(36条~38条)  
官位の手続き(39条・40条)

奴卑及び逃亡農民について(41条・42条) 
領地の保障について(43条・44条)  
裁判中の被告扱いについて(45条)

所領の扱いについて(46条~58条) 
裁判の簡略化について(49条) 
追加刑法(50条・51条)



第一条
 可修理神社専祭祀事 〈神社を修理し、祭りを大切にすべきこと〉
  右、神は人の敬ひによつて威を増し、人は神の徳によつて運を添ふ。然れば則ち恒例の祭祀は陵夷(=次第に衰退すること)を致さず、如在の礼奠(=神前に捧げられる供物)怠慢せしむるなかれ。これによつて関東御分の国々ならびに庄園に於ては、地頭・神主ら各々その趣を存じ、清誠を致す(よく理解)べきなり。兼てまた有封の社(=社領する有する社)に至つては、代々の符(=太政官符)に任せて、小破の時は且(=部分的な)修理を加へ、もし大破に及ばば子細を言上し、その左右に随ひてその沙汰(=幕府の指示)あるべし。 


第1条:「神社を修理して祭りを大切にすること」
 神は敬うことによって霊験(れいげん)があらたかになる。神社を修理してお祭りを盛んにすることはとても大切なことである。そうすることによって人々が幸せになるからである。また、供物(くもつ)は絶やさず、昔からの祭りや慣習をおろそかにしてはならない。関東御分国(かんとうごぶんこく)にある国衙領(こくがりょう)や荘園(しょうえん)の地頭と神主はこのことをよく理解しなければならない。神社を修理する際に領地を持つ神社は小さな修理は自分たちで行い、手に負えない大きなものは幕府に報告をすること。内容を調べた上で良い方法をとる。
※(れいげん=神仏にいのってあらわれる不思議なしるし「御利益(ごりやく)」) 
※(くもつ=そなえもの) 
※(かんとうごぶんこく=将軍の知行国=ちぎょうこく=支配する国) 
※(こくがりょう=朝廷に税を納める領地だが、関東御分国のばあいは将軍にも税をおさめる) 
※(しょうえん=有力貴族や大寺社の領地だが、鎌倉時代には名目上のものが多かった)  
※(ぜんしょ=うまく、あとしまつすること)

第二条
 可修造寺塔勤行仏事等事 〈寺や塔を修理して、僧侶の勤めを行うこと〉
  右、寺社異なると雖も崇敬これ同じ。よつて修造の功、恒例の勤め、宜しく先条に准ずべし。後勘(=後日の咎め)を招くことなかるべし。但し恣に寺用を貪り(=勝手に私用する)、その役を勤めざるの輩に於ては、早く彼の職を改易(=罷免)せしむべし。 



第2条:「寺や塔を修理して、僧侶(そうりょ)としてのつとめを行うこと」
 僧侶は寺や塔の管理を正しく行い、日々のおつとめに励(はげ)むこと。寺も神社も人々が敬うべきものであり、建物の修理とおつとめをおろそかにせずに、後のち非難(ひなん)されるようなことがあってはならない。また、寺のものを勝手に使ったり、おつとめをはたさない僧侶は直ちに寺から追放すること。


第三条
 諸国守護人奉行事 〈諸国守護人職務遂行のこと〉 
 右、右大将家の御時定め置かるゝ所は、大番(=京都の警備)催促、謀叛、殺害人〈付、夜討、強盗、山賊、海賊〉等の事なり。しかるに近年に至りて代官を郡郷に分ち補(=任命)し、公事(=年貢以外の雑税や賦役)を庄保(=荘園と国衙領)に宛て課(=課税)せ、国司に非ずして国務(=国の支配権)を妨げ、地頭に非ずして地利を貪る(=国司や地頭の権限を奪っている)。所行の企て甚だ以て無道なり。(後略) 


第3条:「守護の仕事について」
 頼朝公が決められて以来守護の仕事は、大番催促(おおばんさいそく)と、謀反人(むほんにん)と、殺人犯の取りしまりである。さらに、夜討ち(ようち)、強盗、山賊、海賊の取り締(し)まりもある。守護の中には代官を村々に送り勝手に村人を思うがままに使ったり税を集める者もいる。また国司でもないのに地方を支配し、地頭でもないのに税をとったりする者がいる。それらは全て違法の行いであり禁止する。

 また、代々の御家人といえども所領を持たない者は、勝手に大番役につくことはできない。荘官(しょうかん)の中には御家人といつわって、国司や領家(りょうけ)の命令に従わない者がいる。このような者には望んでも諸役(しょやく)を任せてはならない。頼朝公が決めたときのように守護の仕事は大番役(おおばんやく)を決めることと、謀反人や殺人事件の調査や犯罪者の逮捕であり、それ以外のことをしてはならない。この取り決めにそむく守護が国司や領家に訴えられたり、あるいは地頭や庶民に対してその非法が明らかになり次第辞めさせて適切な者を守護に任命する。また、守護の代官は一人しか決めてはならない。

※大番催促=朝廷を警護することを御家人に命ずること ※謀反人=朝廷や幕府にそむくもの ※代官=ここでは守護の代理の役人 ※家督=家の長が管理していた財産や、地位  荘官=領家や本家の命を受けて荘園を管理するという役だが実際の持ち主 ※領家=荘園の名目上の持ち主・更にその上に「本家」がある」どちらも名目上の持ち主 ※しょやく=とは警察の仕事、地頭のまとめ役など

第四条
 同守護人不申事由、沒收罪科跡事 〈守護が勝手に罪人から所領を没収することの禁止〉
  右、重犯の輩出来の時は、須く子細を申し、その左右(=指示)に随ふべきのところ、実否を決せず、軽重を糺さず、恣に罪科の跡と称して私に没収せしむるの条、理不尽の沙汰甚だ自由の(=いわれのない)奸謀(=奸計)なり。早くその旨を注進し、宜しく裁断を蒙らしむべし。なお 以て違犯する者は罪科に処せらるべし。 次に、犯科人(=罪人)の田畠・在家ならびに妻子・資財の事。重科の輩に於ては守護所(守護の役所)に召し(=逮捕)渡すと雖も、田宅・妻子・雑具に至つては付け渡すに及ばず。兼てまた同類(=共犯者)の事、たとへ白状(=自白書)に載すると雖も、隠匿する財物(=盗品)無くば更に沙汰の限りに非ず。 



第4条:「守護が勝手に罪人から所領(しょりょう)を没収(ぼっしゅう)することの禁止」
 重い犯罪はていねいに取り調べた上でその結果を幕府に報告し、幕府の指示に従わなくてはならない。これを怠り守護が勝手に罪人から没収した財産を自分のものにすることは許されず、従わない者は解任(かいにん=やめさせる)する。また、重罪人であってもその妻子の住む屋敷や家具を没収してはならない。共犯者の場合、没収すべき財産が無ければ財産に関して不問とする。
※重い犯罪者=謀反人(むほんにん=天皇や将軍に敵対した者)や殺人犯など  ※所領=領地のこと ※没収=とりあげること 
※鎌倉時代の刑罰のうち武士には「死刑」「流刑」「追放刑」「禁固刑」「経済刑」「停止刑」、庶民には「指切り」「火印捺」「片鬢剃」などがありました。この条文では犯罪者に対する「経済刑」としての財産没収を守護が私的に運用することを禁止しています。

第五条
 諸国地頭令抑留年貢所当事 〈集めた年貢を本所に納めない地頭の処分について〉
  右、年貢を抑留(=抑え留める)するの由、本所(=荘園の領主)の訴訟有らば、即ち結解(=精算)を遂げ、勘定(=本所の監査)を請ふべし。犯用(=盗用)の条もし遁るゝところ無き者は、員数に任せて(=数量どおり)これを弁償すべし。但し、少分たるに於ては早速沙汰を致すべし。過分に至る者は三ヵ年中に弁済すべきなり。なおこの旨に背き難渋せしむる(=速やかに履行しない)者は、所職(=地頭職)を解かれる。 

第5条:「集めた年貢を本所(ほんじょ)に納めない地頭の処分について」
 年貢を本所に渡さない地頭は、本所の要求があればすぐそれに従うこと。不足分はすぐに補うこと。不足分が多く返しきれない場合は3年のうちに本所に返すこと。これに従わない場合は地頭を解任する。
※本所=荘園の持ち主(名目上が多かった) ※解任=やめさせること


第六条
 国司領家成敗不及関東御口入事 〈国司や領家の裁判には幕府が介入しないこと〉 
 右、国衙・庄園・神社・仏寺、本所の進止(=支配)なり。沙汰(=ここでは訴訟)し来るに於ては、今更御口入(=干渉)に及ばず。もし申す旨(=幕府に提訴)ありと雖も敢て敘用しない(=取り上げない)。(後略) 
〈*注〉御成敗式目制定の対象は、御家人であることを示す条項(御家人以外は、幕府は原則関与しない) 


第6条:「国司や領家の裁判には幕府が介入(かいにゅう)をしないこと」
 国衙や荘園の本所あるいは神社や寺が起こす裁判に幕府は介入しない。本所の推薦状(すいせんじょう)がなければ荘園や寺社の訴えは幕府ではとりあげない。
※介入=口出し ※国衙=朝廷の支配地
※御成敗式目が幕府御家人に対して作られたものであることを表している条文です。

第七条
 右大將家以後代々將軍並二位殿御時所充給所領等、依本主訴訟被改補否事 〈頼朝公や政子様から与えられた所領の扱いについて〉 
 右、或は勲功の賞に募り、或は宮仕の労(=幕府への日常的奉公)によつて拝領の事、由緖(=正当性の裏付け)無きに非ず。しかるに先祖の本領(=旧領地)と称し御裁許(=勝訴)を蒙るに於ては、一人たとえ喜悦の眉を開くと雖も、傍輩(=御家人)定めて安堵の思ひを成し難きか。濫訴の輩停止せらるべし(=従ってこのような訴訟は取り上げない)。但し、当給人(=頼朝以後の新給人すなわち御家人)罪科あるの時、本主(=旧知行者)その次を守りて(=その機会をとらえて)、訴訟を企つる事は禁制することあたはざるか(=訴えることは認める)。(後略) 

第7条:「頼朝公や政子様(まさこ)から与えられた所領(しょりょう)の扱いについて」
 頼朝公をはじめ源家三代の将軍のとき、および二位殿(にいどの=北条政子)の時に御家人に与えられた領地は、本所などの訴えがあっても権利を奪われることはない。
 所領は戦の勲功(くんこう)や役人としての働きによって御家人に拝領(はいりょう)されたものであり、きちんとした理由があるものである。にもかかわらず、領主が御家人に配せられた領地を指して「先祖の土地」と言い訴えることは、御家人にとってははなはだ不満なことである。したがってこのような訴訟は取りあげない。ただし、その御家人が罪を犯した場合には領主が訴えることは認める。しかし、判決が出た後に再び訴訟することは禁止する。以前の判決を無視することは許されず、そのような場合は不実であることを書類に記録する。 
※政子=北条政子のこと ※所領=領地のこと ※訴訟=裁判すること


第八条
 雖帶御下文不令知行、経年序所領事 〈御下文(=幕府の最も公的な権利証書)を持っていても、実際にその土地を支配していなかった時の事〉 右、当知行(=現在の実効支配)の後、二十年を過ぎたるは、大将家の例に任せ、理非を論ぜず(=権利の正当性のいかんにかかわらず)、改替するあたわず。而るに知行の由を申して(=偽って)御下文を掠め給はるの輩、彼の状(=御下文)を帯びると雖も敘用(=採用)するに及ばず。
〈*注〉本条は五十一ヵ条中、最も有名な法。いわゆる「二十ヵ年法」として、後世の武家法、公家・本所法へも波及し、中世の土地所有権のあり方に多大な影響を及ぼした。 

第8条:「御下文(みくだしぶみ)を持っていても実際にその土地を支配していなかった時のこと」
 頼朝公が取り決めたように御家人が20年間支配した土地は、元の領主(※貴族や寺社など)に返す必要はない。しかし、実際には支配していないのに、支配していたと偽(いつわ)った者は証明書を持っていても、その取り決めは適用されない。
※御下文=将軍の発行した領地を保証する証明書  ※つまり、御下文がなくても20年間実効支配していればその土地は御家人のものということになります。


第九条
 謀叛人事 〈謀叛を起こした者の扱い〉 
 右、式目の趣(=具体的な内容)、兼日(=あらかじめ)に定め難きか。或いは先例に任せ、或いは時議(=その具体的な状況)によつてこれを行わるべし。 

第9条:「謀反(むほん)をおこした者のあつかい」
 謀反の刑罰を細かく決めておくのは難しいので、くわしく調べて、過去の例を参考にしながら裁判を行う。
※謀反=天皇や将軍に逆らって戦をすること。

第十条
 殺害刃傷罪科事 付、父子咎相互被懸否事 〈殺害や刃傷などの罪科のこと付たり、父子の咎、相互に懸けらるゝや否やの事〉 
 右、或は当座(=その場の)の諍論により、或は遊宴の酔狂によつて、不慮の外に(=事の成り行きで)もし殺害を犯すはその身を死罪に行はれ、ならびに(=もしくは)流刑(=島流しや辺地に追放)に処せられ、所帯(=土地・財産)没収せらるゝと雖も、その父、その子相交わらざるは(=共謀性が認められなければ)、互いにこれを懸くべからず(=無罪とする)。 次に、刃傷の科(=傷害罪)の事も同じくこれに准ずべし。 次に、或は子、或は孫、父祖の敵を殺害するに於ては、父祖たとえ相知らずと雖も、その罪に処せらるべし。父祖の憤りを散ぜんがため、忽ち宿意(=遺恨)を遂ぐるの故なり。 次に、もし人の所職を奪はんと欲し、もし人の財宝を取らんとなし、殺害を企つと雖も、その父知らざるの由、在状(=そうであること)分明ならば縁座(=連座)に処すべからず。 
〈*注〉『式目』には、本条の流刑、十二・十三条に流罪、十五・二十八・三十四条に遠流、三十四条に配流の規定があるが、幕府法上、遠・中・近流という明確な区別があったのかは定かではない。 


第10条:「殺害や刃傷(にんじょう)などの罪科のこと」
 言い争いや酔った勢いでの喧嘩(けんか)であっても相手を殺してしまったら殺人罪であり、犯罪者は死刑か流罪とし財産を没収する。ただし、罪を犯した当人以外の父子が無関係であるならば、その者たちは無罪であり、これは傷害罪(しょうがいざい)についても同様である。
 ただし、子や孫、あるいは先祖の仇(かたき)と称(しょう)して人を殺害した場合は、犯人の父や祖父がたとえそのことを知らなくても同罪とする。結果として父祖の憤りをなだめるために宿意(しゅくい)を遂げることになるからである。
 なお、子が地位や財産を奪うために殺人を犯した場合は、父が無関係の場合は無罪とする。
※刃傷=刃物で相手を傷つけること。 ※流罪=遠くに追放(島流しや辺地に送ること) ※宿意=この場合、以前から抱いているうらみ ※個人の犯罪は個人を罰するが、仇については同族を罰することによって無用の争いを制しようとする姿勢が伺える。これは当時の戦が敵味方に分かれても、戦後に許されて将軍の御家人として同等に扱われるようなことがごく普通にあったからである。

第十一条
 依夫罪過、妻女所領被沒收否事 〈夫の罪によって妻の所領が没収されるか否かの判断について〉 
 右、謀叛・殺害ならびに山賊・海賊・夜討・強盗等の重科に於ては、夫の咎を懸くべきなり(=妻の領地は没収される)。但し、当座の口論により、もし刃傷・殺害に及ばばこれを懸くべからず(=妻の領地は没収されない)。 

第11条:「夫の罪によって妻の財産が没収されるかどうかの判断について」
 謀反・殺害ならびに山賊、海賊、夜討ち、強盗などの重罪の場合は夫の罪であっても妻の領地は没収される。しかし、夫が口論によって偶然(ぐうぜん)に相手を傷つけたり、殺害してしまったような場合は妻の領地は没収されない。

第十二条
 悪口咎事 〈悪口(=人をあしざまにののしること)の罪について〉
  右、闘殺(=単純な喧嘩による殺人)の基は悪口より起る。その重きは流罪に処せされ、その軽きは召し籠めらる(=身柄を預けられる)べきなり。問注(=訴訟)の時、悪口を吐けば、則ち論所(=訴訟の対象領地)を敵人に付けらるべし。また論所の事、その理無き者は、他の所領を没収せらるべし。もし所帯無き者は、流罪に処せられるべきなり。 
〈*注〉幕府は訴状がない限り、宗派間の論争には介入しない。訴えがあり、同時に治安問題になりかねない場合は、取り上げざるを得ない。本条が適用された有名な例は、日蓮の佐渡流罪である。日蓮は法華経以外によるものを異端とし、激しく罵った結果、浄土門徒側から訴えが出された。加え日蓮が武器を蓄えていると公言したため、幕府は行動を起こし、武器没収の上、日蓮を拘留した。いわば騒乱予備罪の罪であった。結果、佐渡へ流罪となった。 

第12条:「悪口(あっこう)の罪について」
 争いの元である悪口はこれを禁止する。重大な悪口は流罪とし、軽い場合でも牢に入れる。また、裁判中に相手の悪口をいった者は直ちにその者の負けとする。また、裁判の理由が無いのに訴えた場合はその者の領地を没収し領地がない場合は流罪とする。
※悪口=人をあしざまにののしること。


第十三条
 殴人咎事 〈他人に暴力をふるうことの罪について〉 
 右、打擲せらるゝの輩は、その恥を雪がんため定めて害心(=相手を殺害しようとする心)を露すか。人を殴つの罪、甚だ以て軽からず。よつて武士に於ては所領を没収せらるべし。所帯無き者は流罪に処すべし。家来に至つては、その身を召し禁ぜしむべし。 
〈*注〉幕府法では、侍とそれ以下の身分的差別は明確に区別されている。 

第13条:「他人に暴力をふるうことの罪について」
 人に暴力をふるうことはうらみを買うことであるからその罪は重い。御家人が相手に暴力をふるった場合は領地を没収する。領地がない場合は流罪(るざい)とする。御家人以外の場合は牢(ろう)に入れる。

第十四条
 代官罪過懸主人否事 〈代官(=守護代、地頭代)の罪が主人に及ぶかどうかの判断について〉 
 右、代官の輩、殺害以下の重科あるの時、件の主人その身を召し進め(=差し出せ)ば、主人に科を懸くべからず。但し代官を扶くるために、咎無きの由を主人陳じ申すのところ、実犯露顕せば(=代官の犯罪事実が明らかとなれば)、主人その罪遁れ難し。よつて所領を没収せらるべし。彼の代官に至つては逮捕・召禁(=牢に入れる)ぜらるべきなり。(後略) 


第14条:「代官の罪が主人におよぶかどうかの判断について」

 代官が罪を犯した場合、任命した主人はそのことを幕府に報告すれば主人は無罪とする。ただし、主人が代官をかばって報告を怠った場合は主人の領地は没収し代官は牢に入れる。代官が年貢を横取りしたり、あるいは先例や法律を破った場合にも主人を同罪とする。代官もしくは本所による訴訟が行われる時、鎌倉もしくは六波羅探題(ろくはらたんだい)より呼び出しがあったにもかかわらず応じなかった者は主人の領地を没収する。ただし、犯した罪の重さによって軽重がある。

※六波羅探題=京都に置かれた幕府の役所。尾張(愛知県)以西の裁判も行っていた。

第15条:「偽造文書(ぎぞうぶんしょ)の罪について」
 偽(いつわり)の書類を作った者は所領を没収する。領地を持たない者は流罪とする。庶民の場合は顔に焼き印を押す。頼まれて偽造文書を作った者も同罪とする。また、裁判中に嘘(うそ)をついた者は神社や寺の修理を命じ、それができない者は追放とする。

第十五条
 謀書罪科事 〈偽造文書の罪について〉 
 右、侍に於ては所領を没収せらるべし。もし所帯なき者は遠流(=遠くへ追放)に処せらるべきなり。凡下(=武士以外)の輩は火印(=焼き印)をその面に捺さるべきなり。執筆者もまたともに同罪たり。 次に、論人(=被告)帯びるところの証文を以て偽造文書たるの由、多く以てこれを称す。披見のところ、もし謀書たらば、最も先条(=「次に」以前の本条規定)に任せ、その科あるべし。また文書の紕繆(=誤り)無くば、謀略の輩(=偽って相手の文書偽造を言い立てた者)に仰せて神社・仏寺の修理に付せらるべし。但し無力の輩(=財力のない者)に至つては、その身を追放せらるべきなり。 

第十六条
 承久兵乱時没収地事 〈承久の乱の時に没収した領地のこと〉 
 右、京方(=朝廷側に味方した)の合戦を致すの由、聞しめし及ぶによつて、所帯を没収せられし輩、その過無きの旨、証拠分明ならば、その替を当給人(現在の所有者)に充て給い、本主(=本来の持ち主)に返し給ふべきなり。これ則ち、当給人に於ては勲功の奉公あるの故なり。 次に、関東御恩の輩の中、京方の合戦に交はりし事、罪科殊に重し。よってすなわちその身を誅せられ、所帯を没収せられ畢んぬ(後略)。 次に、同じく没収の地を以て、本領主(=本来の領主)と称し訴へ申す事、当知行の人(=本領主)過あるによりてこれを没収し、勲功の輩に充て給ひ畢んぬ。彼の時(=承久の乱後)の知行の者は非分(=分不相応)の領主なり。相伝の道理に任せてこれを返給すべきの由、訴へ申すの類多くその聞こえあり。既に彼の時の知行につきて、あまねく没収せられ畢んぬ。何ぞ当時(=現在)の領主を閣きて、往代(=昔)の由緖を尋ぬべけんや。自今(=これから)以後、このようなむやみやたらな訴えは受け入れられない。
〈*注〉御家人であったにもかかわらず、幕府に謀反した者の罪は重く、死罪の上、財産は没収された。 

第16条:「承久の乱の時に没収した領地のこと」(じょうきゅうのらん)

 承久の乱後に領地を没収された領主のうち、後に謀反人でなかったことが証明された者の領地は返還される。既に、返還する領地に入っていた新たな領主には替(か)わりの領地を与える。それらは合戦の時によく働き戦功があった者たちだからである。

 御家人であったにもかかわらず幕府に謀反した者の罪は重く、死罪の上、財産は没収する。ただし、今より以後、朝廷の味方になっていたことが分かった者については、特別に許し財産の五分の一を没収する。御家人以外の下司(げじ)や荘官の場合は今後財産を没収することはしない。なお、本領主と称して財産を没収されたときの領主を違法な領主とし、真の領主に没収地を返して欲しいなどの訴えが多いが、当時の領主をさしおいて今になってから調べることは筋ちがいなので、このような訴えは受け入れない。

※下司・荘官=荘園の実質上の領主(が、多い)

第十七条
 同時合戦罪過父子各別事 〈父子が立場を変えて同じ合戦に参加した時の処分は別々のこと〉 
 右、父は京方に交ると雖も、その子関東に候じ、子は京方に交ると雖も、その父関東に候ずるの輩は、賞罰すでに(父と子で)異なる。また西国の武士等は、父たりと雖も子たりと雖も、一人京方参ぜし者は、父子共に罰せられる。同道せずと雖も、同心せしむるによってなり。但し、父子が遠く離れていて互いに連絡がつかなかったような場合は、朝廷側についた者だけを罰する。 


第17条:「父子が立場を変えて同じ合戦に参加したときの処分について」
 御家人の場合、父子が朝廷側、幕府側と分かれて戦ったとき、幕府側にいて戦功のあった者が父であれ子であれ恩賞(おんしょう)が与えられる。反対に朝廷側であったときには父であれ子であれ罰せられる。なお、西国の武士の場合、父子いずれかが朝廷側であった場合は互いに同意した者として父子共に罰せられる。しかし、父子が遠く離れていて互いに連絡がつかなかったような場合は、朝廷側についた者だけを罰する。

第十八条
 讓与所領於女子後、依有不和儀、其親悔還否事 〈女子に相続した後の所領を返還させ得ること〉 
 後の争いを恐れて女子に相続することをためらったり、女子が親に対する不道徳な行いを抑えるため、女子に相続した後であっても、所領を取り返すことができるとする。このことが保証されていることによって、相続した女子が親孝行をし、親は安心して女子を養育し土地を与えることができる。 
〈*注〉悔い返しについては、第二十六条も参照。 


第18条:「女子に相続した後の所領を返還(へんかん)させる場合のことについて」
 男女の違いはあっても親の恩は同じである。これまで女子(娘)には返還の義務はなかったが、今後は相続したあとであっても所領を取り返すことが出来る。これは、後の争いを恐れて女子に相続することをためらったり、女子が親に対して不道徳な行いをすることをおさえるためである。このことが保障されていることによって、相続した女子が親に孝行をし、親は安心して女子を養育(よういく)し、土地を与えることができる。
※これまで公家法(貴族の法律)では女子への悔還(くいかえし)はなかったが、武家法では男女同じとした。(26条を参照)

第十九条
 不論親疎被眷養輩、違背本主子孫事 〈財産を譲られた血縁の無い者が、主人死亡後態度を変え、主人の子供等と財産を争った場合は、その財産を取り上げ、主人の子供等に全てを与えること〉 
 忠実を装い財産を与えられた家来が、主人死亡後その恩を忘れ、主人の子供等と財産を争った場合は、その財産を取り上げ、主人の子供等に全てを与えることとする。 


第19条:「忠実を装い財産を与えられた家来が、主人死亡の後に態度を変えた場合について」
 主人を敬いよく働いたために財産やその譲り状を与えられた家来が、主人死亡の後にその恩を忘れて財産を奪おうなどと子供等と争った場合、その財産を取りあげて主人の子供等に全てを与えることとする。

第二十条
 得讓状後、其子先父母令死去跡事 〈讓状を得た後、その子父母に先んじ死去した場合〉
  財産の譲り状を与えた子供が亡くなった場合、御家人は次の相続人を自由に決めてよい。 
〈*注〉代襲相続は認めず。子供が生きている場合も同様、相続権を変更できる。 


第20条:「譲り状を与えた子供が死んだ場合のこと」
 財産の譲り状を与えた子供が生きていても相続権を変える場合もあるのだから、子供が死んだ場合、御家人は次の相続人を自由に決めてよい。

第21条:「妻や妾(めかけ)に相続した土地の離別後のあつかいについて」
 離別した妻や妾に大きな落ち度があった場合。前夫から譲り受けた所領を持つことは、契約書があっても知行することはできない。前夫が新しい妻や妾のことだけを大切にし、なんの落ち度もない前妻や前妾に与えた土地を取り返すことはできない。
※妾=(めかけ・しょう=正式な奥さん以外の女性) ※「落ち度」とは密通など式目に違反したり、道徳的に反することをさす。

第二十一条
 妻妾得夫譲、被離別後、領知彼所領否事 〈妻や妾に相続した土地の離別後の扱いについて〉 
 離別した妻や妾に大きな落ち度(=『式目』に違反したり、道徳的に反すること)があった場合、契約書があっても、土地を相続できない。前夫が新しい妻や妾だけを大切にした場合は、何の落ち度もない前妻や前妾に与えた土地を取り返すことはできない。 

第二十二条
 父母所領配分時、雖非義絶、不讓与成人子息事 〈離縁した先妻の子(長兄)に与える財産について〉 
 右、その親・成人の子を以て吹挙(=幕府に推挙)せしむるの間、勤厚の思ひを励まし労功(=功労)を積むのところ、或は継母の讒言につき、或は庶子の鍾愛により、その子(=成人の子)義絶せられずと雖も、忽ち彼の処分(=財産分与)に漏る。侘傺(=経済的困窮)の条、非拠(=非道)の至りなり。よつて今立つる所の嫡子(=ここでは相続人)の分を割き、五分一を以て無足(=知行する所領のない)の兄に充て給るべきなり(〈*注〉幕府の沙汰として)。但し少分たりと雖も、計らひ充つるに於ては、嫡庶を論ぜず(=嫡子庶子いずれの場合も)、宜しく証跡(=譲状の文面)によるべし。そもそも嫡子(=長男)たりと雖も、さしたる奉公(=幕府勤務)無く、また 不孝の輩に於ては、沙汰の限りに非ず(=その必要なし)。
〈*注〉鎌倉武士社会においては、親権が強く認められており、本条のように、幕府が御家人の相続に、公に関与することはなかった。本条と二十七条は、幕府が沙汰する例外規定。 


第22条:「離縁(りえん)した先妻の子供(長兄)に与える財産のことについて」
 家のためによく働いた子供(成長した)であるにも関わらず後妻やその子らに追い出されてしまった者には、相続の際に嫡子相続分の五分の一をその子に分け与えること。ただし、離縁前に多少なりともその子に財産が分けられていた場合はその分を差し引いても良い。しかし、その子が怠け者であったり不幸者のときはその必要はない。
※嫡子=ちゃくし=家の主な財産を継ぐ権利を持つ子供

第二十三条
 女人養子事 〈女人が養子を迎えること〉 
 夫婦に子供が無い場合、夫が死んだ後に養子を迎え、領地を相続させることは、右大将家の御時以来(=頼朝公の時から)現在に至るまで認められていることで何ら問題はない。 


第23条:「女人の養子のこと」
 夫婦に子供が無く、夫が死んでしまった後に養子をむかえ領地を相続させることは、頼朝公の時から認められていることであり何ら問題はない。

第二十四条
 譲得夫所領後家、令改嫁事 〈後家再婚後の所領について〉
  夫の死後、妻はその菩提を弔い(=死者の冥福を祈り供養する)、式目の定めの通りに働くこと。にもかかわらず、すぐ再婚するのは良くない行いである。この場合、亡夫より相続した領地を亡夫の子に与えなければならない。子が無い場合は、別の方法で対処する。 


第24条:「再婚後の後家の所領について」
 夫の死後、妻はその菩提(ぼだい)を弔(とむら)い、式目の定めのとおりに働かなくてはならない。にもかかわらず、死別後すぐに再婚するというのは良くない行いである。後家が再婚する時には亡き夫から遺産相続された領地を亡夫の子供に与えなければならない。子供がいないときには別の方法を考えて対処する。
※ここで言う所領とは亡夫の持ち分から相続された遺産のみを指し、もともと後家が権利を持っている所領については子供に分与する必要はない。

第二十五条
 関東御家人以月卿雲客為婿君、依譲所領、公事足減少事 〈御家人の婿となった公家は、武士としての働きをすること〉 
 公家といえども、御家人としての働きをすること。公家の実家の権威を利用して役割を怠るならば、相続を辞退させる。また、武家の娘が幕府内で働く場合、公家のしきたりを取り入れてはならない。背いた場合は、所領を治めることは許されない。 


第25条:「御家人の婿(むこ)となった公家は武士としての働きを行うこと」
 公家と言えども御家人としての働きを行うこと。父親が存命中の代行は許されていても、父親死後はその者が御家人として働かなくてはならない。それでもなお公家としての実家の権威(けんい)を利用して怠る場合は所領を相続することを辞退(じたい)させる。また武家の娘が幕府内で働くときに公家のしきたりを入れてはならず、そのような者は所領を治めることはできない。

第二十六条
 譲所領於子息、給安堵御下文後、悔還其領、譲与他子息事 〈相続した土地を別の子供に相続し直すこと〉 
 御家人が所領を子に相続し、将軍から御下文(=証明書)を受け取っていても、父母の気持ちによって他の子に相続を入れ替えることができる。 
〈*注〉土地の悔い返し。第十八条参照。 


第26条:「相続した土地を別の子供に相続し治すこと」
 御家人が所領を子供に相続し将軍から証明書をもらっていても、父母の気持ちによって他の子供に相続を替えることができる。
※このように一度与えた土地であっても、親の権限で取り返すことを悔い還し(くいかえし)という。

第二十七条
 未処分跡事 〈未処分の財産の分配〉
  御家人が相続を決める前に死亡した場合、残された財産は働きや能力に応じて、妻子に分配すること。 
〈*注〉第二十二条と並び、幕府が御家人の相続に公に関与する例外規定。 


第27条:「未処分の財産の分配」
 御家人が相続のことを決める前に死亡した場合は、残された財産を働きや能力に応じて妻子に財産を分配すること。

第二十八条
構虚言致讒訴事 〈偽りの訴えをしてはならない〉 
 言葉巧みに人をだますことの罪は、大変に重い。所領を望みの訴えを起こした者は、その者の領地を没収する。領地が無い場合は遠流(=遠くへ追放)とする。役職が欲しいためにをついた者は、その職に就くことはできない。 


第28条:「いつわりの訴えをしてはならないこと」
 言葉たくみに人をだますことの罪は大変に重い。所領を望んで嘘の訴えをおこした者はその者の領地を没収する。領地がない場合は遠流(おんる)とする。また役職が欲しいために嘘をついた者はその職に就(つ)くことはできない。
※(遠流=佐渡・隠岐・伊豆など遠くへ追放すること)

第二十九条
 閣本奉行人、付別人企訴訟事 〈本来の裁判官をさしおいて、別の裁判官に頼むことの禁止〉 
 同一の提訴を二重に提訴することは「一事両様の訴」と呼んで厳禁とされていた。裁判が長引き二十日以上かかった場合は、門注所(=幕府の裁判所)にて苦情を述べることができる。 


第29条:「本来の裁判官をさしおいて、別の裁判官に頼むことの禁止について」
 裁判を有利に進めるために担当の裁判官をさしおいて他の裁判官に頼むことが分かった場合は、調査の間しばらく裁判を休廷する。そのようなことがあってはならないからである。係の者はそのような二重の取り次ぎをしてはならない。また、裁判が長引き20日以上かかった場合は問注所(もんちゅうじょ)において苦情を述べることができる。
※問注所=幕府の裁判所

第三十条
 遂問註輩、不相待御成敗、執進権門書状事 〈門注所の判決を待たずに有力者の書状を提出し、 裁判を有利に進めることの禁止〉 
 有力者を知る者は得をし、知らない者は損をする不公平を禁止する。 


第30条:「問注所の判決を待たずに有力者の書状を提出し、裁判を有利に進めることの禁止」
 有力者を知るものは得をし、そうでないものは損をするという不公平な裁判は問注所そのものが信頼を失ってしまうので禁止する。それぞれの言い分は裁判中に述べること。





第三十一条
 依無道理不蒙御成敗輩、為奉行人偏頗由訴申事 〈裁判に負けた者が、判決に不服を訴えることの禁止および誤った判決の防止〉 
 裁判に負けたにもかかわらず、「偏頗(=偏った)判決」だと事実ではないことを持ち出し、裁判官に不服を訴えた場合は、領地の三分の一を没収する。その領地が無い場合は、追放とする。ただし、実際に偏った判決を行った裁判官は辞職させ、再び裁判官に任命してはならない。 
〈*注〉敗訴した者が裁判のやり直し(=越訴)することを抑制するとともに、裁判官にも公平な判決を出す努力を求めている。 


第31条:「裁判に負けた者が判決に不服を訴えることの禁止と誤った判決の防止」
裁判に負けたにもかかわらず「偏(かたよ)った判決」だと、事実ではないことを持ち出し裁判官に不服を訴えた場合は、領地の三分の一を没収する。その領地がない場合は追放とする。ただし、実際に偏った判決を行った裁判官は辞めさせ、再び裁判官に任命してはならない。

※敗訴したものが裁判のやり直し(越訴=おっそ、という)することを抑制するとともに、裁判官に対して公正な判決を出す努力を求めています。現代でも同じように裁判官を裁く制度があるのと似ています。

第三十二条
 隱置盜賊悪党於所領内事 〈盗賊や悪党を領内にかくまうことの禁止〉 
 地頭は領内に盗賊がいることが分かったら、速やかに逮捕すること。かくまった場合は、盗賊と同罪とする。もしその疑いがあった場合は、鎌倉で取調べを行う。(後略) 


第32条:「盗賊や悪党(あくとう)を領内にかくまうことの禁止」
 地頭は領内に盗賊がいることが分かったらすみやかに逮捕(たいほ)すること。また地頭が賊徒(ぞくと)をかくまった場合は同罪とする。もしその疑いがあった場合は鎌倉で取り調べを行い、その期間中に地頭が国もとに帰ることを禁止する。また守護所の役人が入れないところ(地頭の支配外の場所)に賊徒がいたと分かった場合も家来を遣(つか)わしてすみやかに逮捕すること。これを行わない地頭はやめさせて代行の者をおく。

※悪党=幕府や荘園本所に反抗する者・敵だった者

第三十三条
 強窃二盜罪科事 付 放火人事 〈強盗と放火犯の罰について〉 
 右、既に断罪の先例有り。何ぞ猶余の新儀(=断罪の先例に背いてまでためらう)に及ばんや。 次に、放火人の事、盗賊に準拠し、宜しく禁遏(=拘禁)せしむべし。 


第33条:「強盗と放火犯の罰について」
 これまでの決まりどおりに強盗犯は断罪(だんざい)とする。放火犯も強盗犯と同じあつかいとし、これらの犯罪を無くすこと。※断罪=首をはねること ※実際には罪の軽重によって流罪・入牢もあった

第三十四条
 密懐他人妻罪科事 〈人妻と密懐(=密通)する罰のこと〉
  右、強姦・和姦を論ぜず人妻を懐抱(=抱き通じること)するの輩、所領半分を召され、出仕を罷めらるべし。所帯なき者は遠流に処すべきなり。女の所領同じくこれを召さるべし。所領なくばまた配流せらるべきなり。 次に、道路の辻に於て、女を捕ふる事(=拉致)、御家人に於ては、百箇日の間出仕を止むべし。郎従(=家来クラスの武士)以下に至つては、右大将家の御時の例に任せ、片方の鬢髮(=頭髪)を剃り除くべきなり。但し、法師(=坊主)の罪科に於ては、その時に当りて斟酌せらるべし。 
〈*注〉当時、街中で婦女子の誘拐が横行していたことが窺える。また末法の時代ということを口実に、僧侶の一部が堕落していたことは事実。なぜ彼らに対する規定が無いのかは不明。 


第34条:「人妻と密懐(びっかい)することの禁止」
 人妻と密通をした御家人は所領の半分を没収する。所領がない場合は遠流にする。相手方の人妻も同じく所領の半分を没収し、ない場合は遠流とする。また、道路上で女性を拉致(らち)することを禁止する。それを行った場合、御家人の場合は100日間の停職とし、郎従以下の一般武士は頼朝公からの先例にしたがい片側の髪をそる。僧侶の場合はその時々の状況に応じて罰を決める。
※密懐=密通(みっつう=他人の奥さんと秘密に恋人関係になること) ※拉致=むりやりさらってしまうこと。※郎従=家来クラスの武士 

第三十五条
 雖給度々召文不参上科事 〈度々召文を給ふと雖も、参上せざる科のこと〉
  呼び出しを三回無視した被告に対しては、原告だけで裁判を行う。原告が負けた場合は、争っている財産や領地を没収し、他の御家人に分け与える。下男、牛馬およびその他の動産は、その数を数え直した後に、神社やお寺の修理に寄付されるべし。
〈*注〉領地のことで不当に訴えることを抑えるために本条を設けた。 


第35条:「裁判所からの呼び出しに応じない場合のあつかいについて」
 呼び出しを三回無視した被告は、原告(げんこく)だけで裁判を行う。原告が負けた場合は争っている財産や領地は他の御家人に分け与える。牛馬や下男などはその数を数えた後に、神社やお寺の修理のための寄付をしなくてはならない。

※原告=裁判を訴える側の人。訴えられる人は被告(ひこく) ※領地のことで不当に訴えることを抑えるためにこのような条文が作られた。


第三十六条
 改旧境、致相論事 〈旧き境を改め、相論を致すこと〉 
 自分に有利な境界線を持ち出して、領地を拡げようとする者がいる。敗訴しても今の領地が減らないと思うからである。今後このような訴えがあった場合、現地に調査官を派遣し、厳密に調査して訴えが正当な場合は、奪おうとした領地と同じ面積の土地を訴えられた者に与える。 
〈*注〉前条同様、訴えの発生を抑える方策が窺える条項。 


第36条:「以前の境界線を持ち出して裁判することについて」
 自分に有利な境界線を持ち出して領地を広げようとするものがいる。敗訴しても今の領地が減らないと思うからである。今後はこのような訴えがあった場合、現地に調査官を派遣(はけん)し厳密(げんみつ)に調査して、訴えが不当な場合は奪おうとした領地と同じ面積の土地を訴えられた者に与える。

第三十七条
 関東御家人申京都、望補傍官所領上司事 〈朝廷など荘園領主の領地を奪うことの禁止〉 
 右、右大将家の御時一向に停止せられ畢んぬ。而して近年以降自由(=自分勝手)の望を企て、啻に禁制に背くのみに非ず、喧譁に覃ばしめんか。自今以後、濫望(=むやみやたらな訴え)を致すの輩に於て、所領一所を召(=没収)さる可き也。 


第37条:「朝廷の領地をうばうことの禁止」
 頼朝公の時に禁止されたにもかかわらず、いまだに上皇や法皇またはその女御の荘園を侵略(しんりゃく)する者がいる。今後もこのことを行う御家人はその所領の一部を没収する。

第三十八条
 惣地頭押妨所領内名主職事 〈惣地頭(=名主を総轄するために幕府が派遣した地頭)が荘園内の他の名主の領地を奪うことの禁止〉 
 禁止されているにもかかわらず、名主の土地を奪おうとする者がいる場合は、名主に別の証明書を発行する。 


第38条:「惣地頭(そうじとう)が荘園内の他の名主の領地を奪い取ることの禁止」
 惣地頭は「将軍から与えられた所領だから、全部が自分の勢力範囲(せいりょくはんい)」と言って、領家の証明書を持っている名主(みょうしゅ)の土地まで取ることはできない。それにもかかわらず名主の土地を奪おうとする者がいる場合には名主に別の証明書を発行する。しかし、名主が集めた税を地頭にあずけない場合はその名主をかえてしまうことができる。

※惣地頭=村や郷や庄という比較的広い単位で領地を所有する地頭のこと。いろいろな説があるが惣地頭は直接そこに住んで領地を支配するのではなく、その地域の徴税権(税を集める権利)を持つ書類上の地頭のようであった。したがって彼らの中には荘園内に点在する名田(みょうでん)など、開拓して独立した地主(名主)の土地まで奪うものがいた。そのためにこのような条文が加えられたと思われる。西国、特に九州地方にこのようなことが多かったようである。

第三十九条
 官爵所望輩、申請関東御一行事 〈官位、官職を望む場合の手続きについて〉 
 右、成功(=朝廷から金銭で官位を買ふ)を召さるゝの時、所望の人を注し申さるゝ者(=リストアップ)は、既にこれ公平なり。よつて沙汰の限りに非ず。但し、自ら昇進のため挙状(=幕府の推薦状)を申す(=申請する)事、貴賤を論ぜず一向これを停止すべし。また受領(=国司)・検非違使(=主として京中の警察権、刑事裁判権を有する)に申すの輩、理運(=幸運にも任命される)たるに於ては、御挙状に非ずと雖も、ただ御免(=幕府の許可)あるの由、仰せ下さるべきか。兼ねてまた新敘(=新たに位を与えられた者)の輩、巡年(=毎年)廻り来り、朝恩に浴する者は制限あらず。 
〈*注〉御家人が将軍の許可無しに、朝廷から官位をもらうことを禁止した条文。義経が頼朝の許可を得ずに、後白河法皇から官位を受けたことが本条を設けた背景にあるのか。 


第39条:「官位(かんい)・官職(かんしょく)を望む場合の手続きについて」
 勤勉に働きその功が認められた者は公平に吟味(ぎんみ)したのち幕府の推挙(すいきょ)によって朝廷から官位をもらうことができるが、自ら昇進を願って直接朝廷に申し出ることは誰であっても厳に禁止する。ただし受領(ずりょう)や検非違使(けびいし)については、幕府の推挙無しに職位をもらってもよい。また、年功により官位をもらう者も今までのとおり制限しない。

※官位=朝廷から出す位のこと   ※受領=朝廷から任命され任国に赴いた国の長官。主に守(かみ)の職位を持っている人だが、鎌倉時代になって次第に形だけの位になっていった。※検非違使=朝廷の役人、主に警察の仕事  ※推挙=すいせんすること  ※御家人が将軍の許可無しに朝廷から官位をもらうことを禁止した条文。

第四十条
 鎌倉中僧徒、恣諍官位事 〈鎌倉中の僧徒、恣に官位を諍ふ事〉 
 年少者や低位の僧侶が勝手に官位をもらい、年長者や高僧を跳び越すようなことは、寺の秩序や仏の教えに背くものである。勝手に官位をもらった僧侶は、職を停止・奪されるべし。(後略) 


第40条:「鎌倉在住の僧侶が官位を望むことの禁止について」
 年少者や低位の僧侶が勝手に官位をもらって年長者や高僧を飛び越すようなことは寺の秩序や仏の教えにそむくものである。勝手に官位をもらった僧侶はこれをやめさせる。これは幕府付きの僧侶者も同様である。

第四十一条
 奴婢雑人事 〈奴婢や雑人について〉 
 右、大将家御時の例に任せて、その沙汰無く(=奴婢に対する所有権を主張する訴訟を起こさず)十箇年を過ぎば、理非を論ぜず改沙汰に及ばず(=現状を変更しない)。 次に、奴婢所生(=生んだ)の男女(=子供)の事、法意(=古法)の如くば子細有り(=別の定めがあり、母の主人の所有)と雖も、同じき御時の例に任せ、男は父に付け(=父母の所属が異なる場合には、父の主人の所有)、女は母に付く(=母の主人の所有)べきなり。
〈*注〉奴婢は売買されるが、十年以上使役していない奴婢や雑人(身分の低い者)は、自由になれる。奴婢の子については、(売買されることなく)男は父親に、女子は母に属することとした。なお、本件は特に右大将に始まるものではなく、すでに奈良時代から行われていた。 


第41条:「奴婢(ぬひ)や雑人(ぞうにん)のことについて」
 頼朝公の時に定めたように、10年以上使役していない奴婢や雑人は自由とする。次に、奴婢の子については男子の場合は父に、女子は母に属すこととする。

※奴婢(ぬひ)=奴隷のように売買される人。  ※雑人(ぞうにん)=所従や下人と呼ばれる身分の低い人々。
※御成敗式目では新たな人身売買を禁止し、今いる奴婢も10年以上使われていない者は今後売買されず、奴婢の子供は奴婢として売買されることはないとした。

第四十二条
 百姓逃散時、称逃毀令損亡事 〈百姓逃散(=逃亡)の時、逃毀(=財産を破壊し奪取する行為)と称して、損亡(=損害を与へる)せしむることの禁止〉
  右、諸国の住民逃脱の時、その領主ら逃毀と称して、妻子を抑留し、資財を奪ひ取る。所行の企て甚だ仁政に背く。もし召し決(=連れ戻し事情を聞く)せられるゝのところ、年貢所当の未済有らば、その償ひを致す(=没収財産から不足分だけを支払わせる)べし。然らざれば、早く損物を糺し返さるべし。(後略)
〈*注〉幕府は基本的に領主の所領支配については、不干渉・無関心で一貫しているが、本条はその例外立法。 


第42条:「逃亡した農民の財産について」
 領内の農民が逃亡したからと言って、その妻子をつかまえ家財を奪ってはならない。未納の年貢があるときはその不足分のみを払わせること。また、残った家族がどこに住むかは彼らの自由にまかせること。



第四十三条
 称当知行掠給他人所領、貪取所出物事 〈当知行と称して他人の所領を掠め給わり、所出物(=年貢などの収益)を貪り取ること〉
  右、無実(=不実)を搆へ掠め領する事、式目(=道理)の推す所、罪科脱れ難し。よつて押領物に於ては、早く糺し返さしむべし。所領(=本人の所領)に至つては没収せらるべきなり。所領無き者は遠流に処せらるべし。 次に、当知行(=現在支配)の所領を以て、指せる次(=機会)無く安堵御下文を申し給(=申請)はるの事。もしその次を以て始めて私曲(=不正行為)を致すか。自今以後停止せらるべし。

〈*注〉「次に」以下は、承久の乱・義時の死去などにより、安堵(所有地の公認)申請が急増、同時に本条前半のごとき安堵の悪用が頻発したことから、本条が立法されたのであろう。したがって本条後半では、誤って発行された土地の保証書は認めず、速やかに破棄されるべきこととしている。 


第43条:「他人の領地をうばい年貢をうばうことの罪について」
 理由もなく他人の領地をうばい年貢や財産をとることは違法の行いであるから年貢はすぐに返納すること。また、これを行った者の所領は没収する。所領を持たないものは遠流とする。また間違って発行した土地の証明書は認めない。その証明書は速やかに破棄(はき)しなくてはならない。
※破棄=すてさること

第四十四条
 傍輩罪過未断以前、競望彼所帶事 〈傍輩(=他の御家人)の罪過未断以前、彼の所帯(=所領)を競望(=不当に申請)すること〉 
 幕府が罪刑を決定する前に、第三者が係争中の土地を所望し、当事者に不利な発言をして罪に陥れようとすることは許されない。裁判では、当事者以外の発言は取り上げない。 


第44条:「他人が裁判中の所領を望むことについて」
 係争中(けいそうちゅう)の土地を望み、第三者が当事者に不利な発言をして罪におとしいれようとすることは許されない。裁判では当事者以外の発言は取り上げない。武士は真面目に働いて領地を得られるものである。
※第三者=(当事者以外の者) ※係争中=(裁判中)

第四十五条
 罪過由披露時、不被糺決改替所職事 〈判決が出る前に被告を免職してはならない〉 
 弁明の機会を与えずに、被告を免職してはならない。実犯か無実かを問わず、不満を残すことになるからである。判決は被告に弁明の機会を与え、十分吟味の上、出さねばならない。 


第45条:「判決以前に被告を免職(めんしょく)することの禁止」
 判決が出る前に被告を免職してはならない。有罪無罪を問わず極めて不満を残すことになるからである。判決は十分に吟味して出さなけらばならない。
※免職=職をやめさせること

第四十六条
 所領得替時、前司新司沙汰事 〈所領得替(=入替)の時、前司(=前任)新司(=新任国司)の沙汰の事〉 
 交代当年の年貢は、新任国司の業務であるが、前任国司の私物や牛馬、家来を奪ってはならない。まして前任国司に恥をかかせた場合は、重い罰に処せられる。(後略) 

第46条:「国司交代時の新任国司と前任国司に関すること」
 徴税は新任国司の仕事であるが、その際に前任国司の私物や牛馬・家来を奪ったり、恥をかかせてはいけない。ただし前任国司が罪を犯し解任されたものであるときは別である。

第四十七条
 以不知行所領文書、寄附他人事 付、以名主職不相触本所、寄進権門事 〈不知行の所領の書類で以って他人に寄付することの禁止、名主が本所にことわりなく領地を寄進することの禁止〉 
 右、自今以後寄進の輩に於ては、その身を追却(=追放)せらるべきなり。請け取るの人に至つては、寺社の修理に付せらるべし。 次に、名主職を以て本所に知らしめず、権門(=有力者)に寄附するの事。自然(=時として)これ有り。然る如きの族は、名主職を召し(=解任)地頭に付(=引き渡す)せらるべし。地頭無きの所は本所に付せらるべし。 


第47条:「不知行の所領の書類でもって他人に寄進することの禁止・名主が本所にことわりなく領地を寄進(きしん)することの禁止」
 実効支配していない領地にもかかわらず、有力者に寄進し実効支配を行おうとした者は追放し、受け取った者には寺社の修理を命ずる。また、本所にことわりなく領地を貴族や寺社に寄進することを禁止する。これにそむいた名主は名主職を奪い地頭の配下に置く。地頭がいないところでは本所の配下とする。
※寄進=寄付すること。実際には名目だけの持ち主になってもらうこと。本所とは最初の寄進先をさす。※鎌倉幕府から派遣された地頭が入った領地の実際上の持ち主、つまり名主が寄進先の本所のことわりなく、さらにその上の実力者に領地を寄進させてしまうことを抑えた。これは地頭が不利にならないようにするための処置である。


第四十八条
 売買所領事 〈所領を売買することの禁止〉 
 右、相伝の私領を以て、要用(=必要)の時、沽却(=売却)せしむるは定法なり(=問題ない)。而るに或は勲功に募り、或は勤労によつて別の御恩(=恩領)に預るの輩、恣に売買せしむるの条、所行の旨その科無きに非ず。自今以後、慥かに停止せらるべきなり。もしまた制符(=本条)に背き沽却せしめば、売人と云い買人と云い、共に以て罪科に処すべし。 


第48条:「所領を売買することの禁止」
 御家人が先祖代々支配していた所領を売ることは問題がないが、恩賞として将軍から与えられた土地を売買することは禁止する。これを破った者は売った者も買った者もともに罰する。


第四十九条
 両方証文理非顕然時、擬遂対決事 〈両方の証文理非顕然の時、対決を遂げんと擬すること〉 
 右、かれこれの証文理非懸隔の時は、対決を遂げずといへども、直に成敗あるべき(=原告・被告の提出した書類を調査の結果、優劣が明白に判断できる時は、双方を呼び寄せることなく、判決を申し渡す)。 


第49条:「双方の調書によって判決が出る場合について」
 原告・被告の提出した書類を調べて明白に理非が判断できるときは、わざわざ双方を呼び寄せず直に判決を申し渡す。

第五十条
 狼藉時、不知子細出向其庭輩事 〈狼藉の時、子細を知らずその庭(=狼藉の現場)に出向く輩のこと〉
  右、同意与力(=一方に加勢)の科に於ては子細に及ばず(=刑罰は当然である)。その軽重に至つては、兼て式条に定め難し。もつとも時宜によるべきか。実否を聞かんがため、子細(=事情)を知らずその庭(=狼藉の現場)に出向く者は罪科に及ばず(=許される)。 

第50条:「暴力事件の現場にいくことについて」
 暴力事件が起きたとき、その委細(いさい)を調べに行くことは許されるが、一方に加勢(かせい)するために行くことは罰せられる。
※委細=事細かなようす ※加勢=味方すること

第五十一条
 帯問状御敎書、致狼藉事 〈問状(=原告を通じて被告に出す尋問状)の御教書を帯び、狼藉を致すこと〉 
 右、訴状に就きて問状を下さるゝは定例なり。しかるに問状を以て狼藉(=原告が悪用)を致す事、奸濫(=詐欺)の企て罪科遁れ難し。申す所顕然の僻事(=悪事)たらば、問状を給すること一切停止せらるべし。 
〈*注〉訴状が受理されただけで、原告が幕府の権威を利用し被告をおどかすことから、本条が書き加えられた。特に鎌倉前半期に集中して発生した。 当時の民事訴訟は、当事者主義が原則。したがって、尋問状の御教書(=訴状)が受理され、それに対する陳状の提出を論人(=被告)に命ずるために、関東・六波羅より発せられる御教書(=公的な伝達文書)を論人に交付する役割も、訴人自らに負わされていた。これは訴人に重い負担であると同時に、本条にみるごとく、違法行為の発生原因ともなった。なお、問状は訴人に対し、何らの権利をも付与した文書ではない。 

第51条:「問状を持って被告人をおどかすことについて」
 受理された訴状に基づき被告に出される尋問状(じんもんじょう)を原告が手に入れ、その威力によって被告をおどかすことは罪となる。今後は訴状を吟味し不当な訴えに対しては質問状の発行をしない。
※これまでは訴状が受理されただけで、原告が幕府の権威を使って被告をおどかす事が多々あったため、このような条文が書き加えられました。 ※尋問状=裁判で相手にたずね質問する内容を書いた書類。









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