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脚本・三谷幸喜氏(61)と主演・小栗旬(39)がタッグを組み、視聴者に驚きをもたらし続けたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は今月18日、最終回(第48回)を迎え、完結した。主人公・北条義時の最期を大河史に刻み込んだ衝撃的なラストシーンに、SNS上は放心&号泣。"稀代の悪女"と呼ばれる従来のイメージとは一線を画す"新しい北条政子像"を三谷氏から託され、見事に体現した女優の小池栄子(42)を直撃した。小池が語る撮影の舞台裏――。 【写真】最終回。時の流れを振り返る政子(小池栄子)と北条義時(小栗旬)。義時が数えた「13人」の中に… <※以下、ネタバレ有> 大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は大河出演8作目にして初主演に挑んだ。 最終回は「報いの時」。北条義時(小栗)は北条泰時(坂口健太郎)を鎌倉方の総大将に据え、朝廷との"最終決戦"「承久の乱」(1221年、承久3年)に勝利。後鳥羽上皇(尾上松也)を隠岐島へ流罪とした。 3年後、義時は不意に昏倒。京の知り合いが送ってきたという「薬草を煎じたもの」を、のえ(菊地凛子)に勧められて飲むが、体調は次第に悪化。医者(康すおん)によれば、毒を盛られたという。義時が問い詰めると、のえはあっさり白状。「私に頼まれ、毒を手に入れてくださったのは、あなたの無二の友、三浦平六殿ね」――。 政子(小池)が見舞いに訪れ、2人は時の流れを振り返る。 政子「たまに考えるの。この先の人はわたくしたちのことをどう思うのか。あなたは上皇様を島流しにした大悪人。わたくしは身内を追いやって、尼将軍に上り詰めた稀代の悪女」 義時「それにしても、血が流れすぎました。頼朝様が亡くなってから、何人が死んでいったか。梶原殿、全成殿、比企殿、仁田殿、頼家様、畠山重忠、稲毛殿、平賀殿、和田殿、仲章殿、実朝様、公暁殿、時元殿。これだけで13。そりゃ、顔も悪くなる」 義時は嘘をついていた2代鎌倉殿・源頼家(金子大地)の死の真相を政子に打ち明けた。 この日、ひどく体調が芳しくない義時は、毒消し薬を取ってほしいと頼む。「私にはまだやらねばらぬことがある。隠岐の上皇様の血を引く帝が、返り咲こうとしている。何とかしなくては」「まだ手を汚すつもりですか」「この世の怒りと呪いをすべて抱えて、私は地獄へ持っていく。太郎のためです。私の名が汚れる分だけ、北条泰時の名が輝く」「そんなことしなくても、太郎はきちんと新しい鎌倉をつくってくれるわ」「薬を」「わたくしたちは、長く生きすぎたのかもしれない」。政子は小さな瓶を逆さにし、薬を床にこぼす。「姉上…」「寂しい思いはさせません。わたくしもそう遠くないうちにそちらへ行きます」「私は、まだ死ねん!」。義時は最後の力を振り絞って立ち上がるが、バランスを崩して倒れ込む。 「まだ!」。義時は薬を舐めようと床を這いつくばるが、それも政子が袖で拭いてしまう。「太郎は賢い子。頼家様やあなたができなかったことを、あの子が成し遂げてくれます」。悶え苦しみ、息も絶え絶えの義時。「北条泰時を信じましょう。賢い八重さんの息子」「確かに…あれを見ていると…八重を…思い出すことが…」「でもね、もっと似ている人がいます。あなたよ」「姉上…あれを…太郎に…」。義時が指さし、部屋の隅にあるのは、源頼朝(大泉洋)の形見の小さな観音像(髻観音)――。 政子「(髻観音を手に、義時に一歩近寄り)必ず渡します」 義時「姉上…」 政子「ご苦労さまでした…小四郎」 政子はさらに近寄り、弟の顔に手をやった。義時は静かに息を引き取る。政子の嗚咽だけが聞こえる。 最終回の台本を最初に読んだ時の心境を「衝撃のあまり言葉が出ず、放心状態になってしまいました。ラストシーンに臨む時、自分がどういう感情になるのか、どういう芝居になるのか、全く予想がつきません。(チーフ演出の)吉田(照幸)監督に伝えたら『僕もです』とおっしゃっていました」と明かしていた小池。クランクアップから約1カ月後のインタビュー。心境を尋ねた。 「震えました。もちろん台詞は頭の中に入っていて、やるべきことも分かっていたんですけど、あのラストシーンはどの部分も確信を持って演じることができなかったような気がします。薬をこぼすところも、私としては意図的というよりは衝動的。狙ってこぼしたというよりは気づいたらこぼしていた、パニックになってしまったという感じでしたね。薬をこぼしながらも、初回から今までのシーンが走馬灯のように駆け巡って、どうして私たちはこんなふうになってしまったんだろうかとか、義時のことを救いたいのにとか、色々な思いが入り混じって、ぐちゃぐちゃな気持ちで演じていました」。一つ一つ思い返し、言葉をつないだ。 政子が袖で薬を拭くのは「自分でもゾッとしました。いたたまれなかったです。でも、視聴者の皆さんには、頼家の真実を知ったから単なる復讐心でそうしたとは受け取ってほしくない、という願いはあります。もちろん政子もショックでしたが、頼家を亡くしたことは月日が流れて受け入れていたので。だから、政子が義時をただ恨んだだけであの行動に出たという映り方にはしたくなかったんです」と述懐。 政子は最後、義時に「ご苦労さまでした…小四郎」と言葉を掛けた後に近寄り、弟の顔に手をやった。 「私としては義時に近づかない方が、義時に寄り添わない方がいいと思っていたんですけど、なかなかカットがかからなくて(笑)。義時の苦しそうな表情を目にした時、やっぱり『あなたのそばにいたい』『あなたに触れていたい』、そんな感情が政子に芽生えたんだと思います。覚悟を持って手を下したけれど、最後の最後まで『果たして、これでよかったんだろうか』って。やっぱり放送されないことには、消化し切れないものがあります。そんなラストシーンになりました」。簡単に整理はつかない。 別日にインタビューに応じた吉田監督は、こう明かした。 「台本の最後の2行ですよね。義時がどんな気持ちで『姉上』と言ったのか、政子がどんな気持ちで『ご苦労さま』と言ったのか。撮影前に小栗さんと小池さんから質問も受けましたし、撮影の段取り中も話し合っていました。義時の気持ちは『感謝』なのか、『どうして(薬を取ってくれない)?という問い掛け』なのか。政子は『ねぎらい』なのか、『安らかに』なのか。でも結局、ここまで長いドラマにになると、その瞬間に出た感情でしかないんですよね。長きにわたって義時と政子の人生を演じてきた2人がどんな感情に到達するのか見たい。始まりから『衝動』を大事にしてきました。クランクアップの次の日、小栗さんが『(撮影のことは)全部忘れました』とおっしゃっていました。演じた時の感情がどんなものだったのか、終わった後にも分からない。その場で生まれたものでしかないから。それこそが役になり切っているということだと思います」 「このシーンはほぼ台詞のみです。立ち上がったり、離れたり、寄り添ったりする動きは現場で作っていきました。最後の最後、政子は当初、離れたままで、孤独に義時が死んでいくイメージでした。しかし始まってみると、政子は寄り添いました。終わった後、小池さんは『気持ちが抑えられなかった』と申し訳なさそうにおっしゃいました。とんでもない。これこそが『鎌倉殿』の描いてきた家族の物語にふさわしい最後。愛と憎しみ、残酷さと優しさの交錯するとても深い表現となりました。これはもう、お二人の力。僕がただの観客と化していました」 小池の大河出演は、巴御前役を演じた05年「義経」以来17年ぶり2作目。手応えを感じる一方、「課題もいっぱい見つかりました。演出の方からたくさんダメ出しも頂いて、それが何かは恥ずかしくて言えませんけど(笑)。やっぱり気持ちの演技だけでは残れない仕事なんだ、ということを痛感しました。とことん役を掘り下げて、練ってきた台詞回しだったり、仕草だったり。先輩方はもちろん、幅広い世代とジャンルの方と触れ合えるのが、大河のありがたさ。もっと勉強しないと、10年後に残っている役者にはなれないなと身に染みました。来年以降はどこかで見たような芝居じゃない、ニュー小池栄子をお見せできたら、とは思っています」。今作の経験を血肉に、さらなる高みと深みを見据える。
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