2023年12月29日金曜日

万葉集 現代語訳 巻十六3860・3861・3862 : 讃岐屋一蔵の古典翻訳ブログ

万葉集 現代語訳 巻十六3860・3861・3862 : 讃岐屋一蔵の古典翻訳ブログ

万葉集 現代語訳 巻十六3860・3861・3862

筑前国の志賀の海人の歌十首①
 ※「筑前国」国名。福岡県北部。
 ※「志賀」福岡市東区の志賀島。博多湾の出入り口にある島。現在は地続き。
3860 大君(おおきみ)の遣(つか)はさなくにさかしらに行きし荒雄(あらお)ら沖に袖振る
 ※「大君」天皇。
 ※「さかしらに」差し出がましく。おせっかいに。
 ※「荒雄ら」〈荒雄〉志賀島の漁師の名。〈ら〉親しみをあらわす。

    帝の命(めい)を受けたわけでも
    ないのに差し出がましくも
    みずから出かけた荒雄は沖で
    別れの袖を振っている


3861 荒雄(あらお)らを来(こ)むか来(こ)じかと飯(いい)盛(も)りて門(かど)に出で立ち待てど来まさず
 ※「来むか来じか」〈む〉推量。〈か〉疑問。〈じ〉打消推量。
 ※「来まさず」〈まさ〉尊敬・未然形。

    荒雄は帰って来るか来ぬかと
    ご飯を盛って供えして
    門に出で立ち待っているけど
    帰っておいでになりません


3862 志賀(しが)の山いたくな伐(き)りそ荒雄らがよすがの山と見つつ偲(しの)はむ
 ※「いたく」ひどく。はなはだしく。
 ※「な伐りそ」〈な~そ〉禁止。
 ※「よすが」心を託すたよりとなるもの。心を寄せる縁となるもの。拠り所。

    志賀の島では山の樹木を
    伐採し過ぎないでくれ
    荒雄にゆかりの山と思って
    眺めて偲んでいたいから

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