人類の祖先は約90万年前に約98.7%減少し絶滅しかけていたことが明らかに
現在地球上で暮らす我々人間は「ホモ・サピエンス」と呼ばれる、約20万年~10万年前に誕生したヒト属の一種です。しかし現代から約90万年前に、人類の祖先となる種がわずか1280頭にまで激減し、絶滅の危機にひんしていた可能性があることが報告されています。
Genomic inference of a severe human bottleneck during the Early to Middle Pleistocene transition | Science
https://doi.org/10.1126/science.abq7487
Human ancestors nearly went extinct 900,000 years ago
https://doi.org/10.1038/d41586-023-02712-4
これまでの研究では、アウストラロピテクスをはじめとする約400万年~200万年前に生存していた猿人や、約180万年前に誕生したホモ・エレクトスのような原人の化石は発見されているものの、約95万年~65万年前のアフリカとユーラシア大陸に生息していた人類の祖先の化石はほとんど見つかっていませんでした。
イェール大学の人類学者、セレナ・トゥッチ氏は「古い化石から古代のDNAデータを採取することには技術的な限界があり、初期の人類の祖先に関する人口の動態に関してはほとんど分かっていません」と述べています。そこで約100万年~80万年前の人類の祖先を調査するために研究チームは、現代の人間の遺伝子データから、複雑な家系図を構築し、それをさかのぼることで人類の祖先における重要な進化的出来事の調査を行いました。
イリノイ大学のスタンリー・アンブローズ氏は「約100万年~80万年前という期間の人類にはまだまだ解明されていない謎が多く残されていますが、今回の調査方法はこれまでにない方法でこの期間の人類に関して研究を行いました」と述べています。
調査の結果、現代から約90万年前に人類の祖先の可能性がある、未知の種がわずか1280頭にまで減少していたことが判明しました。中国科学院大学のリー・ハイペン氏は「人間の祖先の約98.7%が失われていました」と報告しています。
研究チームによると、約90万年前のこの時期は、更新世前期から中期にかけての移行の時期だったとのこと。この期間は地球が寒冷化するなど、激しい気候変動が発生し、アフリカでは長期間の干ばつにつながりました。リー氏は「激しい気候変動が人間の祖先の大量減少につながり、ホモ・サピエンスへと続くデニソワ人やネアンデルタール人の共通の祖先が誕生した可能性があります」と述べています。
約90万年前に大量に減少した人類の祖先は、その後約81万3000年前に再び人口の拡大を開始。一方で山東第一医科大学の集団遺伝学者、ハオ・ジーチェン氏は「わずか1280頭にまで減少した人類の祖先がどのように生き残ったのか、そしてどのように再び人口を拡大したのかは不明なままです」と指摘しています。
ハオ氏は「化石の発見例が少ない約95万年~65万年前の期間は、脳のサイズなど、現代の人間にも現れる特徴が出現したと考えられています。しかし、約90万年前の減少によって遺伝的多様性の約3分の2が失われました。そこから人間がどう進化してきたのか、不明な点は数多く存在します」と述べています。
0 件のコメント:
コメントを投稿