【ゆっくり解説】古代ペルシアの超技術「カナート」
ゆっくり土建図鑑
カナート、カレーズとは
砂漠など乾燥地帯に作られた地下水を通すための地下水路トンネルのことです。砂漠では大規模な水利施設が2000年以上前からの古い時代から発達しています。
山の近くの水源地帯から町まで続く長いトンネル。長いものは30kmもあります。
地表の高温と乾燥を避けて地下に長いトンネルを掘って水を通します。
水路はわずかな傾斜をつけて、自然に水を流します。
水路は当然横穴になりますが、一定間隔で縦穴を掘り、土砂の排出と換気を行います。
地表からみると、その縦穴と、排出された土砂の小山が連続して続くことになります。
吊称は
・イランではカナート(qanāt)
・アフガニスタン、パキスタン、ウズベキスタン、新疆などではカレーズ(kārez)
・中国では坎児井(カルジン)
・北アフリカではフォガラ(foggara)
と呼ばれます。
それぞれなんとなく似ている発音が世界各地へ広がったことを示しているのでしょう。
英語の「canal (運河)《とも語源的に共通なのかもしれません。
写真はミツカン水の文化センターHPより
▲カナート
小山はトンネルを掘ったり、メンテしたときに排出された土砂。
この下に水路が続く。
写真はミツカン水の文化センターHPより
▲地下水路の構造
遠い水源地帯で染み出た水を遠い砂漠の集落までひきます。
■構造
日本のマンボの構造は中近東のカナートと類似です。
特徴的なものは縦穴と横穴で構成されているものですが、トンネルのように横穴だけのものもあります。
縦穴は日穴、息出し、息穴、空気穴とも呼ばれ、約20間(36m)ごとに掘られます。
横穴の断面は幅60cm、高さ120cmほど。 意外と狭い。
横穴の長さは1000m以上あるものもあり、水路なので、水が流れる程度のゆるい傾斜がついています。
場所によって暗渠となる部分と開渠となる部分があります。
図は『三重高等農林学校学術報告書11』、三重県立図書館HPより
▲マンボの構造図
水路としての横穴と土砂搬出などのための縦穴で構成されます。
■どこにあるか
●三重県
三重県はまんぼの集中地帯です。、
その数は確認されているものは170箇所、総数は300とも、800ともいわれています。
員弁郡の藤原町・北勢町・大安町を中心として、菰野町・四日市市・鈴鹿市・亀山市等に分布しています。
その他津市や安濃町・勢和村等にも分布しているという調査もあるそうです。
中でもいなべ市北勢町治田地区にその数が多い。
記録に残る最も古いものは、北勢町平野新田で寛永13年(1636)につくられた六反マンボです。
いなべ市大安町の片樋マンボは、明和7年(1770)頃に作られたものです。
●岐阜県
垂井盆地には115本のマンボ(垂井町114本、関ヶ原町1本)が確認されています。
他には南濃町,上石津町,養老町にも残されています
●愛知県知多半島
美浜町、武豊町、半田市内に数か所、現存します。
いずれも、池と池を連絡したり、池と水田地域へ用水を導くための地下水路です。
▲武豊町の「ため池《と「マンボ《
武豊の土地は赤土で水分を長く蓄えることができず、幾度となく干ばつに見舞われました。
それを避けるためこのように多くの溜池が作られました。
その水利を利用するために、マンボと呼ばれる地下水路も作られました。
この地図から見ると 南部 冨貴地区に2つほど残されているようです。
●その他の地域
導水暗渠としてみれば、奈良県の葛城扇状地,鳥取県大山北麓,熊本県阿蘇山西麓,人吉盆地,そして大阪府・秋田・新潟・富山・鹿児島・滋賀・神奈川・長崎の県内にも類似の施設があるそうです。
■どのように掘ったか
通水する目的の水田を基準にして水路をつくり,出口から上流に向って掘り進める。
壁面の補強が必要なときには 石垣を積む。
さらに横穴を掘り進めて土砂を藁でつくった「もっこ《などに入れたり、修羅(そり)を使って運び出す。
横穴が長くなると土砂や石の搬出に難儀するため,20~30mごとに竪穴を掘っていく。
縦穴から滑車などを使って地上へ運び出す。
竪穴を掘るとその底から下流側に迎え掘りをすることがある。
相手方の音を聞き分けてその方向に掘り進み,貫通させる。
図は大安町史、員弁の姿、三重県立図書館HPより
▲マンボの築造方法
図は大安町史、三重県立図書館HPより
▲マンボを掘る道具
また、いなべ市大安町の博物館には道具の実物展示があるようです。
カナート
カナート(アラビア語: قناة 転写:qanāt)とは、イランの乾燥地域に見られる地下用水路のこと。同様のものをアフガニスタン、パキスタン、ウズベキスタン、新疆ウイグル自治区などではカレーズ(karez; ペルシア語: كاريز 転写:kāriz)といい、北アフリカではフォガラ(foggara)という。
イラン高原を中心に各時代に出現したペルシア帝国が、ティグリス川・ユーフラテス川沿岸の古代メソポタミア文明を凌駕した点の一つにこのカナートという灌漑施設があったといわれる。現在に至るまで古代に起源を持つこの水路が使われている地域も多い。
山麓の扇状地などにおける地下水を水源とし、蒸発を防ぐために地下に水路を設けたものである。山麓に掘られた最初の井戸で水を掘り当ててその地点から横穴を伸ばし、長いものは数十kmに達する。水路の途上には地表から工事用の穴が掘られ、完成後は修理・通風に用いられる。水路が地表に出る場所には、耕地や集落のあるオアシスが形成されている。耕地では小麦、大麦に加え、乾燥に強いナツメヤシ、近年では綿花やサトウキビなどの商品作物の栽培が行われている。
各地の名称
- ペルシア語:ガナート قنات (ghanāt), カーリーズ کاریز (kārīz)
- アラビア語(フスハー):カナー قناة (qanāh) ※qanātとも読むしqanāhとも読む。末尾文字ة(ター・マルブータ)についてはこちら
- ダリー語(アフガニスタン):カレーズ کاریز (kārēz)
- ウイグル語:カリズ كارىز (kariz)
- 中国語:坎児井(kǎnrjǐng、カアルジン、新疆ウイグル自治区のトルファン盆地、甘粛省等にある)
- 日本語:マンボ[注 1]。「マンボ」という名前の語源ははっきりしないが、オランダ語の「マンプウ」から出たものであるという説が谷崎潤一郎の『細雪』に紹介されており、鉱山の坑道、地中の水脈を求めて横堀りした水路、鉄道の線路盛土の下に掘られた狭い通路や水路などが、「マンボウ」「マンプウ」「マンポウ」「マンボ」「マンポ」「マンプ」などと呼ばれているという[4]。
脚注
[脚注の使い方]
注釈
出典
- “International Glossary of Hydrology:AR 0720 foggara” (アラビア語). UNESCO. 2016年8月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年8月7日閲覧。none
- “Khettara” (アラビア語). UNESCO. 2022年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年8月7日閲覧。none
- “東海の歴史的水利遺構 - マンボ - 木曽調だより第17号” (PDF). 農林水産省東海農政局. p. 4 (2007年3月). 2018年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月22日閲覧。none
- “西宮と垂井のマンボウ 大垣つれづれ”. 大垣地域ポータルサイト 西美濃 (2018年1月22日). 2023年2月17日閲覧。none
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、カナートに関連するカテゴリがあります。
- 溝渠
- 灌漑
- 用水路
- 被圧帯水層(artesian aquifer)
- トルファン・カレーズ楽園
- ペルシア式カナート - イランの世界遺産。
- バードギール(採風塔) - カナートと組み合わせて、空調として使用される。
- 古代ペルシアにおける伝統的な水源
- ヤフ・チャール
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