2023年8月30日水曜日

『日輪』横光利一と『サラムボオ』フローベール: つぶやき館 (元祖つぶやき館) 移転しました

『日輪』横光利一と『サラムボオ』フローベール: つぶやき館 (元祖つぶやき館) 移転しました

『日輪』横光利一と『サラムボオ』フローベール

 FAI5_095_06e48820-52df-431f-ad52-43631f93c40d.jpg横光利一の出世作といわれている『日論』、卑弥呼が主人
公である。『魏志倭人伝』に大儀そうに書かれているあの
邪馬台国、卑弥呼の実像は全く異なっている。男王ばかり
立てていたら争いが絶えず、卑弥呼を立てたら世は静まっ
た。もうかなりの年齢である、・・・。でも『日輪』はG
・フローベールの『サラムボオ』の翻案である。

 対象年、1923年5月に発表、翌年単行本。私小説全盛の
時代、何とも色彩豊かな作品で、一躍文学革新の担い手と
して認められるに至った。フローベールの『サラムボオ』
を種本として、古代社会に織りなす絵巻物、翻案にして
も古代日本に移し替える筆力は侮れない。フローベール
もあんまリしみったれた日常の描写ばかりでなく、多少
、現実離れした題材を描きたという執筆動機があった。
知的な構成の絵巻物自体が眼目にせよ、美貌ゆえの運命
で自らが滅びるという王女、また次々に身を滅ぼす男た
ち。物の本によれば

 「人間は外的なものに左右される」

 という人間観だそうだが、これじゃあまりに漠然と
しすぎていないか、である。

 横光利一は『サラムボオ』生田長江訳(博文館)大正2年
をある人物(小島勗]から借りて読んでいたことが、大正
8年7月18日の佐藤一英あて書簡絵確認できるらしい。で
、『サラムボオ』と『日論』を比較すると、フランス語
と日本語の違いを超えて?文体がにているとあ、構成
、テーマなど共通点が多い、よって翻案小説といえる。

 でも翻案とは云え、古代カルタゴを邪馬台国に移し
換えるのだから芥川が書く翻訳小説とは違うと思える。

大学のセンセイはこういうことも研究の種になるらしく、
『上智大学国文学論集』昭和48年12月、「日論とサラム
ボオ、生田長江訳の関連に於いて」という研究がある。

 ハンニバルの妹と卑弥呼、翻案とは云え、その手腕は
あなどれない。

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