3大祭りにしては影薄い?「シャブオット」
3大祭りにしては影薄い?「シャブオット」
「シャブオット」って何のお祭り?
近代は、乳製品を食べてお祝いする風習のあるイスラエル。
「チーズケーキを食べる日」と、なんだかぼんやりイメージしている人も多いのですが、ユダヤの歴史上、実はかなり重要なお祭りです。
ただ、あまりにも広大無辺で、説明するには一部分を切り取るしかなく、捉え難いのです。
この祭りは代々受け継がれながら世代を越えて祝われている祭り。
イスラエルがイスラエルであることの根幹に触れる祭りという感じがします。
いくつかシャブオットのイメージを並べてみます。
・「7週の祭り」とか「五巡節」ともいう
・三大祭りの一つ
・乳製品を食べる祭り(チーズケーキ万歳)
・ルツ記を読む(何それ。)
・徹夜で聖書の勉強をする祭り(突然の嫌な予感)
・イスラエルの核「トーラー(神の教え)」をシナイ山で授与された日とされる
・小麦の収穫祭
・女の子たちが花冠つけていて可愛い
・白い服をきる
乳製品に埋もれるシャブオット。
大好きなチーズとワインを頬張りながら、何で現代では「乳製品の祭り」になっているの?という質問に、いろいろな答えが返って来ました。中でも気に入ったのが
「トーラーを神様に貰った当日、食事をしながら祝いたいのだけれど、肉に関する食物規定があり過ぎてめんどくさい。とりあえず今日は乳製品で祝おう。」というもの。笑
とんちの効いたユダヤジョークが大好きです。
チーズ!ミルク!クリーム!乳製品の祭りかと勘違いしそうなシャブオットの食卓。季節のフルーツも溢れんばかりに並び、それに合わせてイスラエルのフルーティな白ワインがおすすめです。
また、イスラエルで本を買うならこの季節。
空き地に突然現れる巨大な青空BOOKマーケットなど、ここぞとばかりに値下げしたお買い得な本が山積み!ヘブライ語が読めなくても、子供用の絵本や美しい写真集などを楽しめます。
果たしてなんでこの時期に本のフェスティバルをするのか??後半へ続きます…
7週の祭りとか五巡節(ごじゅんせつ)ともいう
それは日本語ですか?という感じですが、
エジプトの地から救われた「過ぎ越しの祭り」(ペサハ)から数えて7週目(50日目)に祝うための異名ですね。(数え方がちょっとややこしいのでだいたいで・・・)
他にもギリシャ語の「50」にちなんだ「ペンテコステ」や、ヘブライ語では「ハグ ビクリーム」とか「ハカツィールの祭」などとも呼ぶらしいです。
名前ありすぎるせいでぼやけるから統一してほしい。と思ってしまいますが、奥深さの所以。仕方がない。笑
過越しの祭り(ペサハ)と仮庵の祭り(スコット)と共にイスラエル三大祭りの一つ
それはもう盛大に祝うんだと思っていたんですが、
住んでみた私の印象では「乳製品を家で食べまくる日」とゆう印象。
何の日なんだ?と3年くらい疑問でした。
チーズは大好きなのでイスラエルのチーズ!チーズ!チーズ!には大興奮で、あまり深く考えていなかっただけかも・・・(イスラエルのチーズ美味しいですよ!)
徹夜で聖書の勉強をする祭り
そう。たっぷりのチーズとワインをいただいて、ぐっすり眠りこけている深夜にこそ、祭りが行われていたのです。
気がつかなかった!!!←(食いしん坊)
ユダヤ教ではトーラーの巻物(聖書・教えの巻物)を神がユダヤ人に与えた日だとされるので、各シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で夜通し聖書勉強会が行われており、皆シナゴーグのハシゴをして、色々なラビ(教えの指導者)の話を聞いたり、議論をしたり、西壁で学んだりしているんです。
古代の昔から世代を越えて聖書研究をし続けている民!このすごさわかりますか?数千年と言う時間を使ってなお達することのできない深淵さが聖書の魅力。
「徹夜で勉強をする日」と言うと、日本ではテストのためってイメージがあるかもしれませんが、彼らにとってこれこそが「命」なのです。
誰でも参加可能だそうなので、男性はキッパを被って、女性は露出を避けて深夜のシナゴーグへ行ってみては?
イスラエルの「勉強」は日本と違うので驚くかも。
冒頭の本屋が増える謎は、このトーラーを愛し、学びを愛する祭りとしての姿かもしれません。
小麦の収穫祭
シャブオットはイスラエルの畑が黄金に色づく季節でもあります。
北部の麦畑は圧巻。昔はこの収穫の喜びを神に感謝し、エルサレムの聖なる神殿に、小麦、大麦、ブドウ、イチジク、ザクロ、オリーブ、ナツメヤシの7種の供え物を持っていくのがシャブオットでした。
聖書の中にある美しいストーリー「ルツ記」はこの収穫の季節の物語です。
ルツと言う外国人女性が、イスラエルの麦畑で落穂拾いをしているときに、ユダヤ人ボアズと出会い結ばれる物語。
悲劇で始まるのですが、深い絶望と困窮の中、外国人ルツの見返りを求めない勇気と愛と誠実で勇猛果敢な行いが描かれ、力強く生きる女性が主人公という古代では珍しい短編。
回復と、愛がテーマで、最後にはダビデ王の祖母となる逆転のストーリーでもあります。
シャブオットにはこのルツの生涯から学ぶのだとか。
ユダヤ人が外国人ルツから聖書の生き方を学んでいるとも言えるので面白い現象でしょう?
最後に・・・
私たち外国人も、ちょっと聖書の世界を学んでみたいかも。世界が広がるかもしれません。
イスラエルの「お祭り」には喜び、や楽しみが溢れていますが、私たちの考える「飲めや歌えや」のお祭りの騒ぎとは何だか違うものを感じます。
勉強したり、学ぶことを祭りとしてこんなに楽しんでいるなんて・・・!!!!
ホロコースト記念日、戦没者記念日、独立記念日と、イスラエルに降りかかった厄災と、失われた命を、覚え、記憶する「祭り」の1週間。記憶と追悼の週。
イスラエルでは、「記憶」が国を一つにしていく力であり、子供たちが未来を生きていく力である、と捉えています。ですから、「祭り」を「記憶の継承」と訳した方がいいかもしれません。
亡くなった一つ一つの命とその記憶(記録・歴史)を、国の宝として継承します。
決して被害者意識を植え付けるためではなく、歴史の事実をそのまま記録し伝えるため研究し続け、「記録」と「記憶」が未来を建てあげる力となるよう育てることを大切にしています。
過去の痛みを忘れてしまうのでもなく、だからといって恨むのでもなく、良い未来に進んでいくための土台として残す。
とても難しいことなのですが、そうあろうとする姿勢が垣間見える週です。
イスラエルの心を肌で感じる期間が、毎年4-5月にやってくる3つの記念日。
・ホロコースト追悼日[ヨム・ハショア](4-5月 独立記念日の8日前)
・戦没者記念日(4-5月 独立記念日の前日)
・独立記念日(4-5月)
深いテーマではありますが、今回はこの3つの記念日についてなるべく簡単に紹介します。
ホロコースト追悼日(ヨム ハ ショア)
写真はエルサレム旧市街、シオンの丘にある「ホロコーストミュージアム」
この日は、ナチスドイツのユダヤ人絶滅計画のために亡くなった600万人の同胞・家族たちを覚えます。
毎年公式の祭典が行われる他、失われていく生存者の声を残そうと様々な取り組みが行われています。中でもホロコーストの研究機関であるヤドバシェムでは、亡くなった一人一人を洗い出す途方のない作業が今もなお続けられています。
命に焦点を当てるイスラエルの姿勢は、被害者としてではなく、1人の人として、彼らがどう生き、またどう死んだのか、その記録を残し、記憶すること。
それを知った今の私たちはどう生きるのか、子供たちをどう生かすのかを問います。また個人でも、記憶するという意識は高く、各家庭、親族、学校でもさまざまな形でこの週にイスラエルの命のあゆみに触れます。
近年広がりつつあるのは、「zikaron ba salon」(記憶のリビング)と言うオープンハウス。
ホロコーストサバイバーのいるお家や、その子供たちの家に集まり実体験を聞く、という取り組み。(ヘブライ語がメイン)
独立記念日の8日前に当たる日で、全国で定刻に黙祷が行われ、レストランやカフェも閉まります。
この日から7日間は娯楽施設は休館し、ラジオからは陽気な音楽は流れず、国中が喪に服します。
戦没者記念日(ヨム ハ ズィカロン)
この場所は現代イスラエル建国の父、「テオドール・ヘルツェル」の眠る丘で、ホロコーストミュージアム(ヤドバシェム)の隣に位置し、建国への思いが詰まった緑豊かな美しい森です。
ホロコースト追悼日から7日目、戦没者記念日がもたれます。
この日は、イスラエル建国当初から国のために亡くなった家族や友人を覚える日。
イスラエルでは、戦争で亡くなった人はその地位に関わらず、「へルツェルの丘」へ埋葬されます。
命の重さがみな等しく平等であることを感じる丘です。
記憶と追悼の週は、娯楽施設の他、レストランやカフェも閉まり、ホテルではお酒の提供をやめます。
私の隣人のおじいさんで仲良しのYおじさんが、この週にヘルツェルの丘へ連れて行ってくれました。
自然の森の中に緑と花が丁寧に手入れされ、穏やかで爽やかな風の吹く、気持ちの良い場所です。
そこに整然と並んでいるエルサレムストーンと植木。イスラエル人のお墓です。
一つ一つに、故人の好きなものや花や木が溢れ、賑やかでカラフルで、イスラエル人だな〜と微笑ましくなります。
※イスラエルでは、お墓の上に「石」を置く習慣があります。花は枯れてしまうけれど、石はいつまでも残るから。あなたのことを、私も、そして私の子孫にも忘れさせない。そんな記憶の習慣です。
Yおじさんは、31才の息子、エマヌエルを亡くしました。
空軍の優秀なパイロットでした。
訓練中、一緒に乗っていたパートナーのパイロットが気絶。最期の瞬間まで諦めず、仲間に声をかけ続けた…そんな勇敢な姿が記録されていたこと、軍からの連絡を受けた時の気持ち、駆けつけた時の様子・・・
椅子を並べて座り、彼の最期の姿、その時の家族の思いを語り聞きます。
見るとあちこちに椅子があり、ああ、それぞれのストーリーをここでゆっくり語り、記憶しているのだなぁ…とわかります。
Yおじさんは、「戦闘中ではなく、事故で亡くなった息子もここに埋葬してくれた。息子も国の誇りとして扱ってくれた」と、イスラエル軍の態度に誇りを持っていました。
「イスラエル軍の基地へ行けば、今でも息子を覚えていて、私に声をかけてくれるんだ。」と誇らしげに、そして「イスラエルは、たった一つの命も小さいものとして扱わない。」そう語ってくれました。
子どもたちを軍に送り出す気持ちはどんなものなのでしょう。
イスラエルが今このように存在し続けているのは、イスラエル軍が戦ってきたから、守っているからであることは間違いないのです。
ふと気が付くと、並ぶお墓に刻まれた年齢は19才…21才…25才…19才…写真が飾られているお墓には、彼らの笑顔が輝いています。
エジプトで奴隷であった古代も、国を失って全世界に散り、迫害された時代も、建国から今現在に至るまで、命とその記憶を絶やさず繋いで継承してきた延長線上にイスラエルはあります。
ヘルツェルの丘は未来を繋いでいく場所です。
国中に響き渡るサイレン
ホロコースト追悼日と戦没者記念日には、朝とお昼の2度、国中にサイレンが鳴り響きます。
この時、車に乗っている人もバスに乗っている人も外に出て、街中の人がその場に立って頭を垂れ、または敬礼し、黙祷を行います。
その景色を初めて見た時に感じた感動は魂に焼き付いています。
サイレンがなる直前まで何も変わらないイスラエルの賑やかな日常。その全てを止め、町中にサイレンの音だけが響き渡る瞬間、この国の「バラバラなのに一つ」という奇跡を目の当たりにします。
イスラエルが大切にする「記憶」は、敵への恨みや憎しみではなく、いつも命への姿勢です。
難しい問題を山のように抱えていますし、綺麗事ばかりではありません。
しかし命を最優先する心がそのベースにあることは確かで、こんな姿を見るたびに、イスラエルに惚れてしまいます。
独立記念日(ヨム ハツマウート)
喪に服していた戦没者記念日の夜。一週間の喪が明けます。
その夜です。さっきまで喪に服していたはず。(※イスラエルのお祭りは、全て夜から始まります。)
どこからともなく漂ってくる炭火焼の肉のいい香りと、ワインを飲んだり賑やかな声、陽気な音楽が聞こえてきます。
「独立記念日」です。
初めて体験した時は、全く心がついていかず、大いにビビりました。切り替えの速さ!!!!!エルサレムの至る所でライブが始まり、歌い踊る群衆。
この切り替えの速さも、イスラエルの強さの秘訣。いつまでもだらだら引きずらない。
悲しむ時に悲しみ、喜ぶときに喜ぶ。「時」がある。このメリハリが、負の感情や不安に負けない、希望を持ち続けるイスラエルのあり方です。
次の日のお昼にもなると、街中の芝生という芝生の木陰にBBQセットが並び、国中が肉の焼ける香ばしい煙に包まれます!どこに行っても炭火焼きの匂い!!
この光景は圧巻。(いつその大量の肉を買っていたんだ。)
イスラエルの祝いは、やはり古代から肉の焼ける匂いと共に・・・
イスラエルの命に対する考え方、「記憶」と「喜び」こそ、この国の力。
悲しみにとらわれず、与えられている命を喜び、楽しみ、満喫する生き方。
失われたもの、痛みを決して忘れないし、誰よりも記憶して語り継ぐけれど、そこで生きる喜びを絶対失いません。
いや、むしろ更に喜びを増し加えて、悲劇に勝利しているように感じます。
独立記念日にはイスラエル軍が飛行ショーを行い、国民がフィーバー!
BBQの群れが国中の芝生を埋め尽くし、身体中に煙の匂いをまとった人々の笑い声が響きます。
生きる喜び。悲劇や理不尽との付き合い方。命と希望。イスラエルの魂に触れる週。少しはお裾分けできたでしょうか。
ユダヤ教3大祭り「ペサハ」なんて初耳!のあなたも、あの有名なレオナルド・ダビンチの名画「最後の晩餐」は見たことありますよね?
これがまさにペサハの晩餐の瞬間を描いたものなんです。(ただし、食卓スタイルは西洋風アレンジ)
ユダヤ民族が古代エジプトでの奴隷生活から解放され、モーセの導きによって出エジプトしたことを記念して、3300年程前からキリストの時代はもちろん、現代に到るまで祝われているのです!
2022年のぺサハはコロナ規制もほぼ無くなり、街に活気が復活!(マスクなしでOK。ワクチンを打っていなくても入れます。)イスラエルの政界では、「ぺサハのパン」が問題になり、議員が一人離脱・・・政権崩壊か?!また選挙か?!という騒ぎまで・・・国を動かすほどの問題か?!と思えるかもしれませんが、私たちが考えている重みとは違うようです。
問題となった『ぺサハのパン』はこの祭りの主食「マッツァ」という特別なパン(というよりクラッカー)。 祭りの1週間はイースト入りのふわふわのパンは禁止されているのですが、前日にパンを燃やすほど徹底しています。
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これは、イスラエル人が古代エジプトから脱出するときのお弁当用に、パンを発酵させて膨らませる時間がなかったことに由来します。
記憶と追体験を通して子供たちに教え伝えるため、イースト無し、発酵無しのカサカサマッツァを食べるのですが、5000年という規模で守られ続けているからすごい。
イベント
photo by:https://images.app.goo.gl/AvvVRjCje8aKPpDX6
人混みを恐れないのなら、ペサハの西壁で、祭司の祝福「ビルカット・コハニーム」を受けてみてはどうでしょう?
少なくとも一度は参加する価値があります。
イスラエルではコロナ規制もほぼ無い状態なので、今年は活気が戻ってきそう。
この「祝福の祈り」は、毎週シャバットに各シナゴーグや家庭でも行われるのですが、年に2度、ペサハとスコットの祭りに毎年何万人もの人々が西壁に集まり、祭司の家系のユダヤ人たち(何百人も!)から歴史的な祝福を受けます。
両手を上げ、群衆の声が一つになる様子は特別な体験…!
3行の詩のような短い祈りですが、イスラエルで最も古いヘブライ文字として出土したのもこの祈りで、古代の昔から特別で力のある祈りです。
ただし!!
広場に確実に入るためにはか・な・り早めの行動を!
この日に旧市街の近くまで車で行くことはほぼ不可能ですので、覚悟して行きましょう。
私は何度かチャレンジして未だにたどり着けていません!(単に出発が遅い)笑
日時と時間は「THE PRIESTLY BLESSING (BIRKAT KOHANIM)+西暦」で検索。
2022年はこちら(※サマータイムで日本との時差は6時間)
ちなみに!西壁にはライブビューイングもあるので、日本にいてもちょこっと味わえるかも???https://www.skylinewebcams.com/en/webcam/israel/jerusalem-district/jerusalem/western-wall.html
ペサハのグルメ
パンと小麦(正確にゆうと小麦、大麦、オーツ麦、スペルト、ライ麦を含み、発酵する物)が街から消えるペサハの期間ですが、知恵を尽くしたペサハグルメが登場するのもこの時期。
小麦を使わないパンだと、とうもろこしやタピオカ粉を使ったパン(反則感あるが。笑)は温めるとモッチモチで日本人好み!私のお勧めはベーグル。
ファラフェルサンドも、小麦じゃないほうが美味しいのでは…とさえ思います。
※温めないとパサパサです。
クラッカーのようなマッツァをどう美味しく食べるか…。現代ペサハの永遠のテーマかもしれません。
こちらはユダヤのお母さんが作ってくれたマッツァボール入りスープ。
photo by:https://images.app.goo.gl/ZpMD28KFart9PtYD7
めちゃくちゃ美味しくてびっくり!パサパサのマッツァから溢れだすスープ!
photo by:https://images.app.goo.gl/A53vwHfGWrvsQPz27
他にもローストしたマシュマロやチーズをサンドしたり、ピザやラザニアに見立てたり、マッツァを駆使した手料理はもはやマジックです。
奴隷時代のレンガ作りを思い起こすために作られるデーツベースのフルーツペースト、「ハロセット」。
こちらも各家庭こだわりの代物で、同じのを食べたことがありませんが、どれも絶対美味しい!!
コレを作るためにデーツペーストは絶対買う私。
ペサハの小麦なしおやつには、ココナツクッキーや「マカルーン」というタヒーナのアーモンドプードルのクッキーなどがあります。これがコーヒーのお供に最高!
ココナツ好きな私は年中あってもいいのにと思う。
デーツとナッツをココアで丸めたロースイーツ、「デーツボール」
この時期はネットでもペサハレシピ!と銘打って美味しいレシピの数々がシェアされています。ペサハにかける情熱と工夫がすごい。
ショッピング
イスラエルで売られている商品には、『ペサハ』に食べられるかどうかのマークがついています。
この期間マークがついていない物は布が掛けられて買えないお店も!
イースト菌と酵母入りの食品は全て食べないので、パンもパスタもスーパーには置いてありません。
なぜ?と思うものについてはペサハの許可マークがない為。
日程
3-4月頃の7日間祝われるペサハ(2022年は4月15日の日没〜22日の日没まで)は、初日と最終日の日没からシャバットと同じように街がストップ!公共交通機関も止まるので要注意です。
そしてもちろんその7日のうちに実際のシャバット(金曜〜)もあるのでややこしい!
特に気をつけたいのが、国立公園などの観光施設も祝日の前日は半日営業だったりとイレギュラーな動きをするので、予定を立てる時には注意です。
もちろんイスラエルの友人にペサハディナーに誘われたらラッキー!
お腹をペコペコに空かせて行くことをお勧めします。(ただしペサハの儀式が長いので、お腹空きすぎは修行。)
宿泊
長期の休みを利用して、海外・国内旅行も多くなる時期なので、航空券や宿泊先はいっぱい!予約は早めにとったほうが◎
ホテルはこぞってペサハのプログラムを用意していたりもします。
車を借りておいて、死海や大自然でのBBQやキャンプ、ハイキングなどを楽しんだりもしていますよ。
せっかくですから、この時期だけのペサハの雰囲気を味わって!
「ペサハ」(過越しの祭り)
3-4月頃の7日間祝われる「ペサハ」では、街中のパンや小麦製品が消え、パッサパサの大判クラッカー「マッツァ」を主食に過ごします。
ペサハの前日までに家中を大掃除して、徹底的に小麦を家から出し、親の仇のごとく残ったパンを道端で焼いて燃やす光景も…
なんでそこまで?!の、ペサハ(過ぎ越し)の物語を紹介します。
ペサハの物語
この話は、ユダヤ人のアイデンティティの根幹を成すもので、これを知らずには始められません。
他のお祭り(シムハットトーラーやスコット)も関係してくるので、知らない人は要チェック!
もしかしたら「モーセの十戒」の映画を見た人もいるかもしれません。
430年の間エジプトの奴隷だったイスラエルの民を救うため、神が選んだのがモーセさん。紅海を割って海を渡り、神の民として自由になったという「エジプト脱出」のストーリーです。
ちょっと突然のファンタジー?!ですが、イスラエルの神とユダヤ民族の関係って、日本の神信仰とは大きく異なっていて文化的にも非常に興味深いです。
13世紀頃、エジプトの地ではユダヤ人たちが奴隷として苦役に苦しんでいました。
多産で多くなりすぎ、増え広がるユダヤの民を恐れたファラオは、生まれてきたユダヤ人の男子は全て殺すようにと命じます。(こわっ)
その頃に奴隷の子として生まれたのがユダヤ人モーセ。
しかし、母親はモーセを殺すことができず、(そりゃそうだ。)籠に入れてナイル川に流します。
それを拾ったのが、なんとファラオの妃!モーセはエジプトの宮殿でスクスク育ちます。
一方、イスラエルの民への当たりが益々激しくなるファラオ。
奴隷たちの嘆きを聞いたイスラエルの神は、モーセの前に現れると、民をエジプトから救い出すようにと命じます。
モーセはファラオにユダヤ人を解放するようにと要求しますが、聞くわけないですねぇ。笑
そこで、イスラエルの神はエジプトに10の災いを起こし、徹底的にビビらせます。
エジプト VS イスラエルの神です。
ファラオは災いの9つまではビビりながらも、「奴隷解放なんてありえん!」と突っぱねますが、10番目の災いは…残酷なものでした。
「国中の長男が死ぬ。」これが10番目。
神が命じた"救いの条件"をその通り行ったユダヤの民の家は、10番目の災い(長男の死)を「過ぎ越す」ことができた・・・。これが過ぎ越しの祭りの起源です。
国中の長男が死んだ晩、エジプト全土で死者のいない家はなかったと記されています。ファラオの長男も然り…。
あまりのことにファラオの心は折れ、モーセとユダヤの民にその夜のうちにエジプトから出て行ってくれと言い渡します。
この時、ユダヤの民は追い出されるようにしてエジプトを出たので、旅に必要なパンを発酵させている暇がなく、種無しパン(マッツァ)と呼ばれる薄いパンを焼いて持って行きました。
日本人なら米を炊いてる暇がなくて、せんべい持ってきた感じでしょうか。(なんか違うけど・・・いいか)笑
ところが、我に返ったファラオは逃げたユダヤ人を戦車を率いて追いかけます。
逃げたユダヤの民の数は女と幼児を除いて60万人!!!!!!!
60万の労働力を手放すってかなりのことですもんねぇ…ピラミッドが建たない。笑
(というか、なんで憎き奴隷ごときの為に大打撃受けねばならんのじゃ!自由にしてなるものか!って感じでしょうか。)
怒りで狂ったエジプト軍がものすごい勢いで迫ってくる中、前に広がる海!絶体絶命!
その時、海の水が割れ、海底の地面が現れ、イスラエルの民は「歩いて」紅海を渡り、逃げ切ったのです。
奇跡のスケールでかすぎ。。。。
ファラオは怖じけずそのまま紅海を渡ろうとしますが、海の水は勢いよく元に戻り、エジプト軍は沈んでしまった…と。
現在紅海のとあるポイントにはエジプトの戦車が沈んでいる跡!?と言われるものもあるとか?ないとか。信じるか信じないかはあなたし・・・いやいやいや!
都市伝説なんてレベルじゃないのがユダヤの祭り。「神はいる。なぜなら私たち(ユダヤ人)が生きているから。
(古代ロマンが気になる人はこちらのYouTube→https://youtu.be/SxShty5P6DY)
ペサハの晩餐
そんな訳で、神がイスラエルの民をエジプトから解放した「どでかい奇跡」をペサハは記念しているのです。
親から子へ、子から孫へと語り継がれ、記憶を繋いできたこの祭りは、各家庭で行われます。祭り当日に商売しようなんて人はいません。祭りの時間までに店を閉め、仕事をやめてそそくさと家に帰ります。
街は静まり返り、耳をすませば各家庭の窓から楽しげな歌声や話し声と、漂ってくるごちそうの匂い。こんな時、イスラエルでは家族を中心に世界が回っている。と感じます。
ペサハの1日目の食事と7日目の食事は特別で、エジプト大脱出ストーリーを子供達に伝えるために特別な晩餐を行い、シナゴーグ(会堂)や西壁へ行く人もいます。
イスラエルのお土産でよく見かけるこの食器はペサハ用のもの。
イスラエル人たちと過ぎ越しの晩餐を過ごしましたが、家族で伝統を守る楽しそうな姿には感動しました。
伝統的なペサハの晩餐ではどんなに急いでもメインの食事にたどり着くまで1時間。(ごちそうだからと何も食べずに参加したらお腹ペコペコでしんどい)
各家庭こだわりの式次第があり、それが絵本だったり、美しい装飾のついた格式高いものだったりと様々!
決まった食事や祈り、ペサハの歌や子供達の宝探しゲームなど、お父さんを囲んだ食卓で始まります。
ペサハの食事の大筋はユダヤ人家庭ならどこでも同じですが、それぞれの家庭の色で楽しんでお祝いをしているのが印象的。
ペサハの晩餐では過ぎ越しのストーリーを体験型で追えるようになっていて、例えば、エジプトでの苦役を思い出すために、苦い葉っぱを塩水につけて食べる…とか、10の災いの数だけお皿にワインの雫を垂らす…などのイベントがあるのです。
わたしが参加した家庭では、この「苦い葉っぱ」を食べるシーンで、離散していたユダヤ人ならではの「うちはセロリよ」とか、「ウチはパセリよ」などと議論が始まり「毎年決着がつかないんだ」と笑っていました。
時々順番を間違えたりもしながら(笑)和気藹々と賑やかに進みます。
こうして子どもたちは、味覚や行動で自分たちの歴史を体に刻んでいくのでしょう。
そうしてお腹が空いて気が遠くなる頃、ご馳走の登場です!
ユダヤのお父さん、お母さんは本当に料理上手で、どこの家庭もレストラン。
信じられないくらいのご馳走が食べきれないほど並び、デザートまでもしっかりあります。
普段宗教的でない人たちも、伝統と文化を守る。
イスラエルの民のアイデンティティが家族の絆を深める姿を見た気がしました。
ペサハの晩餐(セダー)をのぞいてみたい人は↓
観光はできる?
さて…友人に招いてもらえる…ということでもないと、ペサハの体験はなかなか難しいかもしれません。
特に、お店や公園の開く時間が変わったり、土曜日ではないのにシャバットのように街がストップしたりするので要注意。
ペサハの期間に被ったら、祭りのスケジュールをしっかり確認しましょう!
「日没から始まる」ことも忘れずに!
でもペサハの期間は長期休暇でもあるので、イベントも多くて街は賑やかです。
ペサハの過ごし方やグルメの記事はこちら
街中が仮装?!最もワクワクする祭り「プリム」ってなんだ?
2月-3月の辺りにやってくるイスラエルの春「アダルの月」は、その月に入っただけで喜びが増す!
一年で一番幸せな月!と言われるほどのお祭りです。
アーモンドの花が咲き始めるころ、通りの布屋さんに活気が出てくると「今年はなんの仮装をしよう?!」とワクワク。
聖書が起源の古い祭りですが、今ではハロウィンやコミケ、アニコンのような雰囲気もあってイベントも多く、外国人でも楽しむことができます。
何より、おじいちゃん、おばあちゃん、政治家や宗教家、ホームレス、老いも若きも街中が仮装しているってすごい!
日本では若者の文化であるコスプレですが、イスラエルはさながら国を挙げての「欽ちゃんの仮装大賞」状態。笑
思い思いに楽しめるので気張らずに参加できるのも嬉しい。(ディズニーの耳だけだっていい。)
プリムでは、"訳が分からなくなるまで酔いつぶれる"というしきたりもあるらしく。笑
祭りの二日目の朝は誰も起きてきません。笑
プリムイベントの開催時間の朝10時。
時間ぴったりに現地へ行ったら会場はまだオープンしておらず、「プリムだよ?まだ朝じゃない」と言われました。(えー。)
とにかく飲んで歌って踊る!がプリムのようです。
あなたもとっておきのコスプレで、街に繰り出してみては?
私は毎年浴衣で参加しています。(←仮装ではない)
コスプレしてればみんな友達!と言わんばかりに大歓迎してくれますし、近年の日本の漫画・アニメブームも乗っかって、日本人にもなかなか楽しい祭りとなっています。
プリムのお菓子「ハマンタッシェン」
photo by:ハマンタッシェンの作り方https://images.app.goo.gl/NE1hc328Q4cBkBxY6
プリムの伝統菓子、三角のクッキー「ハマンタッシェン」は、ハマンの耳と呼ばれて親しまれています。
「じゃあ、真ん中に入っているポピーシードやチョコレートは耳〇そなの?」と、聞いたら爆笑されました。
いや…耳食べるっっっ?!笑
(※ユダヤ人を絶滅させようとした「ハマン」と名前がかぶっているのは、後に訛ったからだそうで、もともとは耳のつもりではなかったらしいです。笑)
食べ応えは抜群で、ユダヤのお母さんの手作りは非常に美味しかったです。
イスラエルのガツンと強いカプチーノと合うんだよなぁ。
開催場所
2日間あるプリムの祭りはエルサレムなら、「ナハラオート」で街を貸し切っての大騒ぎをしていたり、バーやカフェでのオープンパーティーがあります♪
そして最近では、セントラルバスステーションの近くの「ビニヤニ ハウマ」でアニコンもやっていて、日本語が通じる学生も多く盛り上がっています。
シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)では最初の晩に仮装して集まり、エステル記の朗読を聞きます。
そして、宿敵「ハマン」の名前が読まれる度、大人も子供も音の鳴るオモチャを搔き鳴らし、大ブーイングをして妨害!!
これがなかなか面白く、笑ってしまいます。
民族滅亡の危機を覚える時に、こんなに笑って過ごすなんてなんだか素敵。
なんのお祭り?
どのお祭りであれ、ユダヤ人に何のお祭りですか?と聞くと、決まって返ってくるのが、
「ユダヤの祭りは全部単純さ。誰かが我々を滅ぼそうとした。しかし成功しなかった。我々は生きている!さぁ飲もう!!ははははは」(真面目に聞いたのに。)
影のない豪快な笑い声と共に、ユダヤ人らしいお決まりのジョークです。
しかし真実をついてる。それくらい迫害を受けてきた民族なんです。
でも、それすら笑い飛ばして生きている喜びを楽しむ。
恨みや怒りではなく、喜びを継承する。イスラエルの魅力の一つだと思います。
プリムの物語
「エステ」の語源がこの祭りに関係していると聞いたら驚くでしょうか?
プリムの美しき主人公、ユダヤ人にしてペルシャの女王となった「エステル」からきているんです。
ユダヤ人の悲劇「バビロン捕囚」を、歴史の授業で聞いたことがあるような気がするでしょう?…しない?笑
これはその頃、2500年ほど前のお話です。
当時のペルシャの王、アハシュエロス王の妃選びに招集された、国中の美しい女性たちの中から「エステル」は選ばれました。
(捕囚されたのって一般市民ではなく、王族や貴族など階級の高い人たちだったようです。)
国中から集められて選ばれるなんて、美しさどんだけ〜。
アハシュエロス王はエステルを愛します。
ところが、当時の総理大臣「ハマン」はあるユダヤ人が憎くてたまらず、民族ごと滅ぼしてやろうと密かに暗躍しユダヤ人虐殺計画を立て、王からその権限もまんまともらいます。
そしてついに、ユダヤ人抹殺の日がクジで決まりました。
ユダヤ暦、アダル月の13日。
ハマンが憎んだユダヤ人のモルデハイは、実はエステルの叔父。
ユダヤ人であることを伏せて妃となっていたエステルに、モルデハイは「あなたがここに来たのは、もしかするとこの時のためであるかもしれない。」
と王への進言を託します。
しかし、王の呼び出しなく王の庭へ入ると、男女問わず即打ち首。
しかもユダヤ人抹殺の日が定められた後、エステルがユダヤ人であることを明かすと言うことは、命がけのことでした。
一歩間違えば自分は死ぬ。そして同胞も皆死んでしまう…
しかし、エステルは断食の祈りを捧げ、同胞のために立ち上がったのです。
なんて勇気ある美しい女性!
この話が記されている「エステル記」は面白い上に、聖書の中でも短いからぜひ読んでみてください。
長くなるので色々端折りますが、その後ハマンは自分の作った処刑台で死ぬこととなり、アダル月の13日のユダヤ人暗殺計画は一変。
「ユダヤ人を殺そうとしたものは殺して良い。」とおふれが出た為、多くのペルシャ人が恐れ、ユダヤ人になりすましました。
この、「なりすました…」の部分が仮装と繋がっているとかいないとか。笑
この時、クジ(プル)で決まったユダヤ人抹殺の日が、一発大逆転の喜びの日、命の日に変わったことを神に感謝し喜びまくる。それがプリムのお祭りです。
お祭りの日はいつ?
ユダヤ暦で祝われるので、毎年2・3月のどこか…と日がズレますが、アダルの月の14・15日に祝われます。
プリムには思いっきり仮装して楽しみましょう♪
エルサレムがディズニーランドみたいになるので、仮装していない方が恥ずかしくなってきます。笑
ただし、エルサレムはまだ寒いので気をつけて!
今年も世界各地でクリスマスの飾り付けやイベントで賑わう季節がやってきました。実際にイエス・キリストが生まれたここイスラエルではもちろん盛大にクリスマスを祝って
いません。笑
不思議なねじれ現象が起こるこの季節・・・イスラエルでは「ハヌカ」と呼ばれる光と油のお祭りを祝います。
ほら。街にはクリスマスの「ク」の字もなく、クリスマスの飾りつけもありませんよね…いつも通りの街並み・・・
知らずに来たクリスチャンの友人は、かなり唖然としていて可哀想になる。笑
今回は、そんなハヌカのお祭りの目玉となる、甘党を虜にするのスイーツと幻想的なキャンドルナイトを紹介したいと思います。
「街中にキャンドルが灯る「ハヌカ」の物語り」の記事では、このお祭りのきっかけになったストーリーも紹介しています。
イスラエルの全国民が甘党?!みんな大好き「スフガニア」
ハヌカの祭りにイスラエル人が心待ちにしているもの…それが『スフガニア』です!
ジャムやクリームの入った揚げパン(イースト入りのドーナツのようなもの)。
毎年、味も種類もクオリティーも競い合ってレベルが高い!
イスラエル保健省からは「食べすぎは太ります!」との警告が出るほどの人気っぷり!
そんな警告もなんのその。なぜならこの祭りには油が欠かせない油の祭り!料理にもたっぷりの油が使われます。
不思議なことに新鮮なオリーブオイルが安く手に入るからか、たっぷりの油料理でも胃もたれをしたことがないから不思議!イスラエルのオリーブオイルはとっても美味しいです。
国民の愛するスフガニアは糖+油+炭水化物!
絶対美味しいカロリー爆弾!笑
「今日いくつ食べた?」「5つも食べちゃった!」お決まりのハヌカトークに糖尿病が心配に・・・笑
毎年スフガニア店ランキングが盛り上がっていて、スフガニア祭りです。
同僚が職場に箱で買ってきたり、語学学校の休憩時間に配られたり、帰宅のバスの中で無料配布が始まったり…と私は甘いものがそこまで好きではないのでこの「スフガニア・テロ」には参りました。笑
が、私の周りの甘党日本人は大熱狂!!
こちらもハヌカの定番、ポテトパンケーキの「ラトケス」。
幻想的なキャンドルナイト
ハヌカは8日間続きます。
毎日日暮れになると「ハヌキヤ」と呼ばれる9本の燭台に一日一本ずづ蝋燭を灯していき、祈りを唱え、家族でハヌカソングを歌い祝います。
このハヌキヤは、外から見える窓辺や玄関に飾られるので、日が落ちた時間の街の窓辺には蝋燭が並んでいて綺麗!
8日目には9本全てに火が灯るのですが、おすすめしたいのがエルサレムのマハネ・イェフダ市場の裏手にある「ナハラオート」と呼ばれる地区。
敬虔なユダヤ教の家族が夕方それぞれの家の前で蝋燭を灯し、祈り、小さな子供からお年寄りまで、思い思いにハヌカソングを歌うのです。
ギターとカホンが心地よく響き、あちこちから歌声が聞こえてくる路地はロウソクの暖かい光に照らされて散歩するだけで幸せな気持ちに・・・
声をかけると快く写真を撮らせてくれたり、一緒に歌って踊ったり…町中一緒にハヌカを祝う笑顔が溢れています。
旧市街のユダヤ人地区もとっても美しく、おすすめです。
今年はあなたもヘブライ語での挨拶「ハヌカサメアー!」と言いながら、毎日ロウソクを窓辺に飾ってみては?ぜひこのお祭りの喜びを一緒に!
ハヌカは2100年とか2200年前くらいにイスラエルで起こった事件を記憶し、記念しているお祭りで、「奉納」とか「献堂」なんて意味があります。イスラエルのお祭りの中では割と新しい祭なんです。(それでもかなり古い・・・)
当時、イスラエルは、アンティオコス4世のセレウコス朝(シリアあたりの王朝。ややこしいけどギリシヤ人)による支配を受けていました。
(この地域の覇権争いは凄まじくややこしいですよね。覚えられない)
この頃、ギリシア人たちは彼らの文明「ヘレニズム」を広めるのを占領政策としていたので、ユダヤ教の掟を禁止し、異教の文化を押し付け弾圧し、ユダヤの神殿を汚しました。
それがどのくらい屈辱的なことか…
例えば、日本の近くの強国が責めてきて「日本の正月等の祭りは廃止、全員〇〇語を話すように。今の天皇を〇〇人の天皇に変えます。御所はそのまま使います。畳は土足であがります・・・」とかされたら…しかも政府の一部は寝返って忖度しまくりになったとします。
そうなると…きっと反乱起きますよね?(※例えは適当です。)
ユダヤ人たちは独立を勝ち取るため、大した武器もないのに立ち向かったんです。
その時の英雄がマタテヤとその息子たちでした。
その中でも特に息子の「ユダ・マカバイ」が大活躍!
マカバイたちは強力なギリシア軍に勝利し、紀元前165年エルサレム神殿を解放しました。
ちなみに、日本でも表彰式でお馴染みの曲、「見よ、勇者は帰る」のメロディーは知っているはず!(https://www.youtube.com/watch?v=7e06JEupzvA)
この曲はこのハヌカ事件のマカバイたちが題材なんです。
神殿で灯す燭台の光は神が絶やしてはならないとした大切な燭台で、神が絶やしてはならないとした神聖なものです。
神殿用に特別な一番絞りのオリーブオイルが捧げられていたのですが、占拠していたギリシア軍は油壷を全部使えないものにしてしまっていました。
神殿を取り戻したユダヤ人たちが火を灯そうとして探して見ると、あったのはやっと1つの油壼のみ。わずか1日分にも満たなかったのです。
それでも…と灯してみると、まるでエルサレム奪還を喜ぶように8日間燃え続けた・・・というのがハヌカの歴史。
なのでこの時期には、どの料理にもたっぷりの油が使われるんですね。
この出来事を記念して、ハヌカは現在も大切にされているお祭りのひとつです。
よーーーーーく見ると、イスラエルでよく目にする燭台のメノラー(写真左)は枝が7本なのですが、ハヌカで使うハヌキヤ(写真右)は9本です。
8日間燃え続けた神殿のともしびを記念して、1日1本づつ8日分の燭台なのです。
(9本なのは1本が火をつける用のろうそくだから・・・説明難しい・・・詳しくは現地でやってみましょう。笑)
そんなことから、ハヌカは「光の祭り」であり、「油の祭り」でもあるんですね〜!
この時期に日程を合わせて行くのもいいですね♪
全国民がテントで生活?のお祭り「スコット」
今から約3,300年前、イスラエルの民はエジプトの奴隷から解放され、自由を得て、モーセに導かれ荒野で生活をしました。その時の荒野での仮庵生活を覚え、祝うお祭りが「スコット」です。
ヨムキプールが明けると、町中に仮庵が次々と現れ、一週間仮庵で生活しながら祝います。
イスラエルの9・10月のお祭りの記事を順番に読んでいる方は気がつくと思いますが、この時期のお祭りは全て繋がっています。
400年も奴隷だった民が、自由になる。というのは、喜んでばかりもいられません。染み付いた奴隷根性はそう簡単に自覚すらできませんから、矯正も難しい!
自由にされ、神の民と呼ばれるにふさわしく、人としての在り方を学び、自分の頭で考え、行動に責任を持つ生活をする民へと、生き方を変えるのです。この訓練のような40年間を、エジプトを出てから約束の地(イスラエルの地)へたどり着くまで、荒野を彷徨ったのです。
それは、「自由」とは何か、「自由」を楽しむとはどう生きることなのかを知り、失敗しながらも体に叩き込んでいくような時間。人間って意外と「自由」を持て余すんだなって思うようになりました。時間が余るとロクなことしない・・・笑
ヨムキプールの断食が明けると、街中のベランダや歩道、空き地に手作りの掘っ建て小屋が次々と現れます。
イスラエルの祭り全てに言えることですが祭りを祝うのは子どもたちのため。
1000年の単位で父祖たちが得てきた膨大な知恵と生き方を、子どもたちは祭りを楽しく体験しながら自然に身につけます。
思い思いに「スッカ」と呼ばれる小屋の中を飾り、祭りの期間はこの中で飲食します。
なかには寝泊まりまでする子も!
子ども時代にこんなのあったら完全に秘密基地ですよね!それにここでご飯食べたりって、ワクワク止まらない!夢のようだ…。
この期間はレストランやカフェもスッカ仕様に!
スコットのマーケット
この時期だけのマーケットが開かれ、ユダヤのお父さんたちがバーゲンセールの女性のようにひしめき合います。みんな超真剣!
買っているのはスコットの祭りに欠かせない4つの「植物」
・etrog (シトロンの実)
・lulav (ナツメヤシの若葉)
・three hadassim (ミルトス/ギンバイカの小枝)
・and two aravot (柳の小枝)
スコットではこの4つの植物を一つにして、神を賛美する歌を唱え、振ります。
あるラビが、これは何を意味しているかを説いていたのですが、とても感動したのでシェアします。
"シトロンは香り高く、味も良い。
ナツメヤシは香りは無いが味が良い。
ミルトスは香りは素晴らしいが、味はない。
柳は香りも味もない。"
これは、神への信仰と聖書の知恵を身につけていることを「香り」に、良い行いとその結果を「味」に例えていて、
「知恵もあって、良い行いもある人」
「知恵はあるけど、良い行いがない人」
「知恵はないけど、良い行いはある人」
「知恵もないし、良い行いもない人」
…という具合に、4つのタイプの人間を表すのだとか。
肝心なのは、どれが良くて、どれがいいとかいうことではありません。
その全てを一つに束ねて"一緒に振る"という行為。
全ての人が共に神を讃え、礼拝する。共に生きる。ということ。
自由な民、一つの国民となるとはそういうことなのだ・・・と。
味も香りもないからと言って捨てない…イスラエルの民の心を垣間見るような気がしました。
しかーーし、後世に始まったスコットの最終日「ホシャナラバ」で、柳の枝(知恵もないし、良い行いもない人に例えられる植物)を床に叩きつける習慣を見て「えーーー」となる私。笑 ドユコト???
ここでもう一つ。
"シトロンを心臓、ミルトスを目、ナツメヤシを背骨、柳を口、として、それぞれの植物で人間の各部分を表している"とも聞きました。(ユダヤ人は全身を神に捧げる姿勢を示しているとか。)
あー、なるほど。イスラエル人ってお喋り好きで、口はいつも賑やかなので特別に叩いている…のかな?笑 なんて笑ってしまいました。
このスコットの期間にもイベントは多く、スコット中のツアーに参加した時には、ランチをスッカの中で食べるという素敵なイベントも!
私が訪ねた家のスッカの中には20羽くらいのインコたちが!食事中ずっとさえずっていて素敵でした。
また、ダンスに巻き込まれたことも…
みんな集まりの終盤には男女それぞれ和になって皆ぐるぐる踊り出すのです!全力で!!力の限り!!もちろん聖書の知識もない、聖書のルールも守らない外国人の私たちだって大歓迎して仲間に入れてくれます。そう。4つの植物を一緒にして振るように・・・・
会場に音楽と笑いが溢れ、めちゃくちゃ楽しい空間に巻き込まれ、それはほとんど嵐!喜びの嵐です。
「シムハットトーラー」トーラー授与の日
スコットが終わった8日目と9日目には、「シムハットトーラー」というお祭りがあります。
ユダヤ教徒は、世界中どこにいてもシャバット(安息日)に読むトーラーの箇所は同じで、1年で一周するように読まれます。
この日は巻物を読み終え、また新たに読み始めるため、トーラーの巻き戻しをする日です。
トーラーは彼らにとって、神が与えてくれた最大、最高のプレゼント。神のことばであり、知恵の結集。
そんな彼らの喜び方と情熱にはいつも驚きます。
各シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)や西壁には信じられない数のユダヤ教徒が集まり、トーラーの巻物を抱えてダンスに次ぐダンス!大いに喜びます。
彼らのトーラーに対する想いはそこ知れず熱い。
仕事そっちのけで、1ヶ月間のスーパーホリデーを全力で楽しむイスラエルの姿、世代から世代に記憶と知恵を継承し、過去に生きた父祖たち、そして未来の子どもたちもひっくるめて大きな家族として共に喜ぶ姿勢。この国ならではのお祭りの祝い方にイスラエルの命を感じます。
イスラエルのお祭りが食卓で行われることや、家族で過ごすことを何よりも喜ぶ姿、何とも楽しそうな子どもたち、満ち足りた笑顔の数々は、見ていて妬みが起きそうなほどに麗しい!!!!!喜び上手!楽しみ上手!
自由の使い方うまいなぁ。と唸ります。3300年修行を繰り返していると思えば、スキルの差は歴然なのかも・・・笑
新年の「ロシュハシャナ」から10日後、イスラエル最大の静寂の日がやってきます。
ユダヤの伝統では、神はロシュハシャナとヨム・キプール(大贖罪日・だいしょくざいび)の間の10日間の間にすべての被造物を裁き、来年、生きるか死ぬかを決定するとされています。なんだか・・・恐い・・・・
ユダヤ教の教えでは、神が正しい者の名前を「いのちの書」に刻み、悪人には死を与えるとされます。
そのため多くのユダヤ人たちはこの10日間、特に祈りと善行、過去の過ちを反省し償いをする期間と考えて行動します。祭りではありますが、命がかかっているとなると遊びじゃありません!真剣そのもの。
宗派によっては40日前からヨムキプールに向けて祈っている人もいるとか。
ヨムキプールは「贖罪の日」という意味です。
約26時間、神への祈りにのみ集中するため、インターネットは使わず、飲食をひかえ、革靴を履かず?!化粧水やクリームを塗ったりもせず?!入浴もせず!!!洗濯もせず!!!!夫婦の営みを避け、水さえ飲まない断食をする人もいます。(守り方は千差万別)
そして、シナゴーグでひたすら赦しを求めて祈りながら一日を過ごすとか…
さて、日本人の私たちが「裁かれる」とか「罪を悔い改める」と聞くと、法律を犯すこと、犯罪者のことを思い浮かべませんか?「私は善良な市民なので、悔い改めは必要ない。」と思いそうですが、聖書の言う「悔い改め」はそうではありません。
この期間、ユダヤ人たちは家族や友人に、「去年1年間、あなたを傷つけたり、悲しい思いをさせていたらごめんなさい」と言い、言われた方も「もちろん許すよ。私のことも許してくれる?」と、互いに言葉をかわします。
「あるべき姿ではない」ことが聖書の「罪」
神が人を作った目的や意図を無視していないか?ということを思いめぐらし、悔い改めるのです。
他人を許しているか?許してもらったか?
自分だけのためにお金や時間を使って生きてはいなかったか?
平和であろうとしたか?
助けを必要としている人を無視しなかったか?
与えられたものに満足し、喜び楽しんだか?
などなどなど・・・・
聖書の教えに耳を傾け、自らの魂に問い、悔い改めのアクションを起こす。国中の人たちが、この悔い改めの期間を祭りとして過ごすなんて!
私もヨムキプールに参加してみました。
驚いたことがいくつか…
・空港は閉まる。信号機も止まる。(昼間もですよ?!そんな馬鹿な!!!!)
・車が本当に一台もいない・・・。
・歩行者天国状態の道路にスケートボードや自転車、おもちゃの車で遊びまわる子ども達で溢れる。
・断食前後の食事が信じられないほど高カロリー。油と糖分しかないのでは?!(日本人の友達は胃がびっくりして吐いていた。)イスラエル人の胃は強い。
例え観光での滞在であったとしても、この日にはタクシーを呼んだり、車を運転したりしないよう、要注意。この日だけは、道路の支配権は子どもたちにあります。笑
夜は、みんなでのんびり西壁までお散歩。不思議な静けさにドキドキしました。
日本のお祭りとは全く違う感覚。
国中が一つになって、まるで土地そのものが悔い改めているかのよう。全身で、全国で、神に向かう民だなぁ・・・・感じたことの無い「畏怖」に言葉が出ません。
この日は撮影をしない日、西壁やシナゴーグではシャッターを切ることはできません。
じゃあここにある写真はなんなのか……知らなくて、うっかり撮っちゃったんです。
でも、誰かに責められることもなく、指摘もされず、気づいたのは翌年。冷たい視線すら感じなかったんです。
ヨムキプールは他人の間違いや、失敗を責めるのではなく、許すこと、そして、自分の在り方を悔い改め、どう生きるかを問うことに関心があるのか。と思いました。他人の失敗や無礼や間違いなんて興味もない。それがこの祭りなのかと理解した時は鳥肌で、これが根っこにあることが、この国の美しさを作っているのかもしれない・・・と思いました。
(※西壁の写真だけは許可されている別日です。)
そんな特別な空気感が漂う時期ですが、交通機関もお店も動いていないので、旅行の日程には注意してください。でも、一度は体験して欲しいなぁ。
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