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「イランとの交渉は大きく進展した」——トランプ米大統領はそう宣言した。だがイラン外務省は即座に否定した。交渉など存在しない。一体、何が起きているのか。
著名経済学者ジェフリー・サックスは、この不可解な出来事の背後にあるものをこう診断する。
トランプが虚構と現実の区別をつけられなくなる精神状態——前頭側頭型認知症の可能性だ。彼は現実にはなかった"交渉"を、心から"事実"だと信じているという。
しかし問題は一人の精神状態ではない。
サックスが衝撃的な事実として指摘するのは、アメリカという国家のガバナンス(統治機構)そのものが崩壊していることだ。中国は2年かけて数百人の専門家を動員し、詳細な5カ年計画を策定する。一方、アメリカには1カ月先の戦略すらない。イランへの48時間以内の降伏要求も、その後の"交渉"発言も、すべてはその場しのぎの即興に過ぎない。
トランプ政権の政策は、数人の側近による衝動的判断で動いている。ロシア経済は1週間で崩壊すると見積もり、中国のハイテク産業は半導体禁輸で瓦解すると予測し、イラン政権は"斬首"で倒せると信じた。そのすべてが外れた。なぜか。分析に基づく計画が存在しないからだ。
そして欧州はこの"狂気"に完全に従属している。ドイツ大統領が「これは大きな過ちだ」と発言すれば国内メディアに叩かれ、ベルギー首相が「ロシアとの正常化」を口にすれば糾弾される。平和を唱える者が非難され、戦争を煽る者だけが「道徳的」とされる倒錯が、西側世界を覆っている。
このままイランとの紛争はどうなるのか。サックスは3つのシナリオを描く。
第一はアメリカの軍事的勝利だが、空爆だけでイランを屈服させるのは非現実的だ。
第二はイランのミサイル戦による勝利。イランはホルムズ海峡を封鎖し、敵対勢力のエネルギー施設を壊滅させる能力を持つ。
第三は、中国、ロシア、インドが結束し、湾岸諸国にも呼びかけてアメリカに撤退を迫るシナリオだ。
かつてズビグネフ・ブレジンスキーは警告した。多極化する世界に対し、アメリカが協調的にその形成を導けば有利な地位を維持できる、と。今、アメリカはその逆の道を選んだ。国内の統治機構は崩壊し、戦略的思考を失いながら、なお一極支配にしがみつく。
最も恐ろしいのは、もはや世界の大多数が、この"帝国"の暴走を止めるために結束せざるを得ない局面に差し掛かっていることだ。そこに現れるのは、アメリカ主導の秩序か、それともアメリカ抜きの秩序か——どちらでもない。問われているのは、意思決定能力を喪失した超大国が、世界を巻き込んで自壊するのを誰が、どのように止めるのかという、かつてない構図である。
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Glenn Diesen interview with Jeffrey Sachs
著者:Jeffrey Sachs(コロンビア大学教授、経済学者)
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