2026年3月29日日曜日

山上徹也被告 NHKの文書での取材に応じる 安倍晋三元首相銃撃事件 | NHKニュース | 安倍晋三元首相銃撃事件、旧統一教会、奈良県

山上徹也被告 NHKの文書での取材に応じる 安倍晋三元首相銃撃事件 | NHKニュース | 安倍晋三元首相銃撃事件、旧統一教会、奈良県

山上徹也被告 NHKの文書での取材に応じる 安倍元首相銃撃事件

安倍元総理大臣を銃撃したとして殺人などの罪に問われ、1審で無期懲役の判決を受けた山上徹也被告が、文書での取材に応じました。どんな支援制度があれば状況が変わったか問うたところ、「そんなものはない。統一教会が無ければそもそも起こり得なかった」と答えました。

山上徹也被告(45)は、2022年7月、奈良市で参議院選挙の応援演説中だった安倍元総理大臣を手製の銃で銃撃して殺害したとして、ことし1月、奈良地方裁判所で無期懲役を言い渡され、判決を不服として控訴しています。

判決から1か月余りたった3月上旬、被告がNHKの取材に文書で応じました。

山上被告がつづった書面

山上被告が文書で取材に応じた内容の詳細です。4枚にわたってつづられていました。

生い立ちについて

裁判で、山上被告は、母親の旧統一教会への信仰や多額の献金によって家庭が崩壊したと説明していました。

被告には、まず、母親の入信の前後で家庭内にどのような変化があったかを尋ねました。

これについて被告は、「入信と高額献金の発覚の前後で劇的に家庭環境が悪化」としたうえで「親への信頼の根本的喪失」と答えました。

また、母親がしきりに、「道端で寝るような事になっても献金をしなければ」と話していたことも明かしました。

"兄の敵討ち"について

被告が旧統一教会への復しゅうを決意するきっかけとされたのが、母親の信仰に反発していた兄の自殺でした。

事件について、「兄の敵討ちのつもりだった」という趣旨の発言を弁護士にしていたことも、これまでの取材でわかっています。

このことばの真意を問うと、「兄は生前、教会へ苦情、談判に行くも追い返される。通夜での教団儀式の強行。その後の母と教団の呵責の無さ、開き直り、何事もなかったかのよう」などと回答しました。

試射現場は "原風景"

銃撃を決意した被告は、銃の製造を始め、奈良市内の山中で試し撃ちを繰り返しました。

その時の心境を問うと、「試射自体に高いリスクがあり、他の事を考えている余裕はなかった」としたうえで、注意していたこととして「火薬の暴発、銃の破損による負傷、発砲音や偶然による第三者への発覚・遭遇、クマ・ハチなどの対策」を挙げました。

さらに、「ああいった山中の荒れ地、殺伐とした風景は小学生ぐらいの頃に祖父が休日などにドライブがてら仕事現場の見回りに兄と私を連れて行く事があり、ある意味原風景ではある」ともつづっていました。

"教団の公認 安倍氏通して完成の域に"

被告は当初、教団幹部の襲撃を計画していましたが、その後、安倍元総理大臣が教団の関連団体に寄せたビデオメッセージを見て、標的を徐々に変えていったことが裁判で明らかになりました。

ビデオメッセージを見た時のことを聞くと、「教団の公認、社会的承認の獲得が安倍氏を通して完成の域に達しつつあった」などと記しました。

裁判では、「安倍元総理が殺害されなければならなかったのは、間違いだったと思う」と述べ、遺族に対して「自分に弁解の余地はない。非常に申し訳ないと思っています」と謝罪のことばを口にしていました。

事件は防げなかったのか

山上被告は裁判で、事件を起こしたことについて「このような結果になってしまい、大変ご迷惑をかけている」と受け止めていました。

社会にどのような支援制度などがあれば状況が変わったか問うと、「そんなものはない。統一教会が無ければそもそも起こり得なかった。あのままで統一教会が問題視される事は絶対になかった」と答えました。

北海道大学 櫻井義秀特任教授

これについて、宗教社会学者で、被告と10時間以上面会している北海道大学の櫻井義秀特任教授は次のように分析しています。

北海道大学 櫻井義秀特任教授
「現在であれば宗教2世が教団に対して責任を問う訴訟があるが、被告が強烈な怒りや恨みを持った10年前には手段がなかった。自分がなぜこういう判断をしたのかを当時の状況の中で理解してほしいという、彼の叫びが出ていると思う」

判決は、「合法的な手段による解決を模索せず、殺人を実行した」と指摘しました。

この判決内容に対する受け止めを尋ねると、山上被告は「すでに弁連=全国霊感商法対策弁護士連絡会や、キリスト教牧師、被害者の会の活動などを見聞きしており、それらに対する統一教会の妨害なども知っている」として「一個人に解決など期待できるわけがない」などと反論しています。

一方、判決は、「旧統一教会やその関係者に激しい怒りを抱いたとしても他者の生命を奪うことを決意し、そのために銃の製造を計画して実行したことには大きな飛躍がある」とも指摘しています。

旧統一教会への解散命令について

事件のあと、高額献金や霊感商法の問題が改めて注目され、3月4日、東京高等裁判所が教団に解散を命じ、教団の清算手続きが始まっています。

高裁の判断について、被告は「ホッとした」としたうえで、「ある程度は解決になるし、区切りではある」とつづりました。

また、「制度として解散か放置かの両極端ではなく、中間的な規制があれば深刻な問題にはならないのではないか」としています。

これについて櫻井特任教授は、次のように指摘しています。

北海道大学 櫻井義秀特任教授
「霊感商法の被害は1980年代からあり、この段階で問題が緩和されていれば、宗教的な被害はなく、今回の事件もなかったとして、『なぜもっと早くこまめに手を打ってくれなかったのか』ということを言いたいのではないか。被告が旧統一教会を潰したいと思っていたことは確かで、解散命令という形で実現されたことで、生きる意味が達成されたと考えている部分があると思う。ただ、そのために人の命を奪ったことに対する反省や内省は今後、詰めてもらわなければならないと思っている。被告にはもう一度、『人の命を奪う以外の手段がなかったのか』と問いかけざるをえない。これを言っていかないと、暴力によって問題の解決を図ろうという人が今後も出てくるかもしれない。事件の背景に何があるのか、問題の解決はどうなされるべきであったのか社会が十分分析し、反省する必要がある」


事件や裁判の経緯

山上被告は、2022年に奈良市の近鉄・大和西大寺駅前で参議院選挙の応援演説中だった安倍元総理大臣を銃撃し、その場で逮捕されました。

警察の調べに対して、「母親が旧統一教会にのめり込み多額の寄付をするなどして家庭生活が崩壊した」という趣旨の話をし、安倍元総理大臣を狙った理由については、「教団と近しい関係にあると思った」などと供述しました。

その後、殺人などの罪で起訴され、2025年10月に始まった裁判で、「すべて私がしたことで間違いない」と述べ、起訴された内容を認めました。

裁判には、被告の母親や妹が証人として出廷しました。

このうち母親は、夫の自殺や長男の病気を苦に旧統一教会に入信しておよそ1億円を献金したと説明したうえで、「私が加害者だと思う。私がちゃんとしていたら、こんな事件は起こらなかった」などと述べました。

妹は、母親の献金について、「相談する窓口は見つけられず、合法的な方法ではどうすることもできなかった」と証言しました。

山上被告本人への質問も5回にわたって行われました。

被告は、母の献金で経済的に困窮した生活を送り、その後、信仰に反対していた兄の自殺をきっかけに教団への復しゅう心を強めていったいきさつを話しました。

また、安倍元総理大臣が旧統一教会の関連団体に寄せたビデオメッセージについて、「教会がどんどん社会的に認められて、問題のない団体として認識されるのではないかと思った。被害を被った側からすると、非常に悔しく受け入れがたい」と述べました。

裁判では、こうした被告の境遇を刑の重さにどの程度考慮するかが大きな争点となりましたが、奈良地方裁判所は「不遇な生い立ちが大きく影響したとは認められない」として、求刑どおり無期懲役を言い渡しました。

被告側はこの判決を不服として控訴しています。

この事件のあと、親から信仰を強要され進学などを諦めたという「宗教2世」たちが声を上げ、被害者の救済を図るための新たな法律の成立につながりました。

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