仏祖統紀
『仏祖統紀』(佛祖統紀、ぶっそとうき)は、中国の南宋の僧志磐が、咸淳5年(1269年)に撰した仏教史書である。全54巻。天台宗を仏教の正統に据える立場から編纂されている。
概要
本書は、南宋の景遷による『宗源録』や宗鑑による『釈門正統』の基礎の上に編纂されたものである。宝祐6年(1258年)から咸淳5年(1269年)の間の12年間を費やして編纂された。
構成
本書は、『釈門正統』が編年体によって叙述したのを受けて、紀伝体による叙述を行なった。
- 本紀(8巻)
- 釈迦仏伝(巻1-4)
- 西土二十四祖(巻5)
- 東土九祖(巻6,7)
- 興道下八祖(巻8)
- 世家(2巻)
- 天台宗旁出諸師略伝(巻9,10)
- 列伝(12巻)
- 天台宗諸師法嗣略伝(巻11-22)
- 表(2巻)
- 歴代伝教表(巻23)
- 仏祖世系表(巻24)
- 志(30巻)
- 山家教典志(巻25)
- 浄土立教志(巻26-28)
- 諸宗立教志(巻29)
- 三世出興志(巻30)
- 世界名体志(巻31,32)
- 法門光顕志(巻33)
- 法運通塞志(巻34-48)
- 名文光教志(巻49,50)
- 歴代会要志(巻51-54)
の5篇19科を立てた。
内容
本書が詳細に記述するのは、天台宗の伝法世系であり、兼ねてその他の各宗に渉っている。引用する内外の典籍は200種に近い。本書の欠点は、収録する名僧の間に往々にして僧名を記さず、山名、師号、寺名などによって代替し、徒らに後世の研究の困窮を増していることである。
その「志」中の「法運通塞志」(ほううん つうそくし、第34-48巻、全15巻)は、編年体の通史に相当する部分であり、『釈門正統』や、禅宗史書である『隆興仏教編年通論』などの先行書、元代の『仏祖歴代通載』、明代の『釈氏稽古略』などの後代の書と同様、仏教伝来以来の歴史を通観するのに便利な書物となっている。但し、唐代以前の部分に関しては、引用の誤りなども散見されるため、利用する際には、原典に当たって記述を確認する必要がある。
また、その中には、仏教のみにとどまらず、道教・マニ教・ゾロアスター教などの記事も含まれるため、天台宗史・中国仏教史のみならず、中国の宗教史の研究の上で、貴重な資料を提供している。
テキスト
『大正新脩大蔵経』巻49「史伝部」所収本等の各種のテキストがある。但し、『大日本続蔵経』所収本は、全55巻であり、元より明初に至る記事が後人の手で増補されている。
翻訳
- Thomas Jülch, Zhipan's Account of the History of Buddhism in China, Volume 1: Fozu tongji, juan 34-38: From the Times of the Buddha to the Nanbeichao Era, Sinica Leidensia, no. 93, Brill, 2009. 34巻から38巻までの訳注研究。
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