2022年10月28日金曜日

ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理 - Wikipedia

ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理 - Wikipedia

ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理

数学、特に実解析におけるボルツァノ–ヴァイヤシュトラスの定理(ボルツァノ–ヴァイヤシュトラスのていり、: Bolzano–Weierstrass theorem)は、ベルナルト・ボルツァーノおよびカール・ヴァイヤシュトラスに名を因む、有限次元ユークリッド空間 n における収束に関する基本的な結果である。定理は「n 内の任意の有界数列収束する部分列を持つこと」を主張する[1]。これと同値な定式化として、「n の部分集合が点列コンパクトであるための必要十分条件は、それが有界閉集合となることである[2]」という形で述べることができる。この定理をしばしば (n の) 点列コンパクト性定理とも言う[3]

歴史と意義

ボルツァノ–ヴァイヤシュトラスの定理は、ボルツァノとヴァイヤシュトラスという二人の名前が冠されているが、実際には1817年にボルツァノが中間値の定理の証明において補題として証明したのが初出である。50年ほどしてから、この結果自身の重要性が見いだされ、ヴァイヤシュトラスによって再び証明された。それ以降、実解析における本質的な定理と位置付けられた。

証明

証明[隠す]

まず、定理を n = 1 の場合に示す。この場合 の順序(大小関係)が有用な手がかりとなる。実際、以下の結果がある:

補題
の任意の無限列 (xn)単調な部分列を持つ。
補題の証明[4]
いま正の整数 n がこの列の「頂点」(peak) であるとは、「n < m ならば xn > xm となる」—すなわち、xn がその列に属する他のどの xm よりも大きい—ときに言う。まず、数列が無限個の頂点を持つと仮定して、それを番号順に n1 < n2 < ⋯ < nj < ⋯ とする。このとき、これら頂点に対応する部分列 (xnj) は単調減少である。次に、頂点が有限個しかないと仮定した場合を示そう。頂点のうち最大のものを N として、n1N + 1 とする。N < n1 だから n1 は頂点でなく、したがって番号 n2n1 < n2 かつ xn1xn2 を満たすようにとれる。やはり n2 > N は頂点でないから、したがって番号 n3n2 < n3 かつ xn2xn3 を満たすようにとれる。以下同様に繰り返せば、非減少無限列 xn1xn2xn3 ≤ ⋯ が作れる。

数列が有界でない場合も含めて、上記の補題により単調部分列は取れるが、そもそも 有界数列に対して補題を適用したとすれば、単調収束定理により、この単調部分列は収束しなければならない。

最後に、一般の場合が n = 1 に帰着できることを見よう。n の有界点列が与えられたとき、その第一座標成分からなる列は、有界実数列であるから収束する部分列を持つ。その部分数列に対応する部分点列に対し、さらに第二座標成分からなる「部分」部分列を取って収束する部分数列をとり、以下同様に続ける。このように部分列をとる操作を、もとの点列から n 回繰り返せば終了し、得られたものもやはりもとの点列の部分列で、どの座標成分の成す数列もそれぞれ収束するから、この部分点列自身も収束する。

別証明[隠す]

縮小区間列英語版を用いた別証明もある。有界点列 (xn) から始めて

  • [1] (xn) は有界であるから、下界 s および上界 S が取れる。

    [1] (xn) は有界であるから、下界 s および上界 S が取れる。

  • [2] 縮小区間列の最初の区間 I1 として [s, S] をとる。

    [2] 縮小区間列の最初の区間 I1 として [s, S] をとる。

  • [3] I1 を等分して二つの小区間を作る。

    [3] I1 を等分して二つの小区間を作る。

  • [4] 得られた小区間のうち、(xn) の点を無限に含む方を縮小区間列の第二の区間 I2 とする(両方とも無限個含むならば、どちらを選んでもよい。もとの点列は無限列であるから、少なくとも一つの小区間が必ず無限に含むことに注意する)。

    [4] 得られた小区間のうち、(xn) の点を無限に含む方を縮小区間列の第二の区間 I2 とする(両方とも無限個含むならば、どちらを選んでもよい。もとの点列は無限列であるから、少なくとも一つの小区間が必ず無限に含むことに注意する)。

  • [5] 同様に I2 も等分割する。

    [5] 同様に I2 も等分割する。

  • [6] 同様に (xn) の点を無限に含む方を縮小区間列の第三の区間 I3 とする。

    [6] 同様に (xn) の点を無限に含む方を縮小区間列の第三の区間 I3 とする。

  • [7] 以下同様に無限回繰り返すと、所期の縮小区間列を得る。

    [7] 以下同様に無限回繰り返すと、所期の縮小区間列を得る。

ここで、得られた縮小区間列の長さは、各段階で半分になるから、長さの極限は 0 である。したがって、すべての小区間 In に属する点 x がただ一つ存在する。いま x(xn) の集積点であることを示す:

x の近傍 U をとる。小区間の長さは 0 に収束するから、適当な小区間 INU に全く含まれるものが取れる。先の構成により、IN(xn) の点を無限に含み、INU であるから、U もまた (xn) の点を無限に含む。ゆえに、x(xn) の集積点である。

したがって、(xn) の部分列で x に収束するものが存在する。

ユークリッド空間の点列コンパクト性

n の部分空間 A が、A 内の任意の列が A の元に収束する部分列を持つと仮定する。このとき、A は有界である。実際、有界でないとすれば A 内の点列 xm‖ xm ‖ ≥ m (∀m) を満たすものが存在するが、この列の任意の部分列は非有界で、したがって収束しない。さらに A は閉集合である。これは A の補集合に属する非内点 x から、x に収束する A-値の点列が作れることによる。したがって、n の部分空間 A が、A 内の任意の点列が収束する部分列を持つ—すなわち点列コンパクトな部分集合—であることは、ちょうどそれが有界閉集合となることに同じである。

定理をこの形に述べることで、ハイネ–ボレルの被覆定理との類似性が特に明らかとなる—ハイネ–ボレルの定理の示すところは「n の部分集合がコンパクトであるための必要十分条件が、それが有界閉集合であること」であった—。実は、位相空間論の一般論として「距離化可能空間がコンパクトであるための必要十分条件は、それが点列コンパクトであることである」ことが言えるので、ボルツァノ–ヴァイヤシュトラスの定理とハイネ–ボレルの定理は本質的には同じものということになる。

関連項目

注釈

出典

  1. Bartle & Sherbert 2000, p. 78 (for )
  2. Fitzpatrick 2006, p. 52 (for ), p. 300 (for n).
  3. Fitzpatrick 2006, p. xiv.
  4. Bartle & Sherbert 2000, pp. 78–79.

参考文献

  • Bartle, Robert G.; Sherbert, Donald R. (2000). Introduction to Real Analysis (3rd ed.). New York: J. Wileynone 
  • Fitzpatrick, Patrick M. (2006). Advanced Calculus (2nd ed.). Belmont, CA: Thomson Brooks/Cole. ISBN 0-534-37603-7 

関連文献[編集]

外部リンク[編集]

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