2022年8月3日水曜日

御成敗式目 貞永式目 現代語訳全文


http://www.tamagawa.ac.jp/SISETU/kyouken/kamakura/goseibaishikimoku/index.html

 

「鎌倉時代の勉強をしよう」が本になりました。大人から子供まで、どなたにも分かりやすく御成敗式目が出来た時代背景を知ることができます。
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第1条:「神社を修理して祭りを大切にすること」

 神は敬うことによって霊験(れいげん)があらたかになる。神社を修理してお祭りを盛んにすることはとても大切なことである。そうすることによって人々が幸せになるからである。また、供物(くもつ)は絶やさず、昔からの祭りや慣習をおろそかにしてはならない。関東御分国(かんとうごぶんこく)にある国衙領(こくがりょう)荘園(しょうえん)の地頭と神主はこのことをよく理解しなければならない。神社を修理する際に領地を持つ神社は小さな修理は自分たちで行い、手に負えない大きなものは幕府に報告をすること。内容を調べた上で良い方法をとる。

※(れいげん=神仏にいのってあらわれる不思議なしるし「御利益(ごりやく)」) ※(くもつ=そなえもの) ※(かんとうごぶんこく=将軍の知行国=ちぎょうこく=支配する国) ※(こくがりょう=朝廷に税を納める領地だが、関東御分国のばあいは将軍にも税をおさめる) ※(しょうえん=有力貴族や大寺社の領地だが、鎌倉時代には名目上のものが多かった)  ※(ぜんしょ=うまく、あとしまつすること)


第2条:「寺や塔を修理して、僧侶(そうりょ)としてのつとめを行うこと」

 僧侶は寺や塔の管理を正しく行い、日々のおつとめに励(はげ)むこと。寺も神社も人々が敬うべきものであり、建物の修理とおつとめをおろそかにせずに、後のち非難(ひなん)されるようなことがあってはならない。また、寺のものを勝手に使ったり、おつとめをはたさない僧侶は直ちに寺から追放すること。

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第3条:「守護の仕事について」

 頼朝公が決められて以来守護の仕事は、大番催促(おおばんさいそく)と、謀反人(むほんにん)と、殺人犯の取りしまりである。さらに、夜討ち(ようち)、強盗、山賊、海賊の取り締(し)まりもある。守護の中には代官を村々に送り勝手に村人を思うがままに使ったり税を集める者もいる。また国司でもないのに地方を支配し、地頭でもないのに税をとったりする者がいる。それらは全て違法の行いであり禁止する。
 また、代々の御家人といえども所領を持たない者は、勝手に大番役につくことはできない。荘官(しょうかん)の中には御家人といつわって、国司や領家(りょうけ)の命令に従わない者がいる。このような者には望んでも諸役(しょやく)を任せてはならない。頼朝公が決めたときのように守護の仕事は大番役(おおばんやく)を決めることと、謀反人や殺人事件の調査や犯罪者の逮捕であり、それ以外のことをしてはならない。この取り決めにそむく守護が国司や領家に訴えられたり、あるいは地頭や庶民に対してその非法が明らかになり次第辞めさせて適切な者を守護に任命する。また、守護の代官は一人しか決めてはならない。

※大番催促=朝廷を警護することを御家人に命ずること ※謀反人=朝廷や幕府にそむくもの ※代官=ここでは守護の代理の役人 ※家督=家の長が管理していた財産や、地位  荘官=領家や本家の命を受けて荘園を管理するという役だが実際の持ち主 ※領家=荘園の名目上の持ち主・更にその上に「本家」がある」どちらも名目上の持ち主 ※しょやく=とは警察の仕事、地頭のまとめ役など


第4条:「守護が勝手に罪人から所領(しょりょう)を没収(ぼっしゅう)することの禁止」

 重い犯罪はていねいに取り調べた上でその結果を幕府に報告し、幕府の指示に従わなくてはならない。これを怠り守護が勝手に罪人から没収した財産を自分のものにすることは許されず、従わない者は解任(かいにん=やめさせる)する。また、重罪人であってもその妻子の住む屋敷や家具を没収してはならない。共犯者の場合、没収すべき財産が無ければ財産に関して不問とする。

※重い犯罪者=謀反人(むほんにん=天皇や将軍に敵対した者)や殺人犯など  ※所領=領地のこと ※没収=とりあげること 

※鎌倉時代の刑罰のうち武士には「死刑」「流刑」「追放刑」「禁固刑」「経済刑」「停止刑」、庶民には「指切り」「火印捺」「片鬢剃」などがありました。この条文では犯罪者に対する「経済刑」としての財産没収を守護が私的に運用することを禁止しています。


第5条:「集めた年貢を本所(ほんじょ)に納めない地頭の処分について」

 年貢を本所に渡さない地頭は、本所の要求があればすぐそれに従うこと。不足分はすぐに補うこと。不足分が多く返しきれない場合は3年のうちに本所に返すこと。これに従わない場合は地頭を解任する。

※本所=荘園の持ち主(名目上が多かった) ※解任=やめさせること


第6条:「国司や領家の裁判には幕府が介入(かいにゅう)をしないこと」

 国衙や荘園の本所あるいは神社や寺が起こす裁判に幕府は介入しない。本所の推薦状(すいせんじょう)がなければ荘園や寺社の訴えは幕府ではとりあげない。

※介入=口出し ※国衙=朝廷の支配地

※御成敗式目が幕府御家人に対して作られたものであることを表している条文です。

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第7条:「頼朝公や政子様(まさこ)から与えられた所領(しょりょう)の扱いについて」

 頼朝公をはじめ源家三代の将軍のとき、および二位殿(にいどの=北条政子)の時に御家人に与えられた領地は、本所などの訴えがあっても権利を奪われることはない。
 所領は戦の勲功(くんこう)や役人としての働きによって御家人に拝領(はいりょう)されたものであり、きちんとした理由があるものである。にもかかわらず、領主が御家人に配せられた領地を指して「先祖の土地」と言い訴えることは、御家人にとってははなはだ不満なことである。したがってこのような訴訟は取りあげない。ただし、その御家人が罪を犯した場合には領主が訴えることは認める。しかし、判決が出た後に再び訴訟することは禁止する。以前の判決を無視することは許されず、そのような場合は不実であることを書類に記録する。 

※政子=北条政子のこと ※所領=領地のこと ※訴訟=裁判すること


第8条:「御下文(みくだしぶみ)を持っていても実際にその土地を支配していなかった時のこと」

 頼朝公が取り決めたように御家人が20年間支配した土地は、元の領主(※貴族や寺社など)に返す必要はない。しかし、実際には支配していないのに、支配していたと偽(いつわ)った者は証明書を持っていても、その取り決めは適用されない。

※御下文=将軍の発行した領地を保証する証明書  ※つまり、御下文がなくても20年間実効支配していればその土地は御家人のものということになります。

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第9条:「謀反(むほん)をおこした者のあつかい」

謀反の刑罰を細かく決めておくのは難しいので、くわしく調べて、過去の例を参考にしながら裁判を行う。

※謀反=天皇や将軍に逆らって戦をすること。


第10条:「殺害や刃傷(にんじょう)などの罪科のこと」

 言い争いや酔った勢いでの喧嘩(けんか)であっても相手を殺してしまったら殺人罪であり、犯罪者は死刑か流罪とし財産を没収する。ただし、罪を犯した当人以外の父子が無関係であるならば、その者たちは無罪であり、これは傷害罪(しょうがいざい)についても同様である。
 ただし、子や孫、あるいは先祖の仇(かたき)と称(しょう)して人を殺害した場合は、犯人の父や祖父がたとえそのことを知らなくても同罪とする。結果として父祖の憤りをなだめるために宿意(しゅくい)を遂げることになるからである。
 なお、子が地位や財産を奪うために殺人を犯した場合は、父が無関係の場合は無罪とする。

※刃傷=刃物で相手を傷つけること。 ※流罪=遠くに追放(島流しや辺地に送ること) ※宿意=この場合、以前から抱いているうらみ ※個人の犯罪は個人を罰するが、仇については同族を罰することによって無用の争いを制しようとする姿勢が伺える。これは当時の戦が敵味方に分かれても、戦後に許されて将軍の御家人として同等に扱われるようなことがごく普通にあったからである。


第11条:「夫の罪によって妻の財産が没収されるかどうかの判断について」

 謀反・殺害ならびに山賊、海賊、夜討ち、強盗などの重罪の場合は夫の罪であっても妻の領地は没収される。しかし、夫が口論によって偶然(ぐうぜん)に相手を傷つけたり、殺害してしまったような場合は妻の領地は没収されない。


第12条:「悪口(あっこう)の罪について」

 争いの元である悪口はこれを禁止する。重大な悪口は流罪とし、軽い場合でも牢に入れる。また、裁判中に相手の悪口をいった者は直ちにその者の負けとする。また、裁判の理由が無いのに訴えた場合はその者の領地を没収し領地がない場合は流罪とする。

※悪口=人をあしざまにののしること。

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第13条:「他人に暴力をふるうことの罪について」

 人に暴力をふるうことはうらみを買うことであるからその罪は重い。御家人が相手に暴力をふるった場合は領地を没収する。領地がない場合は流罪(るざい)とする。御家人以外の場合は牢(ろう)に入れる。


第14条:「代官の罪が主人におよぶかどうかの判断について」

 代官が罪を犯した場合、任命した主人はそのことを幕府に報告すれば主人は無罪とする。ただし、主人が代官をかばって報告を怠った場合は主人の領地は没収し代官は牢に入れる。代官が年貢を横取りしたり、あるいは先例や法律を破った場合にも主人を同罪とする。代官もしくは本所による訴訟が行われる時、鎌倉もしくは六波羅探題(ろくはらたんだい)より呼び出しがあったにもかかわらず応じなかった者は主人の領地を没収する。ただし、犯した罪の重さによって軽重がある。

※六波羅探題=京都に置かれた幕府の役所。尾張(愛知県)以西の裁判も行っていた。


第15条:「偽造文書(ぎぞうぶんしょ)の罪について」

 偽(いつわり)の書類を作った者は所領を没収する。領地を持たない者は流罪とする。庶民の場合は顔に焼き印を押す。頼まれて偽造文書を作った者も同罪とする。また、裁判中に嘘(うそ)をついた者は神社や寺の修理を命じ、それができない者は追放とする。


第16条:「承久の乱の時に没収した領地のこと」(じょうきゅうのらん)

 承久の乱後に領地を没収された領主のうち、後に謀反人でなかったことが証明された者の領地は返還される。既に、返還する領地に入っていた新たな領主には替(か)わりの領地を与える。それらは合戦の時によく働き戦功があった者たちだからである。
 御家人であったにもかかわらず幕府に謀反した者の罪は重く、死罪の上、財産は没収する。ただし、今より以後、朝廷の味方になっていたことが分かった者については、特別に許し財産の五分の一を没収する。御家人以外の下司(げじ)や荘官の場合は今後財産を没収することはしない。なお、本領主と称して財産を没収されたときの領主を違法な領主とし、真の領主に没収地を返して欲しいなどの訴えが多いが、当時の領主をさしおいて今になってから調べることは筋ちがいなので、このような訴えは受け入れない。

※下司・荘官=荘園の実質上の領主(が、多い)


第17条:「父子が立場を変えて同じ合戦に参加したときの処分について」

 御家人の場合、父子が朝廷側、幕府側と分かれて戦ったとき、幕府側にいて戦功のあった者が父であれ子であれ恩賞(おんしょう)が与えられる。反対に朝廷側であったときには父であれ子であれ罰せられる。なお、西国の武士の場合、父子いずれかが朝廷側であった場合は互いに同意した者として父子共に罰せられる。しかし、父子が遠く離れていて互いに連絡がつかなかったような場合は、朝廷側についた者だけを罰する。

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第18条:「女子に相続した後の所領を返還(へんかん)させる場合のことについて」

 男女の違いはあっても親の恩は同じである。これまで女子(娘)には返還の義務はなかったが、今後は相続したあとであっても所領を取り返すことが出来る。これは、後の争いを恐れて女子に相続することをためらったり、女子が親に対して不道徳な行いをすることをおさえるためである。このことが保障されていることによって、相続した女子が親に孝行をし、親は安心して女子を養育(よういく)し、土地を与えることができる。

※これまで公家法(貴族の法律)では女子への悔還(くいかえし)はなかったが、武家法では男女同じとした。(26条を参照)


第19条:「忠実を装い財産を与えられた家来が、主人死亡の後に態度を変えた場合について」

 主人を敬いよく働いたために財産やその譲り状を与えられた家来が、主人死亡の後にその恩を忘れて財産を奪おうなどと子供等と争った場合、その財産を取りあげて主人の子供等に全てを与えることとする。


第20条:「譲り状を与えた子供が死んだ場合のこと」

 財産の譲り状を与えた子供が生きていても相続権を変える場合もあるのだから、子供が死んだ場合、御家人は次の相続人を自由に決めてよい。


第21条:「妻や妾(めかけ)に相続した土地の離別後のあつかいについて」

 離別した妻や妾に大きな落ち度があった場合。前夫から譲り受けた所領を持つことは、契約書があっても知行することはできない。前夫が新しい妻や妾のことだけを大切にし、なんの落ち度もない前妻や前妾に与えた土地を取り返すことはできない。

※妾=(めかけ・しょう=正式な奥さん以外の女性) ※「落ち度」とは密通など式目に違反したり、道徳的に反することをさす。


第22条:「離縁(りえん)した先妻の子供(長兄)に与える財産のことについて」

 家のためによく働いた子供(成長した)であるにも関わらず後妻やその子らに追い出されてしまった者には、相続の際に嫡子相続分の五分の一をその子に分け与えること。ただし、離縁前に多少なりともその子に財産が分けられていた場合はその分を差し引いても良い。しかし、その子が怠け者であったり不幸者のときはその必要はない。

※嫡子=ちゃくし=家の主な財産を継ぐ権利を持つ子供

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第23条:「女人の養子のこと」

 夫婦に子供が無く、夫が死んでしまった後に養子をむかえ領地を相続させることは、頼朝公の時から認められていることであり何ら問題はない。


第24条:「再婚後の後家の所領について」

 夫の死後、妻はその菩提(ぼだい)を弔(とむら)い、式目の定めのとおりに働かなくてはならない。にもかかわらず、死別後すぐに再婚するというのは良くない行いである。後家が再婚する時には亡き夫から遺産相続された領地を亡夫の子供に与えなければならない。子供がいないときには別の方法を考えて対処する。

※ここで言う所領とは亡夫の持ち分から相続された遺産のみを指し、もともと後家が権利を持っている所領については子供に分与する必要はない。


第25条:「御家人の婿(むこ)となった公家は武士としての働きを行うこと」

 公家と言えども御家人としての働きを行うこと。父親が存命中の代行は許されていても、父親死後はその者が御家人として働かなくてはならない。それでもなお公家としての実家の権威(けんい)を利用して怠る場合は所領を相続することを辞退(じたい)させる。また武家の娘が幕府内で働くときに公家のしきたりを入れてはならず、そのような者は所領を治めることはできない。


第26条:「相続した土地を別の子供に相続し治すこと」

 御家人が所領を子供に相続し将軍から証明書をもらっていても、父母の気持ちによって他の子供に相続を替えることができる。

※このように一度与えた土地であっても、親の権限で取り返すことを悔い還し(くいかえし)という。


第27条:「未処分の財産の分配」

 御家人が相続のことを決める前に死亡した場合は、残された財産を働きや能力に応じて妻子に財産を分配すること。

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第28条:「いつわりの訴えをしてはならないこと」

 言葉たくみに人をだますことの罪は大変に重い。所領を望んで嘘の訴えをおこした者はその者の領地を没収する。領地がない場合は遠流(おんる)とする。また役職が欲しいために嘘をついた者はその職に就(つ)くことはできない。

※(遠流=佐渡・隠岐・伊豆など遠くへ追放すること)


第29条:「本来の裁判官をさしおいて、別の裁判官に頼むことの禁止について」

 裁判を有利に進めるために担当の裁判官をさしおいて他の裁判官に頼むことが分かった場合は、調査の間しばらく裁判を休廷する。そのようなことがあってはならないからである。係の者はそのような二重の取り次ぎをしてはならない。また、裁判が長引き20日以上かかった場合は問注所(もんちゅうじょ)において苦情を述べることができる。

※問注所=幕府の裁判所


第30条:「問注所の判決を待たずに有力者の書状を提出し、裁判を有利に進めることの禁止」

 有力者を知るものは得をし、そうでないものは損をするという不公平な裁判は問注所そのものが信頼を失ってしまうので禁止する。それぞれの言い分は裁判中に述べること。


第31条:「裁判に負けた者が判決に不服を訴えることの禁止と誤った判決の防止」

裁判に負けたにもかかわらず「偏(かたよ)った判決」だと、事実ではないことを持ち出し裁判官に不服を訴えた場合は、領地の三分の一を没収する。その領地がない場合は追放とする。ただし、実際に偏った判決を行った裁判官は辞めさせ、再び裁判官に任命してはならない。

※敗訴したものが裁判のやり直し(越訴=おっそ、という)することを抑制するとともに、裁判官に対して公正な判決を出す努力を求めています。現代でも同じように裁判官を裁く制度があるのと似ています。※この条修正 H24.6.12 

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第32条:「盗賊や悪党(あくとう)を領内にかくまうことの禁止」

 地頭は領内に盗賊がいることが分かったらすみやかに逮捕(たいほ)すること。また地頭が賊徒(ぞくと)をかくまった場合は同罪とする。もしその疑いがあった場合は鎌倉で取り調べを行い、その期間中に地頭が国もとに帰ることを禁止する。また守護所の役人が入れないところ(地頭の支配外の場所)に賊徒がいたと分かった場合も家来を遣(つか)わしてすみやかに逮捕すること。これを行わない地頭はやめさせて代行の者をおく。

※悪党=幕府や荘園本所に反抗する者・敵だった者


第33条:「強盗と放火犯の罰について」

 これまでの決まりどおりに強盗犯は断罪(だんざい)とする。放火犯も強盗犯と同じあつかいとし、これらの犯罪を無くすこと。※断罪=首をはねること ※実際には罪の軽重によって流罪・入牢もあった


第34条:「人妻と密懐(びっかい)することの禁止」

 人妻と密通をした御家人は所領の半分を没収する。所領がない場合は遠流にする。相手方の人妻も同じく所領の半分を没収し、ない場合は遠流とする。また、道路上で女性を拉致(らち)することを禁止する。それを行った場合、御家人の場合は100日間の停職とし、郎従以下の一般武士は頼朝公からの先例にしたがい片側の髪をそる。僧侶の場合はその時々の状況に応じて罰を決める。

※密懐=密通(みっつう=他人の奥さんと秘密に恋人関係になること) ※拉致=むりやりさらってしまうこと。※郎従=家来クラスの武士 


第35条:「裁判所からの呼び出しに応じない場合のあつかいについて」

 呼び出しを三回無視した被告は、原告(げんこく)だけで裁判を行う。原告が負けた場合は争っている財産や領地は他の御家人に分け与える。牛馬や下男などはその数を数えた後に、神社やお寺の修理のための寄付をしなくてはならない。

※原告=裁判を訴える側の人。訴えられる人は被告(ひこく) ※領地のことで不当に訴えることを抑えるためにこのような条文が作られた。

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第36条:「以前の境界線を持ち出して裁判することについて」

 自分に有利な境界線を持ち出して領地を広げようとするものがいる。敗訴しても今の領地が減らないと思うからである。今後はこのような訴えがあった場合、現地に調査官を派遣(はけん)し厳密(げんみつ)に調査して、訴えが不当な場合は奪おうとした領地と同じ面積の土地を訴えられた者に与える。


第37条:「朝廷の領地をうばうことの禁止」

 頼朝公の時に禁止されたにもかかわらず、いまだに上皇や法皇またはその女御の荘園を侵略(しんりゃく)する者がいる。今後もこのことを行う御家人はその所領の一部を没収する。


第38条:「惣地頭(そうじとう)が荘園内の他の名主の領地を奪い取ることの禁止」

 惣地頭は「将軍から与えられた所領だから、全部が自分の勢力範囲(せいりょくはんい)」と言って、領家の証明書を持っている名主(みょうしゅ)の土地まで取ることはできない。それにもかかわらず名主の土地を奪おうとする者がいる場合には名主に別の証明書を発行する。しかし、名主が集めた税を地頭にあずけない場合はその名主をかえてしまうことができる。

※惣地頭=村や郷や庄という比較的広い単位で領地を所有する地頭のこと。いろいろな説があるが惣地頭は直接そこに住んで領地を支配するのではなく、その地域の徴税権(税を集める権利)を持つ書類上の地頭のようであった。したがって彼らの中には荘園内に点在する名田(みょうでん)など、開拓して独立した地主(名主)の土地まで奪うものがいた。そのためにこのような条文が加えられたと思われる。西国、特に九州地方にこのようなことが多かったようである。

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第39条:「官位(かんい)・官職(かんしょく)を望む場合の手続きについて」

 勤勉に働きその功が認められた者は公平に吟味(ぎんみ)したのち幕府の推挙(すいきょ)によって朝廷から官位をもらうことができるが、自ら昇進を願って直接朝廷に申し出ることは誰であっても厳に禁止する。ただし受領(ずりょう)や検非違使(けびいし)については、幕府の推挙無しに職位をもらってもよい。また、年功により官位をもらう者も今までのとおり制限しない。

※官位=朝廷から出す位のこと   ※受領=朝廷から任命され任国に赴いた国の長官。主に守(かみ)の職位を持っている人だが、鎌倉時代になって次第に形だけの位になっていった。※検非違使=朝廷の役人、主に警察の仕事  ※推挙=すいせんすること  ※御家人が将軍の許可無しに朝廷から官位をもらうことを禁止した条文。


第40条:「鎌倉在住の僧侶が官位を望むことの禁止について」

 年少者や低位の僧侶が勝手に官位をもらって年長者や高僧を飛び越すようなことは寺の秩序や仏の教えにそむくものである。勝手に官位をもらった僧侶はこれをやめさせる。これは幕府付きの僧侶者も同様である。

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第41条:「奴婢(ぬひ)や雑人(ぞうにん)のことについて」

 頼朝公の時に定めたように、10年以上使役していない奴婢や雑人は自由とする。次に、奴婢の子については男子の場合は父に、女子は母に属すこととする。

※奴婢(ぬひ)=奴隷のように売買される人。  ※雑人(ぞうにん)=所従や下人と呼ばれる身分の低い人々。
※御成敗式目では新たな人身売買を禁止し、今いる奴婢も10年以上使われていない者は今後売買されず、奴婢の子供は奴婢として売買されることはないとした。


第42条:「逃亡した農民の財産について」

 領内の農民が逃亡したからと言って、その妻子をつかまえ家財を奪ってはならない。未納の年貢があるときはその不足分のみを払わせること。また、残った家族がどこに住むかは彼らの自由にまかせること。

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第43条:「他人の領地をうばい年貢をうばうことの罪について」

 理由もなく他人の領地をうばい年貢や財産をとることは違法の行いであるから年貢はすぐに返納すること。また、これを行った者の所領は没収する。所領を持たないものは遠流とする。また間違って発行した土地の証明書は認めない。その証明書は速やかに破棄(はき)しなくてはならない。

※破棄=すてさること


第44条:「他人が裁判中の所領を望むことについて」

 係争中(けいそうちゅう)の土地を望み、第三者が当事者に不利な発言をして罪におとしいれようとすることは許されない。裁判では当事者以外の発言は取り上げない。武士は真面目に働いて領地を得られるものである。

※第三者=(当事者以外の者) ※係争中=(裁判中)

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第45条:「判決以前に被告を免職(めんしょく)することの禁止」

 判決が出る前に被告を免職してはならない。有罪無罪を問わず極めて不満を残すことになるからである。判決は十分に吟味して出さなけらばならない。

※免職=職をやめさせること

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第46条:「国司交代時の新任国司と前任国司に関すること」

 徴税は新任国司の仕事であるが、その際に前任国司の私物や牛馬・家来を奪ったり、恥をかかせてはいけない。ただし前任国司が罪を犯し解任されたものであるときは別である。


第47条:「不知行の所領の書類でもって他人に寄進することの禁止・名主が本所にことわりなく領地を寄進(きしん)することの禁止」

 実効支配していない領地にもかかわらず、有力者に寄進し実効支配を行おうとした者は追放し、受け取った者には寺社の修理を命ずる。また、本所にことわりなく領地を貴族や寺社に寄進することを禁止する。これにそむいた名主は名主職を奪い地頭の配下に置く。地頭がいないところでは本所の配下とする。

※寄進=寄付すること。実際には名目だけの持ち主になってもらうこと。本所とは最初の寄進先をさす。※鎌倉幕府から派遣された地頭が入った領地の実際上の持ち主、つまり名主が寄進先の本所のことわりなく、さらにその上の実力者に領地を寄進させてしまうことを抑えた。これは地頭が不利にならないようにするための処置である。


第48条:「所領を売買することの禁止」

 御家人が先祖代々支配していた所領を売ることは問題がないが、恩賞として将軍から与えられた土地を売買することは禁止する。これを破った者は売った者も買った者もともに罰する。

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第49条:「双方の調書によって判決が出る場合について」

 原告・被告の提出した書類を調べて明白に理非が判断できるときは、わざわざ双方を呼び寄せず直に判決を申し渡す。

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第50条:「暴力事件の現場にいくことについて」

 暴力事件が起きたとき、その委細(いさい)を調べに行くことは許されるが、一方に加勢(かせい)するために行くことは罰せられる。

※委細=事細かなようす ※加勢=味方すること


第51条:「問状を持って被告人をおどかすことについて」

 受理された訴状に基づき被告に出される尋問状(じんもんじょう)を原告が手に入れ、その威力によって被告をおどかすことは罪となる。今後は訴状を吟味し不当な訴えに対しては質問状の発行をしない。

※これまでは訴状が受理されただけで、原告が幕府の権威を使って被告をおどかす事が多々あったため、このような条文が書き加えられました。 ※尋問状=裁判で相手にたずね質問する内容を書いた書類。

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