2022年7月13日水曜日

統一教会と安倍元首相の関係とは - ブッチNEWS(ブッチニュース)

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統一教会と安倍元首相の関係とは


参院選の真っ只中の7月8日、安倍晋三元首相が凶弾に倒れたことに日本中が震撼した。それだけでなく、容疑者が語った動機により、さらなる衝撃が走った。容疑者は「特定の宗教団体に恨みがあり、安倍元首相がつながっていると考えて犯行に及んだ」と供述したのだ。安倍元首相と「特定の宗教団体」こと統一教会とはどんな関係にあったのか。ジャーナリスト・鈴木エイト氏が昨年10月に『実話BUNKA超タブー11月号』に寄稿した、政権与党・自民党と統一教会の関係の歴史についての原稿を転載する。


 2021年9月12日、カルトウォッチャー界隈が騒然となった。カルト宗教団体として悪名高い統一教会の大規模集会に安倍晋三元首相がリモート登壇し教団の最高権力者である韓鶴子総裁(故文鮮明教祖夫人)に敬意を表す演説を行ったのだ。なぜ日本の元総理大臣が〝キングオブカルト〟と呼称される統一教会系のイベントへ参加するに至ったのか。近年の自民党政権と統一教会との緊密な関係を紐解いてみよう。

 安倍が出演したのは統一教会のフロント団体・天宙平和連合(UPF)が主催し「150か国の国家首脳、国会議員、宗教指導者が集う」とされた『神統一韓国のためのTHINK TANK2022 希望前進大会』なるリモート集会。コロナ禍において統一教会は大規模な集会をほぼ配信形式で行っており、今回のTHINK TANK2021での安倍による「韓鶴子総裁を始め皆様に敬意を表します」との韓鶴子礼賛発言も韓国の教団施設(清心ワールドセンター)から全世界へネット配信された。

 安倍の登壇が騒動になっている理由は何か。それは韓国への強気の対応で知られる安倍が裏では韓国発祥の〝カルト〟教団と繋がっていたことに加え、統一教会自体が数々の社会問題を引き起こしてきた反社会性の強い教団であることが大きい。

▲THINK TANK2022大会で、司会者は安倍元首相を「安倍晋三総理」と紹介(PeacelinkTVより)。

自民党と統一教会の歴史の変遷

 1954年に韓国で文鮮明が創設した統一教会は58年に日本進出。翌59年に日本統一教会設立、64年に宗教法人として認証された。文は67年に山梨県本栖湖畔で行った戦後右翼の大物らとの日韓反共首脳会談を契機に翌68年、岸信介元首相の後ろ盾を得て国際勝共連合を創設。勝共運動は東西冷戦下での安保闘争時代を背景に政財界へ浸透してゆく。74年5月に文鮮明が帝国ホテルで開いた「希望の日」晩餐会には岸の他、福田赳夫、安倍晋太郎ら40人の自民党国会議員が出席した。文は「まず秘書として食い込め。食い込んだら議員の秘密を握れ。次に自らが議員になれ」と指示、秘書養成所で訓練された信者が自民党国会議員のもとに送り込まれ、秘書や運動員として活動してきた。90年代初頭には200人以上の「勝共推進国会議員」が存在した。

 一方で社会への軋轢も起こった。65年には学業を放棄し原理運動に没頭する教団系学生組織・原理研究会(CARP)への批判報道がなされ、80年代以降には高額な壺や印鑑などを売りつける霊感商法、正体を隠した偽装伝道、教祖が選ぶ相手とマッチングされる合同結婚式の問題などが報じられた。これらは形や手法を変えながら現在も行われており、韓国の寒村に嫁ぎ生活苦に喘ぐ日本人女性信者が数千人以上存在すると言われている。街頭勧誘や訪問、大学キャンパス等での偽装勧誘も横行している。

 87年に結成された全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の集計によると、2020年までの統一教会による霊感商法の累計被害額は1234億円を超えている。これは氷山の一角に過ぎず、現在も億単位の被害を巡る訴訟を始め複数の裁判が係争中だ。流出した教団内部資料によって毎年数百億円に上る日本から韓国の教祖一族への上納金額が判明している。霊感商法最盛期の00年代前半には年間約1000億円が送金された。統一教会は韓国国内外に一大企業群を抱えており、日本から収奪したお金が教団組織や関連企業群を支えている構図だ。

 全国弁連は20年6月、地方自治体への申し入れの際に統一教会を「反社会勢力とも言うべき極めて問題のある特定宗教団体」と指摘した。そんな反社会的宗教団体と自民党国会議員との関係は時代とともに変化してきた。

 90年代初頭に活況を呈した勝共推進議員は一連の社会問題や東西冷戦終結の影響などにより激減、政界工作も00年代には下火となった。ところが12年の第2次安倍政権発足後、状況は一変する。

第2次安倍政権での緊密な関係

 安倍晋三については2006年にUPFが主催した福岡での『祖国郷土還元日本大会』に祝電を贈ったことが判明している。しかしその時点では、首相公邸だった建物を教団本部として使用させた祖父の岸信介元首相や、教会員を自民党国会議員の秘書として紹介し各議員を教団のセミナーへ誘導していた父親の安倍晋太郎元外相とは異なり、安倍晋三自身は統一教会とは一定の距離を置いていた。

 ところが09年、教団本部のお膝元にあった東京・渋谷の霊感商法販社が警視庁公安部の摘発を受け複数の教団施設に家宅捜索が入ったことで事態は動く。本部への〝ガサ入れ〟が目前に迫ったことに慌てた教団幹部は、警察官僚出身の政治家の口利きによって本部の摘発を逃れた。

「政治家対策を怠っていた」との反省から政治工作が再度本格化される中で12年12月に第2次安倍政権が発足。憲法改正と長期安定政権を目論んでいた安倍にとっても、組織票にとどまらず無尽蔵の人員を運動員や政権支持者として〝派遣〟してくれる使い勝手の良い教団を利用しない手はなかった。以降、安倍晋三と統一教会は利害を一致させ緊密な関係を続けてきた。第2次安倍政権の国家公安委員長には山谷えり子、小此木八郎、武田良太といった統一教会に近しい議員が登用され教団への追及はなされていない。

 最初に安倍と統一教会の裏取引を筆者が掴んだのが13年の参院選だ。入手した統一教会の内部FAXから、安倍が全国比例区肝いりの候補者・北村経夫への組織票を教団に依頼していたことが発覚。さらに菅義偉官房長官が選挙運動期間中に北村を極秘裏に統一教会地区教会へ派遣していたことも露見した。以降、安倍周辺の政治家を含め自民党国会議員が統一教会系の集会などのイベントに相次いで来賓参加、祝電を贈るなどしてきた。統一教会との関係が発覚した自民党国会議員は第2次安倍政権以降、閣僚や副大臣、政務官などに起用された議員が目立つ。第4次安倍再改造内閣では〝異常〟と呼んで差し支えないレベルで統一教会への貢献度が高い議員が登用され、その構図は菅政権でも継続された。

 15年8月、統一教会が法人名を改称した際、認証を拒む文化庁に対して、安倍側近の閣僚の関与が永田町で指摘されたという。16年1月、従順な統一教会2世信者組織であることを隠したまま『勝共UNITE』が安倍政権を支持する遊説活動を開始。同年6月上旬、安倍首相が統一教会の日本会長と総会長夫人を首相官邸に招待。安倍は11年に麻生太郎らとともに統一教会系のワシントン・タイムズ紙に掲載された全面意見広告に賛同者として名前が記載。10年に教団関連政治団体『世界戦略総合研究所』で講演、12年には同総研が共催したシンポジウムに参加。13年から16年の「桜を見る会」に同総研の事務局次長を招待した。

 統一教会は創価学会とは違い単独で複数の国会議員を擁立できるほどの票数は持っていない。参院選全国比例区での組織票は8万票ほどにとどまる。統一教会が採ったのは政権による体制庇護と引き換えに人員を派遣、裏で政権を支える各種工作を行う取引だ。その中で頻発したのが自民党国会議員による教団イベント来賓参加である。

 16年、統一教会はUPFを前面に立て『世界平和国会議員連合(IAPP)』を世界各地に立ち上げた。11月17日に参議院議員会館特別会議室で開いたIAPP創設大会『ILC(国際指導者会議)JAPAN2016』には当時の閣僚5人を含む63人の国会議員が出席、代理出席の秘書を含めると100人を超えた。日本の議員連合会長は原田義昭元環境相、名誉会長は細田博之元官房長官。表向きには「平和運動」を掲げる同議員連合の目的は、世界各国で統一教会をその国の宗教つまり国教とする「〝国家復帰〟戦略」にある。内部資料に記された国家復帰の7つの対象国には日本も入っており、政権と緊密な関係にある日本は格好の国家復帰の場だ。

政権とは蜜月でも日本を見下す

 韓鶴子は2018年のさいたまスーパーアリーナ2万人信者集会において日本人を「人間的に考えれば赦すことのできない民族」と指摘。さらに日本から韓国への上納金を正当化するように日本をこう評した。
「自分を顧みず全てを惜しみなく与える〝エバ国家〟」

▲THINK TANK2022大会で、メイン講演を行う韓鶴子総裁(PeacelinkTVより)。

 また同年、日本の幹部が全員参加した韓国での修練会において、広島に原爆が「落ちた」ことを引き合いに日本へ「悔い改め」を迫り「国家復帰」のために「日本の最高指導者」を「打ち負か」して「屈服」させ「教育」する指令を出した。安倍政権と蜜月の関係を築く一方、教団内では日本や安倍首相を見下していていたのだ。

 19年12月末から翌20年の年始、約1200人の統一教会2世大学生信者が世界平和青年学生連合(YSP)研修のために渡韓して、〝強制徴用被害者〟〝慰安婦〟へ直接謝罪。少女像が設置された旧日本大使館前から日本政府・安倍政権に対し過去の歴史への謝罪要求を行ったことが韓国で報じられた。この謝罪行脚により、勝共UNITEの2世には安倍政権支持活動を行わせておいて、YSPの2世には安倍批判活動をさせるという教団のダブルスタンダードが露見した。

 THINK TANK2022ではドナルド・トランプ前アメリカ大統領の基調演説も配信された。韓鶴子は16年11月18日のNYトランプタワーでの「安倍・トランプ会談」のお膳立てにも一役買ったとされ、北朝鮮による日本人拉致問題においても金正恩委員長と近しい韓鶴子が今後の日朝首脳会談の橋渡しをダシに使ってくる可能性もある。

 全国弁連は18年と19年に全国会議員事務所へ統一教会や関連団体と関係を持たないよう要請する文書を届けた。しかしその後も教団イベントに来賓出席等する自民党議員が続出した。政治家の教団イベント参加は過酷な献金収奪で疲弊する日本人信者の内部統制の手段として使われている。その点でも安倍晋三による今回のリモート登壇は深刻な問題である。

 全国弁連は9月17日に会見を開き、安倍のリモート登壇と韓鶴子礼賛発言について「統一教会にお墨付きを与えることは教団の反社会的活動を容易にし、その是正を困難にするものとして悪用される」と非難、公開抗議文を安倍晋三事務所に送付した。

 安倍晋三事務所は筆者の取材にUPFジャパンからビデオメッセージの依頼があったことを認めた。
「メッセージはお送りさせてはいただいたんですけど、出席はしておりません」

 改めて安倍事務所に統一教会との関係や道義的責任を問う質問書を送ったが、期限までに回答は得られなかった。

 キングメーカーとして政界への影響力を維持しようと画策する安倍晋三。そこに統一教会がどう関与していくのか、今後も注視が必要だ。

【編集部追記】 安倍晋三元首相の訃報、大変痛ましく思います。安倍元首相のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

[初出:実話BUNKA超タブー2021年11月号]

【プロフィール】
鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)PROFILE
すずきえいと●滋賀県生まれ。日本大学卒業。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)。
TWITTER:@cult_and_fraud

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