2022年7月25日月曜日

フィンランドの画家、ヘレン・シャルフベックの半生を描いた映画「魂のまなざし」

HELENE (2020) Trailer – 2020 AFI European Union Film Showcase

https://youtu.be/mz0KF6V1v_0



https://www.instagram.com/p/CgZckY2Pr6d/?igshid=YmMyMTA2M2Y=
「魂のまなざし」

フィンランドの画家、ヘレン・シャルフベックの半生を描いた映画「魂のまなざし」を観てきました!
ヘレン・シャルフベックは大好きな画家の一人なので、公開をずっと楽しみにしていました。

とても美しい作品です。
ヘレンの人生のことは知っていたけれど、私が手に入れることができた限られた資料からは、人柄や細かいエピソードまでには触れることができなかったので、ヘレン、そうだったのね…という気持ちで鑑賞しました。

ストイックで不器用で、頑固でピュアなヘレン。
彼女の人生に訪れた悲しい出来事を、芸術家として自画像を描くことによって乗り越えていこうとする姿が深く胸を打ちます。
傷ついた自分の顔を直視し、目をそらさずにありのまま描き出すヘレンの眼差しは、画家としての執念と誇りに支えられたもの。ときには痛々しいほどのその眼差しが、現代まで残る傑作を生み出したのだと感じずにはいられませんでした。

一場面一場面が本当に美しい映画です。
ヘレンのアトリエや部屋の壁に映る、窓からの光に幾度も見とれてしまいました。
この映画は西洋美術を画面の中に描きこもうとした、という画家のいせひでこさんの解説も素晴らしいので、パンフレットもとってもおすすめです!

2枚めの写真は、ヘレンが一時期住んでいた、フィンランド南部の町タンミサーリの美術館で買った、ポストカードやパンフレット。タンミサーリにはユニットkukkameriで三度訪れ、取材しました。
朝日新聞デジタルのサイトでの連載「フィンランドで見つけた幸せ」でも、ヘレンとタンミサーリのことを書いた回があるので、ご興味ある方はぜひ…。

画家ヘレン・シャルフベックが愛した小さな町タンミサーリ
https://www.asahi.com/and/article/20211104/410766659/ ★

「魂の眼差し」は、渋谷Bunkamuraル・シネマなどで上映中ですよ。
私にとってはこの夏一押しの映画になることは間違いなしです!
 



cf.
https://www.instagram.com/p/CV5RjP8K-53/?utm_source=ig_web_copy_link
Satsuki UchiyamaはInstagramを利用しています:「朝日新聞デジタル「&Travel」での連載「フィンランドで見つけた ”幸せ"」第9回が公開されています。 今回は、 画家ヘレン・シャルフベックが愛した小さな町タンミサーリ https://www.asahi.com/and/article/20211104/410766659/…」


https://digital.asahi.com/and/article/20211104/410766659/


https://digital.asahi.com/and/article/20211104/410766659/2/


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画家ヘレン・シャルフベックが愛した小さな町タンミサーリ
ESSAY2021.11.04

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内山さつき ライター・編集者

ライター、編集者として旅、アート、文学をテーマに、雑誌や書籍の執筆・編集活動を行う。トーベ・ヤンソンの小説をきっかけにフィンランドの島と海、暮らしのあり方に深く引かれ、取材を続けている。2019年から全国を巡回した「ムーミン展 MOOMIN THE ART AND THE STORY」では展示監修と図録執筆として関わる。北欧の文化を紹介するクリエイティブユニットkukkameri(クッカメリ)としても活動。著書に『とっておきのフィンランド 絵本のような町めぐり かわいい、おいしい、幸せ体験』『フィンランドでかなえる100の夢』(kukkameri 内山さつき・新谷麻佐子/著 学研プラス)。

フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語。今回は、その二つの言語を感じながら歩いた、色鮮やかな海沿いの町のお話です。

四季の美しい自然、アートやデザインを楽しむ暮らし。ライターの内山さつきさんが、フィンランドで日々を豊かにするヒントを見つけ、"幸せ"を感じたスポットや人々の営みを紹介します。


海風に吹かれて旧市街を歩く


フィンランドには、スウェーデン語を母語とする人々がいて、スウェーデン語系フィンランド人と呼ばれている。人口の5%ほどと少数だが、彼らは紛れもないフィンランド人で、主にフィンランド西部と南部に暮らしている。トーベ・ヤンソンやジャン・シベリウスもスウェーデン語系フィンランド人だ。





エケナス

Raseborg, フィンランド


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地図データ ©2022


タンミサーリ(スウェーデン語はエケナス)は、そんなフィンランド南西部の小さな町。ここでは日常会話やカフェの表示、書店に並ぶ本などもみなスウェーデン語だ。



タンミサーリの旧市街広場にある町役場。やわらかな黄色が美しい

スウェーデン語地域を訪ねると、いつも少し不思議な気持ちになる。フィンランドでは、フィンランド語とスウェーデン語が公用語なので、首都ヘルシンキやその他の町でも、通りの名前や駅の名前などは、フィンランド語、スウェーデン語の二つが書かれていることが通常だ。

スウェーデン語地域に入ると、それがスウェーデン語、フィンランド語の順になる。そして、耳にする町の人たちのあいさつも、フィンランド語の「Moi!(モイ!)」からスウェーデン語の「Hej!(ヘイ!)」になる。



町の美術館で開催されていた、ヘレン・シャルフベックの展覧会ポスター

この海辺の小さな町タンミサーリは、フィンランドの女性画家、ヘレン・シャルフベックがひととき暮らした地でもある。1862年に生まれたシャルフベックは、女性でプロの画家として成功した先駆的な存在で、フィンランドでは国民的な画家だ。

シャルフベックもまたスウェーデン語系フィンランド人で、この町の風景にひかれ、1925年から1941年の間、ここで暮らしたという。



旧市街では路地を歩いていると、あちこちで海と出会う

タンミサーリの旧市街には、18〜19世紀に建てられた、パステルカラーの木造の家並みが残っている。半島のように海に突き出たところにあるので、旧市街ではどこにいても、いつも海の気配を感じる。

夏の季節であれば、旧市街の路地は、ライラックや夏至の頃に咲く白いバラなど花であふれ、愛らしい色で塗られた家々が並ぶ路地を海風が渡っていく。そしてその海風に誘われるように角を曲がると、もうすぐそこに北国にしては明るい色の海が待っている。







窓辺には、フィンランドのアーティスト、オイバ・トイッカの"バード"が



かわいらしい窓辺を探しながら歩くのも楽しい

古い家々は大切に手入れされて、道に面した窓辺は、そこに暮らしている人のセンスや遊び心をつつましくお披露目する場であるかのように、愛らしく飾られている。







シャルフベックの面影を探して旧市街には、住宅の中にアットホームなカフェもある

いつ訪れても、旧市街では不思議なほど人とすれ違わない。人気のない静かな町並みは、シャルフベックに思いをはせるのにぴったりだ。


シャルフベックは、画家としては生前から評価された成功者だったが、幼いときに階段から落ちる事故に遭い、以降杖が手放せなかったなど、その生涯には絶えず苦労があった。二度の大きな失恋によって心に深い傷を負ったことも、彼女の人生に影を落とした。


けれど、彼女の代表作は、どれもモダンで洗練されている。色彩はやわらかく、名画や自作の再解釈をするなど、常に新しい表現を模索し続けた。そして、死が迫る直前まで、画家の冷静なまなざしで自画像を描ききった。
旧市街のシンボルのタンミサーリ教会は、一度焼失した後に再建されたもの

そんなシャルフベックの過ごした痕跡は、今はその名を冠した通りがあるくらいで、旧市街に残る町並みに、当時の面影を追い求めるしかない。けれど、町にある「ラーセポリ美術館」では、定期的にシャルフベックの展覧会を開催している。
シャルフベックの名前が付いた「ヘレン・シャルフベック通り」。スウェーデン語、フィンランド語で書かれている

そして、旧市街の広場には、有志による「カフェ・シャルフベック」があり、シャルフベックの誕生日に彼女にちなんだお菓子を販売したり、朗読会や地域の季節のイベントなどが行われたりしている。
地元の人たちが運営する「カフェ・シャルフベック」。彼女をイメージしたパレットやイーゼルも

海風に吹かれて少し寒くなり、旧市街広場の片隅の小さなカフェに立ち寄った。そこで出てきたサーモンスープは驚くほどにおいしく、体に染み渡っていった。

そして、タンミサーリの旧市街の町並みのやさしい色づかいは、シャルフベックの作品の色彩とどこか通じるものがあるかもしれないとふと思った。
フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)








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