2022年9月27日火曜日

プーチン大統領の感情変化

プーチン大統領の感情変化

プーチン大統領の感情変化

ロシアのウクライナ侵攻から2か月近く経過しました。米国のNBCテレビでプーチン大統領が側近に異常なまでの怒りをぶつけていると報道している通り、彼が当初考えていたシナリオ通りには進んでいないようです。当社では公開されているプーチン大統領の演説音声から、彼の感情変化を調べてみました。この結果の一部は4/4(月)のTBSテレビ「THE TIME」(5:20~8:00)と「ゴゴスマ」(13:55~15:49)にて紹介されましたが、本ブログではテレビで説明しきれなかった内容を紹介したいと思います。

ロシアのウクライナ侵攻開始時と約1ヶ月経過した時のプーチン大統領の音声を解析した結果、顕著な感情の変化が見られました。侵攻開始時の演説では自信とそれに伴う緊張感(ストレス)が検出されていましたが、その約1ヶ月経過後の演説では強い不安とそれに伴う強いストレスが検出されています。会見時のプーチン大統領の表情からは全く汲み取る事が出来ず、音声感情解析を用いてはじめて検出されました。

プーチン大統領の感情検出の手法  

 当社の音声感情解析ソフトウエア「ESAS」は警察捜査でも使われており、発言者の音声特性(周波数分布、その時間的変化、音圧分布、等)から発言者の様々な感情を数値化して出力します。

 今回はプーチン大統領の次の演説について「エネルギー」「自信」「ストレス」など約20種類の感情についてデータを取得しました。感情は時間的に変化しますので、ESASでは約2秒毎に感情データを取得するので例えば3分の演説では約90個の感情データが出力され、その平均値を計算してその演説の感情値とします。

 約20種類の感情のうち重要な8つの指標を反映した8角形をESジャパンでは「感情ダイアグラム」と言います。感情値は0%から100%で表現され、例えば下図の例ではストレスは最大値に対して30%程度の感情値を、自信は最大値に対して70%程度の感情値を持っていることを示しています。

プーチン大統領の感情ダイアグラムの変化

 今回、ウクライナ侵攻1年半前の演説の音声を基準にします。

 ②2022年2月24日 ウクライナへの侵攻開始時は市民を守るための軍事作戦を強調して演説しています。感情値は①の感情値と②の感情値との比で示しています。

 分析を行うと、熱意を持って話しつつも演説内容を予め熟考していた為か思慮の数値が高く出ています。

 ③2022年3月10日 ロシア政府関係者との会議では国内から撤退する外資系企業に対して不快感をあらわにしています

 侵攻2週間後のこの会議では特徴が大きく表れ、ストレスが高くかつ不安を感じている事がダイヤグラムから分かります。集中力は低く、あきらかに当初予定していたシナリオ通りには進んでいないことに焦りを感じています。エネルギーと熱意が高いのは部下に対して叱責あるいは鼓舞をしている事を表しています。

 ④2022年3月18日 クリミア併合8年の記念集会ではウクライナ東部の人々を救うための戦いである事を強調しました

 このクリミア統合8周年記念式典での演説は、そもそも統合を仕掛けたのがプーチン氏自身であり、かつ野外の大会場で行われたことも影響してプーチン大統領はかなり高揚した感情状態にあったと推測され、エネルギーと情緒の数値が高くなっています。演説する内容は予め決められていた様子で考える必要がなかった故に思慮の数値は低くなっています。

 ⑤2022年3月28日 特別作戦に参加している人々への感謝をビデオにて伝えている場面です。

ウクライナ作戦従事者への謝意は淡々としていますが、作戦自体は思い通りになっていないので、兵士を鼓舞する為に情熱をもって語りかけていると思われます。これが熱意の数値が高くなっている理由と思われます。

音声感情解析技術の実力

筆者自身はこの解析結果を見て、音声による感情解析技術の実力を再認識しました。特に③の政府関係者会議での音声は作戦が予定通りにいかずに焦っていることを明白に示しています。プーチン大統領のような諜報機関出身者は感情を表情に出さないような訓練を受けていると思われますので、表情を窺うだけでは彼の心の内はわかりません。

ところが発言の音声を解析すれば、彼の感情、すなわち彼の心の内を相当な確度で推定できることが示されたのです。

以上

都筑 一雄

ESジャパン株式会社エグゼクティブアドバイザー

慶応義塾大学及び東北大学大学院で物理学専攻。修士課程修了後、日本電気(NEC)に36年間勤務。製品開発、システム構築、事業部運営、欧州合弁会社立上げ等、役割は変化したが一貫して音声関連の通信事業に関与。NEC退職後は滋賀県彦根市役所の行政情報化担当特別顧問を5年間務め、退任後、ESジャパン株式会社の設立発起人として創業に関与し現在に至る。

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