相米慎二という未来 Kindle版
2021
相米慎二という未来へ
2021年は、相米慎二の没後20年にあたる。私が参加しているA PEOPLE(エーピープル)では2月に渋谷・ユーロスペースで「作家主義 相米慎二」を企画し、特集上映を行った。全監督作品を上映したこのレトロスペクティブはコロナ禍にもかかわらず、たいへんな人気を獲得した。こんな光景を目にした。すべての上映作品が見られる14枚つづりの前売り券を発売していた。ある日、カウンターでその前売り券を握りしめ、次に見る映画の券と交換している場面に遭遇した(前売りを実券に換える仕組みだった)。まだ、20歳くらいの女性だ。映画関係の学校に通っているのか、将来クリエイターをめざしているのかわからないがその顔はキラキラしていた。相米慎二と邂逅してしまった10代の自分を想いだした。
本書は「相米慎二を過去にしない」ということをテーマにしている。相米と会ったことも仕事をしたこともない人たちの「邂逅」。出演者の「回想」。関係者の「証言」。主にこの3つから構成されている。そこには、相米映画の魂と、映画の「未来」へのヒントがある。
映画の可能性は大きく広がっている。一方で、映画という世界は大きく行き詰まっている。デジタルの時代にいかに映画を撮るか。コロナ以降の時代にいかに映画を撮るか。相米慎二はその答えを知らない。しかし、かつての作品に触れたとき、自分の中で何かが起こる。いったいその現場では何が起こっていたのか。相米慎二は何をしたのか。スタッフは何をしたのか。役者はなぜ、そう演じたのか。同じことをするのではなく、そうした視点をもう一度、獲得すること。
相米慎二は小泉今日子にこう言ったという。 「お前がやれよ、生きて伝えていけよ」。
神話としてではなく、実際にするべきこととして、相米慎二を伝えたい。今回、25人の取材を行っている。その言葉はさまざまだ。しかし、自分なりにそれを収斂してみると、相米慎二が言い続けていることはひとつ、「考えろ」ということだ。
今回、初公開となる相米慎二の私物台本。「台風クラブ」の書き込みにその言葉は、あった。
「自分で考えろ!」
小林淳一
金原 由佳
映画ジャーナリスト/兵庫県神戸市出身。関西学院大学卒業後、金融業界を経て映画業界に。約30年で1000人以上の映画監督や映画俳優のインタビューを実施。現在、「キネマ旬報」ほかの映画誌、劇場パンフレット、朝日新聞、「母の友」(福音館書店)などで映画評を執筆。著書に「ブロークン・ガール 美しくこわすガールたち」(フィルムアート社)、共著に「伝説の映画美術監督たち×種田陽平」(スペースシャワーネットワーク)。相米慎二没後20周年特集のトークイベントなど講演・司会も多数。
小林 淳一
編集者/東京都出身。立教大学卒業後、ぴあ株式会社に入社。「TVぴあ」、「Weeklyぴあ」を経て、「Invitation」編集長に。ぴあ退社後、「東京カレンダー」編集長を務める。担当した書籍に「踊る大捜査線THE MAGAZINE」「ケイゾク/雑誌」「雲のむこう、約束の場所 新海誠2002―2004」など。「女優美学」シリーズ編集長を務める。共著書に「SMAPとは何だったのか」がある。2021年2月に行われた特集上映「作家主義 相米慎二」を企画。現在、フリーで活動しつつ、カルチャーサイト「A PEOPLE」編集長を担当している。 --このテキストは、tankobon_softcover版に関連付けられています。
映画ジャーナリスト/兵庫県神戸市出身。関西学院大学卒業後、金融業界を経て映画業界に。約30年で1000人以上の映画監督や映画俳優のインタビューを実施。現在、「キネマ旬報」ほかの映画誌、劇場パンフレット、朝日新聞、「母の友」(福音館書店)などで映画評を執筆。著書に「ブロークン・ガール 美しくこわすガールたち」(フィルムアート社)、共著に「伝説の映画美術監督たち×種田陽平」(スペースシャワーネットワーク)。相米慎二没後20周年特集のトークイベントなど講演・司会も多数。
小林 淳一
編集者/東京都出身。立教大学卒業後、ぴあ株式会社に入社。「TVぴあ」、「Weeklyぴあ」を経て、「Invitation」編集長に。ぴあ退社後、「東京カレンダー」編集長を務める。担当した書籍に「踊る大捜査線THE MAGAZINE」「ケイゾク/雑誌」「雲のむこう、約束の場所 新海誠2002―2004」など。「女優美学」シリーズ編集長を務める。共著書に「SMAPとは何だったのか」がある。2021年2月に行われた特集上映「作家主義 相米慎二」を企画。現在、フリーで活動しつつ、カルチャーサイト「A PEOPLE」編集長を担当している。 --このテキストは、tankobon_softcover版に関連付けられています。
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