2026年4月20日月曜日

キケロ 国家について

 



キケロ 国家について
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*29 ノーニウス『学識要覧』一二五・一二、三一八・一八、五三四・一五。これはアレクサンドロス大王にかんする挿話である。アウグスティーヌスは、おそらくキケローに基づいてこの大王と海賊の話を伝えている(『神の国』四・四・二五参照)。[①273]


#5

第五巻 

一 

[1]ローマの国はいにしえの慣習と人によって立つ*1。 


彼はこの詩行を、簡潔と真実のゆえに、あたかもある予言から得て述べたようにわたしには思われる*2。じじつ、国がそのような慣習をもたなかったなら、人のみがかくも大きく、かくも広遠に支配する国家を建設することも、そのように長く維持することもできなかっただろうし、またこれらの人が指揮をしなかったなら、慣習のみがそうすることはできなかっただろう。したがって、わたしたちの記憶以前に父祖の慣習そのものが優れた人々を用い、卓越した人が昔の慣習と祖先の制度を保持したのである。  

[2]しかし、わたしたちの世代は、国家を、古色蒼然であるにせよ優れた絵画のように受け取ったとき、その元の色彩で修復することをなおざりにしたのみならず、少なくともその形といわば輪郭線を保つよう配慮すらしなかった。じじつ、彼がそれによってローマの国が立つと述べた昔の慣習のうち、何が残っているのか。わたしたちは、それが忘れられ見る影もなくなった結果、もはや大切に守られていないのみならず、すでに知る人もいないのを見る。一方、人については何を言おう。慣習そのものが人物の欠乏によって滅びたのであるから。この大きな禍いについてわたしたちは釈明しなければならないのみか、あたかも死刑または市民権剝奪を求刑された被告人のようにわたしたち自身をなんらかの仕方で弁護しなければならない。なぜなら、なんらかの偶然ではなく、わたしたちの過失によって、わたしたちは名の上では国家を保持してはいるものの、事実上ずっと前にそれを失ったのであるから*3。


訳注 

*1 エンニウス『年代記』からの引用。 

*2 たとえばデルポイの神託は、ヘクサメトロス(六脚律)の詩行で述べられ、しばしば難解であった。

 *3 アウグスティーヌス『神の国』二・二一。[①152]


。。。。


本書に収録された二篇は、共和政ローマで活動した著作家にして政治家・弁論家マルクス・トゥッリウス・キケロー(前106-前43年)がプラトーンの『国家』と『法律』の衣鉢を継ぐ著作として構想・執筆した対話篇です。

前51年に刊行された『国家について』は、前129年に小スキーピオーを中心に行われた討論を再現する形で書かれています。前129年前後といえば、グラックス兄弟を中心とする改革派とこれに対抗する保守派によって国民が二分され、国家が混乱の極みにあった時期でした。それはキケローが目前にしていたポンペイウスとカエサルが激しく対立する状況に酷似し、国家の危機のただなかでローマ国民にみずからの国家の偉大さを自覚させ、その安定と確立のために奮起を促すことを目的としています。
この著作は、後代の国家思想はもちろん、テルトゥッリアーヌス、ラクタンティウス、アウグスティーヌスなど、キリスト教徒の著作家にも多大な影響を与えましたが、ルネサンス期には写本が発見されず、独立した著作として伝えられていた第6巻の「スキーピオーの夢」以外は失われたと考えられていました。ところが、1819年にヴァティカン図書館で写本が発見され、全体の約四分の一が復元されました。こうしてキケローの国家思想のほぼ全容を知ることができるようになったわけです。
『法律について』は、『国家について』執筆中に続篇として構想されたと考えられています。しかし、前51年の夏からキリキア総督として多忙な日々を過ごし、その任務を終えてローマに帰国してまもなく、前49年初頭にはカエサルとポンペイウスの対立から勃発した内乱に巻き込まれることになったため、未完に終わりました。全5巻以上の規模をもつものとして執筆されましたが、現存する写本に含まれるのは第3巻の途中までです。
本書では、過去から現在に至る法律が吟味され、それらは本当に法律の名に値するものなのかが検討されます。キケローが定めようとする法律は第一義的にはローマ国家の改革を目的とするものでしたが、それが自然本性に基づく法律であるかぎり、いかなる時代にも、いかなる場所でも普遍性を失わないものとして提示されています。
こうして、激動の時代に生きたキケローは、理想的な国家と、その礎をなす理想的な法律を今日のわれわれに伝えてくれています。国家への信頼が揺らぐ今、碩学が残した偉大な訳業を初の文庫版でお届けいたします。

[本書の内容]
国家について
第一巻
第二巻
第三巻
第四巻
第五巻
第六巻
スキーピオーの夢
個所不明の断片
法律について
第一巻
第二巻
第三巻
個所不明の断片
訳者解説
人名索引

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