2023年4月21日金曜日

黒澤明 DVDコレクション 38号『戦国群盗伝』 [分冊百科] | 朝日新聞出版 |本 | 通販 | Amazon


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2019年6月30日に日本でレビュー済み 
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三好十郎が初稿を書き、梶原金八(=山中貞雄)によってリライトされた『戦国群盗伝』(『前篇 虎狼』と『後編 暁の前進』で構成)。1937年に、滝沢英輔監督によって映画化されたが(黒澤が助監督としてついた)、戦後に、黒澤が潤色し、カラー、シネスコの大作としてリメイクされたことは良く知られている。

朝日新聞出版の『黒澤明 DVDコレクション』の追加分としては第8弾(第38号)にあたる本号では、そのリメイク版『戦国群盗伝』が登場。

永禄・元亀の戦乱期。野武士の群れが日本各地で跋扈していた。放浪の野武士、甲斐六郎(三船敏郎)は、ひょんなことから、天城山を根城に暴れ回る治部資長(千秋実)率いる野武士の一団に仲間入りすることになる。甲斐の最初の仕事は、土岐家が管領家へ献納する軍用金を掠奪すること。早速、甲斐は、軍用金を運ぶ土岐家城主、左衛門尉(志村喬)の長男、太郎虎雄(鶴田浩二)の一行を急襲するのだが…。

二転三転するひねりの効いたストーリー展開、生き生きとした登場人物たちの造形、シリアスとユーモアが混然一体となった絶妙の塩梅…といった映画脚本のお手本ともいうべきもの(黒澤曰く「山中さんの才能が、ところどころでキラキラ光っていた」)は、最初の映画化から22年後のリメイク作品でも(黒澤の潤色は、最小限に抑えられている)、その面白さは全く変わることなく、盤石だ。

波乱に満ちた物語を、黒澤の『 姿三四郎 』で助監督を務めたこともある杉江敏男監督が、切れ味良く、淀みないテンポの演出で映像化している。多くの俳優陣の巧みな捌き具合、多くの馬を使ったアクション場面の迫力(黒澤時代劇の原風景とも言える御殿場でのロケーションが効いている)…など実に堂に入っている。山中貞雄と滝沢英輔のコンビから黒澤明と杉江敏男のコンビへと時代劇の精神が、スケール・アップされた形で受け継がれた感じだ。豪快で、楽しさ溢れる一種のピカレスク・ロマン風時代劇の会心作になっている。

豪気と抜け目なさを持つ甲斐をユーモラスに演じる三船、一本気な太郎を誠実に演じる鶴田の主演二人の素晴らしさは言うまでもないが、千秋を始めとする荒くれ者の野武士たちを演じる東宝の俳優たちの面々も実に良い(セリフはなくとも、画面にその顔を見せるだけで、何とも雰囲気がある)。

男たちばかりの中で、野育ちの田鶴を演じる司葉子と淑やかな小雪を演じる上原美佐(ただし、演技は相当硬いのだが…)の清涼感ある存在も忘れてはならないだろう。

本DVDは、本シリーズのおかげで初DVD化されたもの。マスターは、日本映画専門チャンネル放映用に作られたHDマスター(おそらくHDCAM SR)を流用しているようだ。

徹底的なレストアは施されなかったようだが、話が進むにつれ発色も安定し、細かいパラ、キズなどもほとんど見当たらない良好な画質と言えるだろう。音声も、大きな問題はない。

特典、予告編などの収録はなく、シリーズ・ガイドが収録(4分31秒)。

ブックレットは、いつも通りの12頁で構成されていて、『 影武者 』で徳川家康を演じた油井昌由樹氏の黒澤への思い出を語った記事が、黒澤の素の人柄を知ることが出来て面白い。

今後、本家の東宝からDVDが発売されるか不明なので、映画ファンは、何としても手に入れるべきだろう。
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