2022年6月15日水曜日

ブルーノ・ムナーリ

ブルーノ・ムナーリ : 彩遊記


ブルーノ・ムナーリ : 彩遊記
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ブルーノ・ムナーリ

ブルーノ・ムナーリ_f0084105_17154728.jpgブルーノ・ムナーリの著書「モノからモノが生まれる」の冒頭、いきなり老子の一節が掲げられている。

「生而不有 為而不恃 功成而弗居」

※生じて有せず、為(な)して而も恃(たの)まず、功成って而も居らず

なぜムナーリは老子を引いたのか。万物に美と醜を見いだしてから、人はおかしくなった。こういう美醜にとらわれていては、本当の仕事をすることはできない。仮にそのような仕事ができたとしても、そのことによって敬意を受けようなどと思わないことだ。そう、老子は言ったのだが、ムナーリはこれを、デザインが陥りがちなポピュリズムからの脱出のための惹句に見立てたようなのだ。そして、こうも書いたのである。「豪華さは愚かさのあらわれである」「家具は最小限のものでじゅうぶん」。(松岡:千夜千冊)

ブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari、1907年10月24日ミラノ生まれ、1998年9月30日没)は、イタリアの美術家。美術家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、教育者、研究家、絵本作家など、ムナーリには多くの顔がある。
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1958年イタリアを訪れていた詩人・美術評論家の瀧口修造と知り合い、瀧口によって1965年日本で個展を開いている。瀧口を通じて作曲家・武満徹とも親交が深く、ムナーリが贈ったオブジェをモチーフにした武満の曲「ムナーリ・バイ・ムナーリ」がある。
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1960年代以降はしばしば日本を訪れ、日本の伝統的な美意識やデザインに共鳴し、影響を受ける。1950年代からイタリアのダネーゼ社のためのプロダクトを数多くデザインし、その後も家具、照明器具などの工業製品のデザインを数多く残している。ダネーゼの灰皿は喫煙家なら、誰もが一度くらいお目にかかっているはずである。
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ムナーリはその名もズバリの『ファンタジア』(1977)という本で、想像力(ファンタジア)は気まぐれで不規則で、でたらめででまかせで、妄想的で霊感的でありながらも、それが「これまで実在してこなかったもの、表現されてこなかったもの」に関する新たな発想への出奔であるかぎりは、すべて想像力と名付けられるべきだろうと言っている。想像力とは実は、分解不可能な能力なのではなく、たくさんの可能性が一緒にやってくる同時的な能力なのである。(松岡:千夜千冊)

たとえばムナーリは、想像力(ファンタジア)の基本的な能力は大きく3つあると考えてきた。第1に、「ある状況を転覆させ、内容を反対にしたり対立させて考えること」である。第2に、「ある事柄を内容を変えずに、それを一から多にすること」である。第3には、「その特色を別のものに交換したり代用させること」である。まとめて「関係の中の関係」をまさぐっていくこと、それがムナーリのいう想像力なのである

そもそもムナーリのプロダクトは、「問題P」(problema プロブレーマ)をどのように「解決S」(soluzione ソルジオーネ)にもちこむかという配列で構成されている。ムナーリがデザイナーたちにぜひにと奨めているのは、この「問題P」から「解決S」へ向かう間に、問題をより明確に定義する行程を入れていくことだ。PをSにするデザインワークの"見当"には幾つかの仕上げ方があって、焦ってアイディアを出す前に、そのいずれに進むかという自由に自分をおきなさいという姿勢のことなのだ。(松岡:千夜千冊)

その"見当"とは、(一ヶ月間の展示会のための解決)「一時的な解決」なのか、あるいは「決定的な解決」なのか、純粋に「商業上の解決」なのか、「永続的な解決」なのか(その時々の、ある好みを作る流行からは外れた解決)、または「技術的に精巧な解決」なのか、「単純で経済的な解決」なのかというふうに。この姿勢のいずれかが決まらないと、アイディアはいつまでも空転する。そう、真剣に提案してくれているのだ。

冒頭の老子の後には、『デカルトの方法による4つの規則』が掲げられている。のだが「モノからモノが生まれる」を通観すると、この4原則は、ブルーノ・ムナーリの仕事の源流を解く鍵だということが分かってきた。

その4原則を此処に掲げておく
第一に、明らかで真であると認められない限り、どんなことも決して真であると受け入れないこと。つまり、きわめて慎重に、早合点や先入観を避けること。あらゆる疑いをも取り除くほどにはっきりと明瞭に、わたしの知性に示される示されること以外は、決して判断に含めないこと。

第二に、それぞれの問題を、できるだけ多く、そしてよりよい解決に必要とされるだけ、たくさんの小部分に分けること。

第三に、自らの思考を順序よく導くこと。もっとも単純で、もっとも認識しやすいことから初め、少しずつ会談を上がるようにし、もっとも複雑な認識にまで上り詰めること。そして、そのままではどちらが先にあるのか分からないものの間にも順序を仮定しながら行うこと。最後に、どんな場合においても、一つ一つ完全に数え上げ、総合的な見直しを行い、なに一つ見落としたものはないと確信すること。(ルネ・デカルト1637年)

何かをしたいなら、何かを分かりたくなりなさい。
分かりたいなら自分自身が変わりなさい。
分かるは変わる、変わるが分かる。
これがデザインのファンタジア。(松岡正剛)

謝謝大家

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