プラスチックを食べる細菌、世界中で出現。ごみ問題の救世主となるか | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
世界のプラスチック生産量は、1950年には200万トンだったが、2015年には3億8,100万トンに達しており、わずか70年ほどの間で200倍近くも増加している。(※1)この急激な増加に反応するかのように、世界各地で"プラスチックを分解する細菌"が発見されていることはご存じだろうか。プラスチックの使用量が爆発的に増えた70年という歳月は、細菌が環境の変化に合わせて進化するのに十分な長さだという。
スウェーデンのチャルマース工科大学の研究者たちは、2021年10月、プラスチック汚染が深刻な地域ほどプラスチックを分解する酵素の量が多く、その種類も多いことを発見したと発表した。研究者らは、世界数百か所の環境DNAを分析。プラスチックを分解する能力を持つ酵素のデータと、各地域で公表されているプラスチック汚染の状況に関するデータを照らし合わせたところ、地中海や南太平洋など汚染が深刻な場所にほど、多くのプラスチック分解酵素が存在することがわかったという。
研究者たちはこの研究が、プラスチック汚染が微生物生態系に与える影響が測定可能であることを示す証拠になるとして、重要視している。また、この研究は、プラスチックが自然界で分解されるメカニズムに関する詳しい情報を提供したり、新しいプラスチック分解酵素を発見できる場所を示唆したりしている点において有用だという。
世界では毎年800万トンのプラスチックごみが海洋に流出しており、それらが自然環境下で分解されるには非常に長い時間がかかる。プラスチックを分解する細菌および酵素の研究を進め、その能力をプラスチックのリサイクルプロセスに活かすことができれば、プラスチックごみ問題の解決に繋がるかもしれない。
2020年には米英の研究チームが、日本で発見されたポリエチレンテレフタラート(PET)を分解する細菌の酵素をもとに、従来と比べて最大6倍の速さでPETを分解できる酵素を作製したと発表した。このように、新しく発見された酵素がきっかけとなって研究が進むことがある。世界各地で数多くのプラスチック分解酵素を発見したチャルマース工科大学の成果が、次の研究に活かされることを期待したい。
※1 Plastic Pollution – Our World in Data
【参照サイト】 Plastic-degrading enzymes correlate with pollution | Chalmers
【関連記事】 プラスチックを食べる幼虫をカナダの大学が発見。マイクロプラ除去システム開発に貢献か | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
https://ideasforgood.jp/2020/03/26/wax-worm/
2020/03
プラスチックを食べる幼虫をカナダの大学が発見。マイクロプラ除去システム開発に貢献か | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
ペットボトルやレジ袋など、さまざまな製品として私たちの身近にあるプラスチック。石油からつくられるプラスチックは分解が難しく、マイクロプラスチックとして環境に残ることが多いため、現在さまざまな国でプラスチック削減の取り組みがさかんに行われているとともに、マイクロプラスチックが人体や海洋生物に与える影響などについても研究が進められている。
そんななか、カナダのブランドン大学研究チームがプラスチックを食べて分解する幼虫を発見したことがわかった。同大学のニュースリリースにて、よくある質問への回答と共に発表している。
この幼虫の名前は、ワックスワーム。通常はハチの巣に住み、ミツロウ(ハチが巣をつくるために分泌する物質)を食べる。研究チームによると、このワックスワームはレジ袋などに使われるプラスチックの一種「ポリエチレン」を唯一の栄養源として1年以上生存できるという。実験では、60匹のワックスワームがいれば1週間たたないうちに30平方センチメートル以上のレジ袋を食べてしまうということがわかった。
プラスチック分解のカギは、ワックスワームの中にいる腸内細菌だ。「プラスチックを食べる細菌がいることはすでに知られているが、細菌のみを使ったプラスチック分解には時間がかかる。また、抗体物質でワックスワームの腸内細菌を減らしても、プラスチック分解はうまく進まなかった。ワックスワームと細菌の間には、プラスチック分解を促進する相乗効果があるようだ。」と、当研究を発表したルモワン博士は語っている。
実験中には、プラスチックを与えたワックスワームは、通常の餌を与えたワックスワームまたは空腹状態のワックスワームと比較して腸内細菌が増えたことが確認された。これは、細菌がプラスチックで増殖することを示している。さらに、ワックスワームがプラスチックを分解したあと、アルコールの一種であるグリコールが副産物として生成された。このグリコールの性質についても、当チームは現在研究を進めている。
発表されたリリースの中で、この研究はどのように活用できるのだろうか?という質問に対し、チームは「ワックスワームが現存するプラスチックをすべて食べてくれる、と期待するのは非現実的だが、細菌とワックスワームの機能と繁殖条件の理解を深めることで、より良いプラスチック生分解システムの開発を支援できる」と回答した。
腸内細菌の助けを借りてプラスチックを食べながら分解する幼虫。同時に生成されるアルコールを、どのように使用できるかについても期待が高まる。今後のさらなる研究成果に注目していきたい。
【参照サイト】Plastivores: Remarkable waxworms devour plastic waste in BU study
(※画像:Brandon Universityより引用)
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