世界初! 「鳥の言葉」を証明した"スゴい研究"の「中身」
『ピーツピ・ヂヂヂヂ』の意味は?
きっかけはなんと「ルー語」 鳥の文法を証明!
「ヒントになったのが、ルー大柴さん。ルー語で有名ですけれども、ルー語とは、日本語の文章の一部を英語に置き換えたもので、初めて聞くけど意味は通じる文章です。例えば逆鱗にタッチ(触れる)、藪からスティック(棒)っていったら、分かるでしょ。それは私たちが日本語の文法を使って、その組み合わせを理解しているから。だからシジュウカラでも同じような実験ができるんじゃないかなと考えたんです」(鈴木さん)
確かに、この方法なら「新しい文章」をつくり出せそうです。でも、どうやって「シジュウカラ語」を「ルー語」に変換したのでしょうか。
「僕の調査地、長野県ではシジュウカラって、他の種類の鳥と一緒に群れを作るんですよ。ここではコガラっていう鳥と一緒に群れを作っているんですけれども、彼らがお互いの鳴き声の意味を、ちゃんと学習して、理解しているということが分かったんです」(鈴木さん)
実は鈴木さん、長年の研究により、シジュウカラがコガラの鳴き声までも理解できることを見つけていました。たとえば、「集まれ」はシジュウカラ語では『ヂヂヂヂ』ですが、コガラ語では『ディーディーディー』。音が違うにもかかわらず、シジュウカラはどちらの鳴き声にも近づいていくのだといいます。シジュウカラにとってコガラ語は、いわば外国語のようなものなのです。
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そこで鈴木さんは、シジュウカラの『ピーツピ・ヂヂヂヂ(警戒・集まれ)』の『ヂヂヂヂ(集まれ)』の部分をコガラ語の『ディーディーディー(集まれ)』に置き換えて、鳥バーションのルー語を作り出しました。
「聞かせてみると、同じ意味だとわかっているようで、シジュウカラはちゃんと警戒しながらスピーカーに近づいてきて、あたかも天敵を探して追い払うかのような行動を示したんです。しかも語順をひっくり返すと、また意味が通じなくなったんですよ」(鈴木さん)
このようにして証明された鳥の「文法」*2。鈴木さんは、シジュウカラたちの言葉がここまで進化したのは、森という生息環境が影響したのではないかと考えています
「シジュウカラはうっそうとした森の中で群れているんですが、鳥と鳥との距離が結構離れているんですよ。10メートル20メートル離れてることもよくあって。だからお互いに目で見えないんです。目で追えないような間隔で情報を伝え合うには、ただ『来て』とかだけじゃなくて『天敵がいるから警戒しながら近づいて』とか、ちょっと複雑な情報を同時に伝える必要がある。
(それに対して)例えばヒマラヤのあたりには、すごく開けた場所にすんでいるシジュウカラの仲間がいて、お互いを目で確認できる。彼らはどういうふうに鳴いてるかっていうと、かなり単純な声しか出せないんです」(鈴木さん)
自分の事を「人類史上、一番シジュウカラを観察した人間」と自負する鈴木さん。今後の目標は、動物行動学、言語学、認知科学を融合させた"動物言語学"という新しい分野を立ち上げて、動物のコミュニケーションの理解を深めること。そしてそこから人間の言葉の進化の解明にもつなげていきたいと考えているそうです。
*1「サーチイメージ」の論文はコチラ(https://www.pnas.org/content/115/7/1541)
*2「ルー語」がヒントになった論文はコチラ(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982217307662)
「サイエンスZERO」
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私たちの未来を変えるかもしれない最先端の科学と技術を紹介するとともに、世の中の気になる出来事に科学と技術の視点で切り込む番組。
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