おすすめの本『庶民の日本史 ねずさんが描く「よろこびあふれる楽しい国」の人々の物語』(小名木 善行 著) を紹介します。興味があればぜひお読みください。
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経済政策に家計の発想を持ち込むな 少し脱線します。経済は「経世済民」を略した言葉です。 経世済民こそが国家の政策の根幹であり、国の政治の目的です。ここは大事なところで、企業は利益を目的としますが、国は利益を目的としません。なぜなら国は、民が豊かに生活できるようにすることを使命とするからです。ですから企業が行うのは「経営」です。国が行うのは経世済民(これを短縮して経済といいます)です。 江戸時代に国政を担った徳川家は、武門の棟梁であり、将軍家であり、国の政治を司りました。しかし徳川家そのものは「家」です。家は、入りを増やし出を制して資産を殖やし、家を存続させようとします。つまり家が行うのは「家計」であって「経済」ではありません。「家計」に「経世済民」という目的はありません。あくまでも自分の家の保持が目的です。 享保の改革が起こした問題は、この「家計」思考を、国政に持ち込んだところにあります。つまり家を黒字化させることを目的にしたわけです。ですから年貢を増やし、支出を削りました。ところがこれをやると、年貢を増やされ(増税)、公共工事などの財政出動が抑えられるので(歳費削減)、結果、国にお金がまわらなくなり、経済は一気に沈滞します。ただでさえ景気が悪いところへ、享保の改革なんてやられた日には、日本経済は急ブレーキを踏んだ状態になって失速します。つまりデフレが起きたのです。 ところが、これを実施して経済の大失速を招いたはずの将軍吉宗や、その改革の手伝いをした大岡越前などは、いまでも庶民の間にたいへん人気があります。なぜでしょう。 理由は明確です。 享保の改革は質素倹約を目的としましたが、後半においては、一度吸い上げて徳川家を富ませた経済力をもって、一気に新田開発や治水工事などの大規模公共工事(土木工事)を盛んに行ったのです。つまり大規模財政出動です。 そして一七一六年にはじまる享保の改革の最後の仕上げが、二十年後の一七三六年に行われた「元文の改鋳」です。これは通貨の供給量を一気に増やすという政策でした。つまり国内の通貨の流通量を一気に増やしたのです。これを「リフレーション(通貨膨張)」といいます。これによって、糞詰まりになっていた享保年間のデフレが弾け飛び、折からの開発した新田からの大量の食料供給も相まって、国内の景気が上昇し、みんなが腹一杯食える時代が到来しました。そして世の中は、文化文政の江戸文化がもっとも江戸時代らしく華やかに花咲く時代となったのです。 こうしたしだいから、将軍吉宗にしても、大岡越前にしても、いまだに庶民の味方と言われています。ちなみに将軍吉宗の治世である享保年間は二十年続いたのですが、この二十年間に江戸の伝馬町の牢屋に収監された囚人の数はゼロです。役人たちが仕事をサボっていたからではありません。犯罪は起きてしまえば被害者も加害者の家族も、みんなが不幸になります。だから犯罪の発生そのものを、真剣に国をあげて予防したのです。これだけの素晴らしい民度と治安の実現ができたのも、享保年間でした。
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