死刑執行に携わる"刑務官のリアル"を描いた漫画 「ロープを首にかける感覚が忘れられない」…過酷な仕事で精神的ダメージも
世界各国で廃止の動きが広がる死刑制度。日本でも議論が広がる中、死刑執行に携わる"刑務官のリアル"を描いた漫画に注目が集まっている。
「本日、加藤智大の死刑を執行しました。法務大臣として慎重な上にも慎重な検討を加えた上で死刑の執行を命令した次第です」(古川禎久法務大臣)
2008年に、東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件。加藤智大死刑囚は歩行者天国だった交差点にトラックで突っ込み、ナイフで人を襲うなどして7人を殺害、10人に重軽傷を負わせた。そんな加藤死刑囚の死刑が7月26日に執行された。
こうした凶悪事件が起き、死刑が執行されるたびに議論となるのが「死刑制度の是非」。そんな中、1冊の本が注目を集めている。
本のタイトルは『刑務官が明かす死刑の秘密』。日本で死刑はどう行われ、死刑囚はどのような生活をするのか……作者の一之瀬はちさんは、死刑に立ち会った経験を持つ刑務官を取材。その内容を元に描いた1冊だ。
「実際に死刑に立ち会った刑務官と繋がり、話を聞いていくうちに『結構、死刑って知らないことがいっぱいあるんだなあ』と思い、書き始めたのがきっかけ」(『刑務官が明かす死刑の秘密』作者・一之瀬はちさん)
こと細かく描かれる"死刑のリアル"。死刑執行当日に、刑に携わることを知らされるという刑務官たち。首に縄をかけ、絞めることで窒息させる「絞首刑」。刑務官たちは、その日のうちに"死刑の練習"を行う。
床を開けるボタンを押す係や宙に吊るされる間に縄を抑える係など、死刑執行時に刑務官が行う仕事もさまざま。しかし、罪人とはいえ、人間を殺めるという過酷な仕事だ。刑務官たちの精神的ダメージも、相当なものがあるという。
「ロープを首にかける感覚が忘れられず、車のハンドルが握れなくなり、うつとパニック障害を併発してしまった」(漫画)
「『どうしてもやりたくない』と涙を流して嫌がる人もいる。PTSD(心的外傷後ストレス障害)というか、非常にトラウマになってしまったということを聞いて、『ものすごいストレスの中で、死刑執行を行っているんだな』と思ったのがすごく印象に残っている」(『刑務官が明かす死刑の秘密』作者・一之瀬はちさん)
極限の精神状態の中、刑の執行に臨む刑務官たち。中でも一ノ瀬さんが「特に印象に残っている」と話すのが、刑の執行に関わる特別手当が"手渡しされる"というエピソードだ。
「(給与振込の場合)特別手当という名目で載ってしまうので、それによって家族の心理的負担になってしまうことを防ぐ。死刑を執行した刑務官本人に現金を手渡しして、刑務官側もそれを家に持ち込まず、家に帰る途中で飲みに使うなどする。手元にお金を残さないようにしているのが非常に印象的」
現在、世界各国で起きている「死刑廃止」の動き。先進国の多くで死刑が廃止になる中、日本では現在も死刑が行われている。世論調査では約8割が「死刑もやむを得ない」と回答するなど、死刑制度の是非を巡って現在も議論が続いている。
こうした中、一ノ瀬さんはこの漫画を通して、「一人一人が死刑について考えるきっかけを作りたい」と話す。
「自分の意見を持ってもらいたい。『死刑でどのようなことが行われているか』を知っていただきたい。ニュースだと『死刑が執行された』で終わりになってしまうが、部屋の中では本当にいろんな人たちがそれに関わっているので、その辺をよく知っていただきたい」
(『ABEMAヒルズ』より)
0 件のコメント:
コメントを投稿