ヘーゲル Hegal エンチクロペディ1812 独語／日本語

エンチクロペディ1808/1812
→目次

Nürnberger Schülerenzyklopädie

Hegel 

Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 1812

エンチクロペディ1812

短縮版ヘーゲル哲学入門(1809-11)

別称、ニュルンベルク・エンチクロペディ

独日語ヘーゲル 

https://hegel-system.de/de/nbg-enz.htm

 
エンチクロペディ1808/1812
　目次

b 05/21ヘーゲル在 、対自、偶有、固有、242に定在 

岩波文庫版はdaseinを最初は定有、途中から定在と訳している

107 

人間学、精神現象学、哲学史は不在

verschwindende Größen 

https://hegel-system.de/de/nbg-enz.htm

https://ja.hegel.net/j0.htm 

1812独語 

https://hegel-system.de/de/nbg-enz.htm 

https://hegel-system.de/de/nbg-enz.pdf 

　Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 1812 

［PDF Version］ 

* I. Sein 

* B. Quantität 

* II. Wesen 

* I. Begriff 

* II. Urteil 

* III. Schluß 

* Dritter Abschnitt - Ideenlehre 

* Erster Abschnitt - Mathematik 

* Zweiter Abschnitt: Physik 

* Dritter Abschnitt: Physik des Organischen 

* Erster Abschnitt - Der Geist in seinem Begriff 

* Zweiter Abschnitt: Der praktische Geist 

* Dritter Abschnitt - Der Geist in seiner reinen Darstellung　

Nürnberger Schriften

 I. Texte zur Philosophischen Propädeutik

 1. Philosophische Enzyklopädie für die Oberklasse (1808 ff.) 

Werke: Vollständige Ausgabe (German Edition) Kindle版

ドイツ語版  Georg Wilhelm Friedrich Hegel (著), Hegel-Institut Berlin

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B01ACBCNEM/ 

 

第三課程(上級)　概念論と哲学的エンチクロペディー(岩波文庫，ヘーゲル哲学入門1952)

参照：岩波書店、ヘーゲル哲学概論1932

Text nach Rosenkranz (Dritter Kursus, Zweite Abteilung; Werke Bd. XVIII, S. 146 ff.). Bei eingeklammerten Absätzen handelt es sich um Hinzufügungen von Rosenkranz nach Diktaten Hegels

☆は1812年版独自。かつては1808年説。知泉11-564頁では1810/11年と類似。561では1808/09年。詳細は9巻？
☆、精神哲学、絶対的精神、映画版
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼哲学２０８
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼＜絶対的精神＞＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿☆純粋２０３＿＿＼ 　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼芸術／＼ 　　／＼宗教　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿２０３＿＼ ／＿＿２０７＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　 ／(世界史)２０１
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼ 　　　『精神哲学』　(国内)国家１９４(国際法)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼心理学＼ 　　１２７～２０８　／＼人倫／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿☆思惟１６３　　　　　　　　／家族＼／市民＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼＜主観的精神＞＼ 　　　　　　／＼ ＜客観的精神＞＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼☆概念の中＿＿＼ 　　　　／＿＿＼☆実践的１７３＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　／人間学／＼１２９＼現象学＼ 　　／＼法１８１　　／＼道徳１８９
　　　　　　　　　　　　　　　　／☆感情１３１＼／☆表象１３２＼ ／＿＿＼／＿＿＼ ／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　(絶対理念)＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／＿＿＼
　　　　☆絶対的９５　(生命) 理念 (認識)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼動物／＼
　　　　　　　　　　　　／＿＿＿＿＿＿＼　　　　　　　『エンチクロペディ』　　　　　　　／＿１２３＿＿＼
　　　　　　　　　　　／＼☆理念論８４／＼　　　　　　　　　１～２０８　　　　　　　　／＼＜有機体学＞ ／＼ 
　　　　　　　　　推論６４＼ 概念論　／＿☆認識９４　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼ １２１　／＿＿＼ 
　　　　　☆生命８５　主観的＼ 　　／客観　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　／地質学／＼ 　　／＼植物／＼
　　　　　［概念］５４＿判断５８ ／＿＿＿＿＿＿＼　　　　　　　　　　　　　　　　／＿１２１＿＿＼ ／＿１２２＿＿＼
　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　 ／＼　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　 ／＼
　　　　　　／　　＼ 　　　　　　小論理学　　／　　 ＼　　　　　　　　　　　　／＿＿＼ 　　　『自然哲学』　　　／化学１２０
　　　限度☆現実性４８ 　　『論理学』　　　／現実性　＼　　　　　　　　　　／絶対力学＼ 　　　９６～１２６　／＼個別的個体
　　　　／＿＿＿＿＿＿＼ 　　１２～９５　／＿＿＿☆推論＼　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼ 　　　　　　　　／形態＼／＿特殊化
　☆存在論的＜有論＞　／☆主観の位置等／☆主観的＜本質論＞＼　　　　　　／＼　＜力学＞　／＼ 　　　　　　 ＜物理学☆非有機体の＞　
　　／　　＼　１６　／　　＼ 変更多数／　　＼ 　５４　／　　＼　　　　／＿＿☆数学９９／＿＿＼ 　　　元素の過程 　１１６／(音)(熱)
　／　質１６＼　　／　量　　＼ 　　／存在本質＼ 　　／　現象　＼　　空間と時間＼　　／有限力学＼ 　　一般的個体＼ 　　／特殊個体　　
／＿☆有１６＿＼／＿☆本質３３＼ ／＿＿＿☆概念＼／＿＿☆判断＿＼／＿＿９９＿＿＼／＿１１０＿＿＼ ／天体＼／元素＼ ／重力＼／凝集力

諸論１～１１

→論理学

 
エンチクロペディ1808/1812
　目次

　　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　／＿哲学
　　　　　　　　　　　　　精神の純粋な形態２０３
　　　　　　　　　　　　芸術＿＼／＿宗教
　　　　　　　　　　　／精神の学１２７／世界史
　　　　　　　　　　／＿＿＼ 　　　　／＿＿＼ 　　　
　　概念の中にある精神１２９＼ 　　／実践的精神１７３
 　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　 ／＼
　　　　　　／＿＿＼ エンチクロペディ１８１２／＿＿＼
　　　　　理念論８４＼ 　　　　　　　　　　／有機体の物理学１２１
　　　　／＿＿＼／＿＿＼ 　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼
　　　／＼　論理学１２／＼ 　　　　　　／＼ 自然の学９６／＼
存在論的　＼　〜９５／推論６５ 　　　／＿＿＼　　　　／＿＿＼
　論理学１６＼　主観的論理学５４ 　／数学９９＼　　／物理学１１０
 ／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼
 諸論１～１１

第一部　論理学１２x 

　第一節　存在論的論理学１６x 

　　(I)在１６

　　　Ａ質１６x 

　　　Ｂ量２４

　　(II)本質３３

　　(III)現実性４８x 

　第二節　主観的論理学５４x 

　　(I) 概念５４

　　(II)判断５８

　　(III)推論６５

　第三節　理念論８４

第二部　自然の学９６x 

　第一節　数学９９

　第二節　物理学(Mechanik)１１０

　第三節　有機体の物理学１２１

第三部　精神の学１２７x 

　第一節　概念の中にある精神１２９

　第二節　実践的精神１７３

　第三節　精神の純粋な形態２０３

Nürnberger Schülerenzyklopädie

Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 1812

［PDF Version］

• I. Sein
• B. Quantität
• II. Wesen
• I. Begriff
• II. Urteil
• III. Schluß
• Dritter Abschnitt - Ideenlehre
• Erster Abschnitt - Mathematik
• Zweiter Abschnitt: Physik
• Dritter Abschnitt: Physik des Organischen
• Erster Abschnitt - Der Geist in seinem Begriff
• Zweiter Abschnitt: Der praktische Geist
• Dritter Abschnitt - Der Geist in seiner reinen Darstellung

Einleitung

…
 

論理学

http://nam-students.blogspot.com/2010/09/blog-post_5795.html?m=0#noter2

ヘーゲル論理学　

ヘーゲル小(小)論理学1812 作業中：論理学は異動が多い。数学は自然哲学に
 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／体系と方法
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／絶対理念＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／本性＼／方法、弁証法
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／類＿＼絶対的　／善の理念　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼生命／＼９５／＼認識／真の理念
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／個体＼／過程＼／分析＼／総合＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／必然性　　　　　　　　　　　　／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼推論／＼　＜理念的または知識＞　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／質＿＼／反省＼　　８４～９５　／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　／概念　　　　　／＼　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿生命の理念／必然性　　　　／＿＿＼　認識　／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼概念／＼８４／＼判断／＼　　／＼　　／＼９４／＼　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼／質＿＼／反省＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　／　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　／交互作用５３　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　／＼
　　　　　　　　　　　　／＿＿＿＿＿＿＼　　　　エンチクロペディ１８０８／１８１２　　　／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　６５～　／＼
　　　　　　　　　　／　　＼現実性４９　　＼　　　　　　　　＜論理学＞　　　　　　　／＿＿＼　推論　／＿＿＼
　　　　　　　　　／実体４９＼　　／原因５１＼　　　　　　　１２～９５　　　　　　／＼　　／＼８３／＼　　／＼
　　　　　　　　／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＿＿＿＿＼　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　／＼　
　　　　　　／　　＼　　　　　　　　　　　　／　　＼　　　　　　　　　　　　／＿＿＼　　　　　　　　　　　　／＿＿＼
　　　　　／無限性３２　　　＜存在論＞　　／根拠４２＼　　　　　　　　　　／＼　　／＼　　＜主観的＞　　　／＼関係６２～６４
　　　　／＿＿＿＿＿＿＼　　１６～５３　／＿＿＿＿＿＿＼　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼　５４～８３　　／＿＿＼／＿＿＼
変化２２＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼
　　／　　＼　有１６／　　＼　　　　／　　＼本質３３／　　＼　　　　／　　＼概念５４／　　＼　　　　／＿＿＼判断５８／＿＿＼
　／　質１６＼　　／量２４／＼本質の概念３３＼　　／命題３６＼　　／　　　　＼　　／＼　　／＼　　／質６０／＼　　／量６１／＼
有１６＿定有１７／向自有＿定量＼／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　２４　２８

エンチクロペディ1808/1812

　目次

→論理学 

(I)有 

Ａ質 

(a)有１６ 

(b)定有１７ 

(c)変化２２ 

Ｂ量 

(a)向自有(観念性)２４ 

(b)定量２８ 

Ｃ無限性３２ 

哲学的エンチクロペディー1812 

諸論１～１１ 

第一部　論理学１２～ 

第一節　存在論的論理学１６～５３ 

(I)有 

A質 

(a)有１６ 

(b)定有１７ 

(c)変化２２ 

(a)向自有(観念性)２４ 

(b)定量２８ 

c)無限性３２ 

(II)本質 

A本質の概念３３ 

B命題３６ 

C根拠と根拠付けられたもの４２ 

　(1)全体と部分４２ 

　(2)力とその発展４３ 

　(3)内的なものと外的なもの４５ 

(III)現実性４８ 

(1)実体４９ 

(2)原因５１ 

(3)交互作用５３ 

第二節　主観的論理学５４～８３ 

(I)概念５４ 

(II)判断５８ 

(a)判断の質、または述語の規定６０ 

(b)判断の量、または主語の規定６１ 

(c)判断の関係、または関係の規定６２～６４ 

(III)推論６５～８３ 

第三節　理念論８４～９５ 

(I)生命の理念８５ 

(II)認識の理念９４ 

(III)絶対的理念または知識９５ 

原文kindle版を見ると多分以下が正しい 

岩波文庫版263頁は量２４の節題が抜けている 

数学は自然哲学に 

(I)有 

Ａ質 

(a)有１６ 

(b)定有１７ 

(c)変化２２ 

Ｂ量 

(a)向自有(観念性)２４ 

(b)定量２８ 

Ｃ無限性３２ 

tr. 

https://translate.google.com/translate?sl=de&tl=ja&u=https://hegel-system.de/de/nbg-enz.htm 

1812英語 

https://hegel.net/en/nbg-enz.htm 

tr. 

https://translate.google.com/translate?sl=en&tl=ja&u=https://hegel.net/en/nbg-enz.htm 

人間学、精神現象学、哲学、世界史については他の課程及び1827/30年版を見る必要がある。

参考：

エンチュクロペディー1830より

G. W. F. Hegel; Enzyklopädie der philosophischen Wissenschaften im Grundrisse, 1830

第一部　主観的精神   

三八七  　

　精神は、その観念態において展開するときは、認識するものとしての精神である。だがこの場合の認識は、論理的な理念としての理念の規定性であるようなものに止まるのではなく（第二二三節）、具体的精神が自らを規定して認識となるようなものである。 　

　主観的精神は

Ａ　自体的すなわち直接的である、だから心すなわち自然的精神である。つまり人間学の対象である。 

Ｂ　対自的であるすなわち媒介されている、なおいまだ自己へも他者へも同じように反照するものとしてあり、関係もしくは特殊化における精神であり、意識である。つまり精神の現象学の対象である。 

Ｃ　自己のなかで自己を規定する精神であり、自己に対してある主観（体）であり、心理学の対象である。

…

☆

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／CフィヒテDシェリング
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼近代／Bカント
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／Aヤコービ＿_ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　 　　　　　／復興
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　新プラトン派＿＼ 　哲学　／＿＿＼ 　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　タレスから／ギリシア＼ 　　／＼中世／スコラ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アリストテレス＿独断,懐疑＼／アラビア＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／詩　　　　　　　　　　　　　　 教団
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　絵＿音楽 　　＜絶対的精神＞　　 父_表象_子
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼個別／＼ 　　　　　　　　　　／＼完成／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／建築＼／彫刻＼ 　　　　　　　　／定義＼／移行＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　／＼ 　　　　　　／＼ 　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼　芸術　／＿＿＼ 　　　　／祭祀＼ 　宗教　／自由＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼理念／＼　　／＼形態／＼ 　　／＼概念／＼ 　　／＼規定／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼ [概念]＼／＿知＼ ／直接＼／分裂＼
　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／世界史
　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　／＼自由／＼　　　　　　　　　　　『精神哲学』　　　　　　　　　／＼国家／国際法
　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　国内法＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　　／＼　 　　　　　／＼　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＜倫理＝共同世界＞
　　　　　　　　　　／＿＿＼ 心理学　／幸福＼ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　教育と解体 　　福祉行政と職業団体　　
　　　　　　　　　／＼理論／＼ 　　／＼実践／＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼家族／＼ 　　／＼市民／＼
　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼ ／感情＼／衝動と恣意　　　　　　　　　　　　　　／婚姻＼／資産＼ ／欲求＼／司法＼　
　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　 ／＼　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　 ／＼　
　　　　　　／＿＿＼ 　　＜主観的精神＞　　　／＿＿＼　　　　　　　　　　　　／＿＿＼ 　　＜客観的精神＞　　　／＿＿＼
　　　　　／現実的な心 　　　　　　　　　　／＼理性／＼　　　　　　　　　不法に対する法　　　　 　　　　　　／＼善と良心
　　　　／＿＿＼／＿＿＼ 　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼ 　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼
　　　／＼　　　　　　／＼ 　　　　　　／＼ 　　　　　　／＼　　　　　　／＼　＜法＞　　／＼ 　　　　　　／＼ 　＜道徳＞　／＼
　　／感覚＼人間学　／習慣＼ 　　　　／悟性＼ 現象学　／一般＼　　　　／＿＿＼　　　　／＿＿＼ 　　　　／＿＿＼ 　　　　／＿＿＼
　／自然な心＼　　／＼感ずる心 　　／＼意識／＼ 　　／＼自己意識　　／＼所有／＼　　／＼契約／＼ 　　／企図と責任　　 ／意図と福祉　
／性質＼／変化＼直接態＼自己感情 ／感性＼／知覚＼ ／欲望＼／承認＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼ ／＿＿＼／＿＿＼ ／＿＿＼／＿＿＼




ヘーゲル法の哲学
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ゲルマン
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼世界史＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／東洋＼／ギリシア、ローマ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／対外主権　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　立法権＼　国家　／＿＿＼　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼国内法＼　　／＼国際法＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　君主権＼／統治権／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼　　　　　　　　　　　　／＿＿＼　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　教育と解体／＼　＜倫理＝共同世界＞／福祉行政と職業団体
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼　　　　　　　社会政策＼／職業団体
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼　家族　／＿＿＼　　　　／財産＼　市民　／裁判＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼婚姻／＼　　／＼資産／＼　　／＼欲求／＼　　／＼司法／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／満足＼／労働＼／正義＼／現実性　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　／　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼
　　　　　　　　　　　　　／強制と犯罪　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／共同体精神
　　　　　　　　　　　　／＿＿＿＿＿＿＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　／＼
　　　　　　　　　　／　不法に対する法　　＼　　　　　　　＜客観的精神＞　　　　　　／＿＿＼善と良心／＿＿＼
　　　　　　　　無邪気な不法＼　　／　詐欺　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼善、主観　　／＼良心／＼
　　　　　　　　／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＿＿＿＿＼　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼
　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　アンティゴネー＼　　　　　　　　　　　　　　／＼　
　　　　　　／　　＼　　　　　　　　　　　　／　　＼　　　　　　　オイディプス＿＿＼　　　　　　　　　　　　／＿＿＼
　　　　　／　譲渡　＼　　　＜法＞　　　　／　交換　＼　　　　　　　　　　／＼結果／＼　　　＜道徳＞　　　／＼自由／＼
　　　　／＿＿＿＿＿＿＼　　　　　　　　／＿＿＿＿＿＿＼　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼　　　　　　　　／＿＿＼／＿＿＼
　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼　　　　　　／＼
　　／　　＼　財産　／　　＼　　　　／　　＼　契約　／　　＼　　　　／＿＿＼企図と責任　　＼　　　　／＿＿＼意図と福祉＿＿＼
　／　所有　＼　　／物の使用＼　　／わがまま＼　　／　贈与　＼　　／＼関心／＼　　／＼行動／＼　　／＼一般／＼　　／＼特殊／＼
／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＿＿＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿＼／＿＿人格＿＿＼／＿＿法／＿＿＼　

カントと違い、ヘーゲルは人倫という共同体の習俗を普遍的な命題と捉えて固定化した。

最新ちくま精神現象学では、現にあるありかた（Dasein）を使用。

ヘーゲルは貨幣への考察が少ない。ジンメルが批判的に補完した。 

参考：

ジンメル『貨幣の哲学』(1999^1900)

https://love-and-theft-2014.blogspot.com/2021/06/blog-post_19.html

［］は訳者による補言。有Seinは在とした。

§ 1

Eine Enzyklopädie hat den gesamten Umkreis der Wissenschaften nach dem Gegenstande einer jeden und nach dem Grundbegriffe desselben zu betrachten.

第三課程　概念論と哲学的エンチクロペディー 

第二篇　哲学的エンチクロペディー 

諸論 

１ 

　エンチクロペディーは諸学の全範囲に亙って、各々の学問の対象とその対象の根本概念とを考察するものである。 

§ 2

Die Mannigfaltigkeit von Erfahrungen über einen allgemeinen Gegenstand zur Einheit allgemeiner Vorstellungen zusammengefaßt und die in der Betrachtung seines Wesens erzeugten Gedanken machen in ihrer Verknüpfung eine besondere Wissenschaft aus.

２ 

　一般的対象についての経験の多様が総合されて、一般的諸表象の統一になったものと、対象の本質の考察から作り出された諸々の思想とが結合して、或る特殊の学問が生ずる。 

§ 3

Wenn dieser Verknüpfung ein empirischer Stoff zugrunde liegt, von dem sie die nur zusammenfassende Allgemeinheit ausmacht, so ist die Wissenschaft mehr historischer Art.

Wenn aber das Allgemeine in der Form von Grundbestimmungen und Begriffen vorangeht und das Besondere aus demselben abgeleitet werden soll, so ist die Wissenschaft mehr eigentlich wissenschaftlicher Art.

３ 

　経験的素材がこの結合の根拠となる場合には、経験的素材の結合は単なる綜合的一般性にすぎないから、その学問はどちらかと云うと記録的な性質 (historische Art)をおびる。ところが普遍的なものが根本規定と概念の形式で先行し、特殊的なものがその普遍的なものから導き出されることになると、その学問は本当の意味で学問的性質 (Wisenschaftliche Art)をもつことになる。 

§ 4

Es gibt keine absoluten Grenzen für einen Umfang von  Erkenntnissen, die das Besondere einer Wissenschaft ausmachen soll; denn jeder allgemeine oder konkrete Gegenstand kann in seine Arten oder Teile geteilt und jede solche Art wieder als Gegenstand einer besonderen Wissenschaft betrachtet werden.

４ 

　それぞれの学問の特殊性を構成する諸々の認識の分野には絶対的な限界というものはない。なぜなら、各々の一般的、または具体的な対象はその種または部分に分けられることができ、その種がそれぞれ特殊な学問の対象として考察されるものだからである。 

§ 5

In einer gewöhnlichen Enzyklopädie werden die Wissenschaften empirisch aufgenommen, wie sie sich vorfinden.

Sie sollen darin vollständig aufgeführt und ferner in eine Ordnung dadurch gebracht werden, daß das Ähnliche und unter gemeinschaftlichen Bestimmungen Zusammentreffende nach einer analogen Verwandtschaft zusammengestellt wird.

５ 

　普通のエンチクロぺディーでは、現存の諸学がありのままに経験的に取り上げられる。いろいろの学問がその中に網羅されるべきである。更にまた類似のものや共通の規定の点で一致するものは、それぞれ類縁に従って括って、秩序づけることが必要である。

§ 6

Die philosophische Enzyklopädie aber ist die Wissenschaft von dem notwendigen, durch den Begriff bestimmten Zusammenhang und von der philosophischen Entstehung der Grundbegriffe und Grundsätze der Wissenschaften.

６ 

　けれども哲学的エンチクロペディーは、概念によって規定された必然的な関連を問題にする学問であり、諸学の根本概念と原則の哲学的由来について論ずる学問である。

§ 7

Sie ist eigentlich die Darstellung des allgemeinen Inhalts der Philosophie, denn was in den Wissenschaften auf Vernunft gegründet ist, hängt von der Philosophie ab; was dagegen in ihnen auf willkürlichen und äußerlichen Bestimmungen beruht oder, wie es genannt wird, positiv und statutarisch ist, so wie auch das bloß Empirische, liegt außer ihr.

７ 

　哲学的エンチクロぺディーは元来、哲学の一般的内容の叙述である。と云うのは、諸々の学問にあっては理性に基くものは哲学に依存するものだからである。これに反して任意な、外的な諸規定を問題とするような学問、云いかえると謂ゆる実証的な、或いは制定的(スタトウトーリッシュ)な学問や単なる経験的な学問は哲学の圏外にある。 

§ 8

Die Wissenschaften sind nach ihrer Erkenntnisweise entweder empirische oder rein rationelle.

Absolut betrachtet sollen beide denselben Inhalt haben.

Es ist das Ziel des wissenschaftlichen Bestrebens, das bloß empirisch Gewußte zum immer Wahren, zum Begriff aufzuheben, es rationell zu machen und es dadurch der rationellen Wissenschaft einzuverleiben.

８ 

　諸々の学問はその認識方法から云えば経験的であるか、純粋に合理的であるかである。しかし、絶対的に見れば、両者は同一の内容をもつべきものである。単に経験的に知られたものを止揚して真なるものに、すなわち概念にすること、それを合理化し、それによってそれを合理的な学問に合一すること、これが学問的努力の目標である。 

§ 9

Die Wissenschaften erweitern sich teils nach der empirischen, teils nach der rationellen Seite hin.

Das Letztere geschieht, indem das Wesentliche immer mehr herausgehoben, unter allgemeinen Gesichtspunkten aufgefaßt und das bloß Empirische begriffen wird.

Die rationelle Erweiterung der Wissenschaften ist zugleich eine Erweiterung der Philosophie selbst.

９ 

　諸々の学問は一方では経験的な面で、また一方では合理的な面で広がって行く。ところが後者は、本質的なものをますます取り入れ、それを普遍的観点の下で見、単なる経験的なものを概念することである。従って、諸学の合理的拡張は同時に哲学そのものの拡張である。 

§ 10

Das Ganze der Wissenschaft teilt sich in die drei Hauptteile: die Logik, 2. die Wissenschaft der Natur, 3. die Wissenschaft des Geistes.

• Die Logik ist nämlich die Wissenschaft der reinen Begriffe und der abstrakten Idee.

Natur und Geist macht die Realität der Idee aus, jene als äußerliches Dasein, dieser als sich wissend. (Oder das Logische ist das ewig einfache Wesen in sich selbst; die Natur ist dieses Wesen als entäußert; der Geist die Rückkehr desselben in sich aus seiner Entäußerung.)

１０ 

　学［哲学的学問］の全体は三大部門に分れる。(1)論理学 (Logik)。(2)自然の学(Wissenschaft der Natur)。(3)精神の学 (Wissenschaft des Geistes)。〜〜論理学はすなわち純粋概念と抽象的理念の学である。自然と精神は理念の実在性である。前者は外的定在としての理念の実在性であり、後者は自分を知るものとしてのそれである。（云いかえると、論理的なもの(das Logische)は永遠に単純な、自分自身における本質 (das ewig einfache Wesen in sich)である。自然は疎外された形におけるこの本質である。精神はこの本質がその疎外から自分に帰ったものである。） 

§ 11

Die Wissenschaften der Natur und des Geistes können als die angewandte Wissenschaft, als das System der realen oder besonderen Wissenschaften, zum Unterschiede von der reinen Wissenschaft oder der Logik, betrachtet werden, weil sie das System der reinen Wissenschaft in der Gestalt der Natur und des Geistes sind.

１１ 

　自然と精神の学は応用学、すなわち実在的な諸学または特殊的な諸学の体系として、純粋の学、すなわち論理学とは区別して見られてよい。と云うのは、自然と精神の学は自然と精神の形体における純粋の学の体系だからである。 

Erster Teil: Logik

§ 12

Die Logik ist die Wissenschaft des reinen Verstandes und der reinen Vernunft, der eigentümlichen Bestimmungen und Gesetze derselben.

Das Logische hat demnach drei Seiten: 1. die abstrakte oder verständige, 2. die dialektische oder negativ vernünftige, 3. die spekulative oder positiv vernünftige.

Das Verständige bleibt bei den Begriffen in ihrer festen Bestimmtheit und Unterschiedenheit von anderen stehen; das Dialektische zeigt sie in ihrem Übergehen und ihrer Auflösung auf; das Spekulative oder Vernünftige erfaßt ihre Einheit in ihrer Entgegensetzung oder das Positive in der Auflösung und im Übergehen.

第一部　論理学 

１２ 

　論理学は純粋悟性と純粋理性の学である。すなわち、悟性や理性固有の規定と法則の学である。そこで論理的なもの(das Logische)には三つの面がある。(1)抽象的または悟性的な面(die abstrakte oder verständige)。(2) 弁証法的または消極的［否定的］理性的な面 (die dinlektische oder negativ vernünitige)。(3)思弁的または積極的［肯定的］ 理性的な面(aie spekulalive oder positiv vernünftige)*。悟性的なもの (das Verständige) は概念の固定的な規定性と他のものとの区別に固執する。弁証法的なもの(das Dialektische)は概念を移行と解消の相で見る。思弁的なもの (das Spekulative) または理性的なもの(das Vernünftige) は概念の対立の中に統一を見、解消と移行の中に肯定的なものをつかむ。 

　* 

§ 13

Verstand und Vernunft werden hierbei gewöhnlich in dem subjektiven Sinne genommen, insofern sie als Denken einem Selbstbewußtsein angehören, und die Logik ist so eine bloß formelle Wissenschaft, die erst eines anderen Inhalts, eines äußeren Stoffes bedarf, wenn etwas wirklich Wahres zustande kommen soll.

１３ 

　この場合、悟性と理性とは思惟として自意識に属するものであるから、普通には主観的意味にとられる。従って、論理学は単なる形式的な学であって、本当に現実的なものを云うためにはもっと他の内容、すなわち外的な素材が必要になる。 

§ 14

Ihrem Inhalt nach betrachtet die Logik den Verstand und die Vernunft an und für sich selbst und die absoluten Begriffe als den an und für sich wahren Grund von allem oder das Verständige und Vernünftige, insofern es nicht bloß ein bewußtes Begreifen ist.

Die Logik ist daher an sich selbst spekulative Philosophie, denn die spekulative Betrachtungsart der Dinge ist nichts anderes als die Betrachtung des Wesens der Dinge, welches ebensosehr reiner, der Vernunft eigentümlicher Begriff als die Natur und das Gesetz der Dinge ist.

１４ 

　その内容から云えば、論理学は悟性と理性を即且対自に［純粋に］考察し、すべてのものの即且対自に［絶対的に］真なる根拠としての諸々の絶対的概念を考察する。云いかえると、論理学は単に意識された［主観的な］概念でないような悟性的なものと理性的なものを考察する。

だから、論理学はそれ自身思弁的哲学である。と云うのは、物を思弁的に考察するということは、物の本質の考察にほかならず、物の本質とは理性に独特な純粋の概念ということであり、また物の本性と法則を意味するものだからである。 

§ 15

Die Logik zerfällt in drei Teile: 1. in die ontologische, 2. in die subjektive Logik, 3. in die Ideenlehre.

Die erstere ist das System der reinen Begriffe des Seienden, die zweite das der reinen Begriffe des Allgemeinen, die dritte enthält den Begriff der Wissenschaft.

１５ 

　論理学は三部に分れる。 (1) 存在論的論理学 (die ontologische Logik) (2)主観的論理学 (die subjektive Iogik)。 (3) 理念論(die Ideenlehre) 。第一のものは存在(ザイエンデ)するものの純粋概念の体系である。第二のものは普遍的なものの純粋概念の体系である。第三のものは学の概念を問題にする*。 

　* 

Erster Abschnitt: Ontologische Logik

I. Sein

A. Qualität

a. Sein

§ 16

1. Der Anfang der Wissenschaft ist der unmittelbare, bestimmungslose Begriff des Seins. -
2. Dieser ist in seiner Inhaltslosigkeit so viel als das Nichts.

Das Nichts, als ein Denken jener Leerheit, ist somit umgekehrt selbst ein Sein und um seiner Reinheit willen dasselbe, was jenes. -

1. Es ist also kein Unterschied desselben, sondern was ist, ist hiermit nur das Setzen ihrer als Unterschiedener und das Verschwinden eines jeden in seinem Gegenteil, oder es ist das reine Werden.

第一節　存在論的論理学 

(I) 在 

Ａ質 

(a) 在 

１６ 

　(1)学の始めは直接的な、規定のない在 (Sein) の概念である。〜〜(2) この概念はその無内容の点では無(Nichts)に等しい。無はこのような空虚の思惟として、逆にまたそれ自身在である。また無はその純粋性のために在と同一のものである。〜〜(3)それ故に両者の間に区別はない。それで、在るところのものはただ区別されたものとしての両者の定立だけであり、両者各々のその反対への消失である。すなわち、それ［在るところのもの］は純粋の成(das reine Werden) である。 

b. Dasein

§ 17

Weil aber im Werden jene zuvor Gesetzten nur verschwinden, so ist das Werden ihr Zusammenfallen in eine ruhige Einfachheit, in welcher sie nicht nichts sind, aber auch nicht mehr jedes für sich, sondern als aufgehobene oder Momente sind.

Diese Einheit ist das Dasein.

(b)定在 

１７ 

　けれども、成においてはいま云う二つの定立されたものは全く消失するものだから、成はその両者の静止的単純性への癒着［崩壊］ (Zusammenfallen)である。すなわち、この静止的単純性においては両者は無ではないが、それかと云ってまた各々はもはや対自的に［それ自身独立に］あるのでもなく、止揚されたものとしてあり、または契機としてある。この統一は定在 (Dasein)である。

§ 18

Das Dasein ist 1. ein Sein, in dessen Begriff zugleich das Nichtsein seiner als Beziehung auf Anderes oder das Sein-für-Anderes liegt; 2. aber, nach dem Momente des Seins, hat es die Seite, nicht Beziehung auf Anderes, sondern an sich zu sein.

Als der Begriff, der diese beiden Bestimmungen in sich faßt, ist es die Realität.

１８　定在は、(1)一種の在である。と云ってもこの在は、その概念の中に同時に他者への関係という意味での自分の非在、云いかえると他者に対する在(Sein für Anderez)としての自分の非在(das Nichtsein seiner)が存しているような在である。(2)しかし、定在は在の契機の面から云えば他者への関係ではなく、即自に［それ自身で］ (an sich selbst) あるという面をもっている。そしてこの両規定を自分の中にもっている概念であるという意味では、定在は実在性 (Realität)である。 

§ 19

Das Reelle oder Etwas ist als verschieden von anderem Reellen zunächst gleichgültig gegen dasselbe, indem es in seinem Anderssein zugleich an sich ist.

Die Verschiedenheit von solchem ist zunächst in der Grenze als der Mitte zwischen ihnen, in welcher sie sosehr sind als nicht sind.

１９ 

　実在的なもの(das Reelle)または或る物 (Etwas)は、 他の実在的なものと異なるものであって、その点でまず差し当っては他の実在的なものに対して無関係である。と云うのは、この実在的なもの、または或る物はその他在の中にあって、同時に即自に［自分自身で］あるものだからである。ところで、このような他の実在的なものとの差別はまず何よりも両者の中間としての限界 (Grenz) の中に ［限界によって］ある。すなわち、限界の中では両者は在ると共に無い。 

　* 

§ 20

Sie sind 1. verschieden von der Grenze oder von ihrer Verschiedenheit, die ihre Mitte ist, außerhalb welcher sie etwas sind.

Aber 2. gehört die Grenze ihnen selbst an, weil es ihre Grenze ist.

２０ 

　しかしまた両者は、(1)限界、すなわち両者の中間である差別性とはちがったものである。両者はその限界の外にある或る物である。しかしまた(2)限界は両者自身に属している。なぜなら、それは両者の限界［そのもの］だからである。 

§ 21

Die Verschiedenheit ist somit

1. eigene Verschiedenheit des Reellen oder seine Bestimmtheit.

Diese an sich seiende Bestimmtheit ist aber auch

2. äußerliches Dasein oder Beschaffenheit.

 Die Bestimmtheit, die sowohl Äußerliches als Innerliches ist, macht die Qualität aus.

２１ 

　従って差別性は、(1)実在的なもの自身の差別性である。云いかえると、差別性は実在的なものの規定性(Pestimmtheit) である。しかし、この即自に［それ自身で］存在する親定性はまた、(2)外的定在または性状(Beschaffenbeit)である。つまり、このような外的なものであると共に内的なものでもあるところの規定性が質(Qualitāt)なのである。 

c. Veränderung

§ 22

Die Beschaffenheit oder das äußerliche Dasein gehört sowohl dem Etwas an, als es ihm fremd oder sein Anderssein, hiermit sein Nichtsein ist.

Es ist somit die Ungleichheit seiner mit sich selbst, wodurch die Veränderung gesetzt ist.

(c)変化 

２２ 

　性状または外的定在は或る物に属すると共に、また或る物に外的なものでもあり、或いは或る物の他在であり、従って或る物の非在 (Nichtsein) でもある。従って、この或る物は自分目身との非同等性である。すなわち、このために変化(Veränderung)が生ずる。 

§ 23

Indem die Veränderung das Negieren des Negativen ist, welches das Etwas an ihm hat, ist das Fürsichsein entstanden.

Oder die Bestimmtheit, als die innerliche Verschiedenheit, die das Etwas an sich selbst hat, ist die Beziehung des Etwas in seinem Unterschiede nur auf sich selbst, oder es ist für sich.

２３ 

　変化は或る物がそれ自身に［それにおいて］(an ihm)* もつところの「否定の否定」(das Negiren des Negativen) であるから、 ここに対自存在 (Für-sich-sein) が生ずる**。 云いかえると、規定性は或る物が自分自身に［即自的に］(an sich selbst)もつところの内的差別性として、或る物の区別の相における自分自身への関係にほかならない。すなわち、或る物は対自的(:向自的)にある。 

* 

** 

B. Quantität

a. Fürsichsein (Idealität)

§ 24

Das Fürsichsein ist

1. der Unterschied, aber nur von sich selbst, oder die Beziehung, nicht auf ein Anderes, sondern auf sich.

2. Insofern aber der Unterschied das Anderssein in sich enthält und die Beziehung darauf negativ ist, ist Anderes für es, aber als ausgeschlossen.

Ｂ量 

(a) 対自存在(観念性) 

２４ 

　対自存在は、区別であるが、(1)しかしただ自分自身からの区別にすぎない。云いかえると、対自存在は或る他者への関係ではなくて、自分への関係である。(2)しかし区別が他在を自分の中にもち、他在への関係を否定するものであるかぎり、他者は対自に［それだけで、独立に〕 (für es)にある。と云うよりも、他者はそこでは排斥されたものとして対自にある。 

　*

§ 25

Das Fürsichseiende ist das numerische Eins.

Es ist einfach, nur auf sich bezogen, und das Andere von ihm ausgeschlossen.

Sein Anderssein ist die Vielheit.

２５ 

　この対自的(=向自的)に存在するものは数的の一［一者］ (das numerisehe Eins)である。それは単純であって、ただ自分に関係するのみである。他者はそれからは排斥されている。この一［一者］の他在は多数性(Vielheit)である。 

§ 26

Die Vielen sind jedes dasselbe.

Sie sind daher Eins.

Aber das Eins ist ebensosehr die Vielheit.

Denn sein ausschließen ist Setzen seines Gegenteils, oder es setzt sich dadurch als Vielheit. Jenes Werden ist die Attraktion, dieses die Repulsion.

２６ 

　多(die Vielen)は各自同一のものである。多はそれ故にまた一である。しかし、また一は多である。なぜなら、一の排斥は一の反対の定立であり、云いかえるとはこれによって多として定立されるからである。前者の面［多が一であること］は牽引(Attraktion)であり、後者［一が多であること］は反発 (Repulsion)である。

§ 27

Indem sosehr das eine Werden gesetzt ist als das andere, so ist ihre Wahrheit die Ruhe, welche ebensosehr das Außersichsein des Eins oder sein Sichsetzen als Vielheit, Diskretion, wie die sich selbst gleiche Beziehung der Vielen oder ihre Kontinuität ist, die reine Quantität.

２７ 

　ところで、一方の生成は同時に他方の生成であるから、両者の真理は静止である。すなわちこの静止は一(das Eins) の 「自分の外にあること」 (das Ausser=sich=sein)、 云いかえると一が自分を多として定立すること、すなわち断絶［非連続性、分離］(Diskretion) であると共にまた多 (die Vielen)の自分自身に同等な開係、云いかえると多の連搬性 (Kontinuitat)でもある。つまり両者の真理としての静止は純粋量 (die reine Quantität) である。 

b. Quantum

§ 28

Die Quantität hat die Negativität des Eins nur als aufgehobene an ihr oder weil in der Sichselbstgleichheit des Fürsichseins das Anderssein unmittelbar kein Anderes ist als eine äußerliche Grenze, oder als eine Grenze, die keine Grenze ist.

Die Quantität mit dieser gleichgültigen Grenze ist Quantum.

(b)定量 

２８ 

　量においては一者［一］の否定性［排他性、自立性］は全く止揚されたものとしてある。と云うのは、対自存在が自己同一性の形にあるという意味で、他在はそのまま外的限界にほかならないからである。云いかえると、そこでは限界は限界でないような限界にほかならないからである。そしてこのどうでもよいような限界をもつ量は、すなわち定量(Qunntum)である。 

§ 29

Das Quantum ist extensives Quantum, insofern die Grenze auf das Moment der Vielheit der Quantität, oder intensives Quantum, insofern sie auf das Moment der Sichselbstgleichheit bezogen oder in der Bestimmung der Sichselbstgleichheit ist.

２９ 

　定量は限界が量の多数性の契機に関係しているかぎり、外延量 (extensives Quantum) である。また限界が自己同等性の契機に関係しているかぎり、云いかえると自己同等性の規定をもつかぎり、内包量 (intensives Quantum) である。

§ 30

Da die Negativität als gleichgültige Grenze an dem Quantum ist, so ist das Fürsichsein oder die absolute Bestimmung ein Jenseits für dasselbe.

Über jedes Quantum kann hinausgegangen und eine andere Grenze gesetzt werden, welche ebensosehr keine immanente Grenze ist.

Es entsteht dadurch der Progreß ins Unendliche oder die schlechte Unendlichkeit.

３０ 

　ところで、否定性は定量ではどうでもよいような限界としてあるから、対自存在または絶対的規定は定量にとっては彼岸(ein Jenseits)である。そこで各定量を超過して、もはや内在的限界でないところの他の限界が立てられることができる。このようにして、ここに無限の進行(der Prozess in's Unendliche)または悪無限 (die schlechte Unendlichkeit)が生ずる。 

§ 31

Die absolute Bestimmung, welche als ein Jenseits gesetzt wurde, ist aber als das Fürsichsein eigenes Moment der Quantität.

Oder die Grenze, welche keine ist, ist nichts anderes als das im Fürsichsein aufgehobene Anderssein.

Es ist die Bestimmtheit, deren Setzen Selbstbestimmung ist; qualitative größe.

３１ 

　しかし、彼岸として定立された絶対的規定は、実は対自存在としての量自身の契機である。云いかえると、この限界でないような限界は、対自存在の中に止揚された他在にほかならない。この他在［他在としての対自存在(=向自有)］は自分［即ち他在］の定立が同時に 自分の規定であるところの規定性、すなわち質的大きさ［質的量］(qunlitative Grósse)である*。 

　*

C. Unendlichkeit

§ 32

Die qualitative größe ist als einfache Bestimmung zuerst spezifische größe, als sich unterscheidendes Selbstbestimmen aber eine Spezifikation von Größen, welche zugleich bestimmte Größen gegeneinander sind und ein qualitatives Verhältnis zueinander haben oder deren Quotient ihre Verhältniszahl und als qualitativ zueinander sich verhaltender ist.

Da die Größen hier nicht nur als endliche aufgehoben sind, sondern ihr Aufgehobensein selbst als ihr qualitatives Gesetz gesetzt ist, so ist dies ihre wahre, gegenwärtige Unendlichkeit.

(c)無限性 

３２ 

　質的大きさ ［質的量、すなわち度(マース)］は単純な規定として、まず特殊的な大きさ［特殊的量］(spezifische Grōsse)である。しかし、それは自分を区別する自己規定であるから、二つの大きさ［量］を特殊化するもの (Gie Spezifikation) である。 すなわち、 ここにこの二つの大きさは同時に互に対立する特定の大きさであって、従って互に質的な比をもつととになる。云いかえるとその二つの大きさの商は両者の比例数であり、この意味で相互の質的な関係を含むものである。だから、この二つの大きさはここでは有限的なものとしてな止揚されることになるが、それにとどまらない。二つの止揚されたものそのもの［二つが止揚されたことそのこと］はむしろ両者の質的法則として定立されるのだから、この質的法測は両者の真の、現在的な［存在の中に現われているところの、潜在的でなく、現実的な］無限性である*。 

　* 

II. Wesen

A. Begriff des Wesens

§ 33

Die einfache Durchdringung der quantitativen oder äußerlichen Bestimmung und des eigenen inneren Bestimmens ist das Wesen.

Als Durchdringung der Selbstbestimmung und der gleichgültigen Bestimmtheit hat es die Momente der Wesentlichkeit und Unwesentlichkeit an sich.

Das Wesentliche ist das der Selbstbestimmung Angehörige, das Unwesentliche aber das Moment des gleichgültigen Daseins.

(II)本質 

A 本質の概念 

３３ 

　量的規定または外規定と自身の内的規定との全くの統一したものが本質である。しかしまた自己規定とどうでもよいような規定性との同一であるで、本質は本質性(Wesentlichkeit)と非本質性(Unweentlichkeit) の契機を即自に［それ自身］もっている。 本質的なものは自己規定に属すものであるが、非本質的なものはどうでもよい定在の契機である。 

§ 34

Das Werden, als Werden des Wesens, ist zunächst das Tun, ein Übergehen desselben in die Freiheit des Daseins, das aber ein Insichbleiben ist.

３４ 

　本質の生成という意味での生成は、まず差し当っては定在の自由への本質の移行の行動である。尤も、ここでは定在はあくまでも自分の中に留っているもの(ein Insichbleiben)である。 

§ 35

Insofern das Tun ein Unterschied des Wesens von sich selbst ist und Dasein oder Bestimmtheit dadurch hervorgebracht wird, ist das Tun Setzen.

３５ 

　この行動が本質の自分自身からの区別であって、それによって定在または規定性が産出されるものであるかぎり、行動は定立(das Setzen)である*。 

　* 

B. Satz

§ 36

Der Satz enthält die Momente des Insichbleibens oder der Sichselbstgleichheit und des reinen Unterscheidens.

Jenes wäre die reine Materie, dies die reine Form.

Die reine Form aber ist das in sich bleibende Tun, also die nämliche Sichselbstgleichheit, welche reine Materie genannt wurde, so wie diese umgekehrt das unterschiedslose Außereinander und von der reinen Form nicht unterschieden ist.

Ｂ命題 

３６ 

　命題は「自分の中に留まっているもの」、または自分自身との同等性と純粋な区別のはたらきという二つの契機をもっている。前者は純粋質料(die reine Materie)であり、後者は純粋形式 (die reine Form)である。しかし、純粋形式は日分の中に留まっている行動であり、従って純粋質料と名付けられたいまいう自分自身との同等性である。同様にまた逆に、純粋質料は区別のない区別(アウサーアインアンダー)であって、純粋形式と区別されない。 

§ 37

Es muss aber ebensosehr der Unterschied gesetzt werden, und die Einheit der Form und der Sichselbstgleichheit ist im  Gegensatz gegen das Insichsein, in der Form des äußerlichen Daseins, das, was gewöhnlich Materie genannt wird.

Insofern sie in der Form des innerlichen Seins ist, ist sie Inhalt, die Form aber ist jede dieser Bestimmungen der Verschiedenheit.

３７ 

　けれどもまた、区別も立てられねばならない。形式［区別］と自分自身との同等性 ［同一］との統一［同一］は、［それはこのようにそれ自身区別を含んでいるから、そのこと自身が］内自在［自分の中にあること］ (das Insichsein) に対立している点で、 すなわち外的定在の形式をもっているで、普通の意味での質料である。また統一が内的存在の形式の面から見られるかぎり、それは内容(Inhalt) である。しかし、このような差別性の規定の各々には形式 (Form) である*。［内容と形式］ 

　*

§ 38

)Der einfache Satz ist der Satz der Identität , a = a.

Er ist gegen seine Materie gleichgültig.

Sein Inhalt hat keine Bestimmung, oder er hat keinen Gehalt, und die Form ist somit die unterschiedslose Sichselbstgleichheit.

３８ 

　(α) ［以上を命題の形で要約すると、］単純な命週は同一性命題 (der Satz der Identitat)、a=a である。この同一性の命題はその質量に対して無頓着である。その内容は何らの規定をももたない。云いかえると、それは実質(ゲハルト)をもたない。従って区別のない自分自身との同等性である。 

§ 39

a)Der Satz der gleichgültigen Verschiedenheit setzt die unbestimmte Unterschiedenheit überhaupt und sagt aus, daß es nicht zwei Dinge gebe, welche einander vollkommen gleich sind.

３９ 

　(β)無頓着な差別性の命題 (der Satz der gleichgültiger Verschiedenheit)の表すものは無規定的な区別一般である。そしてその命題は、「互に全く同等な二物は存在しない」ということである。 

§ 40

• Der Satz der Entgegensetzung heißt: a ist entweder b oder -b, Positivität und Negativität.

Von den entgegengesetzten Prädikaten kommt den Dingen nur das eine zu, und es gibt kein Drittes zwischen ihnen.

４０ 

(γ) 対立の命題 (der Satz der Entgezensetzung) とは 「aはbであるか、-b であるかである」ということ、すなわち背定性と否定性［との対立］を意味する。対立する述語の中で当の物に属すのは、ただ一方だけであって、両者の間に第三者というものはない*。 

　* 

§ 41

• Der Satz des Grundes drückt das Zurückgekehrtsein des Gesetzten in sich aus oder das Setzen selbst als das Dritte, in welchem die entgegengesetzten Bestimmungen aufgehoben sind und welches, als das Einfache, die dem Begründeten, als dem mannigfaltigen Dasein, entgegengesetzte Bestimmung ist.

４１ 

(σ) 根拠の命題(der Satz des Grundes)が定立されたもの (das Gesetzte) ［各々］の自分への還路(das Zurückgekebrtsein)を表わす。云いかえると、第三のものとしての定立 (das Setzen)を表わしている。すなわち、この第三のものの中では対立した二規定は止揚されている。しかしまた、この第三のものは単純なものであるというまさにその点で、多様の定在として根拠付けられたもの (das Bezründete) に対立する規定である。 

C. Grund und Begründetes

1. Ganzes und Teile

§ 42

Das Wesen als Grund seines Daseins, ohne welches das Wesen selbst nicht ist, ist zunächst Ganzes und Teile.

Das  Ganze ist das Setzen seiner Teile und besteht umgekehrt aus ihnen.

Beide Seiten machen ein und dasselbe aus.

Das Ganze ist den Teilen nur als ihrem Zusammen, d. h. dem Ganzen gleich, und die Teile sind ihm als Geteiltem, d. h. als Teilen gleich; oder beide Seiten sind gleichgültig gegeneinander, und die Tätigkeit des Ganzen als der Form hat die Materie zur Bedingung.

C　根拠と根拠付けられたもの(Grund und Begründetes) 

(1) 全体と部分 

４２ 

　定在がないと本質そのものもないが、しかし本質はやはり定在の根拠である。ところで、この本質［の定在における形態］は全体と部分 (Ganzes und Teile) である。

全体は部分を定立するものであるが、しかしまた逆に部分から成っている。

両面は同じ一つのものである。全体は部分の綜合(トウザンメン)、すなわち全体であるという意味でのみ部分に等しく、また部分に分けられたもの (Geteiltem) としての、すなわち部分としての全体に等しい。云いかえると、両面は相互に無頓着なものでもあるが、また［他面から云えば］形式としての全体の活動性は質料を制約 ［条件］にもつ。 

2. Kraft und ihre Äußerung

§ 43

Die Teile sind aber nur Teile als gesetzt durch das Ganze.

Diese ihre Beziehung ist die Bestimmtheit durch die Einheit des Grundes.

Oder die Qualität des Daseins wird durch die Tätigkeit des Grundes als der Form gesetzt, und die Materie der Erscheinung ist sein eigener Inhalt.

Er ist somit Kraft welche sich äußert.

(2)力とその発展 

４３ 

　しかし、部分はただ全体によって定立されたものだという意味でのみ部分である。それで、これらの部分または部分の関係は、根拠の統一による規定性である。云いかえると、定在の質は形式としての根拠の活動性によって定立される。だから、現象の質料は根拠自身の内容である。従って根拠は自分を発現する力 (Kraft)である。 

§ 44

Die Kraft ist das Selbstsetzen ihres Daseins als bestimmter Qualität.

Nach der Seite, daß das Dasein noch Sein-für-Anderes oder Äußerlichkeit ist, ist sie zugleich frei von demselben und hört nicht auf, indem diese ihre Erscheinung verschwindet.

Sie hat nach dieser Seite zwar nicht mehr die Materie zur Bedingung, welche ihr Inhalt ist und der sie immanent angehört, aber noch eine sie sollizitierende Tätigkeit.

４４ 

　力は自分の定在、すなわち規定された質を自分で定立(ゼルブストゼッツェン)するものである。定在がまた他者に対する在または外面性であるという面から見れば、力は同時にこのような定在からは自由であって、この力の現象が消失するからといって無くなるものではない。この面から云えば、力は力の内容であるところの質料、力が内在するための質料をもはや条件にもたない［必要としない］が、しかしそれでも力を誘発する活動性(die sollizierende Tatigkeit)は必要である。 

§ 45

Die sollizitierende Tätigkeit ist selbst Kraft und muss dazu, sollizitiert zu sein, sollizitiert werden.

Indem die Beziehung beider Tätigkeiten aufeinander dies wechselseitige Austauschen ihrer Bestimmungen ist, ist jede der Grund der Tätigkeit oder der Äußerung der anderen.

Es ist damit der Begriff des Grundes entstanden, welcher Grund seiner eigenen und der anderen diese erregenden Tätigkeit ist.

４５ 

　この誘発する活動性はそれ自身力である。従って力は誘発されるように、誘発されねばならない。それで二つの活動性相互の開係は、二つの規定のこのような相互的な交換 (dies wechselseitige Austauschen)であるから、各々は他者の活動性または発現 (die Ausserung)の根拠である。こうして根拠の概念は、自分自身の活動性とこの活動性を発動させる他の活動性との根拠であるような根拠であることになった。 

3. Inneres und Äußeres

§ 46

Das Wesen ist Grund seines Daseins als sich selbst erregende Tätigkeit, und es ist in seinem Dasein nichts Fremdes oder nichts, das nicht durch den Grund selbst gesetzt wäre.

Das Wesen und sein Dasein sind somit dasselbe.

Jenes verhält sich als Inneres zu sich als Äußerem, das nur die Darstellung des Inneren ist.

　(3) 内的なものと外的なもの 

４６ 

　本質は自分目身を発動させる活動性であるという意味で、本質の定在の根拠である。だから、本質の定在の中には何ら外来のものはない。すなわち、根拠自身によって定立されないよりな何ものもない。従って本質と本質の定在とは同じものである。前者は内的なもの(Innere)として、外的なもの(Aeusseres)としての自分に関係する。すなわち、外的なものは内的なものの表示にほかならない。 

§ 47

Der Grund ist als dieses Verhältnis das Unbedingte, das Innere, die Einheit der Materie als der ruhenden Sichselbstgleichheit und der Form als der Einheit des Gegensatzes.

Er stellt sich dar in seinem Dasein als Materie, in der ihre Kräfte ruhen, und als Gegensatz und Spiel der sich erregenden und gegeneinander tätigen Kräfte.

Das Wesen ist hiermit Wirklichkeit geworden.

４７ 

　根拠はこのような相関関係(das Verhältnis)として、無制約的なもの (das Unbedingte) であり、内的なものである。また静止的な自分自身との同等性としての質料と、対立の統一としての形式との統一である。根拠はその定在の中に質料という形で現われ、そこで自分の諸々の力を休息させる。と同時にまた、活動する諸々の力や互に対立的にはたらく力の［二つの力各々の間の、また両面の力の間の］対立という形、或いは表面上の活動(シュピール)(たわむれ)という形でも現われる。 こうして本質は現実性の力のはたらき、または結果(Wirkung)として生じたもの(Wirklicickeit)になる。 

III. Wirklichkeit

§ 48

Die Wirklichkeit ist das selbständige Verhältnis.

Sie hat die Momente ihrer Erscheinung oder ihres Daseins, welches das Verhältnis zu sich selbst ist, und ihrer Möglichkeit als des Ansichseins oder Wesens ihres Daseins.

Das Wirkliche selbst ist die Einheit seiner Möglichkeit und seines Daseins.

(III)現実性 

４８ 

　現実性は自立的な相関関係である。現実性はその現象の契機、すなわち自分目身に対する相関関係であるところの定在の契機と、その定在の対自在または本質であるという意味の可能性の契機とをもつ。現実的なものそのものは、その可能性と定在との統一である。

1. Substanz

§ 49

Das Wirkliche ist Substanz.

Es ist Wesen, welches die Bestimmungen seines Daseins als einfache Attribute und Gesetze in sich enthält und dieselben als daseiendes Spiel oder als seine Akzidenzen setzt, deren Aufheben nicht ein Verschwinden der Substanz, sondern ihr Zurückkehren in sich selbst ist.

(1)実体 

４９ 

　現実的なものは実体 (Substanz)である。従って現実的なものは本質である。尤もこの本質に自分の定在の諸規定を単純な属性(Attribute)として、また法則として自分の中にもつと共にまたそれらの諸規を定在の側でのたかむれ［遊び］(daseiendes Spiel) または自分の偶有性(Accidenzen)として定立するような本質である。だから、偶有性の止揚は実体の消失ではなくて、実体の自分自身に帰ることである。 

§ 50

Die Substanz ist die Notwendigkeit ihrer Akzidenzen.

Diese haben in ihrem freien Dasein die Beziehung ihrer Natur auf ein Anderes als eine innere, verborgene an ihnen und scheinen ihre Selbständigkeit durch äußerlichen Zufall und eine fremde Macht zu verlieren, was aber in Wahrheit nur die Wiederherstellung des Ganzen ist, welches die an ihnen gemachte Absonderung wieder in sich zurücknimmt.

５０ 

　実体は諸々の偶有性の必然性である。偶有性は自由な定在の形をとるものであるが、そこに他のものに対する本質的な賜係をもっている。ただその関係は、そこでは内的な、かくれた関係として即自的にあるにすぎない。そのために、偶有性は外的偶然性と外的な力に支配されていて、自立性をも失っているように見える。けれども、実体はこのことはむしろ全体の回復にほかならない。すなわち、全体は偶有性の中で分離されているのを再び自分の中に取り戻すのである。 

2. Ursache

§ 51

Die Substanz tritt in das Verhältnis der Kausalität, insofern sie sich in dem Gegensatz der Notwendigkeit darstellt.

Die frei wirkende absolute Ursache ist die Substanz nicht nur als das Bewegende, dessen Tätigkeit in sich anfängt, sondern das auch den ganzen Inhalt in sich hat, den sie hervorbringt und der als Wirkung Dasein erhält.

(2)原因 

５１ 

　実体が必然性という形で現われると、実体は因果性 (Kausslitat) の関係をとる。自由に作用する (wirken*) 絶対的原因は、 活動を自分の中で始めるところの 「動かすもの」 (ans Bewegende)としての実体であるばかりでなく、全内容までも自分の中にもつものである。つまり、実体は全内容を産出するのであって、そこで内容は結果として定在をもつことになる。 

*

§ 52

Diese Tätigkeit ist somit, nach dem Gegensatz der Tätigkeit und des Bewirkten, Übergehen in das Entgegengesetzte, dem Inhalte nach aber ein identisches Übergehen.

５２ 

　それ故にこの活動性は、活動性と結果として作り出されたもの(das Bewirkte) との対立［すなわち形式］の面から云えば、対立への移行であるが、しかし内容の面から云えば、同一的な移行［同じものの移行］である。

3. Wechselwirkung

§ 53

Die Substanz ist daher als Ursache nur auf und in sich selbst tätig und steht nur in Wechselwirkung mit sich, oder sie ist das Allgemeine.

(3) 交互作用 

５３ 

　だから、 実体は原因としてただ自分自身に対してはたらくと共に、また自分自身の中ではたらくもの(auf und in sich selbet tätig)にすぎない。その意味で、実体は全く自分との交互作用(Wechselwirkung)の形である。すなわち、実体は普遍的なものである。 

Zweiter Abschnitt: Subjektive Logik

I. Begriff

§ 54

Der Begriff ist das Ganze der Bestimmungen, zusammengefaßt in ihre einfache Einheit.

第二節　主観的論理学 

(I) 概念 

５４ 

　概念(Begrifi)とは、単純な統一に綜合された諸規定の全体である。 

§ 55

Er hat die Momente der Allgemeinheit, der Besonderheit und der Einzelheit.

５５ 

　概念は普遍性、特殊性、個別性の契機をもつ。 

§ 55 

He has taken the moments of generality, specificity and detail. 

§ 56

Die Allgemeinheit ist seine in sich seiende Einheit in der Bestimmung.

• Die Besonderheit ist das Negative als einfache Bestimmung, die von der Allgemeinheit durchdrungen ist, oder sie ist Merkmal.
• Die Einzelheit ist das Negative als reine sich auf sich beziehende Negativität.

５６ 

　普遍性とは、規定の中にあって自分の中にあるような概念の統一である。～～特殊性とは、否定的なものであるが、それも普遍性によって貫かれているような単純な規定としての否定的なものである。云いかえると、特殊性は徴表 (Merkmal) である。～～個別性とは、自分に関係する純粋な［全くの］否定性としての否定的なものである。 

§ 57

Die Einzelheit hat als die sich auf sich beziehende bestimmungslose Negativität die Bestimmung als gleichgültiges, jedoch nicht selbständiges, sondern aufgehobenes Dasein an ihr als Eigenschaft und ist Subjekt.

５７ 

　つまり、個別性はこのように自分に関係する限りない(べシュティンムンクスロース)否定性である。それで個別性は、無頓着 (自立的)な定在をその規定としてもつ話にその特性があるが、それにもかかわらず［単に］自立的ではなくて、止揚された［すなわち普通性を本質とする］定在という規定をそれ自身もつ点にその特性がある。この意味で、個別性は主語 (Subjekt) である。 

II. Urteil

§ 58

Das Urteil ist die Trennung des Subjekts von seiner Bestimmung oder Besonderheit und die Beziehung desselben auf sie, die sein Prädikat ist.

Subjekt und Prädikat verhalten sich als Einzelne und Besondere oder Allgemeine oder auch als Besondere und Allgemeine zueinander.

(II)判断 

５８ 

　判断とは主語が自分の規定または特殊性から分離して、述語の規定に関係することである。主語と述語とは個別と特殊または普遍として関係し合うのであり、場合によってはまた特殊と普遍との間のそれという関係をとることもある。 

§ 59

Das Urteil erweitert zugleich das Subjekt zur Allgemeinheit und setzt zugleich seine Schranken.

Das Prädikat geht hierdurch zugleich über das Subjekt hinaus, und zugleich ist es in dem Subjekt enthalten, oder das Prädikat ist zugleich besonders und allgemein.

５９ 

　判断は主語を普遍性に拡張するが、また同時に主語に制限を加える。述語はこの点では主語を超越するが、また同時に述語は主語の中に含まれてもいる。云いかえると、述語は同時に特殊的であると共に、普遍的でもある。

a. Qualität des Urteils oder Bestimmung des Prädikats

§ 60

Indem das Urteil die Beziehung des Prädikats auf das Subjekt ist, so ist 1. sein Inhalt und Ausdruck zunächst dieser: das Einzelne ist allgemein; positives Urteil. -

1. Das Einzelne aber ist nicht allgemein - negatives Urteil -, sondern Besonderes. -
2. Das Einzelne ist nicht Besonderes - unendliches Urteil -, wodurch alle Bestimmung, auch die allgemeine Sphäre, somit das Prädikat überhaupt aufgehoben wird.
   

(a) 判断の質、または述語の規定* 

６０ 

　判断は述語の主部への関係であるから、判断の内容と表現はまず第一には次のようになる。 

(1)「個別的なものは普遍的である。」 ～～肯定判断 (positives Urteil)。～～(2)しかし 「個別的なものは普遍的ではなくて」 ～～否定列断 (negatives Urteil) ～～「特殊的なものである」。～～(3) 「個別的なものは特殊的なものではない」。 ～～無限判断 (unendliches Urteil)。～～ここではあらゆる規定、のみならず一般的領域も否定され、従って述語は一般に否定される。 

* 

b. Quantität des Urteils oder Bestimmung des Subjekts

§ 61

Das unendliche Urteil enthält das Einzelne als Einzelnes oder als dieses, und es entsteht 1. das Urteil "Dieses ist so beschaffen"; singuläres Urteil. -

1. Da das Prädikat zugleich von dem Subjekt auch etwas Allgemeines aussagt, so muss das Urteil so lauten: "Einiges ist so beschaffen"; partikuläres Urteil, worin unmittelbar das entgegengesetzte Urteil liegt: "Einiges ist nicht so beschaffen." -
2. Diese Unbestimmtheit hebt sich durch das Urteil auf: "Alles ist so beschaffen"; universelles Urteil.
   

(b) 判断の量、または主語の規定 

６１ 

　無限列断は ［すべての述語を否定するが、そのことは実は反面で却って個別的なものを個別的なものとして、またはこのもの (dieses)としてつかんでいる。そこで、次のような判断が生ずる。 (1)「このものはこれこれの性状をもつ」という判断。～～単純判断(singulāres Urteil)。(2)述語は同時に主語の或る普遍的なものを云い表わしているから、判断は次のように云われなければならない。「若干のもの (Einiges) これこれの性状をもつ。」～～特殊判断(partikulares Urteil)。しかし、この点では直ぐに反対の判断が可能である。すなわち「若干のものはこれこれの性状をもたない。」～～(3)この無規定性は次の判断によって止揚される。「あらゆるもの (Alles) はこれこれの性状をもつ。」～～全称判断(universelles Urteil)。 

c. Relation des Urteils oder Bestimmung der Beziehung

§ 62

Durch das qualitative und quantitative Urteil ist sowohl Subjekt als Prädikat in allen Bestimmungen des Begriffs gesetzt worden, hierdurch der Begriff an sich vorhanden, und das Urteil enthält jetzt eine Beziehung des Daseienden auf  den Begriff.

Dies eigentliche Urteil ist 1. kategorisch.

Weil jene Beziehung des Begriffs auf das Dasein aber nur erst ein innerlicher Zusammenhang ist, ist das kategorische Urteil zugleich nur assertorisch.

(c)判断の関係、または関係の規定 

６２ 

　質的判断と量的判断とによって主語と述語の両面に亙って概念のあらゆる親定が定立され、吟味された。これによって概念そのものが明らかになって来た。そこで、判断はいまや定在するものの概念に対する関係を示している。その典型的な判断は (1)定言的 (kategorisch) ［定言判断］である。しかし、概念の定在へのこのような関係はせいぜい内面的関連にすぎないから、定言判断は同時に単に実然的 (assertorisch) ［実然判断］である。 

§ 63

1. Das hypothetische Urteil, "wenn a ist, so ist b," spricht den Zusammenhang als solchen aus, also ohne Versicherung oder Assertion des Daseins, wodurch es problematisch ist.

６３ 

　(2)仮言列断(das hypothetische Urteil)、「もしaがあれば、bがある」は、関連そのも 

のを言表する。それ故に、定在の断定または確言(Versicherung oder Assertation)はないから、従ってそれは蓋然的(problematich) ［蓋然判断］である。

§ 64

1. Das disjunktive Urteil, "a ist entweder b oder c oder d," enthält im Prädikate die Allgemeinheit und die Besonderung derselben.

Das Subjekt ist auf diese Bestimmungen ebensosehr als Allgemeines bezogen, als diese auch einander ausschließen und dem Subjekte nur eine derselben zukommen kann.

Dies Urteil ist apodiktisch.

６４ 

　(3)選言判断(das disjunktive Urteil)、「aはbであるか、cであるか、dであるかである」は、述語として普遍性を、しかもその特殊化を表わす。主語は普遍的なものとしてこれらの［特殊化された］規定に関係しているが、これらの規定はまた互に排斥しあう。そして主語にはそれらの中の一つだけが属すことができる。この判断は必然的(apodiktisch) ［必然判断］である。 

* 

III. Schluß

§ 65

Der Schluß ist die Darstellung des Begriffs in seinen Momenten.

Einzelheit, Besonderheit und Allgemeinheit sind darinnen sowohl als Momente unterschieden, als auch die Extreme durch die Mitte, die ihre Einheit ist, zusammengeschlossen.

(III)推論 

６５ 

　推論とは、概念を概念の三契機で叙述するものである。そこにはやはり個別性、特殊性、普遍性の三契機の区別があるが、その上に［推論は］両項がその統一である中間によって結合されるものである。

§ 66

Der Schluß ist 1. zunächst die Zusammenschließung der Einzelheit und Allgemeinheit durch die Besonderheit als die Mitte.

Der Sinn dieses Schlusses ist: a) das Einzelne ist durch seine Bestimmtheit ein Allgemeines oder hat Dasein überhaupt; b) das Einzelne hat durch seine unmittelbare Bestimmtheit noch eine andere Bestimmtheit, welche jene in sich schließt.

６６ 

　推論は、(1)［定在の推論 Schluss des Duseins)、まず個別性と普遍性とを中間である特殊性によって結合する。この推論の意味は次の点にある。(a)個別がその規定性を通して普遍になる。云いかえると［逆に］個別が定在一般を獲得する。(b)個別はそれがもっている直接的規定性を通して、その直接的規定性がもっているところのもう一つ別の規定性を獲得する*。 

* 

§ 67

Die Form dieses Schlusses, E - B - A  , ist die allgemeine Regel der Subsumtion eines bestimmten Inhalts unter eine allgemeine Bestimmung.

Wenn diese, wie in identischen Sätzen, dem Inhalte nach nicht allgemeiner ist als diejenige, von der sie unmittelbar prädiziert wird, so hat sie doch die Form der Allgemeinheit als Prädikat gegen die andere als Subjekt.

６７ 

　この推論の形式、個(Ｅ)ー特(B)ー普(A)は、或る特定の内容を一般的規定の下に包摂する場合の一般的包摂の規則である。もし一般的規則が、同一命題の場合のように、自分が直接に述語となる当のもの［特殊、すなわち中間］よりも、内容から云ってより一般的でないとしても［BーAの関係］、それは［やはり］主語としての他者［個別］に対して、述語としての一般性［普遍］の形式をもっている［EーAの関係］。 

§ 68

In quantitativen Bestimmungen haben die Momente des Schlusses kein Verhältnis der Form zueinander, sondern das der Gleichheit.

Der mathematische Schluß heißt deswegen:

Was einem Dritten gleich ist, ist unter sich gleich.

６８ 

　量的規定の場合には、推論の三契機の関係は形式相互の関係ではなくて、同等性の関係である。数学的推論はそれ故に、「第三者に等しいものは、互に等しい」ということである。 

§ 69

Die Schlüsse, welche Stellung auch die in ihnen enthaltenen Momente haben mögen, sind auf die oben angegebene Form zurückzubringen, welche die allgemeine Regel aller Schlüsse ist.

６９ 

　また推論によって契機の位置はちがうが、それがどういう位置のもの［格のちがい］にせよ、各推論は上述の形式、すなわち全推論の一般的規則であるところの形式［第一格］に還元される。

§ 70

Im Schluß, nach seinen bestimmten Momenten betrachtet, ist die Mitte die Besonderheit, eine Bestimmtheit, deren Mehrheit das Einzelne als Konkretes in sich enthält, das somit auch mit anderen allgemeinen Bestimmungen zusammengeschlossen werden kann, die sich gegenseitig einschränken und selbst aufheben können.

• Ebenso ist das Besondere für sich auf andere allgemeine Bestimmungen beziehbar.

Umgekehrt faßt das Allgemeine andere Bestimmtheiten und somit auch andere Einzelheiten in sich.

Folglich sind hier das zusammengeschlossene Einzelne und Allgemeine ein zufälliger Inhalt füreinander.

７０ 

　推論をその特定の各契機の面から見ると、中間は特殊性、すなわち或る規定性である。ところが、その中間である規定性［は特殊性として多数性の規定をもつが、］その多数性はそれ自身具体的的なものとしての個別的なものをもっている。従ってこの個別的なものは、また ［それぞれ］他のいろいろの普遍的規定と結合されることができる。そしてこれらの普遍的規定は互に制限しあうものであり、従ってまた止揚されることができる。〜〜同様にまた、特殊的なものもそれ自身としては他のいろいろの普遍的規定に関係し得るものである。逆にまた、普遍的なものもその中に他の諸規定をもち、従ってまた他のいろいろの個別性をもっている。この意味で、ここでは結合された個別的ならのと普遍的なものとは互に偶然的な内容である*。 

* 

§ 71

In Ansehung der Beziehung der Momente sind in dem  Schlusse zwei unmittelbare Beziehungen oder Urteile, nämlich die des Einzelnen auf das Besondere und die des Besonderen auf das Allgemeine, und eine vermittelte Beziehung: der Schlußsatz.

Weil nur die vermittelte die Einheit der Zusammengeschlossenen und dadurch der Form nach die Notwendigkeit ihrer Beziehung enthält, so müssen die beiden unmittelbaren Beziehungen gleichfalls als Vermittlungen dargestellt werden.

Geschieht dies aber durch dieselbe Art des Schlusses, so entsteht der Fortgang ins schlecht Unendliche, indem jeder solcher eingeschobenen Schlüsse denselben Mangel hat.

７１ 

　三契機の関係について云えば、推論には二つの直接的な関係または判断がある。すなわち、個別の特殊への関係と、特殊の普遍への関係、その上に媒介された関係、すなわち断案とがある。媒介された関係だけは二つの前提の統一であり、その点で形式上は二つの関係の必然性をもつから、［逆に］二つの直接的な関係もまた同様に媒介されたものと見られねばならなくなる。しかし、こういう推論のやり方がいつでも機械的に守られるとすると、その一環をなしている推論の各々は同じ欠点をもつものであるから、悪無限的進行が生ずる*。 

* 

§ 72

Die unmittelbaren Beziehungen des Einzelnen auf das Besondere und die des Besonderen auf das Allgemeine müssen daher zuvor nach der allgemeinen Form des Schlusses überhaupt, aber durch eine andere Bestimmtheit der Mitte vermittelt werden.

1. Der zweite allgemeine Schluß ist daher, daß das Besondere mit dem Allgemeinen durch die Einzelheit zusammengeschlossen wird.
2. Das Einzelne aber als Daseiendes muss, insofern es Mitte sein soll, Allheit sein: Schluß durch Induktion.

Die Induktion kann, weil das daseiende Einzelne der freien Zufälligkeit angehört, nicht vollständig werden, und dieser Schluß bleibt daher insofern unvollkommen, so wie er auch keine innere Notwendigkeit enthält.

７２ 

　だから、個別と特殊との直接的関係［Ｅ－Ｂ］と、特殊と普遍との直接的関係［Ｅ－Ａ］とが、何よりもまず推論一般の一般的形式に従って、但し中間が別の規定性であるようなそれによって、媒介されねばならない。(2)［反省の推論 Schluss der Reflexion］だから第二の一般的推論は、特殊が個別性を通して普遍と結合されるということである。～～しかし、個別は定在するものであるから、個別が中間であるとすれば、個別が全体性(Allheit) にならねばならない。すなわち、これは帰納法による推論(Schluss durch Induktion)である。ところが、定在する個別は自由な偶然性に属すものであるから、帰納法は完全なものになることはできない。従って、この推論はそのかぎりあくまでも不完全なものであって、そこには内的必然性はない。 

§ 73

Die Einzelheit als Mitte aber, insofern sie allgemeines Moment des Begriffs ist, schließt das Besondere und Allgemeine auf wahrhafte Weise zusammen.

Sie ist die negative Einheit, in welcher als Werden und Tätigkeit die Besonderheit als unterschiedene Mannigfaltigkeit und Bedingung des Daseins in eins zusammengefaßt und zur einfachen allgemeinen Einheit erhoben worden oder umgekehrt das Allgemeine vereinzelt und in die Mannigfaltigkeit des Daseins getreten ist.

７３ 

　けれども中間としての個別性は、それが概念の普遍的契機であるかぎり、特殊と普遍とを真実の形［方法］で結合する。その真実の方法［従って中間としての個別］は、それが否定的統一であることである*。すなわち、この否定的統一は生成であり、活動性であって、その点でそれぞれ異なる多様である特殊性と定在の条件とが一つに綜合されて、単純な普遍的統一に高められる。或いは逆に、普遍が個別化されて、定在の多様の中に実現することになる。 

* 

§ 74

1. Endlich muss die Beziehung der Einzelheit auf die Besonderheit vermittelt werden, wozu das Allgemeine vorhanden ist:

Schluß der Analogie.

In diesem Schluß hat die Mitte gegen das Extrem der Besonderheit die Bestimmung der Einzelheit und zerfällt in Einzelnes und Allgemeines, da das, was nur von Einzelnem gilt, allgemein genommen wird.

Dieser Schluß enthält also eigentlich vier Bestimmungen (quaternio terminorum) und ist daher mangelhaft.

７４ 

　(3) ［必然性の推論 Schluss der Notwendigkeit］最後に、個別性の特殊性への関係が媒介されねばならないが、そのためには普通が必要である。ところで、それはまず類比の推論 (Schluss der Analogie) である。しかしこの推論においては、中間は特殊性の項に野して個別性の規定をもっている。けれども、この個別性をもつ中間は［実は］個別と普遍とに分裂して、［ひそかに二面をもって］いる。と云うのは、ここでは元来個別についてのみ云い得ることが普遍的にとられるからである。それ故に、この推論は本来は四つの規定［四個の名辞 quaternio terminorum］をもつ。だから、そこに欠陥がある。 

§ 75

Die Allgemeinheit aber als wahrhafte Mitte ist die innere Natur und der ganze Begriff, in welchem die negative Einheit, die Subjektivität sowie die Objektivität, der Inhalt und die Besonderheit des Daseins sich durchdringen und welche der absolute Grund und Zusammenhang des Insichseins und des Daseins ist.

７５ 

　しかし、真の中間としての普遍性は内的本性であり、全概念である。その概念においては否定的統一、すなわち主観性と客観性、すなわち内容または定在の特殊性が互に浸透しあう。すなわち、この普遍性は内自在と定在との絶対根拠であり、また綜合である。

§ 76

Der erste Schluß, E - B - A, der Vermittlung der Einzelheit und Allgemeinheit durch die Besonderheit, setzt die beiden folgenden, durch welche seine beiden unmittelbaren Beziehungen vermittelt werden, voraus.

Umgekehrt aber setzen diese beiden sich gegenseitig und ebenso den ersten voraus.

Das Unmittelbare fordert die Vermittlung und geht nur aus ihr hervor, so wie umgekehrt die Vermittlung aus dem Unmittelbaren hervorgeht.

Jene Schlüsse machen einen Kreis der gegenseitigen Voraussetzung aus, der als Ganzes sich mit sich selbst bindet und in der einfachen Vermittlung, die ebenso unmittelbar ist, sich als in dem Mittelpunkte zusammenfaßt.

７６ 

　その第一の推論、個(E)ー特(B)ー普(A)、すなわち個別性と普遍性との特殊性による媒介の推論は、次の二つの推論を前提としている。そしてそれによって第一の推論の二つの直接的な関係が媒介されるのである。しかし、この二つの推論はまた逆に、互に一方を前提すると共に、また第一の推論を前提する。つまり直接的なものは媒介を要求し、ただ媒介からのみ生ずるものであるが、また逆に媒介が直接的ならのからも生ずる。こうして、これらの推論は相互的な前提の円環を形成する。すなわち、この円環は全体として自分を自分目身と結合するものであり、従っていま云う直接性をもつ単純な媒介目身が中心点に立つものとなって綜合を行う。 

§ 77

Dies Ganze der sich selbst gegenseitig voraussetzenden Vermittlung, die eben darin einfache Unmittelbarkeit ist, bringt ein Dasein hervor, welches jene Ursache und deren Tätigkeit zu ihrer Voraussetzung hat, aber umgekehrt ist das Hervorgebrachte  ebensosehr Grund der Tätigkeit und des Hervorbringens selbst.

Diese Vermittlung ist daher weder ein Übergehen wie das Werden des Seins überhaupt, worin das Übergehende in seinem Entgegengesetzten sich verliert; noch ist es ein Hervorbringen wie das Erscheinen des Grundes, das nur unmittelbar ist, oder die Äußerung der Kraft, deren Tätigkeit bedingt ist; noch ein Wirken wie das der Ursache, deren Tätigkeit in der Wirkung verschwindet.

７７ 

　［目的性への移行］自分身を相互的に前提し合う媒介のこの全体は、前には自分の中に［或いは媒介の中に］単純な直接性を含んでいたが、いまや定在［進展した直接性］を産出する。すなわち、この定在はこの原因とこの原因の活動性をその前提としてもつ。しかしまた逆に、この産出されたもの［定在］も同様に活動性と産出そのものの根拠である。だからこの媒介は、在一般の生成のように移行ではない。在の生成の場合には移行するものはその反対者の中に目分を失ったのであるが。またそれは単に根拠が現象する (das Eracheinen des Grumdes) 場合のような産出(ダス・ヘルツォールブリンゲン)でもない。根拠の現象は単に直接的なものである。或いは力の発現(die Ausserung der Kraft) でもない。そこでは力の活動性は制約されている。 それかといって、それはまたその活動性が結果の中で消失するところの原因の作用のような作用(ein Wirken)でもない。 

§ 78

A.

Der Zweck, näher betrachtet, ist der reale und sich selbst realisierende Begriff, als Ganzes wie in seinen Teilen, der ganze Schluß.

Er ist zunächst als das Subjektive der ganze Schluß, nämlich 1. das unmittelbare, in sich seiende Allgemeine, das sich 2. selbst bestimmt oder besondert und 3. sich zum Außersichgehen, zum Dasein treibt.

７８ 

　A、目的(der Zweck) は詳しく云えば、実在的な概念であり、自分自身を実現する概念であり、全体としても、またその部分においても、全体が推論である。目的はまず最初には主観的なものとして、全体が推論である。すなわち、(1)目的は自分目身の中にある直接的な普遍である。しかしこの普遍は、(2)自分自身を規定し、または特殊化する。そして(3)目分を自己外化 (Aussersichgehen)に、すなわち定在にまでおとす。 

§ 79

B.

Die Realisierung des Zweckes ist ebenso der ganze Schluß.

Diese Vermittlung ist 1. tätiger Zweck als wirkende Ursache, aber 2. durch ein Mittel, das einesteils dem Subjektiven angehört, von der Tätigkeit mit dem Zwecke in Verbindung gebracht wird, andernteils dem Dasein oder der Objektivität angehört und von der Tätigkeit mit dieser Objektivität in Verbindung gebracht wird; 3. wirkt die Tätigkeit auf das unmittelbare Dasein und gibt durch dessen Aufheben sich selbst eine vermittelte, hervorgebrachte Objektivität.

７９ 

　B、目的の実現(die Realisirung des Zwecks)もまた全体が推論である。この媒介は、(1)作用する原因(wirkende Ursache)としての はたらく目的(テーティゲル・ツヴェック)である。しかし(2)この媒介、すなわち目的は、手段(Mittel)を通してはたらく。すなわち、この手段は一方では主観的なものであり、活動性によって目的と結合させられるが、他面では定在または客観性に属し、活動性によってどの客観性と結合させられる。(3)活動性は直接的な定在に作用し、定在の止揚によって、媒介され産出された客観性を獲得する。

§ 80

C.

Diese, der erfüllte Zweck, stellt die Vermittlung durch das Allgemeine dar.

Er ist ein Äußerliches, welches einerseits Produkt, andererseits Grund des Hervorbringens ist.

In demselben ist hiermit das Wirkende ebensosehr außer sich gekommen und in sein Entgegengesetztes übergegangen, als es auch aus der vermittelnden Tätigkeit in sich zurückgekehrt ist und in seinem Anderssein nur sich selbst gefunden hat.

８０ 

　C、この客観性、すなわち成就された目的(der erfüllte Zweck)は、普遍なものによる媒介を表わしている。成就された目的は一面では産物である外的なものであるが、他面では産出の根拠であるところの外的なものでもある。こうして、このような外的なものとなって、作用するものは自分の外に出て行き、反対のものにぐ移行するが、またそこで同時にこの作用するものは媒介する活動性から自身に帰るのであって、自分の他在の中でただ自分自身を見出したのみである。

§ 81

Insofern der Zweck als tätige Ursache Mittel und Produkt in der Existenz auseinanderfallen läßt, das Mittel also nicht den Zweck, das Produkt nicht die Tätigkeit an ihm selbst hat, ist die Zweckmäßigkeit bloß eine äußerliche, und relativ ist sie überhaupt, insofern der Zweck selbst von einem untergeordneten Inhalt ist und dasjenige, was Mittel für ihn ist, nur nach irgendeiner Seite diese Beziehung auf ihn hat.

８１ 

　はたらく原因としての目的が存在の中で手段と産物とを別々に切り離し、それ故に手段は目的を、産物は活動性をそれ自身でもたないかぎり、合目的性は単に外的な合目的性(eine itsserli che Zweskmasigkeit) である。従ってまた、目的そのものが何か従属的な内容の目的であり、また目的に対する手段であるものも、単に或る一面でのみこのような目的に対する関係をもつものであるにすぎないかぎり、合目的性は一般に相対的である。 

§ 82

Der Zweck des Existierenden ist dasjenige, was es an sich und in Wahrheit oder sein Begriff ist.

Die relative Zweckmäßigkeit, welche nur irgendeine Bestimmtheit desselben zur Rücksicht hat, erschöpft daher seinen Begriff nicht.

８２ 

　存在するものの目的は、存在するものがそれ自身でもっているその本質であり、その真理であり、その概念をなすものである。その目的の或る規定性だけに関与するにすぎないところの相対的合目的性は、それ故に目的の概念を盡すものではない。 

§ 83

Die innere Zweckmäßigkeit ist die, daß etwas an sich selbst gegenseitig ebensosehr Zweck als Mittel, sein eigenes Produkt und dies Produkt das Produzierende selbst ist.

Ein solches ist Selbstzweck.

８３ 

　内的合目的性 (die innere Zwe:kmāsigkeit) というのは、 成るものがそれ自身において相互的に目的であると共に手段でもあり、それ自身の産物であり、またこの産物が生産するものそのものでもあるような合目的性である。このようなものは自己目的 (Eelbstzweck)である。 

Dritter Abschnitt - Ideenlehre

§ 84

Die Idee ist der adäquate Begriff, in welchem die Objektivität und Subjektivität gleich ist oder das Dasein dem Begriff als solchem entspricht.

Sie faßt das wahrhafte Selbstleben in sich.

Die Idee ist teils Leben, teils Erkennen, teils Wissenschaft.

第三節　理念論 

８４ 

　理念は十全な概念(der adāquate Begrifi)である。そこでは客観性と主観性とは同じである。云いかえると、定在は概念そのものに一致する。理念は自分の真の生命を自分の中にもっている。理念は一方では生命(Leben)であり、一方では認識 (Erkennen)であり、一方では学(Wissenschaft)である。 

I. Idee des Lebens

§ 85

Das Leben ist die Idee im Elemente des Daseins.

Durch die Einheit des Begriffs und der Objektivität ist das Lebendige ein solches Ganzes, in welchem die Teile nichts für sich, sondern nur durch das Ganze und im Ganzen sind, organische Teile, worinnen Materie und Form unzertrennbare Einheit ist.

(I) 生命の理念 

８５ 

　生命は定在の要素(エレメント)の中にある理念である。生物は概念と客観性との統一であるから、次のような一個の全体である。すなわち、この全体の中においては、部分はそれ自身別々にあるものでなく、ただ全体によってのみあり、全体の中にのみある。すなわち、それは有機的部分であって、その中では質料と形式とは分ち得ない統一をなしている。 

§ 86

Das Leben hat die allgemeinen Momente an ihm, welche ebensoviel allgemeine organische Systeme konstituieren: 1. sein allgemeines einfaches Insichsein in seiner Äußerlichkeit, Sensibilität; 2. die Reizbarkeit von außen und unmittelbare Rückwirkung dagegen, Irritabilität; 3. Rückkehr dieser Wirkung nach außen in sich, Reproduktion.

８６ 

　生命はその中に一般的な諸契機をもっているが、これらの機はそれぞれ一般的な有機的体系を構成する。(1)外面性の形態をとった生命の一般的な単純な内自在、すなわち感受性 (Sensibilitat)。(2)外部からの刺激性 (Reizbarkeit)とそれに対してする直接的反作用、すなわち興奮性(Iritabilitat)。(3)この外部に対する作用の自分への還帰すなわち、再生産 (Reproduktion)。 

§ 87

Als sich realisierende Selbstbewegung ist das Leben der dreifache Prozeß: 1. die Gestaltung des Individuums in sich selbst, 2. seine Selbsterhaltung gegen seine unorganische Natur, 3. die Erhaltung der Gattung.

８７ 

　自分を実現する自己運動として生命は三様の過程をとる。(1)個体の自分自身の中における形成 (Gestaltung)。 (2) 非有機的自然に対する個体の自己保存(Relbsterhaltong)。(3) 類［種族］の維持 (Erhaltung der Gattung)。

§ 88

1. Der Prozeß der Gestaltung ist das Verhältnis des Organischen zu sich selbst und besteht darin, daß alle organischen Teile sich gegenseitig fortdauernd hervorbringen und die Erhaltung des einen von der Erhaltung der übrigen abhängt.

Diese Hervorbringung ist einesteils nur Evolution der an sich vorhandenen Organisation, andernteils die fortdauernde Veränderung derselben.

Jenes bloße Wachstum oder die quantitative Veränderung ist aber Vermehrungsprozeß durch Intussuszeption, nicht durch Juxtaposition, d. h. nicht eine mechanische Vermehrung.

８８ 

　(1)形成の過程は、有機体の自分自身に対する関係である。そしてあらゆる有機的な部分が互に絶えず生育を助け合うということ、従って一つのものの保存は他のすべてのものの保存に依存するものであることが、その本質である。この生育は一方では、それが即自に［本性上］もっている有機組織の進化(エヴォルチオーン)にすぎないが、他方ではそれの絶えざる変化である。けれども、この単なる生長も、量的変化も摂取 (Intussusception)による増進過程であって、加工(Juxtapoaition)によるものではない。すなわち、それは機械的増進ではない。 

§ 89

Der Prozeß der organischen Veränderung ist ebensowenig ein chemischer Prozeß.

Im Chemismus sind die sich zueinander verhaltenden Materien zwar durch ihren Begriff aufeinander bezogen (chemische Verwandtschaft) und enthalten somit an sich ihr Produkt, welches nicht schon durch das vorher Vorhandene, ihm Gleiche sich erzeugt.

Seine Hervorbringung aber ist keine Selbsterhaltung.

Es ist daher nur ein neutrales Produkt, d. h. in welchem die Tätigkeit, die nur den getrennten Materien zukommt, erloschen, nicht selbst produzierend, und wieder in seine Bestandteile, der Qualität und Quantität nach, trennbar ist.

８９ 

　有機的変化の過程はまた化学的過程ではない。化学性においても勿論、互に関係のある質料が概念によって互に関係しあう(化学的親和力)。従ってそれらの産物［化合物］は即自的に［本性上］定まっている。しかもこの産物は、前から存在するものによってそれと同じものが生産されるといったものではない。のみならず、この産物の生産は決して自己保存ではない。つまり、この産物はただ中性的産物である。すなわち、そこでは別々の質料がもっている活動性は消えてしまうのであって、自分を生産するということはない。だから、それは再び質と量との両面でその成分に分けられることのできるものである。 

§ 90

Der organische Ernährungsprozeß ist dagegen eine vollkommene Bestimmung der materiellen Vermehrung durch die innere schon existierende Form, welche als das Subjektive oder als die einfache Form aller Teile sich zu sich selbst oder jeder gegen die übrigen Teile als gegen ein Objektives verhält und nur mit sich im Prozeß ist.

９０ 

　有機的生育過程(Ernāheringeprozesx)は、これに反して内的なはじめから存在する形式による質料的増進の完全な規定である。このはじめからある形式は主体的なものであり、或いはあらゆる部分の単純な形式であって、ただ自分自身にのみ関係をもつ。云いかえると、各々の部分他の部分に対してはそれを［目分とは別の］客体的なものとして対立の開係をとる。従って、ただ自身だけが過程の中にある。

§ 91

1. Der Selbsterhaltungsprozeß des Organischen gegen seine unorganische Natur.
2. Die freie Entgegensetzung des Lebens in Subjektives und Objektives stellt sich als organische und unorganische Natur dar.

Letztere ist das Leben ohne Individualität, worin das Einzelne für sich existiert, seinen Begriff nur als Gesetz der Naturnotwendigkeit, nicht in subjektiver Form an ihm hat und seine Bedeutung nur ins Ganze fällt.

Dies Ganze, als Subjekt, ist das Organische, auf welches die unorganische Natur sich wesentlich bezieht und dessen Bedingung ausmacht.

９１ 

　(2)有機体のその非有機的目然と対立する自己保存過程。～～主体と客体とへの生命の自由な対立は有機的自然と非有機的自然となって現われる。後者は個体のない生命である。ここでは個々のものが別々に存在し、自分の概念をただ自然必然性の法則としてのみもち、主体的形式として自分でそれをもつのでない。従って個々のものの意味はただ全体の中に融け込んでいる。主体としてのこの全体は有機体である。非有機的自然は元来この有機体に関係するものであり、それの条件であるにすぎない。

§ 92

Die unorganische Bedingung verhält sich gegen das Organische nicht als Ursache oder als chemisches Moment, sondern was im Organischen durch die Einwirkung des Unorganischen  gesetzt wird, ist durch das Organische selbst wesentlich bestimmt und wirkt nur als erregend.

Das Organische ist die gedoppelte Bewegung des fortdauernden Kampfes, welcher auf der einen Seite das elementarische Werden und das Übergehen ins Entgegengesetzte hemmt, seine Bedingung aufhebt und die objektive Allgemeinheit individualisiert, auf der andern Seite aber das Individuelle oder Subjektive aus sich selbst auflöst und zum unorganischen Dasein herabsetzt.

９２ 

　この非有機的制約［条件］は、有機体の原因とか、化学的契機とかいう意味をもつのではない。有機体の中での非有機体の作用は本質上有機体自身にょって定まっている。それはただ刺激剤(erregend)の役目を果すにすぎない。有機体は不断に二つの争闘運動をする。すなわち、一面では、 原資の変化(エレメンターリッシェス・ウェルデン elementarische Werden )を防ぎ、反対のものになることを阻止し、その制約を否定し、また客体的普遍性を個体化する。しかし他面では、個体的な要素、或いは主体的要素を自分自身の中から分解して、非有機的なるものとして排泄する。 

§ 93

3. Der Prozeß der Erhaltung der Gattung ist

• die Realisation der Gattung überhaupt, welche als allgemeines Leben durch die Besonderung der Art zur Wirklichkeit im Einzelnen, zur Individualität, übergeht,
• das Verhältnis des Organischen zu dem ihm gleichen Organischen, wodurch es sich als ein anderes Individuum derselben Gattung produziert, welche sich in diesem Wechsel der Individuen und dem Rückgang der Einzelheit zur Allgemeinheit darstellt.

９３ 

　(3)類の維持過程。それはまず(a)類一般の実現である。類は普遍的生命であるから、種として特殊化されて、個別的な形で現実性を獲得し、個となる。(b)有機体の自分と同じ有機体に対する関係。これによって有機体は自分を同一の類の他の個体として生産する。すなわち、類はこのような個体の代謝(ヴェクセル)の形で現われると共に、また個別性が普遍性に勝るという形でも現われるものである。 

II. Idee des Erkennens

§ 94

Die Erkenntnis ist die Darstellung eines Gegenstandes nach seinen daseienden Bestimmungen, wie dieselben in der Einheit seines Begriffs befaßt sind und sich daraus ergeben oder insofern umgekehrt die eigene Wirksamkeit des Begriffs sich seine Bestimmungen gibt.

Diese Bestimmungen, als im Begriff enthalten gesetzt, sind das Erkennen oder die im Elemente des Denkens sich realisierende Idee.

(II) 認識の理念 

９４ 

　認識とは、対象をその定在的な諸規定の面から叙述することである。すなわち、この諸規定が如何なる形で対象の概念の統一の下にあるか、すなわち諸規定が知何にこの統一から生ずるものであるかということ、或いはそのかぎりまた逆に概念自身のはたらきが、どういうようにその諸規定を作り出するのであるかということを叙述するものである。概念の中に含まれているこれらの規定を明確に取り出すこと［定立すること］が認識の作用である。云いかえると、それは思惟の要素の中で自分を実現する理念である。 

III. Absolute Idee oder das Wissen

§ 95

Das absolute Wissen hat 1. nichts Äußerliches, auf irgendeine  Weise Gegebenes zu seinem Gegenstande, sondern nur sich selbst.

Es ist der als Begriff existierende Begriff.

1. Der Begriff konstruiert sich aus sich selbst, indem er als Werden ist und den in ihm enthaltenen Gegensatz in der Form verschiedener für sich bestehender realer oder Verstandesbestimmungen darstellt.
2. Indem die realen Bestimmungen zunächst in ihrer Reflexion zu Verstandesbestimmungen werden, stellt ihre Dialektik sie nicht nur als sich wesentlich aufeinander beziehend, sondern auch in ihre Einheit übergehend dar.

Aus dieser ihrer negativen Bewegung resultiert ihre positive Einheit, welche den Begriff in seiner realen Totalität ausmacht.

(III) 絶対的理念または知識 

９５ 

　絶対知(das absolute Wissen) は、(1)外的なものとか、 何かの仕方で与えられたものとかを対象としない。ただ自分目身が対象である。絶対知は概念として存在する概念(der als Begrifi existirende Begrif) ある。(2) 概念は自分を自分自身から構成する。しかもそれは、 概念が生成としてあり、従って生成の中に含まれている対立を、それぞれ独立に存在する諸種の実在的な諸規定、または悟性の諸規定の形式で表わすことによってである。(3)実在的諸規定は最初はまず反省の形をとり、悟性の諸規定［存在または現象の形態］に成るが、その弁証法はそれらの規定を本質的に互に関係するものとして叙述する ［本質の弁証法］のみでなく、またそれらが統一に移行するものであること［概念、理念の弁証法］を示す。このようなそれらの諸規定の消極的［否定的］運動から、その特果としてそれらの積極的［肯定的］統一が生ずる。すなわちこの積極的統一は概念をその実在的総体性の中において形成するものである。 

　*

参考：

ヘーゲル『小論理学』と宇野弘蔵『経済原論』：メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2013/12/blog-post_2835.html 

ヘーゲル　　　　　　　　　　宇野弘蔵
小論理学　　　　　　　　　　経済原論　　メモ　1947?

　存在論　　　　　　　　　　　第一篇　流通論
　　・質　　　　　　　　　　　　　第一章　商品
　　　・存在　　　　　　　　　　　　第一節　商品の二要因
　　　・定在　　　　　　　　　　　　第二節　交換価値＝価値形態
　　　・向自存在　　　　　　　　　　第三節　貨幣形態＝価格
　　・量　　　　　　　　　　　　　第二章　貨幣
　　　・純粋量　　　　　　　　　　　第一節　価値尺度としての貨幣
　　　・定量　　　　　　　　　　　　第二節　流通手段としての貨幣
　　　・度　　　　　　　　　　　　　第三節　貨幣
　　・限度　　　　　　　　　　　　第三章　資本

　本質論　　　　　　　　　　　第二篇　生産論
　　・現存の根拠としての本質　　　第一章　資本の生産過程
　　　　・純粋な反照諸規定　　　　　第一節　労働＝生産過程
　　　　　　・同一性　　　　　　　　　ａ　　　労働過程
　　　　　　・区別　　　　　　　　　　ｂ　　　生産過程における労働の二重性
　　　　　　・根拠　　　　　　　　　　ｃ　　　生産的労働の社会的規定
　　　　・現存在　　　　　　　　　　第二節　価値形成＝増殖過程
　　　　・物　　　　　　　　　　　　第三節　資本家的生産方法の発展
　　・現象　　　　　　　　　　　　第二章　資本の流通過程　
　　　　・現象の世界　　　　　　　　第一節　資本の価値と流通費用
　　　　・内容と形式　　　　　　　　第二節　資本の回転
　　　　・関係　　　　　　　　　　　第三節　剰余価値の流通
　　・現実性　　　　　　　　　　　第三章　資本の再生産過程
　　　　・実体性の関係　　　　　　　第一節　単純生産　資本の再生産と蓄積　　　
　　　　・因果性の関係　　　　　　　第二節　拡張再生産　資本家的蓄積の現実的過程
　　　　・交互作用　　　　　　　　　第三節　社会総資本の再生産過程

　概念論　　　　　　　　　　　第三篇　分配論
　　・主観的概念　　　　　　　　　第一章　利潤
　　　　・概念としての概念　　　　　第一節　剰余価値の利潤への転化
　　　　・判断　　　　　　　　　　　第二節　一般的利潤率の形成　　
　　　　　　・質的判断　　　　　　　　ａ　　　異れる部門の利潤形成の形態
　　　　　　・反照の判断　　　　　　　ｂ　　　商品価格の生産価格の転化
　　　　　　・必然性の判断　　　　　　ｃ　　　生産価格と市場価格　資本の競争
　　　　　　・概念の判断
　　　　・推論　　　　　　　　　　　第三節　一般的利潤率の低落の傾向
　　　　　　・質的な推論　　　　　　　ａ　　　生産力の増殖による超過利潤の追求
　　　　　　・反照の推論　　　　　　　ｂ　　　一般的利潤率の傾向的低下の法則
　　　　　　・必然性の推論　　　　　　ｃ　　　資本家的生産方法の内的矛盾の展開
　　・客観　　　　　　　　　　　　第二章　地代
　　　　・機械論　　　　　　　　　　第一節　差額地代とその資本形態としての第一形態
　　　　・化学論　　　　　　　　　　第二節　差額地代の第二形態
　　　　・目的論　　　　　　　　　　第三節　絶対地代
　　・理念　　　　　　　　　　　　第三章　利子
　　　　・生命　　　　　　　　　　　第一節　貸付資本と銀行資本
　　　　・認識　　　　　　　　　　　第二節　商業資本と商業利潤
　　　　　　・認識　　　　　　　　　　ａ　　　流通資本の資本化
　　　　　　・意欲　　　　　　　　　　ｂ　　　商業利潤と商業資本の倒錯性
　　　　・絶対理念　　　　　　　　　第三節　それ自身として利子を生むものとしての資本
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（それ自身に利子を生むものとしての資本(著作集第一巻)）
　　　　　　　　　　　　　　　　　（第四節　資本主義社会の階級性）

Zweiter Teil: Wissenschaft der Natur

§ 96

Die Natur ist die absolute Idee in der Gestalt des Andersseins überhaupt, der gleichgültigen, äußerlichen Gegenständlichkeit und der konkreten, individualisierten Verwirklichung ihrer Momente, - oder das absolute Wesen in der Bestimmung der Unmittelbarkeit überhaupt gegen seine Vermittlung.

Das Werden der Natur ist das Werden zum Geist.

第二部　自然の学 

９６ 

　自然とは、他在一般の形体をとった絶対的理念である。すなわち、どうでもよい外的対象性の形体をとり、その諸契機が個体化され、現実化された具体的な形態をとった絶対的理念である。云いかえると、媒介とは反対の直接性一般の規定性の中にある絶対的本質である。自然の生成は精神への生成である*。 

* 

§ 97

Die Natur ist als ein System von Stufen zu betrachten, deren eine aus der anderen notwendig hervorgeht, aber nicht so, daß die eine durch die andere natürlicherweise erzeugt wird, sondern in der inneren, der Natur zugrunde liegenden Idee.

Die Bewegung der Idee der Natur ist, aus ihrer Unmittelbarkeit in sich zu gehen, sich selbst aufzuheben und zum Geist zu werden.

９７ 

　自然は諸々の階程の体系と見るべきであって、そこでは一つのものが他のものから必然的に出て来る。しかし、それは一つのものが他のものによって自然的な形で生産されるということではなく、 自然の根底にある内的な理念によって生産されるのである。自然のもつ理念の運動は、その直接性から自分の中に帰って行くことであり、自分自身を止揚して、精神になることである。 

§ 98

Die Naturwissenschaft betrachtet 1. das ideelle Dasein der  Natur als Raum und Zeit überhaupt, 2. die unorganische, 3. die organische Natur und ist demnach 1. Mathematik, 2. Physik des Unorganischen, 3. Wissenschaft der organischen Natur.

９８ 

　自然の学は、(1)時間と空間一般という意味での自然の観念的定在(das ideelle Dasein)、(2)非有機的自然、(3)有機的自然、を問題とする。またそれに応じて(1)数学、(2)非有機体の物理学、(3)有機的自然の学となる*。 

　* 

Erster Abschnitt - Mathematik

§ 99

Raum und Zeit sind die daseienden Abstraktionen, oder reine Form, reine Anschauung der Natur, - der Raum der daseiende Gedanke der allgemeinen gleichgültigen Verschiedenheit überhaupt, die Zeit der daseiende Gedanke der negativen Einheit oder des reinen Werdens.

第一節　数学 

９９ 

　時間と空間とは「定在の形をとった抽象」［定在の抽象的な形態］(die daseienden Abstraktionen)である。云いかえると、自然の純粋形式であり、自然の純粋直観である。空間は一般的などうでもよい差別性一般が「定在の形をとった思想」［定在の中における思想］ (der daseiende Gedanke)であり、時間は否定的統一または純粋生成が「定在の形をとった思想」である*。 

　* 

§ 100

Raum und Zeit sind unendlich, d. h. in der abstrakten Kontinuität ihres Außersichseins grenzenlos.

Als Ideen aber haben sie Bestimmungen in ihnen selbst, welche den Begriff in seinen Momenten darstellen: die Dimensionen.

１００ 

　時間と空間とは無限である。ずなわち、その「外自在」 (自分の外にある形(Aussersichsein)であるところの抽象的連続性の形にある点では、無限界(grenzenlos)である。しかし、理念である点では、二つは概念の諸契機で概念を徹述するところの諸規定、すなわち次元 (die Dimensionen)をそれ自身の中にもっている。 

§ 101

1. Die Dimensionen des Raums sind Momente desselben, die nicht außereinander sind, sondern wo das eine ist, ist auch jedes der anderen.

Auch sind sie zwar die formellen Unterschiede, das eine, das andere und das dritte als Einheit derselben.

Aber um der qualitätslosen Einheit des Raumes willen sind sie nicht bestimmt gegeneinander, sondern leere Unterschiede, die nur in Rücksicht auf einen weiteren Gegenstand eine ihnen selbst fremde Bestimmtheit erhalten.

１０１ 

　(1)空間の次元は空間の契機であるが、それらは互に排斥し合うものではなくて、一つの次元があるところには他のいずれもある。また大元にはなるほど形式的な区別、第一次元、第二次元及び両者の統一である第三次元の別がある。しかし、空間の没質的な統一のために、次元はハッキリと対立しない。次元［それ自身］は空虚な区別であるが、ただ進んで複雑な対象に関係するようになると、次元そのものとは必ずしも本質的な関係をもたない規定性をもつようになる。 

§ 102

1. Die Dimensionen der Zeit sind
2. die Vergangenheit, das Dasein als aufgehobenes, als nicht daseiend,
3. die Zukunft,  das Nichtdasein, aber bestimmt, dazusein,
4. die Gegenwart als das unmittelbare Werden und die Vereinigung beider.

１０２ 

　(2)時間の次元も三つある。(1)過去 (Vergangenheit)〜〜止揚されたもの、 定在しないもの、定在しないものとしての定在。(2)未来(Zakunft)〜〜いまは非定在ではあるが定在することになっているもの。(3)現在 (Gegenwart) 〜〜直接的な生成であって、両者の統一であるもの。 

§ 103

Weil der Raum in der Bestimmung eines realen, gleichgültigen Daseins ist, so erscheinen auch reale Grenzen an ihm, und seine Dimensionen, die zunächst nur bloße Richtungen überhaupt sind, machen die Formen dieser seiner Begrenzung aus.

１０３ 

　空間は実在的な、どうでもよい定在という規定の中にあるものであるから、空間の中にはまた実在的な限界が現われる。すなわち、まず最初にはただ単なる方向(Richtungen)一般であるにすぎないところの空間の次元が、このような空間の限界付けの形式をなす。 

§ 104

Der Begrenzung des Raums kommt nur die gleichgültige Bestimmung der Quantität zu.

Die kontinuierliche größe, welche zunächst die Art seiner Quantität überhaupt ist, ist selbst eine unbestimmte Bestimmung.

Die absolute Bestimmtheit liegt in der diskreten größe, deren Prinzip das Eins ist.

１０４ 

　しかし空間の限界付けに必要なものは、ただ量のどうでもよい規定だけである。まず差し当っては空間の量一般の一種であるところの連続量(kontinuirliche Grösse)は、それ自身無規定的な規定である。これに対して絶対的規定性は、一がその原理であるところの分離量［非連続量］(diskrete Grösse) の形である。 

§ 105

Der Raum ist der Gegenstand einer (synthetischen) Wissenschaft, der Geometrie, weil in ihm als solchem sich das kontinuierliche Quantum schematisieren, d. h. anschaulich darstellen kann und weil in ihm, als dem Element der gleichgültigen, außereinander seienden Mannigfaltigkeit, die jedoch zugleich kontinuierlich ist, der Begriff eines Gegenstandes sich in realer Gestalt ausdrückt, die mehr in sich enthält als die wesentliche Begriffsbestimmung.

１０５ 

　空間は一種の(総合的な)外、すなわち絶付準の野象である。と云うのは、空間そのものの中で連続量は図式化 (schematisiren) されることができるのであり、すなわち直観的に叙述されることができるからである。またどうでもよい、並存的な、しかも同時に連続的な多様性の要素(エレメント)(である空間の中で、対象の概念は実在的形体で表現されるからである。しかも、この実在的形体は本質的な概念規定以上のものをその中に含んでいるのである。 

§ 106

Die Zeit jedoch als solche ist nicht fähig, vollständiges Schema oder Figur des Quantums zu sein.

Sie ist als das unruhige Werden nicht ein Element für synthetische Ganze.

Indem sie zur Quantität wird, geht sie in die negative Quantitätsbestimmung, in das Eins über, welche das Prinzip für eine (analytische) Wissenschaft des Quantums, die Arithmetik, ist, weil die Verbindung des Eins nicht eine eigene elementarische Anschauung der Realität, sondern so beschaffen ist, wie sie gesetzt wird.

１０６ 

　だが、時間はそれ自体としては、定量の完全な図式または図形 (Figur) であることはできない。時間は不定な生成であるから、綜合的全体に対する要素ではない。時間が量になると、否定的な量の規定、すなわち一に移って行く。そしてこの否定的な量の規定は定量の一種の(分析的な)学、すなわち算数学の原理である。と云うのは、一の結合は実在ざい性自身の 基本的(エレメンターリッシュ)直観ではなく、あるがままの実在性の性状を表わすにすぎないからである。 

§ 107

In der Arithmetik und Geometrie werden die Quanta miteinander verglichen, die, so willkürlich und allgemein ihre größe sein kann, doch nach dieser ihrer Bestimmung, die ihnen zukommt, insofern sie nicht im Verhältnisse sind, als vollkommen oder für sich bestimmte Quanta, als endliche Größen gelten.

Die Analysis des Unendlichen, vornehmlich aber die Differential- und Integralrechnung betrachtet unendliche Größen, d. h. solche, die nicht mehr die Bedeutung von endlichen oder für sich vollkommen bestimmten Größen haben, sondern verschwindende Größen sind, welche allein in ihrem letzten Verhältnisse oder an ihrer Grenze, d. h. rein nur im Verhältnisse ihren Wert haben.

１０７ 

　算数学と幾何学において定量は互に比較される。［しかしその場合、］定量の大きさは任意で一般的であり得るが、その定量がもつ定量の規定の面では、それが比の形をとらないかぎり、全く規定された［特定の大きさの］定量、または対自的に［それだけで］規定された定量と見られるし、すなわち有限量であり得る。これに対して無限の解析(die Annlysis des Unendlichen)、しかも特に微分学、積分学は無限量を問題にする。すなわち、それはもはや有限量の意味をもたない量、すなわち対自的に［それだけで］完全に規定された量の意味をもたない量、すなわち消失の直前にある量 (verschwindende Grösse ,verschwindende Größen) を考察の対象とする。 ところで、 このような消失直前の量はただそれらの極限の比の中でのみ、云いかえるとそれらの量の限界の中でのみ、すなわち純粋にただ比の形でのみその値が得られるものである。 

§ 108

Die Differentialrechnung findet für eine Formel den Ausdruck des letzten Verhältnisses ihrer veränderlichen, endlichen Größen.

Die Integralrechnung sucht umgekehrt für Formeln, welche letzte Verhältnisse enthalten, den endlichen Ausdruck.

１０８ 

　微分学は変化する有限量の極限の比を方程式の形で表現するものである。これに対して積分学は逆に、極限の比を含む方程式を有限量の形で表現しようとするものである。 

§ 109

Die angewandte Mathematik wendet die reine Mathematik auf die Größenverhältnisse der Natur an, welche sie aus der Erfahrung aufnimmt.

１０９ 

　応用数学は純粋数学を、経験から取られる自然の大きさの関係に適用するものである。 

　［追記］ 

Zweiter Abschnitt: Physik

I. Mechanik

§ 110

Die reine Anschauung, aus ihrer Unmittelbarkeit in das Anundfürsichsein übergegangen, oder der erfüllte Raum und Zeit ist die Materie. Das Außereinander des Raums und  das Insichsein der Zeit, absolut in eins gesetzt, gibt den Begriff der Materie überhaupt.

第二節　物理学(Mechanik) 

(I)力学 

１１０ 

　純粋直観がその直接性［単なる純粋直観］から即且対自存在［客観的存在そのもの］に移行したものが、云いかえると充実された空間と時間が物質 (Materie)である。空間の並存性 (das Außereinander des Raums ) と時間の内自在［個別性］(das Insichsein der Zeit) とが絶対的に一つのものとして定立されると、物質一般の概念が生ずる。 

§ 111

Nach dem Moment des Insichseins wäre die Materie vereinzelter Punkt; nach dem Momente des Außersichseins wäre sie zunächst eine Menge sich ausschließender Atome. Indem diese sich aber durch das ausschließen ebensosehr aufeinander beziehen, hat das Atom keine Wirklichkeit und das Atomistische sowohl als die absolute Kontinuität oder die unendliche Teilbarkeit nur eine Möglichkeit in ihr.

１１１ 

　内自在の契機の面から云えば、物質は個別化された点(Punkt)となる。外自在［並存性］(das Aussersichsein)の契機の面では物質はまず最初の形態としては独立の原子(Atome)の集合で、ある。しかし、諸々の原子は排斥によってまた互に関係し合う［可能的な独立性をもつにすぎない］ものであって、原子は現実性をもたない*。原子も絶対的連続性、或いは無限の可分割性も、ただ物質の中で可能性をもつにすぎない**。 

　* 

　** 

§ 112

Die Materie hat als für sich seiend das Moment der Vereinzelung, aber dieselbe erhält sich ebensosehr im Ansichsein und ist nur eine wesentliche Kontinuität, die Schwere, welche das allgemeine Prädikat des Körpers ausmacht, der die Materie in der Form des Subjekts ist.

１１２ 

　物質は対自的に［独立に］存在するものであって、個別化の契機をもっている。しかし、物質もまたなお即自在［潜在的本質］の形で存在する。そこで物質は［むしろ］本質的連続性、重さ(die Schwere)である。すなわち、重さは主語の形態をとった物質であるところの物体(Körper)の一般的述語をなすものである。 

* 

§ 113

Der Körper enthält die Beziehung der ideellen Momente des Raums und der Zeit, welche Beziehung als Bewegung und die Schwere als deren Grund erscheint.

１１３ 

　物体は［また］空間と時間という観念的契機 (ideelle Momente)の関係を含んでいるが、この関係がすなわち運動(Bewegung)として現われる。ところがこの場合、重さは運動の根拠である。 

* 

§ 114

Die freie Bewegung kommt den Körpern zu, die ein eigenes Zentrum der Schwere in sich haben. Durch die Beziehung solcher Mittelpunkte entsteht das freie System der kreisenden Bewegung der Himmelskörper, dahingegen die anderen Körper ohne eigenes Zentrum der Zentrifugalkraft entbehren und der Zentripetalkraft unterliegen, wodurch sie fallen.

１１４ 

　［次に、］重さ自身の中心を自分の中にもっている物体は自由な運動をなす。そこで、このような中心点の関係から天体の回転運動(kreisende Bewegung)の自由な体系が生ずる。これに反して、この自身の中心をもたない他の物体は遠心力(Zentrif igalkraft)をもたず、求心力(Zentripetalkraft)に支配されるものであって、それらの物体は落下する。 

§ 115

In der größe der Bewegung ist außer Raum und Zeit die Masse ein Moment, so wie auch Raum und Zeit in Kraft übergehen und, wie die Masse, Momente der Kraft sind.

１１５ 

　運動量の点では、時間と空間の外に、契機として質量(die Masse)がある。時間と空間とはまた力の中に入り込むものであって、質量と共に力の契機である。 

　［追記］ 

II. Physik des Unorganischen

§ 116

Das durch das Licht individualisiert und in qualitative Unterschiede aufgeschlossen werdende Schwere ist die konkrete oder physische Natur und Gegenstand der Physik überhaupt.

(II) 非有機体の物理学 

１１６ 

　重さが光(das Licht)によって個体化されて、質的区別にまで展開されると、それは具体的な自然または物理的自然であって、物理学一般の対象となる。 

§ 117

Die Schwere ist der Gegensatz des zum Insichsein nur strebenden Außersichseins. Die Materie ist dies Dasein des Strebens, dessen Gegensatz sich nur in den Momenten des Raums und der Zeit ausdrückt in einem bloß idealen Mittelpunkt. Jenes Werden des Außersichseins zum Insichsein, die intensive einfache Einheit der Schwere, ist ein ihr gegenübertretendes Dasein, das frei existierende Selbst der Materie, das Licht. Das Licht ist als das sich selbst gleiche Insichsein das Prinzip der Individualisierung und Besonderung der Materie. Seine Beziehung auf das ihm bloß Negative, auf das Dunkle, macht die Farbe aus.

１１７ 

　［上述のように、］重さは、内自在を目指してひたすら努力する(streben)外自在(=外自存在)の面の対立である。物質はこのような努力の定在［の面］である。この対立が空間と時間との契機だけで表現されると、単に観念的な中心点から見られることになる。ところで、この外自在の内自在へ生成、すなわちこのような重さの 内実的(インテンシーフ)な、しかも単純な統一は、重さと対立する定在、すなわち物質の自由に存在する自己、つまり光である。光は自己同等な内自在として、物質の個体化と特殊化の原理である。光と、光の全くの否定的存在、すなわち闇(das Dunkle)との関係から色(die Farbe) が生ずる。 

* 

** 

§ 118

Das erste Moment des besonderen Daseins der physischen Natur ist der Magnetismus, die Diremtion des individuellen Einheitspunktes in den Gegensatz, der aber noch im Begriffe eingeschlossen bleibt.

１１８ 

　物理的自然の特殊な定在の第一の契機は磁気性 (tagnetismus)であり、個体的統一点の対立への分裂、しかもなお概念の中にとどまっているところの分裂 ［を表わす概念］である。 

§ 119

Das zweite Moment ist die Realisierung, nämlich das Freiwerden und die eigene Konstituierung der Seiten des Gegensatzes: 1. als Elektrizität, welche die noch unverkörperte, in absoluter Spannung gegeneinander gehaltene, flüchtige Erscheinung desselben ist. 2. Die chemischen Elementarstoffe. Sie sind die qualitativen Unterschiede der Körperlichkeit, in

Gestalt eigener Materien, die aber noch abstrakt und ohne wirkliche Individualität sind. 3. Die physischen Körper, in welchen die qualitativen Bestimmungen in konkreter Körperlichkeit sind, welche hierdurch zwar alle Momente der  Körperlichkeit in sich enthalten, aber unter der Bestimmung eines dieser Momente oder Qualitäten, und die Gestalt des gleichgültigen Bestehens gegeneinander annehmen: a) als physikalische Elemente, b) als absolute oder himmlische Körper und c) als die in weitere Verteilung und Vereinzelung übergegangenen irdischen Körper.

１１９ 

　第二の契機は両立の両側面の実現である。すなわち、対立の両側面の自由になる面［各自独立な面］と、各自が対立の両側面であることを構成する面とである。(1)電気性 (Elektrizitat)〜〜電気性はまだ物体化されずに、互に絶対的な緊張の形であるところの、流動的な、対立の現象である。(2) 化学的元素 (chemische Elernentarstoffe)、〜〜これは、 独自な物質の形態［例えば水素、酸素等々］はもっているが、しかしまだ抽象的で、現実的な個体性はもたないところの物体性の質的区別である。(3) 物理的物体 (physische Körjer)、〜〜ここでは質的規定が具体的な物体性の形をとっている。これによって質的規定は物体性のあらゆる契機をその中に含むことになるが、しかしそれはこれらの契機または質の中のどれか一つのものが中心規定となる［主導的なものとなる］かぎりにおいてである。従ってそれらは互に独立な存在をもつことになる。すなわち、それは、 (a) 自然的要素 (pbysikalishe Elenente) あり、(b) 絶対的な物体、または天体 (himmelische Körper)であり、また (c)更に細かに分れ、個体化されている地上る諸々の物体 (irdische Körper) である。 

§ 120

Das dritte Moment ist der chemische Prozeß. Die Vereinzelung und das eigene gleichgültige Fürsichbestehen der Körper ist zugleich eine Beziehung derselben aufeinander, nicht nur eine gegenseitige Spannung, sondern auch eine Entgegensetzung und Begeistung zur Tätigkeit und Einwirkung, wodurch ihr gleichgültiges Bestehen sich aufhebt und in die Einheit der Totalität zurückgeführt wird. Dieser Prozeß des Rückganges aber fällt in der lebendigen Natur mit dem Prozesse der Konstruktion zusammen, wodurch die Vereinigung von einer anderen Seite zugleich eine Ausscheidung und ein Niederschlag einer gleichgültigen Existenz wird.

１２０ 

　第三の契機は化学的過程(der chemische Prozes) ある。諸々の物体は個別化され、 それぞれ固有な、自立的な存在であるから、それらはまた同時に相互に関係をもっている。しかもその関係は相互の緊張であるばかりでなく、また対立でもあり、従って［それ自身における］活動性と［相手への］作用に点火するものでもある。またこれによって諸々の物体の全くの自立性は止揚されて、総体性の統一に還元される。けれども、このような還元の過程は生きた自然にあっては、構成の過程と表裏する。すなわちこのために、そこでは或る他の面の結合は、同時に或る不用な分子の遊離となり、排泄となる。

　［追記］ 

Dritter Abschnitt: Physik des Organischen

§ 121

Die Geologie betrachtet die Gebilde der Erde als Resultat des erloschenen Prozesses der Bildung des Erdindividuums. Die Geognosie betrachtet diese Gebilde in ihrer Allgemeinheit als Gebirgsarten nach ihrer Beschaffenheit, den Verhältnissen ihrer Lagerung und macht mit der Oryktognosie, welche vornehmlich die einzelnen Gebilde als Bestandteile jener allgemeinen und die Gangarten betrachtet, die Mineralogie aus.

第三節　有機体の物理学 

１２１ 

　地質学(Geologie)は地球という個体(Erdindividuum)の形成の消滅した過程の結果である地層［地球の組織］(die Gebilde der Erde) を研究する。地球構造 (Geognosie) がこれらの地層を岩石の種類という一般性の面から考察し、岩石の性状、その成層(ラーゲルンク)の関係について研究する。 従ってそれと、特にいま云う一般的な岩石の種類の構成要素である個々の地層や鉱脈を研究する岩石学 (Oriktognosie) とから、鉱物学(Mineralogie) が生ずる。 

§ 122

Die vegetabilische Natur ist der Anfang des individuell oder subjektiv werdenden Selbsterhaltungs- oder eigentlichen organischen Prozesses, der jedoch noch nicht die vollständige Kraft der individuellen Einheit besitzt, indem die Pflanze, welche ein Individuum ist, nur solche Teile besitzt, die wieder als selbständige Individuen angesehen werden können. Sie kommt um dieser mangelnden inneren Einheit willen nicht bis zum Gefühl. Die Pflanzenphysiologie betrachtet ihre allgemeine Natur, die Botanik aber das System derselben, welches ihre Einteilung vornehmlich auf die Unterschiede der Organe der Befruchtung gründet, welche die höchste Spitze des vegetabilischen Lebens ist, wodurch die Pflanzen an eine höhere Stufe des Organismus angrenzen.

１２２ 

　植物的自然(vegetablische Natur)は個体的な、または主体的な自己保存の個体、すなわち本来の有機的過程の始まりである。尤も、この有機的過程はまだ完全な個体的統一の力をもたないと云うのは、一個の個体である植物は、更にまた幾つもの自立的個体と見られることのできるような多くの部分をもつものにすぎないからである。植物的自然はこの欠点のある内的統一であるために感情をもつまでには至らない。植物生理準(Pflanzenphysiologie)は植物的自然の一般的本性を研究するものであり、植物学(Botranik)は植物的然の組織［体系］を研究する。この組織は植物的自然を特に果実の器官の区別に基いて分類するものである。と云うのは、果実は植物的生命の最高の頂点をなすものであって、この点で植物は有機体の更に高い段階に境を接するのだからである。 

§ 123

Die animalische Natur besitzt diejenige subjektive Einheit, wodurch alle organischen Teile einem Ganzen, das eins ist, unterworfen sind. Die Physiologie des tierischen Organismus betrachtet die Funktionen der Teile, die zur fortdauernden Hervorbringung des Ganzen mitwirken und durch diesen Prozeß ebenso hervorgebracht und erhalten werden. - Die komparative Anatomie betrachtet den allgemeinen Typus des Tiers in den verschiedenen Gebilden der allgemeinen Gattung, teils wie derselbe in den einfachsten tierischen Organisationen sich zu zeigen anfängt und nach und nach entwickelter hervortritt, teils wie er nach den verschiedenen Elementen, in welchen Tiergeschlechter hervorkommen, sich modifiziert. Die Zoologie klassifiziert dieselben zunächst nach ihren gemeinschaftlichen Hauptmerkmalen und nimmt die Bestimmung hierzu von Hauptstufen der Entwicklung des animalischen Typus, von dem Element und dann von den Waffen in Verhältnis zu anderen her, wobei aber die Natur die bestimmten Grenzen, die sich hier zuerst darbieten, durch die Übergänge verwischt, welche ein Prinzip mit dem anderen vereinigen.

１２３ 

　動物的自然(unimalische Natur) はまさに主体的統一体である。 ここではすべての有機的部分は一個の全体の下に包括されている。動物的有機体の生理学 (Physiologie)は諸々の部分、すなわち全体の不断の生育のために協力すると共に、またこの過程によって自分も生育を遂げ、保存されるものであるところの部分の機能を研究するものである。比較解剖学 (komparative Anatomie) は動物の一般的類型を研究するものであるが、それも一般的類のそれぞれの組織という面から考察する。すなわち一面では、その類型が最も単純な動物的組織の中でどんなにして現われ始め、また漸次発達して来るかということを考究すると共に、また一面ではその類型が動物の種属の発生の元であるところの種(エレメント)のちがいによってどんなにちがった様相を呈するものであるかを考究する。動物学(Zoologie)はまず第一には動物の種属の分類をなすか、それは種属共通の主要な特徴という点からなされる。しかしその上になお、分類の標準として、動物的類型の発展の主な段階、種、また更に他のものに対する防衛器官を見る。ただしかし、この点で［一般的］類型的に見る点でここに最初に現われるところの特定の限界が払拭されるものであることも注意しなければならない。と云うのは、ここでは一つの原理が他の原理と統一的に見られることによって、各自の特性が抹殺されるからである。

§ 124

Der Organismus steht nach dem Moment seiner Irritabilität überhaupt in Beziehung auf seine unorganische Natur. Diese Trennung ist zuerst subjektiv in ihm selbst als ein Gefühl des Mangels, als ein Bedürfnis vorhanden. Diese subjektive Trennung reflektiert sich nach außen zu dem Gegensatz der organischen und unorganischen Natur. Die unorganischen Potenzen verhalten sich als erregend zum Organismus, und seine Tätigkeit ist der beständige Kampf, sie nach seiner Rezeptivität in sich aufzunehmen, aber darin zu überwältigen und dadurch die Einheit in sich wiederherzustellen, welche selbst ein solcher Verlauf des Gegensatzes der inneren Systeme gegeneinander und eine Wiederherstellung derselben ist.

１２４ 

　有機体は一般にその興奮性(Iritabilitat)の契機の面で非有機的自然に関係する。この分離［有機と非有機体との分離］は最初は主観的に欠乏の感情として、すなわち欲望として、有機体そのものの中に起って来る。この主体的分離は外部に反応して、有機的自然と非有機的自然との対立になる。まず非有機的エネルギー［食物］(Potenzen)が刺激物［食欲をそそるもの］(errezend) として有機体には たらきかける。そこで有機体のはたらきが、その感受性(Rezeptivitat)をはたらかしてとれらのエネルギーを自分の中に取り入れ、それを自分の中で消化し、それによって自分の中に統一［欲望の満足と身体の保全］を回復しようとする。つまり、有機体のはたらきはこういう［外部との］不断の闘争である。すなわち、この統一はそれ自身このような内臓組織間相互の対立の経過とそれらの回復の両者を意味している。 

§ 125

Der Organismus befindet sich im Zustande der Krankheit, wenn eine in ihm gesetzte Potenz von ihm nicht überwältigt werden kann, sich in einem System festsetzt, das sich hierdurch vereinzelt, in seiner eigenen Tätigkeit beharrt und nicht mehr in die flüssige Tätigkeit des Ganzen übergeht, somit überhaupt den organischen Prozeß zu einem unterbrochenen macht. Die Wissenschaft der Krankheit und ihrer Heilung ist die Medizin.

１２５ 

　有機体の中に取り入れられたエネルギー(食物)が有機体によって消化されることができない場合、どこか一つの組織の中に停滞して、その組織だけの活動を煩らわすことになり、もばや全体の円滑な循環が行われない場合、従って一般に有機的過程が断たれる場合には、有機体は病気(Krankheit) の状態になる。病気とその治療の学問は医学 (die Medizin)である。 

§ 126

Das Tier hat Gefühl, insofern seine organischen Momente schlechthin in der Einheit des Lebens allein ihre Bestimmung und Bedeutung haben, aber sie haben zugleich noch ein äußerliches Außereinandersein. Die letzte Reflexion dieser Äußerlichkeit in das abstrakte Element der Einfachheit, welches allein das vollständige Bestehen der Momente ausmacht, ist die Erhebung in den Geist.

１２６ 

　動物の有機的諸契機が、ただそれだけで生命の統一の中でそれらの契機の役目と意味をもつかぎり、動物は感情(Gefühl)をもつ。しかし、これらの有機的契機は同時にまだ外的にそれぞれ分離し、別々にある。ところで、この外面性が中心に統一され、単純な抽象的要素に還元されてそこに契機のそれぞれが完全な機能を果すようになると、精神(Geist)が登場する。 

　［追記］ 

Dritter Teil: Wissenschaft des Geistes

§ 127

Der Geist fängt von dem äußeren nur an, bestimmt dies und verhält sich fernerhin nur zu sich selbst und zu seinen eigenen Bestimmungen.

第三部　精神の学 

１２７ 

　精神にあっては外的なものはただキッカケであるにすぎない。精神はこの外的なものを問題にするが、結局は自分自身と自分自身の諸規定だけが問題である。 

§ 128

Die Philosophie des Geistes enthält drei Abschnitte. Sie betrachtet 1. den Geist in seinem Begriff, Psychologie überhaupt, 2. die Realisierung des Geistes, 3. die Vollendung des Geistes in Kunst, Religion und Wissenschaft.

１２８ 

　精神の哲学は三つの区分をもつ。その考察の対象は、(1)概念の中にある精神 (即自的な精神)、すなわち心理学、(2)精神の実現、(3)芸術、宗教、哲学における精神の完成、である。 

　* 

Erster Abschnitt - Der Geist in seinem Begriff

§ 129

Der Geist für sich betrachtet ist 1. in seinem natürlichen Dasein und seiner unmittelbaren Verbindung mit dem organischen Körper und seiner daher rührenden Abhängigkeit von dessen Affektionen und Zuständen zu begreifen; Anthropologie. 2. Als erscheinend, insofern er sich nämlich als Subjekt auf Anderes als Objekt bezieht, ist der Geist Bewußtsein und Gegenstand der Phänomenologie des Geistes. 3. Als Geist nach den Bestimmungen seiner Tätigkeit innerhalb seiner selbst ist er Gegenstand der Psychologie.

第一節　概念の中にある精神 

１２９ 

　いま精神そのものを問題にするとき、(1)その自然的定在の中にある精神、有機体［身体］と直接に結合している精神、更に有機体の感触とその状態に感動し、従ってそれに依存する場合の精神が見られねばならない。これはすなわち人間学(Anthropologie)である。〜〜(2)精神が主観として客観である他のものに関係するかぎり、現象するものであって、精神は意識 (Bewusstsein)である。すなわち、この精神は精神現象論の対象である。〜〜(3)精神自身の内部における精神の活動性の諸規定に従う精神という意味では、精神は心理が(Psychologie) の対象である。 

　((1)と(2)の下に挙げたものの意味は、その教授をすでに他の処で*すましたから、ここで 

はただ心理学だけについて述べる。) 

*

参考：

エンチュクロペディー1830

G. W. F. Hegel; Enzyklopädie der philosophischen Wissenschaften im Grundrisse, 1830
Hegel, Georg Wilhelm Friedrich. Werke: Vollständige Ausgabe (German Edition) (p.5117). Talpa. Kindle 版.

Erste Abteilung. Der subjektive Geist

 § 387 

Der Geist, in seiner Idealität sich entwickelnd, ist der Geist als erkennend. Aber das Erkennen wird hier nicht bloß aufgefaßt, wie es die Bestimmtheit der Idee als logischer ist (§ 223), sondern wie der konkrete Geist sich zu demselben bestimmt. Der subjektive Geist ist: 

A. An sich oder unmittelbar; so ist er Seele oder Naturgeist; - Gegenstand der 

Anthropologie. 

B. Für sich oder vermittelt, noch als identische Reflexion in sich und in Anderes; der Geist im Verhältnis oder Besonderung; Bewußtsein, - der Gegenstand der 

Phänomenologie des Geistes. 

C. Der sich in sich bestimmende Geist, als Subjekt für sich, der Gegenstand der 

Psychologie.

第一部　主観的精神   

三八七  　

　精神は、その観念態において展開するときは、認識するものとしての精神である。だがこの場合の認識は、論理的な理念としての理念の規定性であるようなものに止まるのではなく（第二二三節）、具体的精神が自らを規定して認識となるようなものである。 　

　主観的精神は

Ａ　自体的すなわち直接的である、だから心すなわち自然的精神である。つまり人間学の対象である。 

Ｂ　対自的であるすなわち媒介されている、なおいまだ自己へも他者へも同じように反照するものとしてあり、関係もしくは特殊化における精神であり、意識である。つまり精神の現象学の対象である。 

Ｃ　自己のなかで自己を規定する精神であり、自己に対してある主観（体）であり、心理学の対象である。

…

A. Anthropologie. Die Seele 

§ 388
…

§ 390 

Die Seele ist zuerst 

a. in ihrer unmittelbaren Naturbestimmtheit, - die nur seiende, natürliche Seele; 

b. tritt sie als individuell in das Verhältnis zu diesem ihrem unmittelbaren Sein und ist in dessen Bestimmtheiten abstrakt für sich - fühlende Seele; 

c. ist dasselbe als ihre Leiblichkeit in sie eingebildet und sie darin als wirkliche Seele.

Ａ　人間学

心

三八八
…

三九〇

(a)心はまずその直接的な自然規定態のうちにある。すなわち、ただ存在するだけの自然的な心である。　

(b)心は個別的なものとして、自らのこの直接的存在と関係するようになり、この直接的存在の規定性の中にあって抽象的に対自的である。つまり感ずる心である。 　

(c)心の直接的存在は心の身体性として心の中に考え入れられている、そして心はこの身体性の中で現実的な心として存在する。

…

 

B. Phänomenologie des Geistes. Das Bewußtsein 

§ 413
…

§ 417 

Die Stufen dieser Erhebung der Gewißheit zur Wahrheit sind, daß er 

a. Bewußtsein überhaupt ist, welches einen Gegenstand als solchen hat, 

b. Selbstbewußtsein, für welches Ich der Gegenstand ist, 

c. Einheit des Bewußtseins und Selbstbewußtseins, daß der Geist den Inhalt des Gegenstandes als sich selbst und sich selbst als an und für sich bestimmt anschaut; - Vernunft, der Begriff des Geistes.

Ｂ　精神の現象学

…

意識

四一三

…

四一七  　

　以上のように確信が真理に高まって行く諸々の段階は次の通りである。

(a)精神は、 対象を対象としてもっている意識一般である。 

(b)自我を対象としている自己意識である。

(c) 意識と自己意識の統一、精神が対象の内容を自己自身として直観し、自己自身を即且向自的に規定されたものとして直観すること、すなわち理性、精神の概念である。

…

C. Psychologie. Der Geist 

§ 440

…

§ 443 

…Der Weg des Geistes ist daher:

a) theoretisch zu sein, es mit dem Vernünftigen als seiner unmittelbaren Bestimmtheit zu tun zu haben und es nun als das Seinige zu setzen; oder das Wissen von der Voraussetzung und damit von seiner Abstraktion zu befreien und die Bestimmtheit subjektiv zu machen. Indem das Wissen so als in sich an und für sich bestimmt, die Bestimmtheit als die seinige gesetzt, hiermit als freie Intelligenz ist, ist es 

b) Wille, praktischer Geist, welcher zunächst gleichfalls formell ist, einen Inhalt als nur den seinigen hat, unmittelbar will und nun seine Willensbestimmung von ihrer Subjektivität als der einseitigen Form seines Inhalts befreit, so daß er 

c) sich als freier Geist gegenständlich wird, in welchem jene gedoppelte Einseitigkeit aufgehoben ist.

Ｃ　心理学

…

四四三

…それゆえ精神の行程は次の通りである。 　

　(a)まず理論的であるということである。それは理性的なものを精神の直接的な規定として扱うことであり、理性的なものを精神自身のものとして措定することである。もしくは、知をその前提からしたがってその抽象化から解放し、規定態を主観的にすることである。こうして知識は自己のうちに在るものとして即且向自的に〔完全に〕規定され、規定態は知識自身のものとして措定されている。その結果自由な知性として在ることになる。それゆえ知識は 　

　(b)意志であり、実践的精神である。これはまず同じように形式であり、自分自身だけのものとしての内容をもち、直接的に意志し、さてその上で自らの意志規定を、自を、自らの内容の一面的な形式としての自らの主観性から解放する。それゆえ精神は 　

　(c)自らに対し自由な精神として生成する。この自由な精神の中では前にのべた二重の一面性は廃棄されている。

…

＿＿＿

4. Bewußtseinslehre für die Mittelklasse *

(1809 ff.)

§ 9 

Das Bewußtsein hat im allgemeinen nach der Verschiedenheit des Gegenstandes überhaupt drei Stufen. Er ist nämlich entweder das dem Ich gegenüberstehende Objekt, oder er ist Ich selbst, oder etwas Gegenständliches, das ebensosehr dem Ich angehört, der Gedanke. Diese Bestimmungen sind nicht empirisch von außen aufgenommen, sondern Momente des Bewußtseins selbst. Es ist also: 

1. Bewußtsein überhaupt, 

2. Selbstbewußtsein, 

3. Vernunft. 

* Text nach Rosenkranz (Zweiter Kursus, Erste Abteilung: "Phänomenologie des Geistes oder Wissenschaft des Bewußtseins", Werke Bd. XVIII S. 79 ff.)

第二課程（中級）　精神現象論と論理学

第一篇　精神現象論または意識の学

ヘーゲル哲学入門127頁

九

　意識は一般に対一般の差別に従って三段階をもつ。すなわち、［1］対象が自我に対立する客観であるか、［2］または自我そのものであるか、［3］或いはまた同様に自我に属するところの何か対象的ならの、すなわち思想 (Gedanke) であるか、である。これらの規定は経験的に外部からとられたものでなく、意識そのものの契機である。それ故に、意識は次の三つに分れる。

(1) 意識一般(Bewusstsein überhaupt)

(2)自意識 (Selbstbewusstsein)

(3)理性 (Vernunft)

 

追記：
細川亮一『ヘーゲル現象学の理念』の説 だと、『精神現象学』は『哲学史講義』と並行対応関係にあり、
『哲学史講義』は『精神現象学』と一緒に読むといいそうだ。
以下、『精神現象学』内の章：対応する哲学者（及びキーワード）。

意識
　感覚：パルメニデス（本来の哲学が始まる）からヘラクレイトス（一般的な過程）
　知覚：レウキッポス（自立存在の定義、正なるものを負なるものの空虚として）
　悟性：プラトン「ソピステス（ソフィスト）」（抽象的な統一）

自己意識
　生命：　アリストテレス「霊魂論」（一般的）
　主と僕：アリストテレス「政治学」（服従）
　　　　　ストア派（自然な素朴さ）
　　　　　懐疑派（内容の否定）
　不幸な意識：
　　　　　新プラトン主義（統一、三位一体）

＿＿＿

§ 130

Die Intelligenz fängt von der Äußerlichkeit als ihrer Bedingung, aber nicht als ihrem Prinzip an, welches sie vielmehr  sich selbst ist. Sie ist 1. unmittelbar als Gefühl, dessen Inhalt sie 2. zur Vorstellung in sich erhebt und 3. als Denken den Inhalt von der Zufälligkeit zur Notwendigkeit und der Besonderheit zur Allgemeinheit seiner Bestimmungen reinigt.

１３０ 

　知性(インテリゲンツ)は外面性からはじまる。しかし外面性はただその制約［キッカケ］であって、その原理なのではない。原理はむしろ知性それ自身である。知性は(1)直接には感情 (Gefühl)としてある。感情の内容を知性は、(2)自身の中で表象(Vorstellung)に高める。また(3)知性は思性 (Denken)として、内容を偶然性から必然性に、特殊性から思惟の規定の普遍性に純化する。 

I. Das Gefühl

§ 131

Das Gefühl ist die einfache, jedoch bestimmte Affektion des einzelnen Subjekts, in welchem noch kein Unterschied desselben und des Inhalts gesetzt ist, oder eine als im Subjekt, das sich noch nicht abgeschieden hat］ vom Objekt, gesetzte Bestimmung. 

(I)感情 

１３１ 

　感情とは、まだ主観と内容との区別のないところの、個々の主観の単純な、しかも特定の感触である。云いかえると、まだ客観から分れない主観の中のものである一種の規定［状態］である。 

［§ 132

Das Gefühl ist teils innerlich, teils äußerlich und ist unmittelbar, noch ohne Reflexion, als Stimmung ein angenehmes oder unangenehmes.

１３２ 

　感情は一面では内面的であり、一面では外面的である。また直接的で、まだ反省のないものであって、気分の点では愉快なものもあれば、不愉快なものもある。 

II. Die Vorstellung

§ 133

Das Gefühl ist der ursprüngliche, noch in sich eingehüllte Stoff, den die Intelligenz dadurch zur Vorstellung erhebt, daß sie die Form der Einfachheit, die das Gefühl hat, aufhebt und dasselbe in ein Objektives und in ein sich davon abscheidendes Subjektives trennt, das Gefühl zu einem Gefühlten macht.

(II)表象 

１３３ 

　感情は根源的な、まだ自分の中に包みこまれている素材である。知性は感情がもつ単純性の形式を止揚して、感情を客観的な面と主観的な面とに分けることによって、すなわち感情を感ぜられかもの(ein Gefühltes)とすることによって、この素材を表象に高める。 

§ 134

Erst in der Vorstellung hat man einen Gegenstand. Die Stufen des Vorstellens sind, daß die Intelligenz 1. sich erinnert, indem sie sich überhaupt von dem Inhalt des Gefühls lostrennt, 2. diesen Inhalt sich einbildet, ihn ohne sein Objekt behält, ihn frei aus sich hervorruft und verknüpft, 3. daß sie ihm seine unmittelbare Bedeutung nimmt und  ihm eine andere Bedeutung und Verknüpfung im Gedächtnis gibt.

１３４ 

　表象になってはじめて我々の対象になる。表象作用の段階は三つある。知性が(1)一般に自分を感情の内容から切り離すことによって、想起する(sich erinnern)こと。(2)この内容を想像する (sich einbilden)こと、すなわち客体なしに内容を把持していて、内容を自由に自分の中から呼び起し、結合すること。(3)知性が内容からその直接的な宣味を取り除き、記憶(Gedächtnis)の中で内容に或る他の意味との結合を与えること。 

A. Erinnerung

§ 135

1. Die Anschauung ist die unmittelbare Vorstellung, worin die Gefühlsbestimmungen zu einem vom Subjekte abgetrennten Gegenstande gemacht sind, welcher frei von dem einzelnen Subjekte und zugleich für dasselbe ist. Aber ebensosehr ist er nicht für es als einzelnes, sondern für alle.

Ａ想起 

１３５ 

(1)直観 (Anschauung)とは直接的な表象であって、そこでは感情の諸規定は主観とは別な対象にされる。この対象は個々の主観からは自由であるが、同時に他の個々の主観に対してある。しかしまたこの対象は個々のものとしての主観に対してあるのではなくて、すべての主観に対してある。 

§ 136

Das Objekt ist, so gesetzt als außer dem Subjekt und an ihm selbst als einem Außereinander, teils das ruhige Nebeneinander des Raums, teils das unruhige Werden im Nacheinander der Zeit. Raum und Zeit sind das abstrakte Anschauen oder die allgemeinen Formen der Anschauung.

１３６ 

　客観が主観の外にあるものとして立てられ、それ自身で存在するところの、主観との対立存在(ein Ausereinnnder)とされると、一方から云うと空間の静的な並存 (das ruhige Nebeneinander)であり、また一方から云うと時間の継起(Nacheinonder)の中にある動的生成である。空間と時間とは抽象的直観作用であるが、また直観の一般的形式だと云ってもよい。 

§ 137

In diesen allgemeinen objektiven Elementen ist das Objekt, außerdem daß es den Inhalt der Gefühlsbestimmungen hat, zugleich ein einzelnes, in Raum und Zeit vollkommen bestimmtes, mit anderen Gegenständen vor, neben und nach ［ihm］ zusammenhängendes.

(Die Dinge durch diese Bestimmtheit in Zeit und Raum und durch einander nach ihren Bestimmungen sind gefangen und im allgemeinen Kerker.)

１３７ 

　客体はこのような一般的な客観的諸要素をもつものであり、しかも諸々の感情規定をもつものであるが、なおこの外に、空間と時間の中で完全に規定され、他の諸対象と前、横、後(vor, neben und nach)という関連をもつ個別的な客観である、という面をももつ。 

　(物はすべて時間と空間の中でこういう規定性に縛ばられているものであり、またいま云う諸規定の網の目の中に縛りつけられていて、［云わば］遁れることのできない牢獄の中に囚えられている。) 

§ 138

2. Vorstellung. Das Gefühl wird in der Anschauung objektiv. Das Subjekt ist in unmittelbarer Beziehung darauf in sie versenkt, so daß es eigentlich im Anschauen noch kein anderes als jenes objektive, räumliche und zeitliche Sein hat. Die freiwillige Tätigkeit der Intelligenz besteht hier in der Aufmerksamkeit auf das mannigfaltige Dasein des Gegenwärtigen und in der Willkür, bei dem einen Inhalt zu  verweilen oder zu einem anderen überzugehen; Fassungskraft.

１３８ 

　(2)表象 (Vorstellong)。感情は直観の中で客観的になる。主観は直観との直接的な関係の中にある場合には直観の中に沈み込んでいる。従って主観は直観の中では本来はまだこのような客観的な空間的、時間的存在以外の何ものをらもたない。ところが、ここでは［表象では］、知性の自発的な活動は、現存の(das Gezenwärtige) 多様の定在に注意(Aufmerksamkeit) を向け得る。云いかえると、或る内容を把持していることも、別の内容に移って行くことも任意だということ、 すなわち把捉力 (Fassungskraft)としてある。 

§ 139

Die Anschauung ist aber als Objekt zugleich für das Subjekt. Dies letztere als das an und für sich seiende nimmt sich aus seinem Außersichsein zurück, reflektiert sich in sich und scheidet sich von der Objektivität, indem es die Anschauung subjektiv zum Bilde macht.

１３９ 

　しかし、直観は客観であると同時に主観とも見られる。即且向自的(=対自的)な存在［中心的な、真の存在］であるこの後者［主観］は、自分の外自在から自分を取り戻し、自分を自分の中に反省する。そして直観を主観的に心像(Bild)とするとき、客観性から切り離される。 

§ 140

Die Anschauung, in das Ich versetzt, ist nicht nur Bild, sondern wird Vorstellung überhaupt. Es bleibt nicht dabei, daß die ins Innere aufgenommene Anschauung vollkommen der unmittelbaren Anschauung entspreche, sondern sie wird von ihrem Zusammenhang in Raum und Zeit befreit und herausgenommen. Sie ist ein aufgehobenes, d. h. ebensosehr nichtseiendes als aufbewahrtes Dasein.

１４０ 

　自我の中に移された直観は単に心像ではなくて、むしろ表象一般である。内部に取り入れられた直観は全く直接的直観と一致してはいるが、それだけにはとどまらない。直観は空間と時間の中でのその関連から切り離されて取り出される。だから、この直観は止揚された定在である。すなわち、それは存在しないと共にまた保存された(aufbewahrt)定在でもある。 

§ 141

Die Anschauung ist als Vorstellung die eigene Zeit und der eigene Raum des Subjekts, in die Zeit und den Raum als allgemeine Formen versetzt. Durch das Aufheben der besonderen Zeit der Anschauung wird sie dauernd; durch das ihres besonderen Raumes ist sie überall.

１４１ 

　直観は表象としては主観固有の時間と空間をもつことになり、一般的形式としての時間と空間の中に移される。直観特有の時間の止揚によって直観は持続的(dauernd)になり、直観特有の空間の止揚によって直観は偏在的(überall)になる。 

§ 142

Ferner wird die konkrete Anschauung in ihren mannigfaltigen Bestimmungen oder in ihrer Einheit aufbewahrt, aber ebenso auch von dem Bande ihrer Einzelheit befreit. Die Teilbestimmungen fallen auseinander und werden zu Abstraktionen, die für sich ohne den sinnlichen Zusammenhang, in welchem sie dem Subjekt zuerst erschienen sind, bestehend vorgestellt werden.

１４２ 

　更にまた具体的直観はその多様な規定、またはその統一は保持している。しかし、またその個別性の紐帯(バント)からは解放される。部分の諸規定は消え落ちて、抽象的なものとなる。すなわち、この抽象的なものの中では最初主観がもっていた感性的関連は失われて、抽象的なものが対自的に［それだけで］存在するものとして表象されることになる。 

　* 

§ 143

3. Erinnerung. Die Vorstellung als die erinnerte oder allgemein  gemachte Anschauung verhält sich zur unmittelbaren Anschauung als Bleibendes und Allgemeines zum Einzelnen. Die Erinnerung ist nicht sowohl eine Vergleichung zweier einzelner Anschauungen, als daß die jetzige einzelne Anschauung unter die bereits allgemein gemachte oder die Vorstellung subsumiert wird. Die Dieselbigkeit, die ich erkenne, ist einerseits die Identität ihres Inhalts, anderseits erkenne ich in der jetzigen Anschauung die Identität meiner mit mir selbst oder erinnere mich in ihr.

１４３ 

　(3)想起 (Erinnerung)。想起された直観、または一般的なるのとなった直観としての表象の、直接的直観に対する関係は、常住的なもの、普遍的なものの個別的なものに対する関係である。想起は二つの個別的な直観の比較ではなくて、むしろ現在の個別的直観がすでに一般的なものとされている直観、すなわち表象の下に包摂されることである。この場合、私は同じもの(Dieselbigkeit) を認識するが、この同じものは一方から云えば直観の内容の同一性であると共に、他方から云えば現在の直観の中で私は私の私自身との同一性を認識するのである。云いかえると、私は現在の直観の中で自分を想起するのである。 

§ 144

Das Bild oder die Vorstellung wird nicht dadurch zu etwas Allgemeinem, daß dieselbe Anschauung öfter wiederholt würde und diese mehreren Anschauungen in ein Bild, das mehr oder weniger abstrakt wäre, zusammenfielen, entweder bewußter oder so, daß man sich bei jeder einzelnen Anschauung an die vorhergehende erinnerte, sondern die Anschauung erhält unmittelbar dadurch, daß Ich sie aufnehme, die Form der Allgemeinheit. Sie ist daher eine Subsumtion. In der Erinnerung wird durch eine gegenwärtige Anschauung oder Vorstellung das Bild von einer vergangenen hervorgerufen, welche die nämliche war als die gegenwärtige. Jene vorhergehende ist das Dauernde und Allgemeine, unter welches ich die jetzige einzelne subsumiere.

１４４ 

　心像または表象が一般的なものとなるのは、同一の直観がしばしば繰り返され、この多くの直観が、意識的にか、またはそれぞれの個別的な直観に当って以前の直観が想起されるかして、多少の程度の差はあれ、抽象的な一個の心像に結合されるということによるのではない。直観は自我がそれを取り入れることによって直接に一般性の形式を獲得するのである。だから、この直観は包摂である。想起の中では、現在の直観または表象を通して、現在の直観と同一のものであった過去の直観の心像が呼び起される。この以前の直観は持続的なものであり、一般的なものであって、その下に私は現在の個別的な直観を包摂する。 

B. Einbildungskraft

§ 145

In der Erinnerung fällt die Vorstellung der ehemaligen Anschauung und die jetzige unmittelbar ineinander. Ich habe nicht zweierlei vor mir, die Anschauung und die Vorstellung, sondern nur, daß ich sie schon gehabt habe, daß sie schon die meinige ist; insofern ich nun auch die Vorstellung als verschieden von der Anschauung vor mir habe, ist dies die Einbildungskraft. Insofern kann aber Anschauung und Vorstellung auch gänzlich verschieden sein.

Ｂ想像力 

１４５ 

　想起の中では以前の直観の表象と現在の直観とが直接に結合する。私は直観と表象という二種のものを現にもつのではない。その直観が私の以前にもったものだという点、それが以前から私のものであるという点でちがうだけである。ところで、私が表象を直観と異なるものとして現在もつかぎり、これは想像力である。尤もそのかぎりでは、直観と表象とは全くちがったものでもある*。 

　* 

§ 146

1. Reproduktion der Vorstellung überhaupt. Die Einbildungskraft als Reproduktion der Vorstellung überhaupt ruft die Bilder und Vorstellungen ohne die gegenwärtige, ihnen entsprechende Anschauung wieder hervor und läßt sie für sich ins Bewußtsein treten.

１４６ 

　(1)表象一般の再生 (Reproduktion)。表象一般の再生としての想像力は、諸々の心像と表象をそれらに対応する現在の直観なしに再び呼び起し、それらをそれだけとして［向自的に(=対自的に)］意識に再現するものである。 

§ 147

1. Als tätig bringt die Einbildungskraft die aufbewahrten Bilder und Vorstellungen in mannigfaltigen Zusammenhang miteinander, welcher von demjenigen verschieden ist, den sie als Anschauungen hatten.

１４７ 

　(2)想像力が活動的(tätig,テーティッヒ)なもの［想像的なもの］である点では、保存されている諸々の心像や表象を、それらが直観としてもった関連とはちがういろいろの関連に組み合わすものである。 

§ 148

Diese Verknüpfung kann nach mancherlei Bestimmungen, welche die Vorstellungen enthalten, geschehen. Die verschiedenen Verknüpfungsweisen sind sehr uneigentlich Gesetze der Ideenassoziation genannt worden.

１４８ 

　この結合は表象がもっているいろいろの規定［性質］に従って起ることができる。しかし、このいろいろの結合の仕方が観念連合の法則 (Gesetz der Ideennssoziation)と名付けられたことは全く不当である。 

§ 149

Die Bestimmung der Verknüpfung kann ein mehr oder weniger oberflächlicher oder gründlicher Zusammenhang sein: bloße Gleichzeitigkeit oder gleicher Ort zweier Vorstellungen, - oder irgendeine Ähnlichkeit, auch Kontrast derselben, Verhältnis als Ganzes und Teile, Ursache und Wirkung, Grund und Folge usw., überhaupt jede Art sinnlicher oder geistiger Beziehung. Dieser Zusammenhang steht vornehmlich unter der Herrschaft eines Interesses des Gemüts, einer Leidenschaft, oder des geistigen Charakters überhaupt.

１４９ 

　結合の規定［性質、意味］が皮相的関連である場合もあれば、根本的な関連であることもある。すなわち、二つの表象の単なる同時性とか、同じ所にあるにすぎない場合もある。或いは二つが或る点で類似性をもつとか、対照的であるとか、全体部分、原因と結果、根拠と帰結の関係にある場合とか、一般に各種の感性的な関係または精神的関係から起るものである。しかしこの関連はどうしても心情、すなわち激情の関心、或いは精神的性格一般の関心に支配されるものである。 

§ 150

Der Unterschied der Bilder von den Anschauungen ist im Bisherigen angegeben. Das gewöhnliche Bewußtsein macht ihn unmittelbar im wachen und gesunden Zustande. Aber im Schlaf, in außerordentlichen Zuständen, in Krankheit fällt dieser Unterschied für dasselbe hinweg, und die Einbildungskraft  beherrscht es gegen die Anschauung und gegen höhere geistige Kräfte.

１５０ 

　心像と直観との区別は以上述べた通りである。普通の意識は覚醒時と健全な状態においてはこの区別をはっきりもっている。しかし睡眠の際、変態、病気の時にはこの区別が意識されなくなる。だから想像力が直観に反し、また高次の精神力に反して意識を支配することになる。 

§ 151

• Das Träumen. Im Traumschlaf kommen uns Reihen von Vorstellungen vor, die wir nicht von Anschauungen unterscheiden, welche durch Erinnerungen oder auch durch gegenwärtige Empfindungen veranlaßt sind, übrigens aber auf das Zufälligste und Willkürlichste vermischt und aneinandergehängt werden. - Den Ahnungen, Visionen, der Schwärmerei usf. liegen zwar tiefere Interessen oder Kräfte zugrunde als die bloße Einbildungskraft, aber sie sind mit einer besonderen Erhöhung derselben verknüpft, welche innere, dunklere Gefühle zu Bildern macht und ihnen die Stärke von Anschauungen gibt.

Sympathie mit der Natur. Sogenanntes Voraussehen. In der Wirklichkeit schläft die Zukunft. Die Wirklichkeit ist zugleich die Möglichkeit des Folgenden. Orakel, Prophezeiung aus Vogelflug, den Eingeweiden der Tiere. Allgemeine Stimmung durch die Natur, wie die Tiere die Erdbeben vorherempfinden. Völker, die mehr in der Einheit mit der Natur leben, haben einen stärkeren Zusammenhang mit ihr als wir, die wir von der Natur uns losgerissen haben. - Inneres Licht; Umgang mit höheren Geistern; Hexensalbe von Hyoscyamus; die Hexen betäubten sich und gerieten in eine fürchterliche Phantasie, welche epidemisch wurde. Sie sind zu Tausenden verbrannt worden. - Gespenster; oft äußerliche Erscheinungen als Veranlassung, welche die Phantasie aufgreift. Das böse Gewissen, von der Qual des Verbrechens gefoltert, macht sich durch gespenstige Gestalten objektiv. - Verabredungen, im Leben nach dem Tode sich zu erscheinen. - Schwärmerei; Fanatismus, religiöse Vorstellungen höher zu achten als alles Sittliche im Leben und als Begriffsverhältnisse. Die Schwärmerei fällt in den Wahn, ein bildloses Gestalten der handgreiflichen Äußerlichkeit nachzusetzen. Das Sinnliche soll höher stehen als das Geistige. Das Absolute soll sich in die Äußerlichkeit legen. Im  Dinge will man Gott sehen, ohne die Kunst; oder man will sich das absolute Wesen zur inneren Anschauung vor die Phantasie bringen; man will Gott ins Zeitliche, Sinnliche rücken. - Wahrhafte Übermacht der Vorstellung über die Anschauung durch den Willen, z. B. Mucius Scaevola.)

１５１ 

　(a)夢 (das Traumen)。夢睡の中では、想起によって、また現在の感覚に基いて起るところの、直観と区別されない一連の表象が起って来る。しかし、これらの表象の連結は極めて偶然的で、 また極めて勝手であって、その上に種々雑多である。〜〜予感、幻影、熱狂等の根底にも、もとより単なる想像力よりはずっと興味があり、力のあるものもなくはないが、しかしこれらの興味または力は想像力の昂進と結びついている。すなわち、想像力の昂進が内にある暗い感情を心像として作り出し、またその心像に直観のもつ強度を与えるのである。 

　(自然との共感* 。謂ゆる透視。現実の中に未来が眠っているといったこと。現実性は同時にに来るものの可能性だなどと見る。鳥が飛んだこととか、動物の内臓を見てする神託とか預言。動物が地震を予感するといった自然を通して感ずる一般的な気分。どちらかと云うと自然と一つの生活をしている民族は、自然と離れている我々よりもずっと多く自然と事を結びつけて考える。〜〜内的な光［内的な霊感］。愛との交わり。ヒヨス=豚の豆の魔女香油。魔女が自分で陶酔してしまって怖しい空想に陥り、それを人々にビクビク伝えて来る場合。魔女が幾千人と焼かれたという話。〜〜幽霊。多くは外にある現象が基になって、空想がそれを幽霊と見ること。犯罪の苦しみに責められる良心の苛責が、自分のありもしない姿［例えば自分が磔殺に処せられている姿］を描いてそれを客観的にあるように思う場合。〜〜死後の生活で生れ合おうという約束。〜〜熱狂(Schwärmerei)。すなわち、宗教的ないろいろの表象を現世のあらゆる風習よりも、また概念の諸関係よりも一層高く見ようという狂信(Fanntismus)。熱狂は心像のない形［概念など］が手でつかむことのできる外的な物よりも下だとする妄想に陥る。そこでは感性的なものが精神的なものよりずっと高いものだとされる。絶対的なものが外的なものの中にあると見られる。芸術的な意味ではなしに、物の中に神を見ようとする。云いかえると、絶対的本質を空想によって内的直観の対象とする。神を時間的ないもの、感性的なものの中に押い込もうとする。表象が直観に真に優るものであることを意志によって示す例、ムキウス・スケヴォラ (Macius Scaevola) の場合* * 。 

* 

** 

§ 152

• Ein höherer Grad des in die Phantasie sich einschließenden Lebens ist der Somnambulismus, das eigentliche Nachtwandeln, oder andere Zustände dieser Art, in welchen bei schwächerer oder stärkerer äußerer Empfindung der Geist eine mehr innerliche Anschauung des äußeren hat, überhaupt in sich tätig ist und zu ganzen Reihen äußerlicher Verrichtungen, wie man sie im Wachen vornimmt, fortgeht.

(Der Somnambulismus ist  ) der gewöhnliche im Schlaf: Musik hören, lesen, briefschreiben, sprechen, an gefährliche Orte gehen. Wasserwannen vor dem Bett; starke Erschütterungen;  ) der epileptische; durch die Finger, auf dem Magen lesen usf.;  ) der magnetische; der Kranke antwortet nur dem, der mit ihm in Rapport steht.)

１５２ 

　(b)空想の中に入する傾向のもっと度の進んだやつは夢遊病 (Somnambuismus)、すなわち謂ゆる夜中彷徨(Nachtwandeln)である。またはこの種の他のいろいろの状態である。このような状態においては極く弱い外的感覚が加えられても、また幾らか強い外的感覚があればなおさら、精神は外的な事物の直観を生々と内に作り上げることになる。つまり、そこでは精神は一般に自分の中で活動するのである。そうして我々が覚醒時にやるような一連の外的所業を楽々とやってのける。 

　（夢遊病は(α)睡眠の場合に起る普通の夢遊病。音楽をきいたり、本を読んだり、手紙を書いたり、話をするとか、危険な場所へ行くとか、といったもの。寝台の前に水桶を見たり、強い震動がすると思ったりする。(β)癲癇性のもの。〜〜指を通して字を読むとか、胃の上で読む等。(γ)磁気性のもの。〜〜患者は自分と関係のある者にだけ答える。) 

§ 153

• Die Verrücktheit hat außerdem, daß das Phantasieren in der Fieberhitze ein ähnlicher, von Krankheit abhängiger Zustand ist, sehr verschiedene Modifikationen wie Narrheit, Wahnsinn, Raserei usf. und ist überhaupt eine Übermacht von Phantasievorstellungen im wachen Zustande über die Anschauungen und verständigen Vorstellungen. Die Narrheit hat irgendeine einzelne, fixe Vorstellung, die verrückt ist, und ist mit Richtigkeit der übrigen Vorstellungen in der fixen Vorstellung verbunden. Der Wahnsinn ist eine allgemeine Zerstörung der geistigen Natur. Als Raserei oder Tollheit ist diese Verrücktheit mit bösem tückischen Willen und tobenden Ausbrüchen verbunden.

Die Einbildung, ein König, Kardinal, eine Person in der Gottheit zu sein. Melancholie aus Vorstellung von moralischem  Unwert. Es glaubte jemand, wenn er pisse, eine ganze Stadt zu überschwemmen; ein anderer, er sei ein Gerstenkorn, und die Hühner würden ihn fressen; ein dritter, er habe Füße von Glas, ein Glöckchen im Leibe usf. - Die Ursachen sind

(a) körperlich; oft natürliche, angeerbte Disposition; Eindrücke zur Zeit der Schwangerschaft; Ausschweifungen; giftige Kräuter; Hundswut; Krankheitsmaterie, die sich auf die Nerven, auf das Gehirn wirft usf.;

(b) geistig; eine höchst lebhafte Vorstellung, z. B. sind Menschen vor Freude nicht nur gestorben, sondern auch wahnsinnig geworden; Zerrüttung durch Leidenschaften, Liebe, Stolz, Hoffnung, Eitelkeit, Täuschung; Mißtrauen zerreißt den Zusammenhang mit der Außenwelt; sein Leben in sich hinein, in seine Einzelheit vergraben usf. - Die Heilart der Seelenstörungen ist demnach auch körperlich und geistig.)

１５３ 

　(c)精神錯乱(Verrücktheit)。熱のある場合の空想は病気から来るもので、本物に類似した状態を呈するが、精神錯乱にはこの他に、阿呆、気狂、狂暴等のような種々の変容がある。一般的に云えば、それは驚醒時において、空想の表象が直観や悟性的表象よりもすぐれた力をもっていることである。阿呆(Narrheit)というのは、何か一つだけを思いつめるという固定観念［表象］をもっていて、この観念が狂っているが、この固定観念の中にある他の観念［表象］はみな正常だという場合である。無狂(Wahnsinn)とは、精神が一般的に錯乱しているものである。狂暴 (Raserei)または狂乱 (Tollheit)は、こういう錯乱が悪質の意地悪い意志や乱暴な発作と結びついたものである。 

　(帝王とか、僧正とか、何か神性をもった人物であるという想像。道徳的に無価値だという表象［観念］から来る憂鬱(メランコリー)。或る者は小便をしているとき、全市が洪水になると信じこむ。また他の者は、自分が麦の粒であって、牝鶏が彼を食うと思う。第三の者は、硝子の足を持つとか身体の中に小鈴をもっていると思いこむ。〜〜原因としては次のようなるのがある。(α)身体的な原因。〜〜多いのは自然的、遺伝的素質。妊娠時の印象。房事過度。毒草によるもの。狂犬病。神経や脳髄に入った微毒等。(β)精神的原因。〜〜極度に激しい表象、例えば人によっては感極まって死ぬることもあれば、また気狂になることもある。いろいろの激情、愛、誇、希望、虚栄、欺瞞による錯乱。人の世に不信をいだいて外界との接触を断ち、隠遁して孤独の中に埋れて暮らす場合など。 〜〜これらの精神錯乱の治療方法もまた以上に応じて、身体的と精神的との側面がある)。 

§ 154

3. Produktive Einbildungskraft. Die höhere Einbildungskraft, die dichtende Phantasie, steht nicht im Dienst zufälliger Zustände und Bestimmungen des Gemüts, sondern im Dienst der Ideen und der Wahrheit des Geistes überhaupt. Sie streift die zufälligen und willkürlichen Umstände des Daseins ab, hebt das Innere und Wesentliche desselben heraus, gestaltet und verbildlicht es. - Diese Form des erscheinenden Daseins, die sie ihm gibt, ist nur von dem Wesentlichen getragen, beherrscht, durchdrungen und zur Einheit verbunden. - Das Symbolisieren der Einbildungskraft besteht darin, daß sie sinnlichen Erscheinungen oder Bildern Vorstellungen oder Gedanken anderer Art unterlegt, als sie unmittelbar ausdrücken, die jedoch eine analoge Beziehung mit ihnen haben und jene Bilder als den Ausdruck derselben darstellen.

(Das Dichten ist nicht Nachahmen der Natur. Die Poesie ist in höherem Sinne wahr als die gemeine Wirklichkeit. Der Dichter ist ein tiefer Geist, der die Substanz durchschaut, die ein anderer auch in sich hat, aber die ihm nicht zum Bewußtsein  kommt. Es gilt auch hier, daß es für den Kammerdiener keine Helden gibt. Es heißt: ich habe diesen ja auch gekannt, aber nichts davon gesehen; oder: ich habe die Liebe auch gekannt, aber nichts in ihr von dem gefunden, was der Dichter davon sagt. Darum ist der Dichter ein Seher. - Die Pracht der Natur vereinigt der Dichter zu einem Ganzen als Attribut irgendeines Höheren: Ätherblau ist sein Gewand, Blüten seine Boten usf. - Ceres und Proserpina. Basis der Idee. - Sommer: Vergißmeinnicht. - Sonnenaufgang: "So quoll die Sonn' hervor, wie Ruh' aus Tugend quillt." Sonnenuntergang: "So stirbt ein Held." - Symbolik von Brot und Wein in den Eleusinischen Mysterien und im Christentum. - Ein tiefes Gemüt symbolisiert überhaupt; Neigung der Deutschen zur Gedankenpoesie der Natur usf.)

１５４ 

　(3) 生産的想像力 (produktive Einbildungskraft)。高次の想像力、すなわち詩作的想像(die dichtende Phantasie)が心情の偶然的な状態や規定には役立たないが、 理念と精神一般の真理には寄与する。それは定在の偶然的で、付け足りの面をはぎとり、定在の内的な面と本質的な点をつかみ出し、それを作りげて、それに姿を与える。〜〜想像力が与えるところの現象的な定在のこの形式は、ただ本質的なものによってのみ荷われ、支配され、それによって隅々までも照し出されたものであり、また統一されたものである。〜〜想像力の象徴作用の特性は、想象力が感性的現象または心像の底に、それらが直接に表現するものとはちがった種類の表象または思想を見抜く点にある。尤も、これらの表象または思想はそれら感性的現象また心像と類比的な関係をもっていて、それらの心像を自分の［すなわち表象または思想の］表現として表わしているものではある。 

　(詩作(das Dichten)は自然の模倣ではない。詩(Poesie) は俗な現実よりも、もっと高い意味において真である。詩人(デイヒター)は他の人も自分の中にそれをもってはいるが、自分で意識していない実体を見抜くところの深い精神である。「従僕にとっては英雄というものがない」(Es gibt für den Kammerdiener keinen Helden.)ということが、ここでもまた云える*。よくこんなことが云われる。「私は英雄を実際に識ったが、［彼の中に］ちっとも英雄を見なかった」とか、「私も恋愛の経験はしてみたが、恋愛とは詩人が云っているようなものではなかった」と。それ故に詩人は「見る者」(ein Seher)である。〜〜自然の美しさを詩人は何か至高存在の属性と見て、それを全体に結びつけて考える。つまり、蒼空はその至高存在の衣であり、花はその使である等。〜〜ケーレスとプロセルピナ (Ceres und Proserpina)**。理念が底にあること。〜〜夏=勿忘草。〜〜太陽の出=「平静が徳から生れるように、太陽は悠然と上った。」〜〜 太陽の入=「英雄はこうして死んで行く」〜〜エレウシスの密儀やクリスト数における酒とパンの象徴。〜〜一体に深い心情はものを象徴的に見る。自然の思想詩に対するドイッ人の愛好。) 

* 

** 

C. Das Gedächtnis

§ 155

1. Das Zeichen überhaupt. Indem die Vorstellung von dem äußerlichen Dasein befreit und subjektiv gemacht ist, ist dasselbe und die innere Vorstellung einander als verschieden gegenübergetreten. Die willkürliche Verknüpfung eines äußerlichen Daseins mit einer ihm nicht entsprechenden, sondern auch dem Inhalt nach davon verschiedenen Vorstellung, so daß jenes die Vorstellung oder Bedeutung von dieser sein soll, macht dasselbe zu einem Zeichen.

Ｃ　記憶 

１５５ 

　(1)記号一般(das Zeichen überhaupt)。表象は外的実在とは切り離されて、主観的に作られるものであるから、定在と内的表象とは互にちがうものとして対立して来る。そこで外的定在を、それと一致せず、内容から云ってもまたそれと異なる表象と勝手に結びつけて、外的定在を記号にするようになる。この場合には、前者［外的是在］は後者［表象］の表象または意味だと見られる。 

§ 156

Das produktive Gedächtnis bringt also die Verknüpfung der Anschauung und Vorstellung hervor, aber eine freie Verknüpfung, worin das vorhergehende Verhältnis, in welchem der Vorstellung die Anschauung zugrunde liegt, umgekehrt ist. In der Verknüpfung des produktiven Gedächtnisses hat das sinnliche Dasein keinen Wert an und für sich, sondern nur den, welchen ihm der Geist gibt.

１５６ 

　生産的記憶(das produktive Gedächtnis)はそれ故に、直観と表象との結合を作り出す。しかし、この結合は自由な結合であって、前に述べた関係では直観が表象の根拠にあったが、ここではその関係は逆になる。生産的記憶の結合においては、感性的定在は即且向自的(=対自的)には ［それ自身では］何の価値ももたず、ただ精神ごとの定在に与える価値だけをもつにすぎない。 

§ 157

Das sinnliche Dasein bezieht sich durch seine Bestimmungen überhaupt auf anderes Dasein. Indem aber durch das produktive Gedächtnis eine Vorstellung zu seiner Bestimmung gemacht ist, wird es insofern wesentlich zur Beziehung von Vorstellungen auf andere vorstellende Wesen, und es beginnt darin die theoretische Mitteilung dieser gegeneinander.

１５７ 

　感性的定在はそのいろいろの規定によって、一般に他の定在に［直接的に］関係する。ところが、いま生産的記憶によって表象が感性的定在の規定になるから、そのかぎり生産的記憶は本質的に表象間の関係を通して他の存在に関係すること (表象の表象をもつ存在に対する関係)になる。だからこの点で、これらの表象をもつ［表象によって自分を表わす］存在相互の理論的体系が始まる。

§ 158

2. Die Sprache. Das höchste Werk des produktiven Gedächtnisses ist die Sprache, welche teils Ton-, teils Schriftsprache ist. Indem das produktive Gedächtnis oder die Mnemosyne der Ursprung derselben ist, so kann von einem weiteren Ursprung nur in Rücksicht auf die Erfindung der bestimmten Zeichen die Rede sein.

１５８ 

　(2)言語(die Sprache)。生産的記憶の最高の所産は言語である。言語には口語［音語、狭義の］(Tonsprache) と文語［文字］ (Schriftsprache)とがある*。生産的記憶またはムネジモジネ(Mnemosyne) (記憶)が言語の根源であるから、特別な記号［例えば暗号］の考案のためには、またいろいろ別の根源が問題になる。 

　* 

§ 159

Der Ton ist die flüchtige Erscheinung einer Innerlichkeit, die in dieser Äußerung nicht ein Äußerliches bleibt, sondern sich als ein Subjektives, Innerliches kundgibt, das wesentlich etwas bedeutet. - Es ist vornehmlich wichtig, daß durch die Artikulation der Töne nicht nur Bilder in ihren Bestimmungen, sondern auch abstrakte Vorstellungen bezeichnet werden. - Die konkrete Vorstellung wird überhaupt durch das Wortzeichen zu etwas Bildlosem gemacht, das sich mit dem Zeichen identifiziert.

(Das Bild wird ertötet, und das Wort vertritt das Bild. Dies ist ein Löwe; der Name gilt für die Sache. - Logos; Gott sprach usf. - Die Sprache ist die höchste Macht unter den Menschen. - Adam, heißt es, gab allen Dingen (Tieren) ihren Namen. - Die Sprache ist Ertötung der sinnlichen Welt in ihrem unmittelbaren Dasein, das Aufgehobenwerden derselben zu einem Dasein, welches ein Aufruf ist, der in allen vorstellenden Wesen widerklingt.)

１５９ 

　音 (der Ton)は内面が一時的に現象したものである。しかし内面のこの発現は、それが単に外面的なものになるというだけのことではない。それによって内面は本質的に何かを意味するところの主観的なものであり、内面的なものである ことを表明する。〜〜音 の分節(Artiulationder Tōne) によっていろいろのニュアンス［規定］をもつそれぞれの心像が表わされるのみでなく、また抽象的ないろいろの表象［観念］も表わされるのであって、この点は特に大切である。～～具体的な表象は一般に言葉という記号(Wortzeichen) になることによって心像のないものになる。と云うのは、そこでは心像［表象］は記号に同一化されるからである。

　心像は抹殺されて、言葉が心像を代表することになる。「これは獅子である。」名前が本物(Sache) と見なされる。〜〜ロゴス=「神は語った」等。〜〜言語は人間の間を支配する最高の力である。〜〜アダムはあらゆる物(動物)に名前を与えたと云われる。〜〜言語は直接的定在をもつ感性界の抹殺であるが、しかもまた感性界を止揚して、或る定在にするものでもある。すなわち、この或る定在というのは、表象によって自分を表わすすべての在在の中に反響を呼び起すところの「呼び掛け」(Aufruf) ［言語］という定在にほかならない。

§ 160

In Ansehung der Erfindung der bestimmten Zeichen ist es natürlich, daß zu Tonzeichen für tönende Erscheinungen (Rauschen, Schwirren, Klingen, Sumsen usf.) unmittelbare Nachahmungen derselben gemacht werden. - Für andere sinnliche Gegenstände oder Veränderungen ist das Zeichen überhaupt willkürlich. Für die Bezeichnung abstrakter Verhältnisse und Bestimmungen tritt vornehmlich das Symbolisieren ein, und die weitere Fortbildung der Sprache gehört der Kraft der Allgemeinheit, dem Verstande an.

１６０ 

　特定の記号の発見に関しては、音をたてる諸現象(ザワザワ鳴る。シューという音、鳴響(クリンンゲン)、ブンブン唸る音、等)に対する音記号のためには、それらを直接に模倣するのが普通である。その他の感性的対象または変化に対しては記号は一般に任意である。抽象的ないろいろの関係や規定［性質］の表示のためには何といっても象微作用が大きなはたらきをするが、更に言語の段階になると、それはやはり普遍性をもつ力、すなわち悟性の役目である。 

§ 161

Die Schriftsprache ist hieroglyphisch oder alphabetisch. Die hieroglyphische ist eine Bezeichnung der Gegenstände, die keine Beziehung auf ihr ertönendes Zeichen hat. - Einer allgemeinen philosophischen Schriftsprache, wovon mehrere den Gedanken gefaßt haben, steht die unbestimmbar große Menge von Zeichen entgegen, die nötig wäre, besonders zu erfinden und zu lernen. - Die alphabetische Schriftsprache löst die Wortzeichen in ihre einfachen Töne auf und bezeichnet dieselben.

１６１ 

　文語［文字］(Schriftsprache)には象形文字とアルファベット文字とがある。象形文字は発声記号と全く関係のない対象象を表示する。〜〜一般の哲学用語の多くは思想を表わしているものだから、記号の大部分とは性質がちがう。記号の多くは考案されたもので、特に習いさえすればよい。アルファべット文字は、単語が一々単音から成っているもので、すなわち文字は一々の音を表示するものである。 

　* 

§ 162

3. Reproduktives Gedächtnis. Es ist das Behalten der einzelnen Zeichen in Beziehung auf das Bezeichnete und vornehmlich das Festhalten bildloser Reihen derselben, die nicht durch bildlichen noch verständigen Zusammenhang miteinander verknüpft, sondern in einer völlig willkürlichen oder zufälligen Folge sind und durch bloße innere, unabhängige Kraft so zusammengehalten werden.

１６２ 

　(3) 再生的記憶(reproduktives Gedachtnis)。それは表示されたものについて、その一々の記録を把持することであって、特に心像のない個々の記号の系列を確保していることである。すなわち、一々の記憶の結びつきは心像の上の闘速から起るものでもなければ、悟性的な ［意味上の］関連によるものでもない。それは全く勝手な、または偶然的な連鎖によるもので、全く［機械的な］一種特別な心のはたらきによって連関がつけられる。 

　* 

III. Das Denken

§ 163

Das Denken ist die Tätigkeit des Geistes in seiner unabhängigen, sich selbst gleichen Einfachheit, welche aus und in sich  selbst Bestimmungen setzt, die den Charakter der Sichselbstgleichheit und Allgemeinheit haben.

(III)思惟 

１６３ 

　思惟 (das Denken)とは、腸立な自己同等な単純性の形における［すなわち統一的な］精神の活動性である。すなわち、この活動性は自己同等性と普遍性の性格をもつ諸規定を、自分目身の中から、 また自分自身の中に(aus und in sich selbst) 立てるものである。 

* 

A. Verstand

§ 164

Der Verstand ist das denkende Bestimmen überhaupt und das Festhalten in gedachten Bestimmungen. Als objektiver Verstand enthält er die Kategorien, die Denkbestimmungen des Seins, welche die innere Einheit des Mannigfaltigen der Anschauungen und Vorstellungen ausmachen. Er unterscheidet das Wesentliche vom Unwesentlichen und erkennt die Notwendigkeit und Gesetze der Dinge.

(一)悟性 

１６４ 

　悟性は一般に思惟的規定作用であり、思性の諸規定という形でものを確定的につかむものである。客観的悟性としては、悟性は範疇、すなわち在(=有)の規定をもつ。在の窺職は直観と表象の多様性の内的統一である。また悟性は本質的なものと非本質的なものとを区別し、物の必然性と法則を認識する。［これが在(=有)と区別される本質の規定である。］ 

* 

B. Urteilen

§ 165

Das Urteilen ist das Beziehen eines Einzelnen auf den Begriff. Es bestimmt überhaupt das Einzelne auf allgemeine Weise oder subsumiert es unter das Allgemeine. Es hat folgende Stufen:

１６５ 

　判断とは個別的なものを概念に関係付けることである。判断は一般に個別的なものを普遍的に規定する。云いかえると、個別を普遍の下に包摂する。判断には次の段階がある*。 

* 

§ 166

• ist das Allgemeine, als welches das Einzelne bestimmt wird, selbst nur irgendeine Qualität desselben, deren es mehrere hat.

１６６ 

　(a)個別的なものが普遍的なものだと規定するところのこの普遍的なものは、それ自身個別的なものの或る一つの性質 (Qualität) である。と云うのは、個別的なものは多数の性質をもつ。 

§ 167

• Das Reflektieren ist das Hinausgehen über eine einzelne Bestimmung, ihr Vergleichen mit anderen und das Zusammenfassen derselben in eine bestimmte. - Das Allgemeine macht die innere Natur und das Wesen des Gegenstandes aus. Diese Allgemeinheit ist nicht nur eine Gemeinschaftlichkeit, sondern die eigene Allgemeinheit eines Gegenstandes an ihm selbst, im Gegensatz gegen die Bestimmungen seiner eigenen Besonderheit oder Einzelheit.

１６７ 

　(b)反省作用(das Reflektiren)とは、個々の規定を越え、諸規定を比較し、それらを特定の規定に統合するものである。〜〜普遍的なものは対象の内的本性と本質である。この普遍性は単に共通性ではなくて、対象がそれ自身にもつ固有な普遍性であって、その対象固有の特殊性または個別性の規定に対立するものである。 

§ 168

• Das eigentliche Urteilen über einen Gegenstand ist das Vergleichen seiner Natur oder wahren Allgemeinheit mit seiner  Einzelheit oder mit der Beschaffenheit seines Daseins, das Vergleichen dessen, was er ist, mit dem, was er sein soll.

(In diesen Urteilen liegt die Dialektik, daß das Schlechte, seinem Begriff nicht Entsprechende zugleich auch ihm angemessen ist. Ein schlechtes Haus hat ein Dasein, das seinem Begriff nicht angemessen ist. Wäre es ihm aber nur nicht angemessen, so wäre es gar kein Haus. Der Begriff muss in dem Dasein noch erkennbar sein. So wenn von einer Handlung geurteilt wird, daß sie schlecht sei, so hat ihre Unvernunft noch eine Seite der Übereinstimmung mit der Vernunft usf.)

１６８ 

　(c)対象についての本来の判断作用は、その対象の個別性またはその定在の性状と、その本性または真の普遍性とを比較するものである。すなわち、あるがままの対象 ［対象の存在］とあるべき対象［対象の本質］とを比較する。 

　(これらの判断の中には、悪いもの、すなわちその対象の概念に一致しないものが、同時にまたその対象の概念に一致して (gemessen)いる、という弁証法 (Dialektik)がある。悪い家は家の概念に一致しない定在をもつ。しかし、もしその悪い家が家の概念に一致していないとすると、それは決して家ではないだろう。概念は定在の中でやはり認識され得るものでなければならない。同様に、或る行為について、それが悪いと判断される時にも、この非理性的な行為はやはり理性と一致する面をもつ、等。) 

§ 169

Es kann hier auch der Scharfsinn erwähnt werden, der aber mehr auf eine Beschaffenheit des Urteilens geht, als daß er eine wirkliche Stufe desselben wäre. Er besteht vornehmlich darin, Unterschiede, die nicht auf der Oberfläche liegen, aufzufassen und durch die Reflexion feinere oder tiefere Beziehungen zu bemerken. - Der Witz verknüpft ihrem äußeren Anschein nach einander fremdartige Vorstellungen nach einer Seite, in der sie eine unerwartete Gleichheit darbieten. - Das Geistreiche ist ein Analogon des Vernünftigen und drückt vornehmlich eine Bestimmung oder Verhältnis aus, wie es seiner unmittelbaren Vorstellung oder in sich selbst entgegengesetzt ist.

(Beim Aufgang der Sonne verwandelte sich der Himmel von Schwarz in Rot wie ein Krebs. - Le miserable, qu'il est heureux! Il a faim. - Exul mentisque domusque. - Unter diesem Steine liegt mein Weib, und hier ruht sie und auch ich. - Auf ihren Ruhebetten die fetten Richter träumen, um ihren Husten und ihr Gewissen zugleich in Schlaf zu wiegen usw.)

１６９ 

　ここで敏感(Scharfsinn)について述べることは不当ではあるまい。けれども、それは判断作用の一つの現実的な段階であるというよりは、むしろ判断作用の一つの性格にかかわるものである。敏感の特性は、何よりも表面には見えない区別をつかみ出して、反省によって細かなニュアンス、或いは深い開係を指摘する点にある。〜〜機智(Witz)は、一寸見るとつながらないように思われる諸々の表象の中に予期しない一致点を見つけ出して、それらを結びつけるものである。〜〜才気(Geistreich) とは、理性の兄弟分であって、直接的な表象に抵触するようなもの、それ自身の中に予盾をもつような規定や関係［の中からその統一、本質］をつかむところに特徴がある。 

　(日の出の際には、天は暗黒から赤色に変るが、それは全く蟹と同じだ。貧しい者は幸いなるかな！　その者は空腹なれば。(Le misérable qu'il est heureux ! Il a faim.) 〜〜心も家もない者(Exul mentisque domusque)。 〜〜この石の下に私の妻は横たわる。ここに彼女は憩う、私も亦。〜〜静かな寝床の上に肥太っちょの審判者たちは夢見る、彼らの咳とと良心とを同時に揺り眠らそうとして、等。) 

C. Vernünftiges Denken

§ 170

• Die Vernunft ist negative oder dialektische, indem sie das Übergehen einer Verstandesbestimmung des Seins in ihre  entgegengesetzte aufzeigt. Gewöhnlich erscheint das Dialektische so, daß von einem Subjekt zwei entgegengesetzte Prädikate behauptet werden. Das reinere Dialektische besteht darin, daß von einem Prädikat eine Verstandesbestimmung aufgezeigt wird, wie sie an ihr selbst ebensosehr das Entgegengesetzte ihrer selbst ist, sie sich also in sich aufhebt.

(三)理性的思惟 

１７０ 

　(a)理性が在(:=有)の悟性規定からその反対のものへの移行を表わす場合、それは否定的理性 (negative Vernunit)または弁証法的理性 (dialektische Vernunft) である。 普通に弁証法は、一の述語について二つの対立する述語が主張されるというように見られる。しかし弁証法の純粋な形は、一つの述語によって一つの悟性規定が示されるが、その一つの悟性規定がそれ自身においてあると同時にそれ自身の反対のものであり、従ってその悟性規定自身が自分の中で止揚されるものであるという点にある。 

* 

§ 171

• Die räsonierende Vernunft sucht die Gründe der Dinge auf, d. h. deren Gesetztsein durch und in einem Anderen, welches das insichbleibende Wesen derselben, zugleich aber nur ein relativ Unbedingtes ist, indem das Begründete oder die Folge einen anderen Inhalt hat als der Grund.

１７１ 

　(b) 究理的理性 (die räonnierende Vernunft) は、物の根拠を求める。すなわち、 諸々の物が他者によって、また他者の中で「定立されたものであること」(das Geetztein) ［すなわちその根拠］を究明するのである。ここに他者というのはそれ自身で存在するところの、それらの物の本質のことであるが、しかしこの本質もまた一個の相対的な無制約者(ein relativ Unbedingtes)であるにすぎない。と云うのは、ここでは根拠付けられたもの、または帰結は根拠 ［そのもの］とはちがった内容をもったにすぎないからである。 

* 

§ 172

• Die schließende Vernunft enthält die Vermittlung eines Inhalts, der sich nach den Bestimmungen des Begriffs als Einzelnes, Besonderes und Allgemeines verhält. Das Besondere ist gegen das Einzelne ein Allgemeines und gegen das Allgemeine ein Bestimmtes; es ist die Mitte, welche die Extreme der Einzelheit und Allgemeinheit in sich enthält und sie darum zusammenschließt. Die schließende Vernunft ist:

) formale Vernunft, insofern der Schluß subjektiv ist. Das, was darin als vermittelt oder als Folge erscheint, ist an sich das Unmittelbare. Es hat das Verhältnis eines Vermittelten nur für das Erkennen.

) Die teleologische Vernunft betrachtet und setzt Zwecke, ein Verhältnis, worin das Vermittelte oder Hervorgebrachte denselben Inhalt hat als das Unmittelbare, der vorausgesetzte Begriff, und worin das Vermittelte, die Folge, ebensosehr der Grund ist.

) Die Vernunftidee ist der Begriff, insofern seine Äußerlichkeit oder seine Realität durch ihn vollkommen bestimmt ist und nur in ihrem Begriffe existiert oder das Existierende, das an ihm seinen eigenen Begriff hat, das Mittel seiner selbst, das Mittel also ebensosehr Zweck ist.

１７２ 

　(c) 推論的理性(die schliessende Vernunft) は、個別、 特殊、普遍という概念の三規定の面で、内容の媒介を行うものである。特殊は個別に対しては普遍であるが、普遍に対しては規定されたものである。特殊は個別性と普遍性との両項を自分の中に含み、それ故に両者を結合するところの中間である。推論的理性には次のものがある。 

　(α)形式的理性 (die formale Vernunit)、推論が主観的である場合。この推論で媒介されたものとして、または帰結として出て来るものも、即自的には［それ自身としては］直接的なものである。それは認識に対してのみ媒介されたものという関係をもつにすぎない。 

　(β)目的論的理性(Gie teleologische Vernunit) は、目的を検討している。 云いかえると、それは次のような関係、すなわちそこでは媒介されたもの、または作り出されたものが直接的な一種類もの、すなわち前提された概念と同一の内容をもち、従ってそこでは媒介されたもの、すなわち帰結がまた根拠でもあるというような関係を考察し、定立するものである。 

　(γ)理性理念(die Vernunftidee)は［一方から云えば］概念である。すなわち、概念の外面性またはその実在性が概念によって完全に規定されたものであって、ただその概念の中にのみ存在するという意味で、理性理念は概念である。しかし、また理性理念は、存在する(エクシスティーレンデ)ものが、それ自身自分の概念をもつものだという意味では存在するもの［そのもの］でもある。或いはまたそれは、手段であると共に目的でもあるような存在するものそのものの手段でもある。 

Zweiter Abschnitt: Der praktische Geist

§ 173

Der praktische Geist hat nicht nur Ideen, sondern ist die lebendige Idee selbst. Er ist der sich aus sich selbst bestimmende und seinen Bestimmungen äußerliche Realität gebende Geist. Es ist zu unterscheiden zwischen dem Ich, wie es nur theoretisch oder ideell und wie es praktisch oder reell sich zum Gegenstande, zur Objektivität macht.

第二節　実践的精神 

１７３ 

　実践的精神は単に理念をもつのみではなくて、生きた理念そのもの (die lebendige ldee selbst)である。それは自分を自分自身から規定し、その自分の諸規定に外的実在性を与えるところの精神である。理論的または観念的にのみ自分を対象にし、客観性とするような自我と、実践的または実在的に自分を対象にし、客観性とするような自我とは区別されねばならない*。 

* 

§ 174

Der praktische Geist heißt vornehmlich freier Wille, insofern das Ich von aller Bestimmtheit, in der es ist, abstrahieren kann und in aller Bestimmtheit unbestimmt und in der Gleichheit mit sich selbst bleibt.

１７４ 

　自我がすべての自分の規定性を捨象することができ、従ってすべての規定性の中にあって無規定定に存在し、自分自身との同等性の中にとどまるかぎり、実践的精神は特に自由意志 (freier Wille)と云われる。

§ 175

Der Wille als der innerlich bestimmende Begriff ist wesentlich Tätigkeit und Handlung. Er setzt seine inneren Bestimmungen in äußerliches Dasein über, um sich als Idee darzustellen.

１７５ 

　内面的に規定する概念としての意志は、本質的に活動性(Tatigkeit)であり、また行為(Handlung)である。意志は自分を理念として表わりために、自分の内的諸規定を［一度］外的定在の面に転置する。 

§ 176

Zur Tat gehört der ganze Umfang von Bestimmungen, die mit einer hervorgebrachten Veränderung des Daseins in unmittelbarem Zusammenhang stehen. Zur Handlung gehört zunächst nur dasjenige, was davon im Entschluß oder Bewußtsein war. Nur dies anerkennt der Wille als das Seinige und als seine Schuld, die ihm eigentlich zugerechnet werden kann. Aber auch dieses ist im weiteren Sinne unter der Schuld zu befassen, was von den Bestimmungen der Tat nicht bewußt wurde, aber bewußt werden konnte.

１７６ 

　作り出された定在の変化と直接の関連をもつところの諸規定の全範囲は行動(Tat)に属す。その諸規定の中で決意 (Entschluss) または意識の中にあったもののみが、 まず差し当って行為(Handlung)に属す。意志はこういうもののみを自分のものと認め、自分に本来錯せられることのできる自分の責任(Schuld)として是認する。けれどもまた、行動の諸規定が意識されてはおらなかったが、しかし意識されることのできただろうようなものも、もっと広い意味では責任の下に入れられねばならない。 

§ 177

• Das praktische Gefühl begreift die praktischen rechtlichen  und moralischen Bestimmungen und Gesetze zwar in sich, aber unmittelbar, daher unentwickelt und ungedacht und vornehmlich unrein durch die Beimischung der subjektiven Einzelheit. Es ist wesentlich zu bemerken, daß das praktische Gefühl keinen anderen wahrhaften Inhalt hat, als die bestimmt gewußten Rechte, Pflichten und Gesetze sind, - daß es einerseits dunkel und durch die Einzelheit bestimmt ist, andererseits nur insofern über das bestimmte Bewußtsein derselben gesetzt werden kann, als an ihnen vereinzelt festgehalten wird und es gegen sie eine Totalität sein kann.

１７７ 

　(a)実践的感情(das praktische Gefühil)もなるほど賞践的な決的並びに道徳的規定と法則を捉えているものではあるが、しかしその把捉は直接的であって、従って未展開のままであり、思惟が加えられておらない。何よりもそこには主観的個別性が混入しているために、その把捉は不純になっている。ただ、このことを注意しておくことは極めて大切である。実践的感情が捉えているものも実ははっきり意識された法、義務、その他いろいろの法則と内容上ちがったものでないということが第一の点である。次にまた、実践的感情は一面では不明瞭なままで、しかも個別性を通して見られているが、他面ではこの実践的感情も法、義務、その他の法則のそれぞれの面でははっきり分れるものであるかぎり、個別性の規定的な意識を越えて［客観的に］定立されることのできるものであり、従って実践的感情はそれらに対して総体性でもあることができるということである。 

§ 178

• Das Gefühl einer praktischen Bestimmung und zugleich das Gefühl ihres Widerspruchs, ein Innerliches, nicht Realisiertes zu sein, dem doch zugleich die Realität wesentlich ist, ist der Trieb. Er gehört der subjektiven Natur an und ist nur auf seine Bestimmtheit gerichtet. Die Begierde ist eine einzelne Bestimmung des Triebes, und durch das Angemessen- oder nicht Angemessensein des äußerlichen Daseins zu ihr wird das Gefühl zum angenehmen oder unangenehmen. In Trieb und Begierde ist der praktische Geist in der Natürlichkeit ein abhängiges unfreies Wesen.

１７８ 

　(b) ［何かをしなければならぬという］実践的規定［使命、職務］の感情であると同時に、その矛盾の感情［それができないという感情］であること、すなわち実現されないが、実は実現さるべきものであるという内的なもの、これが衝動(Trieb)である。衝動は主観的自然性に属している。だから、それはただ自分の規定性［自分のもっている領分］だけに釘付けになっている。欲望(die Begierde) は衝動の個別的な規定である。そこで、外的定在が欲望に適うか適わないかによって、愉快な感情が生じたり、不愉快な感情が生じたりする。街動と欲塁の形では実践的精神は自然性に囚われているから、他に依存するものであって、不自由である。

§ 179

• Der Geist muss sich erheben aus der Versenktheit in die Triebe zur Allgemeinheit, so daß die Triebe nicht in ihrer Besonderung für sich als absolute gelten, sondern ihre Bestimmungen nur als Momente der Totalität ihre Stelle und richtigen Wert erhalten, wodurch sie von der subjektiven Zufälligkeit gereinigt werden.

１７９ 

　(c)精神はこの動に没入している状態から自分を引き上げて普遍性に高めねばならない。 

すなわち、この衝動の特殊化がそれ自身絶対的なものと［そのままでよいと］見らるべきではない。衝動の諸規定が全く総体性の契機となるときはじめてその位置と正常の価値が与えられるのであって、それによってそれらは主観的偶然性から純化されるのである。 

§ 180

Die Bestimmungen des Geistes machen seine Gesetze aus. Sie sind aber nicht äußerliche oder natürliche Determinationen desselben; seine einzige Bestimmung, in der alle enthalten sind, ist seine Freiheit, die sowohl die Form als der Inhalt  seines Gesetzes ist, das ein rechtliches, moralisches oder politisches sein kann.

１８０ 

　精神の諸規定はその諸々の法則を形成する。しかし、それらは精神の外的な、または自然的な規定ではない。すべての規定を含む精神の唯一の規定は、精神の自由である。すなわち、この自由は精神の法則の形式であると共にまた内容でもある。そしてこの精神の法則が［分れて］法的、道徳的、政治的ともなり得るのである*。 

* 

I. Das Recht

§ 181

Der Geist als freies, selbstbewußtes Wesen ist das sich selbst gleiche Ich, das in seiner absolut negativen Beziehung zuerst ausschließendes Ich, einzelnes freies Wesen oder Person ist.

(I) 法 

１８１ 

　自由な自覚的存在としての精神は自分自身に同等な自我である。この自我は絶対否定的な関係をもつものであるから、まず第一には排他的な自我であり、個別的な自由存在または人格 (Person)である*。 

* 

§ 182

Das Recht ist das Verhältnis der Menschen, insofern sie abstrakte Personen sind. Diejenige Handlung ist widerrechtlich, durch welche der Mensch nicht als Person respektiert wird oder welche in die Sphäre seiner Freiheit einen Eingriff macht. Dies Verhältnis ist also seiner Grundbestimmung nach negativer Natur und fordert nicht, dem anderen eigentlich etwas Positives zu erweisen, sondern nur, ihn als Person zu lassen.

１８２ 

　法(das Recht)とは、抽象的人格であるかぎりにおける人間の関係である。人間を人格として敬重しないような行為、または人間の自由の領域を侵害するような行為は違法である。この関係はそれ故に、その根本規定から云えば消極的な性質をもつものであって、元来他人に何か積極的なことをなすことを要求するものではなく、ただ他人を人格として認めることのみを要求するものである。 

§ 183

Die äußere Sphäre des Rechts und der Freiheit macht das Eigentum aus, die Subsumtion einer herrenlosen Sache unter meine Gewalt und meinen Willen. Der Besitz ist die Seite der willkürlichen Bemächtigung. Die Seite des Eigentums als eines solchen ist die allgemeine Seite, daß der Besitz eine Äußerung meines Willens ist, der als etwas Absolutes von dem anderen respektiert werden muss.

１８３ 

　法と自由の外的な領域をなすものは所有(Eigentun)である。所有とは自分の権力(ゲワルト)と自分の意志の下に無主物を包摂することである。占有(Besitz) とは任意の占領(Bemächtigung)の側面である。だから、所有そのものの側面は一般的側面であり、占有はこの絶対的なものとして他人から尊重されねばならない自分の意志の発現であるという面を表わす。 

§ 184

Ich kann mich meines Eigentums entäußern, dessen nämlich, was in der Tat Eigentum ist, d. i. was teils mein ist, teils das Moment der Äußerlichkeit an ihm selbst hat. - Unveräußerlich ist also meine Vernunft, meine Freiheit, meine Persönlichkeit und was überhaupt meine ganze Freiheit wesentlich in sich enthält.

１８４ 

　私は自分の所在を護渡する(entäussern)ことができる。すなわち、実際に「所有」(Eigentum)であるところのものは、〜〜と云うのはそれは一方から云えば文字通り「私のもの」(mein)であり、一方から云えば［ものである点で］外面性の契機をそれ自身もっているものだから、〜〜私が譲渡し得るものである。 〜〜と云うことは、私の理性、私の自由、私の人格性、一般に私の全自由を本質的に中に含むものは譲渡不可能だ(unveräusserlich)ということである。

§ 185

Ich kann mein Eigentum an einen anderen veräußern und kann mir fremdes Eigentum erwerben. Dieser Erwerb geschieht nur durch den Vertrag, die gegenseitige Einwilligung zweier Personen, sich eines Eigentums zu entäußern, es dem anderen zu überlassen, und die Einwilligung, es anzunehmen.

１８５ 

　私は自分の所有を他人に譲渡し得ると共に、他人の所有を自分で獲得する (erwerben) ことができる。この獲得は契約 (Vertrag)によってのみ行われる。すなわち、二人の人格が自分では所有を譲渡し、それを他人に委ねるという同意と、［他方は］それを受け取るという双方の同意が必要である*。 

　* 

§ 186

Die Sphäre meiner Freiheit enthält meine Persönlichkeit und die Beziehung einer Sache auf dieselbe; indem diese Sphäre von anderen verletzt wird, so kann dies geschehen entweder nur in dem Sinne, daß nur diese Sache nicht mir gehört, wobei meine Persönlichkeit anerkannt wird; oder aber in dem Sinne, daß diese selbst nicht anerkannt wird, was in gewaltsamer Verletzung meines Leibes und Lebens der Fall ist.

１８６ 

　私の自由の領域は私の人格性と物件の私の人格性への関係を表わしている。この領域が他人に毀損されるというとき、二つの場合がある。一つは、私の人格性は認められて、この物件だけが私に属しないという意味をもつ場合である。他は私の人格性そのものが認められないという意味をもつ場合、すなわち私の身体と生命が暴力によって毀損される場合である。 

§ 187

In meiner Persönlichkeit verletzt der andere unmittelbar seine eigene. Er tut darin nicht etwas bloß Einzelnes gegen mich, sondern etwas Allgemeines. Was er dem Begriff nach gegen sich selbst getan, muss zur Wirklichkeit gebracht werden. - Insofern dies durch die verletzte Person selbst geschieht, ist es Rache; insofern sie durch einen allgemeinen Willen und im Namen derselben vollbracht wird, ist sie Strafe.

１８７ 

　私の人格性［を毀損すること］によって直ちに、他人はむしろ彼自身の人格を毀損する。彼はこの点では私に対して単に個別的なことをするのみでなく、むしろ普遍的なことをしているのである。だから、彼がこの概念上で自分自身［自分の本性、すなわち概念］に対してしたことは、現実(ライルクリツヒカイト)［すなわち結果］の上に実際に出て来［罰せられ］なければならない*。〜〜ところで、このことが毀損された人格自身によって行われるかぎり、それは復讐 (Rache)である。しかし、復讐が一般的意志によって、復讐の名において遂行されるかぎり、それは刑罰(Strafe)である。 

* 

§ 188

Das Recht in Beziehung auf das Eigentum macht den Gegenstand des bürgerlichen oder Zivilrechts, - das Recht in Beziehung auf die Persönlichkeit den Gegenstand des peinlichen oder Kriminalrechts aus. - Die Wissenschaft von den Grundbegriffen des Rechts ist das Naturrecht genannt worden, als ob es ein Recht gäbe, das dem Menschen von Natur zukäme, und ein davon verschiedenes, welches in der Gesellschaft entspränge in dem Sinne, daß in dieser das natürliche Recht als das wahrhafte zum Teil aufgeopfert werden müsse. In der Tat entstehen durch die Gesellschaft noch besondere  Rechte, welche nicht in dem Rechte, dem bloß die einzelne Persönlichkeit zugrunde liegt, enthalten sind. Zugleich aber ist sie die Aufhebung der Einseitigkeit jenes Prinzips und die wahre Realisierung desselben.

１８８ 

　所在に関する法は民法または私法 (das bürgerliche oder Civilrecht) の対象であり、 人格性に関する法は刑法または犯罪法(das peinliche oder Criminalrecht) の対象となる。〜〜法の根本概念の学は自然法 (Naturre ht)と呼ばれている。それは何か人間に自然的に属する法があって、真実の法であるこの自然法が社会の中で一部犠牲にされるのが当然であるという意味で、社会に発生したそれとはちがった法があるとでも云うかのようである。実際また、単に個別的な人格性を根底とする法［自然法］の中にはないような特殊の法がやはり社会の中に現われる。しかしそれは、社会がこの原理［自然法］の一面性［自然性という抽象画］の止揚であり、その真の実現である［ことを意味する。］ 

II. Die Moralität

§ 189

Die Moralität enthält den Satz: "schaue dich in deinem Handeln als freies Wesen an"; oder sie fügt das Moment der Subjektivität dem Handeln hinzu, daß nämlich 1. das Subjektive als Gesinnung und Absicht dem, was an sich Gebot ist, entspricht und daß, was Pflicht ist, nicht aus Neigung oder ［um］ irgendeiner fremdartigen Pflicht willen oder mit Eitelkeit auf das Gutsein, sondern aus der Gesinnung getan werde, weil ［es］ Pflicht ist; 2. betrifft sie somit den Menschen nach seiner Besonderheit und ist nicht bloß negativ wie das Recht. Ein freies Wesen kann man nur gehen lassen, dem besonderen Menschen aber etwas erweisen.

　(II) 道徳 

１８９ 

　道徳は「汝の行為の中で汝が自由の存在であることを見よ」という命題によって表わされる。云いかえると、道徳では主観性の契機が行為に付け加えられる。主観的契機とは、すなわち (1)主観的なものが、心情と意図としては即自的に［それ自身において］命令であるものに一致することであり、また義務であるところのものは、傾向から、または何らかの不純な義務のために、或いはまた善であることに対する虚栄を以てなされることなく、心情から、「それが義務であるというその故に」なされることである。(2)それで道徳は人間をその特殊性の面で問題にするもので、法のように単に消極的ではない。我々は自由な存在［としての人間そのもの］は認めながら、特殊性をもつものとしての人間には或る指定をなすことができる*。 

* 

§ 190

Das Gute ist der Inhalt der Pflichten, nämlich der Grundbestimmungen, welche die notwendigen menschlichen Verhältnisse enthalten oder das Vernünftige in denselben. Das Böse ist, was mit Willen auf die Zerstörung eines solchen Verhältnisses geht. Das Schlechte ist, wenn, obgleich nicht mit direktem Vorsatz, aber mit Wissen, aus Schwäche gegen einen Trieb der Sinnlichkeit oder eine Neigung des Herzens Pflichten verletzt werden.

１９０ 

　善(das Gute)とは義務の内容である。すなわち、いろいろの必要欠くべからざる人間としての関係を意味する根本規定の内容である。更に云いかえると、善とはこれらの根本規定の中にある理性的なものである。悪 (das Böse)とは有意的にこのような関係の破壊を志すものである。不良 (das Schlechte) とは、直接の企図(Vorsatz) をもってではないが、しかし意識的に感性の衝動に対する弱さ(シュウェッヘ)から、または心の傾向から、義務が毀損される場合である。 

§ 191

1. Die notwendigen menschlichen Verhältnisse jedes Menschen zu sich selbst bestehen
2. in der Selbsterhaltung, daß das Individuum die äußerliche physische Natur sich unterwerfe und angemessen mache.
3. Von ihm als seiner eigenen physischen Natur muss es seiner geistigen Natur Unabhängigkeit  erschaffen.
4. Seinem allgemeinen geistigen Wesen muss es sich unterwerfen und angemessen machen, Bildung überhaupt.

１９１ 

　(1)各人の自分自身に対する人間として必要な関係は、第一には (a)個人が肉体的な外的自然性を制御し、その保全を計るという自己保存である。次に(b)個人はその精神的本性に、自分自身の肉体的本性 (自然性)という意味の個人からの独立性を与えなければならない。(c)個人はその一般的な精神的本質に服従し、それに一致するように努めなければならない。すなわち教養(Bildung)一般が問題である*。 

* 

§ 192

1. Das Familienverhältnis ist die Natureinigkeit von Individuen. Das Band dieser natürlichen Gesellschaft ist Liebe und Vertrauen, das Wissen dieser ursprünglichen Einigkeit und des Handelns im Sinne desselben. Nach ihrer besonderen Bestimmung kommen den Individuen, die diese Gesellschaft ausmachen, besondere Rechte zu; insofern diese aber in der Form von Rechten behauptet würden, so wäre das moralische Band dieser Gesellschaft zerrissen, worin jeder wesentlich aus der Gesinnung der Liebe das erhält, was ihm an sich zukommt.

１９２ 

　(2)家族関係は個人の自然的和合である。この自然的社会の紐帯は愛と信頼であり、この根源的和合の知［知ること］であり、またこの紐帯の意味において行為することを知ることである。この自然的社会の特殊の規定［意義］からして、この社会を構成する各個人には特殊の権利が属している。しかし、この権利が権利［法］の形式で主張される場合には、この社会の道徳的紐帯は破壊されることになる。だからこの社会においては、各人は本質的に愛の心情から、各人が即自に［本質的に］隠している当の家族関係［の本質］を維持する必要がある*。 

* 

§ 193

1. Das moralische Verhältnis zu anderen überhaupt gründet sich auf die ursprüngliche Identität der menschlichen Natur. Die Pflichten der allgemeinen Menschenliebe bestehen in wohlwollender Gesinnung, in den allgemeinen, wesentlichen Dienstleistungen nach dem Zufall eines Verhältnisses. Moralische Pflichten zu näheren und dauernden Dienstleistungen entspringen aus dem in freiem Willen gegründeten Verhältnis von Bekanntschaft und Freundschaft.

(Hier sind die letzten Grenzen der Endlichkeit. Es kommt auf den Augenblick an.)

１９３ 

　(3)他人一般に対する道徳的関係は、人間的本性の根源的同一性に基く。だから、一般的人間愛の義務は、［人々の間の］開係が偶然的である場合には、好意的な心情に基いて、すなわち一般的な、本質的な奉仕という点から行われる。しかしもっと親しい、継続的な奉仕の揚合の道徳的義務は、自由意志に基く熟知と友情の開係から生ずる*。 

　(ここに有限性［個人］の最後の限界がある。瞬間が大切である**。) 

* 

** 

III. Der Staat (Realer Geist)

§ 194

Die natürliche Gesellschaft der Familie erweitert sich zur allgemeinen Staatsgesellschaft, welche ebensosehr eine durch die Natur gegründete als durch freien Willen eingegangene Verbindung ist und sosehr auf dem Recht als auf der Moralität beruht, überhaupt aber nicht so wesentlich als eine aus Individuen bestehende Gesellschaft denn als ein in sich einiger, individueller Volksgeist erscheint.

(III) 国家 (実在的精神 Realer Geist) 

１９４ 

　家族の自然的社会は一般的な国家的社会(国家という社会)(Staatsgesellschaft) に拡大される。国家的社会は自然性に基いて建設された結合であると共に、また自由意志によって結ばれた結合でもあり、法に基くと共に道徳にも基くものである。しかし一般的に云えば、国家的社会は本質的には個人から成り立った社会であると云うよりは、むしろそれ自身として統一した、個性的な民族精神(Volksgeist)と見られるものである*。 

* 

§ 195

Die Staatswissenschaft ist die Darstellung der Organisation, die ein Volk als ein in sich lebendiges organisches Ganzes hat.

１９５ 

　国家学(Staatswisenschaft) とは、 それ自身において生きた有機的全体である民族がもつところの総体(オルガザチオーン)である。 

§ 196

Der Staat macht als das Allgemeine den Gegensatz zu den Individuen. Er ist um so vollkommener, je mehr das Allgemeine der Vernunft entspricht und je mehr die Individuen mit dem Geist des Ganzen eins sind. Die wesentliche Gesinnung der Bürger gegen den Staat und dessen Regierung ist weder der blinde Gehorsam gegen ihre Befehle, noch daß zu den Einrichtungen und Maßregeln im Staat jeder seine individuelle Einwilligung zu geben hätte, sondern Vertrauen und einsichtsvoller Gehorsam gegen denselben.

１９６ 

　国家は一般的なものとして個人に対立する。国家はその一般的なものが理性に一致するだけ、また個人が全体の精神と一つになるだけ、ますます完全になる。国家とその政府に対する市民の本質的な心情は、政府の命令に対する盲目的服従にあるのではなく、また国家の制度や処置に対して各人が唯々として賛意を表さなければならないということでもない。ただ国家に対する信頼と賢明な［批評眼を備えた］服従にある。 

§ 197

Der Staat enthält verschiedene Gewalten, welche die Momente seiner Organisation ausmachen. Die gesetzgebende, richterliche und exekutive Gewalt überhaupt sind die abstrakten Momente derselben. - Die realen Gewalten sind die das Ganze konstituierende, die gerichtliche und polizeiliche, die finanzielle und administrative, die militärische und politische Gewalt, in deren jeder eigentlich jene abstrakten Momente vorkommen. - Der oberste betätigende Mittelpunkt aller ist die Regierung.

１９７ 

　国家はその体制の契機をなす種々の権力(ゲワルト)をもつ。立法権、司法権、行政権は一般に権力の抽象的な契機である。～～実在的な権力は全体を構成するところの権力、すなわち裁判権と警察権、財政上と行政上の権力、軍事上と政治の権力であって、それらの各々の中にはじめていま云う抽象的な契機が現われるのである。～～しかし、それらのすべての権力行使の最高の中枢は政府(Regierung)である。 

§ 198

Die verschiedenen Stände eines Staates sind überhaupt konkrete Unterschiede, nach welchen sich die Individuen in Klassen teilen, die vornehmlich auf der Ungleichheit des Reichtums, der Erziehung und Bildung, so wie diese zum Teil wieder auf der Ungleichheit der Geburt ruhen, wodurch die Individuen zu einer Art der Tätigkeit für den Staat mehr Brauchbarkeit erhalten als zu einer anderen.

１９８ 

　国家の各種の身分(Stände) は一般に具体的な区別であって、それに基いて個人は階級(Klase)に分けられる。階級は主として富、関係、教養の不平等に基く。しかし、これらの不平等はまた一面では出生の不平等に基く。しかも、この出生の不平等によって個人の国家に対する活動に差別が生じ、或る者は他のものよりもより多く有用だという、有用性の差別が生ずる。 

§ 199

Die Verfassung setzt die Trennung und Beziehung der verschiedenen Staatsgewalten zueinander und den Wirkungskreis einer jeden fest, vornehmlich die Rechte der Individuen im Verhältnis zu dem Staat und den Anteil der Mitwirkung derselben, den sie nicht bloß in der Wahl der Regierung, sondern auch, insofern sie Bürger überhaupt sind, haben sollen.

１９９ 

　憲法 (Verfassung)は諸種の国家権力の分立と関係、及び各々の権力の効力範囲を確定する。特に国家に対する関係から見た個人の諸々の権利と個人が政府の選挙に当って、のみならず一般に市民であるかぎり持つはずの個人の参与の範囲を決定する。 

§ 200

Sitten, Gesetze und Verfassung machen das organisierte innere Leben eines Volksgeistes aus. Das Prinzip oder die Art und Bestimmung seines Wesens ist darin ausgedrückt. außerdem hat er ein äußerliches Verhältnis und äußerliche Schicksale.

２００ 

　慣習、法律、憲法は民族精神の有機的な内的生命を構成する。民族精神というものの原理または様式と規定［本質、概念］がその中に現われている。その外に民族精神は外的な関係と外的な運動をもつ。 

§ 201

Diese sozusagen historische Geschichte betrachtet die Existenz eines Volksgeistes, die Entwicklung seines Prinzips in seiner Verfassung und Gesetzen und in seinen Schicksalen auf eine äußerliche Weise nach der Wahrnehmung der Begebenheiten und den unmittelbaren Ursachen, wie sie in zufälligen Umständen und individuellen Charakteren zu liegen scheinen.

２０１ 

　云わば記述的歴史(historische Geschichte)は、この民族精神の存在形態、すなわち憲法や法律の中に、その数々の運命の中に現われた民族精神の原理の発展を考察するものである。しかし、それも結局は外面的な仕方で見るのであって、諸々の事件の知覚に現われた形態から、また諸々の偶然的状態や個人の性格の中に出ているようにみえる直接的な原因の面から見るのである*。 

*

§ 202

Die philosophische Geschichte faßt nicht nur das Prinzip eines Volkes aus seinen Einrichtungen und Schicksalen auf und entwickelt die Begebenheiten aus dem ersten, sondern betrachtet hauptsächlich den allgemeinen Weltgeist, wie er in einem inneren Zusammenhange durch die Geschichte der getrennt erscheinenden Nationen und ihre Schicksale die verschiedenen Stufen seiner Bildung durchlaufen hat. Sie stellt den allgemeinen Geist als Substanz erscheinend in seinen Akzidenzen dar, so daß diese seine Gestalt oder Äußerlichkeit nicht seinem Wesen gleichmäßig gebildet ist. Seine höhere Darstellung ist seine Gestaltung in einfacher geistiger Form.

(Es zählen nicht alle Völker in der Weltgeschichte. Jedes hat  nach seinem Prinzip seinen Punkt, Moment. Dann tritt es, wie es scheint, für immer ab. Nicht zufällig kommt seine Reihe.)

２０２ 

　哲学的歴史(philosophische Geschichte)は、民族の原理をその制度や運命から把提すると共に、また諸々の事件をその根底の原理の展開の面から見るのみでなく、その中心問題は普遍的世界精神 (algemeiner Weltgeist) の考察にある。 すなわち、普遍的世界精神が如何に内的関連をもって各別々に現われる諸国民の歴史とそれら国民の運命を通じてその文化の諸種の段階を継て来たかを考察するのである。つまり、哲学的歴史はその諸々の偶有性の中に現われるところの実体としての普遍的精神を叙述する。と云うのは、普遍的世界精神の形体または外面性の形成はその本質に一致するものではないからである。従って普遍的世界精神の高度の叙述は、単純な精神的形態の面でのその形成である*。 

(あらゆる民族が世界史の中に数えられるのではない。各々の民族は その 原理上、その［役割を演ずる］点と瞬間［時期］とをもつ。しかし、やがてそれは永久に退場するように見える。その交代(ライエ)の来るのは偶然ではない。) 

*

参考：

ヘーゲル歴史哲学

https://nam-students.blogspot.com/2019/02/backup-philosophy-of-history-georg.html

 

Dritter Abschnitt - Der Geist in seiner reinen Darstellung

I. Die Kunst

§ 203

Die Kunst stellt den Geist in Individualität und zugleich gereinigt vom zufälligen Dasein und dessen Veränderungen und von äußeren Bedingungen dar, und zwar objektiv für die Anschauung und Vorstellung. Das Schöne an und für sich ist Gegenstand der Kunst, nicht die Nachahmung der Natur, die selbst eine nur zeitliche und unfreie Nachahmung der Idee ist. Die Ästhetik betrachtet die näheren Formen dieser schönen Darstellung.

(Kunst hängt davon ab, welches substantielle Bewußtsein der Geist ist. Wir studieren die griechischen Werke, sind darum keine Griechen. Die Vorstellung tut's nicht, sondern das innere produktive Leben, - daß wir das selbst sind. Die Volksphantasie ist nicht Aberglaube an etwas, sondern der eigene Geist; das sogenannte Wunderbare ist eine läppische Maschinerie; Mißgriff Klopstocks mit seinen Engeln, nordischen Göttern. Die lebendige Mythologie eines Volkes macht daher den Grund und Gehalt seiner Kunst aus.)

第三節　精神の純粋な形態 

(I)芸術 

２０３ 

　芸術 (Kunst)は精神を個性の面から叙述するものであるが、同時に偶然的な定在 やその変化やいろいろの外的条件から純化して表現する。しかも、直観と表象の対象という形で精神を叙述する。美そのものが芸術の対象であるが、それは自然の模倣ではない。自然そに時間的な、不自由な模倣にすぎない。美学(Aethetik)はこの美的叙述のいろいろの形式の詳細な考察である。 

　(芸術［の問題、その本質］は結局、精神がどういう実体的意識であるかということに帰着する。我々はギリシャ の作品を研究しはするが、それだからと云って我々がギリシャ人であるというわけではない。我々が自身真実にそれ［すなわち実体的意識］であるのは、表象によってではなくて、生産的生命によってである*。民族の想像 (Volksphantasie) は何かについての迷信ではなく、［それ自身］その固有の精神である。謂ゆる奇蹟の類は馬鹿らしい作り話(マシーネリー)にすぎない。クロプシュトック(Klopstock)の天使達、北方の神々についての失敗［の原因がここにある。］それ故に、民族の生きた神話はその民族の芸術の根拠であり、実質をなすものである**。) 

* 

** 

§ 204

Es sind zwei Hauptformen oder Stile der Kunst zu unterscheiden, der antike und moderne. Der Charakter der ersten ist plastisch, objektiv, der der anderen romantisch, subjektiv. Der antike stellt die Individualität zugleich als allgemeinen, wesentlichen Charakter dar, ohne daß er darum zur Abstraktion  und Allegorie wird, sondern lebendige Totalität bleibt. In der objektiven Klarheit und Haltung löscht er das Zufällige und Willkürliche des Subjektiven aus.

２０４ 

　芸術ではその二大形式、または二つの様式 (Styl)が区別されねばならない。古代様式 (der antike) と近代様式 (der moderne)がこれである。前者の性格は彫刻的(plastisch)、客観的であり、後者の性格は口マン的(romantisch)、主観的である。古代様式では個性が同時に一般的で、本質的な性格として描写されるが、それかといって抽象になったり、寓意(Allezorie) に堕せず、生き生きとした全体が表現されている。古代様式の客観的明瞭性と客観的態度(ハルトゥンク)は、主観性のもつ偶然的な面や気まぐれな点を払拭している*。 

* 

§ 205

Die Künste unterscheiden sich nach Gattungen durch das Element, worin sie das Schöne darstellen und wodurch auch der Gegenstand und Geist dieser Darstellung näher bestimmt wird. Für die äußere Anschauung gibt die Malerei eine farbige Gestaltung auf einer Fläche, die Bildhauerkunst eine farblose Gestaltung in körperlicher Form. Für die innere Anschauung stellt die Musik in vorstellungslosen Tönen, die Poesie durch die Sprache dar.

(Redekunst, Baukunst, Gartenkunst usf. sind nicht reine schöne Künste, weil ihnen noch ein anderer Zweck zugrunde liegt als die Darstellung des Schönen.)

２０５ 

　芸術はその要素 (Element)によって類に属別される。要素というのは、芸術が美を叙述するための基盤 (Worin)であり、またこの叙述の対象と精神とを細かく表現する ための手段(Wodurch)でもあるところのものである。外的直観の芸術としては、絵画(Malerei)は平面の上に色彩によって形の描写をなすものであり、彫刻 (Bildhauterkunst) ［Skulptur］ が物体の形態でもって色彩のない描写をするものである。内的直観の芸術としては、音楽 (Musik)は表象のない音による叙述であり、詩(Poesie)は言語による叙述である*。 

　(弁論術、建築術、庭園術などは純粋な芸術ではない。なぜなら、それらでは美の叙述よりももっと他の目的が基礎となっているからである。) 

* 

§ 206

Die Hauptgattungen der Poesie sind die epische, lyrische und dramatische. Die erstere stellt einen Gegenstand als eine äußerliche Begebenheit dar, die zweite eine einzelne Empfindung oder die subjektive, im Gemüt vorgehende Bewegung, die dritte die eigentliche Handlung als Wirkung des Willens.

２０６ 

　詩の類別としては、叙事詩(die episeche)、叙情詩(die Iyrische)、劇詩(die dramatische)がある。第一の詩の叙述の対象は外的事件である。第二のそれは個別的な感覚または心情の中に起る主観的な運動である。第三のそれは意志の作用として本来の行為を描写する*。 

* 

II. Die Religion

§ 207

Die Religion gibt die Darstellung des absoluten Geistes nicht bloß für Anschauung und Vorstellung, sondern auch für den Gedanken und die Erkenntnis. Ihre Hauptbestimmung ist, das Individuum zu dem Gedanken Gottes zu erheben, seine Einigkeit mit ihm hervorzubringen und es derselben zu vergewissern.

(Die Religion ist die Wahrheit, wie sie für alle Menschen ist. Das Wesen der wahrhaften Religion ist die Liebe. Sie ist  wesentlich Gesinnung als Erkenntnis der Wahrheit des menschlichen Willens. Die religiöse Liebe ist nicht nur die natürliche Anhängigkeit oder nur moralisches Wohlwollen, nicht eine unbestimmt allgemeine schwachsinnige Empfindung, sondern ［sie］ bewährt sich im Einzelnen mit absoluter Aufopferung. "Liebet euch untereinander, wie ich Euch geliebt habe."  - Die religiöse Liebe ist die unendliche Macht über alles Endliche des Geistes, über Schlechtes, Böses, Verbrechen, auch positive Gesetze usf. Christus ließ seine Jünger am Sabbat Ähren ausraufen und heilte eine kranke Hand. Die göttliche Liebe vergibt die Sünde, macht für den Geist Geschehenes ungeschehen. Der Maria Magdalena wird viel vergeben, weil sie viel geliebt hat. Die Liebe ist selbst über die Rücksichten der Moral hinaus: Maria salbt Christus, statt es den Armen zu geben, und Christus billigt dies. - Das substantielle Verhältnis des Menschen zu Gott ist die Vergebung der Sünden. Der Grund der Liebe ist das Bewußtsein von Gott und seinem Wesen als der Liebe und sie daher zugleich die höchste Demut. Ich soll mir nicht die Objektivität in der Liebe sein, sondern Gott, aber in seinem Erkennen soll ich mich selbst vergessen. - Die Vergebung der Sünde ist nicht ein Zeitliches, keine Folge äußerlicher Strafe, sondern eine ewige, innere in Geist und Gemüt. Das Vernichten seiner Nichtigkeit ist die Hoheit der Liebe. - Das substantielle Verhältnis des Menschen zu Gott scheint in seiner Wahrheit ein Jenseits zu sein, aber die Liebe Gottes zum Menschen und des Menschen zu Gott hebt die Trennung des Diesseits von dem als einem Jenseits Vorgestellten auf und ist das ewige Leben.

(II)宗教 

２０７ 

　宗教は絶対精神の叙述であるが、それを直観と表象に対してだけでなく、思想と認識に対しても与える。宗教の根本的な任務は個人を神の思想に高めること、個人の神との保証を作り出すこと、また個人にその融合の余地を与える点にある。 

　(宗教は全人類に対する真理である。現実の宗教の本質は愛である。愛は本質的に人間の意志の真理であるものを認識するところの心情である。宗教的な愛は自然的な愛着ではない。また単に道徳的好意でもない。また無闇にひとのよい、頓馬な感覚でもない。ただ絶対的な犠牲を伴う個人によってその生きた手本が示される。「わが汝らを愛せしごとく互に相愛せよ」(ヨハネ伝一五、一二)。～～宗教的な愛は精神のあらゆる有限的なものを超越したところの、すなわち不良とか、悪とか、犯罪とか、或いはまた現行の法律などを超越した無限の力である。キリストは弟子達に安息日に麦の穂をつむことを許し、また病む手を癒やした。神的な愛は罪を許し、［人間の精神にとっては起ってしまったこと (有限の人間の犯してしまったことを起かなかっかものとする ［起らなかった、清浄の昔に返す］。マグダラのマリアは愛することが大きかった故に多くの罪が許された ［ル力伝、四、四七］。愛はそれ自身いろいろの遺処の思惑を超越する。マリアは香油を貧しい者に与える代りにキリストに抹(ぬ)ったが、キリストはこれを認めた。～～人間の神に対する実体的［根本的］な関係は罪の許し［前から罪を許されること］である。愛の根拠は神の意識であり、神の本質が愛であることの意識である。それ故に、愛は同時に最上の認識である。私が私の愛の対象であるべきでなく、神がそれでなければならない。と云うよりも、神を認識するとき、私は私自身 ［「私の」ということ］を忘れなければならない。～～罪の許しは時間的なものでなく、決して外的な刑罰の結果ではない。精神と心情の中における永遠の許しであり、内的な許しである。自分の空しさを否定すること、それが愛の崇高(ホーハイト)ある。〜〜人間の神に対する実体的関係は本当は彼岸にあるもののように想われる。しかし、人間に対する神の愛と神に対する人間の愛は、彼岸として表象されるものと此岸との分離を止揚するものであり、従ってその愛は永遠の生命である。

Diese Identität wird angeschaut in Christus. Als Menschensohn ist er Gottessohn. Für den Gottmenschen ist kein Jenseits. Nicht als dieser einzelne, sondern als allgemeiner, als der wahrhafte Mensch gilt er. Die äußerliche Seite seiner Geschichte muss von der religiösen unterschieden werden. Er  ist durch die Wirklichkeit, Niedrigkeit, Schmählichkeit hindurchgegangen, gestorben. Sein Schmerz war die Tiefe der Einheit der göttlichen und menschlichen Natur im Leben und Leiden. Die seligen Götter der Heiden wurden als in einem Jenseits vorgestellt; durch Christus ist die gemeine Wirklichkeit, diese Niedrigkeit, die nicht verächtlich ist, selbst geheiligt. Seine Auferstehung und Himmelfahrt sind nur für den Glauben: Stephanus sah ihn im Gesicht zur Rechten Gottes. Gottes ewiges Leben ist dies, die Rückkehr in sich. Zweifel aus Umständen, aus Einzelheiten aufzubringen, ob dies eine äußerliche Wirklichkeit, ist läppisch, erbärmlich. Es kommt dem Glauben auf das sinnliche Geschehen gar nicht an, sondern auf das, was ewig geschieht. Geschichte Gottes.

Die Versöhnung Gottes mit dem Menschen als an und für sich geschehen, nicht als ein Zufall, als eine Willkür Gottes, wird in der Kirche gewußt. Dies zu wissen, ist der heilige Geist der Gemeinde. - Das Reich Gottes ist zunächst die unsichtbare Kirche, die alle Zonen und verschiedene Religionen umfaßt; dann die äußerliche Kirche. -

• In der katholischen Kirche ist die Gemeinde in sich getrennt als Priester und Laien. Jene sind die Bevollmächtigten und üben Gewalt aus. Die Versöhnung mit Gott wird zum Teil äußerlich gemacht; überhaupt herrscht bei den Katholiken eine ungeistigere Wirklichkeit der Religion.

Bei den Protestanten sind die Priester nur Lehrer. Alle sind in der Gemeinde vor Gott als dem gegenwärtigen Geist der Gemeinde gleich. Die Werke als solche sind kraftlos. Auf den Glauben, auf die Gesinnung kommt es an. Das Böse wird als ein an und für sich Nichtiges gewußt. Dieser Schmerz muss den Menschen durchdringen. Er muss die Gnade Gottes, sich mit ihm trotz des Bösen, wenn er es aufgibt und aus ihm sich zurücknimmt, zu vereinen, frei ergreifen. Nur im Gemüt kommt es zur wirklichen Gemeinschaft mit Gott. In ihm verklärt sich auch die sinnliche Form der Sakramente.)

　ところで、この同一性はキリストの中で目のあたり見られる。キリストは人の子であって、また神の子である。神人にとっては彼岸はない。彼は個人としての人ではなく、普通的な人、真実の人間と見られる。彼の歴史の外的な面は宗教的な面から区別されねばならない。彼は現実の中に生き、俗悪の中を通り、侮辱を浴びて死んだ。彼の苦痛は生命と悩みの中における神性と人間性との統一の深みであった。異教徒の福の神は多数で、それ(シュメルツ)も彼岸にあるものと表象［観念］された。キリストによって世俗の現実、と云うよりもこの俗悪が卑しむべきものでないとされ、神聖なものとさえせられた。キリリストの復活と昇天はただ信仰に対してのみある。すなわち、ステファヌス(Stephanus)は神の右側にキリストの幻影を見たと云われる。神の永遠の生命とは、すなわちこのように自分に返ることである。いろいろの事情から疑いを差しはさみ、何かと個々の点で疑いを起して、このようなことが、果して現実にあったかどうかをセンサクすることは愚かなことであり、あわれむべきことである。信仰にとっては、感性的な出来事は全く問題ではなく、永遠に起るところのもの (das, was ewig gezchicht)、神の出来事 (Gerchichte Gottes)が大切である。 

　偶然としてではなく、神の気まぐれでなく、即且対自的に［必然的に、絶対的に］起るものとしての、神と人間との宥和(Versōhnung)は教会の中で意識される。このことを知るのが、教団の神聖な精神である。〜〜神の国はまず最初はあらゆる地域と諸種の宗教［宗派］を包括するところの「見えない教会」(die unsichtbare Kirche) であるが、 それは次に外的な教育 (die ausserliche Kirche)となる。〜〜カトリック教団では教団目身の中で僧と俗とが分れている。前者は全権を委ねられた人たちであって、権力を行使する。だから、神との宥和は或る点までは外面的に行われる。一般的にカトリック教徒にあっては宗教が非精神的な現実［世俗］の形で行われている。〜〜プロテスタント教徒においては僧侶は単に教師にすぎない。神はここでは教団の現在する精神であって、従ってすべての者は教団の中ではこの神の前に平等である。行 (Werke)そのものは無力である。信仰が、心情が大切である。すると、悪が即且対自に［絶対的に］空しいものであることが意識される。つまり、この苦痛が人間を浸透しなければならない。そこで人間は、この悪にもかかわらず、悪を捨て、悪から自分を取り返して神と合一し得るという神の恩寵を自由に［自分自身で、絶対的に］つかまねばならない。心情の中でのみ神との現実的な 共同［合致、交わり］が生れる。すなわち、心情の中で聖餐(サクラメント)の感性的な形式もまた聖化されるのである。 

* 

III. Die Wissenschaft

§ 208

Die Wissenschaft ist die begreifende Erkenntnis des absoluten Geistes. Indem er in Begriffsform aufgefaßt wird, ist alles Fremdsein im Wissen aufgehoben, und dies hat die vollkommene Gleichheit mit sich selbst erlangt. Es ist der Begriff, der sich selbst zum Inhalt hat und sich begreift.

(III)学［哲学］ 

２０８ 

　学［哲学］(die Wissenschaft)は絶対精神の概念的認識である。絶対精神が概念の形式で把捉されるとき、すべての他在は知識の中に止揚され、知識は自分自身との完全な同等性に達する。こうして知識は自分自身の内容をもち、自分を概念するところの概念なのである。 

* 

岩波文庫　哲学入門 

ヘーゲル著 　武市健人訳 

岩波書店 

ケーニヒスペルク、一八四〇年四月四日 

カール,ローゼンクランツ 

哲学入門 

1952年8月5日 第1刷発行 

1990年4月5日 第39刷発行 

定価620円 

(本体602円) 

訳者 武市健人

追記：
細川亮一『ヘーゲル現象学の理念』の説 だと、『精神現象学』は『哲学史講義』と並行対応関係にあり、
『哲学史講義』は『精神現象学』と一緒に読むといいそうだ。
以下、『精神現象学』内の章：対応する哲学者（及びキーワード）。

意識
　感覚：パルメニデス（本来の哲学が始まる）からヘラクレイトス（一般的な過程）
　知覚：レウキッポス（自立存在の定義、正なるものを負なるものの空虚として）
　悟性：プラトン「ソピステス（ソフィスト）」（抽象的な統一）

自己意識
　生命：　アリストテレス「霊魂論」（一般的）
　主と僕：アリストテレス「政治学」（服従）
　　　　　ストア派（自然な素朴さ）
　　　　　懐疑派（内容の否定）
　不幸な意識：
　　　　　新プラトン主義（統一、三位一体）

＿＿＿

C. Die Sittlichkeit  

§ 513

…

a. Die Familie 

§ 518

…

…b. Die bürgerliche Gesellschaft 

§ 523

…

α. Das System der Bedürfnisse 

§ 524 

1. Die Besonderheit der Personen begreift zunächst ihre Bedürfnisse in sich. Die Möglichkeit der Befriedigung derselben ist hier in den gesellschaftlichen Zusammenhang gelegt, welcher das allgemeine Vermögen ist, aus dem alle ihre Befriedigung erlangen. Die unmittelbare Besitzergreifung (§ 488) von äußeren Gegenständen als Mitteln hierzu findet in dem Zustande, worin dieser Standpunkt der Vermittlung realisiert ist, nicht mehr oder kaum statt; die Gegenstände sind Eigentum. Deren Erwerb ist einerseits durch den Willen der Besitzer, der als besonderer die Befriedigung der mannigfaltig bestimmten Bedürfnisse zum Zwecke hat, bedingt und vermittelt, sowie andererseits durch die immer sich erneuernde Hervorbringung austauschbarer Mittel durch eigene Arbeit; diese Vermittlung der Befriedigung durch die Arbeit aller macht das allgemeine Vermögen aus.

C人倫

五一三

…

a家族

五一八

…

b市民社会

五二三

…

(α)欲求の体系  

五二四

　(1)諸々の人格の特殊性は初めはその欲求を自己の中に含んでいる。この欲求を満足させる可能性はこの場合社会的関連の中に置かれている。そしてこの関連は、諸々の人格のすべての満足を得させてくれる普遍的な富である。その上、欲求満足の手段としての外的対象をそのまま占取すること（第四四八節）は、媒介の立場を実現させる状態の中にはもはや行なわれない、もしくはほとんど行なわれない。この場合対象となるのは所有である。占有者の意志は特殊な意志であるから、多様に規定された欲求の満足を目的とするものであるが、対象の取得は、一方ではこの占有者の意志によって制約され媒介されている。また他方では交換できる手段を常に更新しながら生み出すことを通じて、自己の労働によって制約され媒介されている。このように、万人の労働によって満足を媒介することが普遍的富を形づくっているのである。

＿＿＿

C. Psychologie. Der Geist 

§ 440

…

a. Der theoretische Geist 

§ 445

…

α. Anschauung

…

§ 448 

2. In der Diremtion dieses unmittelbaren Findens ist das eine Moment die abstrakte identische Richtung des Geistes im Gefühle wie in allen anderen seiner weiteren Bestimmungen, die Aufmerksamkeit, ohne welche nichts für ihn ist; die tätige Erinnerung, das Moment des Seinigen, aber als die noch formelle Selbstbestimmung der Intelligenz. Das andere Moment ist, daß sie gegen diese ihre Innerlichkeit die Gefühlsbestimmtheit als ein Seiendes, aber als ein Negatives, als das abstrakte Anderssein seiner selbst setzt. Die Intelligenz bestimmt hiermit den Inhalt der Empfindung als außer sich Seiendes, wirft ihn in Raum und Zeit hinaus, welches die Formen sind, worin sie anschauend ist. Nach dem Bewußtsein ist der Stoff nur Gegenstand desselben, relatives Anderes; von dem Geiste aber erhält er die vernünftige Bestimmung, das Andere seiner selbst zu sein (vgl. § 247, 254)

…

C心理学

精神

四四〇

…

a理論的精神

四四五

…

(α)直観

…

四四八  　

　われわれが直接見出すものを分割するとき、その一方の契機は、感情やその他精神のいっそう進んだ規定やにおける精神の抽象的で同一の方向である。これが注意であって、この注意がなければ精神には何も存在しない。つまりそれは現にはたらいている想起（内化）であり、精神自身のものという契機である。しかしこれは知性のまだ形式的な自己規定であるに止まる＊。他方の契機は、知性が自己のそういう内面性に対して感情の規定態を存在するものとして、だがしかし否定的なものとして、自己自身の抽象的他在として措定することである。知性はこのため感覚の内容を自己の外に存在するものとして規定し、その内容を空間および時間の中に投げ出す。空間と時間は形式であり、そこでは知性は直観を働かせている。素材は意識から言えばその対象であり、相対的な他者であるにすぎない。がこの素材は、精神から言えば、自己自身〔精神〕の他者であるという理性的な規定をもち続けている（第二四七、二五四節）。 

＊　第二版はここで終わっている。

　　　　　

5

12 verständige

15存在論

24独立

37

42

47

48という

53

63

84

85次 

87

92

94自身　つり、つまり？

95対象　弁証法

110

111

113

114物体

127

129有機体、関係他

130思惟

142 

151

155

159

177行

178行

180法則 

202制度、数え

203神、叙述 

204様式