2021年8月2日月曜日

マリモ - Wikipedia

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マリモ

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マリモ(毬藻、学名Aegagropila linnaei)は、球状集合体を作ることで知られている淡水性の緑藻の一種である。多くのマリモは岩などに付着して生活しているが、日本阿寒湖北海道)に生育するマリモは、美しい球状体を作るため特別天然記念物に指定されている[1]

マリモ
Marimo lake akann.jpg
阿寒湖のマリモ(水槽展示)
分類
学名
Aegagropila linnaei
Kützing, 1843
シノニム

Cladophora aegagropila (Linnaeus) Rabenhorst,
C. sauteri (Kutzing) Kutzing

和名
マリモ(毬藻)
英名
Marimo
(Cladophora ball, Lake ball, Moss Ball)

概要

マリモは球状の集合体を形成するが、球状体一つがマリモの一個体単位というわけではなく、この球状体を構成する細い繊維(糸状体と呼ぶ)がマリモの個体としての単位である。よく目にする球状の「マリモ」は、生物学的には「マリモの集合体」である。多くの生息地では、マリモは糸状体の形態で暮らし、球状の集合体を作らない。見た目は柔らかそうであるが実際には硬い藻であり、手で触れるとチクチクとした感触がある。

日本では、北海道先住民族アイヌはかつてよりマリモの存在は知っていたが、食料になるわけでもなく、にたくさん生息しており、かつては湖面に漂ったり、時化のあと湖岸に大量に打ち上げられたりして、珍しいものでもなんでもなかった。アイヌ語で「トラサンペ(湖の化け物)」と呼んだりもした。

学術的には、1897年札幌農学校(現北海道大学)の川上瀧彌が阿寒湖の尻駒別湾で"発見"し、その形から「マリモ(毬藻)」という和名をつけた。

なお、富士五湖ににもマリモ(フジマリモ)が生息しているが、これは1956年に発見されたものである。その他、東北地方北陸地方琵琶湖などの本州各地で生息が確認されているが、日本で学術的にマリモの存在が確認されたのは、阿寒湖のマリモが最も早く、最も有名である。

なおカール・フォン・リンネスウェーデンダンネモーラ湖からマリモを採取して学名をつけたのは1753年である。

分布

日本では、北海道および本州の東北地方から近畿地方の湖沼に点在して分布し、日本国外では、ヨーロッパ北部、ロシア北アメリカ等に分布する。

日本国内

日本ではマリモの生育が確認されている湖沼は以下の通りである。

このうちマリモが大きな球状の集合体を形成するのは阿寒湖と小川原湖だけである。また、富山県で発見されたタテヤママリモは、かつてはマリモと同一種とされ、誰かの放流説などが疑われていたが、DNA分析の結果、違う種であることが確認された[2]。全国各地に散発的に分布している。

阿寒湖のマリモは最大30cm程度[1]と大きくビロード状の球状形態や希少性から1952年に国の特別天然記念物に指定された。近年各地で個体数が減少しており、として環境省レッドリスト絶滅危惧種で掲載されている。阿寒湖のマリモは直径30cm程度まで生長するが、太陽光の届かない中心部は糸状体が枯れて空洞になっているため、大きさを支えきれずに壊れてしまう。だがその後は小さいマリモとなり、再び成長を続けていく。国立遺伝学研究所は、阿寒湖のマリモのうち20cm程度以上より大きく育つものは住み着いているシアノバクテリアが分泌する粘着物質が支えになっているとの調査結果を公表している[1]。阿寒湖のマリモが天然記念物に指定された3月29日は「マリモの日」とされている。

また、かつて日本領だった南樺太頭場(トウバ)湖にはカラフトマリモとされていた個体群が生息しており、天然記念物に指定されていた。

日本国外

日本国外では、アイスランドミーヴァトン湖エストニアオイツ湖などで球状の集合体が確認され、ヨーロッパ北部の諸国やロシア北アメリカなど北半球に広く分布している種であることが近年分かってきた。2011年12月、釧路市教育委員会マリモ研究室の研究によって、北半球のマリモの全てが日本の湖のマリモを起源とする可能性が高いことが判明した。渡り鳥などが食べて、他の地域へと運んだ可能性が高いという。阿寒湖はマリモが現存する国内の湖の中で形成時期が最も古いが、長い歴史の中で消滅した湖もあり、国内のどこの湖が起源かを特定するのは困難とのことである。水質汚染などから2010年代に入り世界最大の生息地ミーヴァトン湖では球状マリモが壊滅的な被害を受け、2014年時点、世界で阿寒湖北側チュウルイ湾が唯一の球状マリモの群生地となっている[3][4]

生態

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出典検索?"マリモ" – ニュース · 書籍 · スカラー · CiNii · J-STAGE · NDL · dlib.jp · ジャパンサーチ · TWL
2020年2月

マリモは基本的に淡水で生きるが、海水と淡水の混ざった汽水域でも生育が確認されている。

淡水産藻類としては耐冷性と耐暗性も非常に強く、淡水と共に凍結した場合、-20°Cで一日程度の凍結であれば耐えることができ[5]、阿寒湖は真冬になると完全に結氷し、60cmの厚さにもなる氷の下にマリモは閉じ込められるので、冷蔵庫で凍結させず数か月保管しても死滅はしない。逆に暑さに非常に弱く、35℃が限界である。そのため、販売されているマリモを購入した場合、夏場の対策として冷蔵庫での保管が良いと考えられる。

マリモは一般的に水に浮かないものといわれているが、水に浮かんだ個体が阿寒湖で発見された(2005年)。マリモは光合成により気泡(酸素)を発生するため、販売されるマリモでも光合成が活発なときにまれに浮くときがある。

水質の悪化に弱いことが生息数の減少を引き起こしているとされている。特にカチオン界面活性剤に弱い[6]。乾燥にも弱く強風や遊覧船の波浪により打ち上げられると容易に枯死する。泥に埋もれたり、シオグサに覆われたりするなどして光合成が阻害されても枯死するが、波浪による回転によってそれらを表面から落としている。この回転運動によって他のマリモの下に隠されたマリモが表に出ることがあり、これによって群生地全体の各個体が光合成を行えている。

阿寒湖のマリモは波浪により揺すられ球状になる。30cmほどのサイズまで生長するとより波の影響を受けやすくなり、嵐などによる強風によって湖岸に打ち上げられる。従来、打ち上げられることはマリモの生長にマイナスだと考えられていたが、打ち上げられたマリモはバラバラになり、その破片をもとにまた球状マリモへと生長することが分かった。打ち上げられること自体はマリモにとって数を増やすために必要なことであった。

分類

記載当初マリモ属 Aegagropilaに分類されたが、その後シオグサ属Cladophoraに分類される。1990年代以降、分子生物学的なアプローチによりシオグサ属とは異なることが分かり、再びマリモ属に戻った。

チシママリモ、フトヒメマリモ、カラフトマリモ、トロマリモ、フジマリモ等の近縁種があるとされていたが、これも分子生物学的な手法を用い解析した結果、全てマリモと同じ種であることが確認された。近縁種に富山県で発見され、北海道から九州まで全国で確認されているタテヤママリモという種がいる。

販売

観光地などで「養殖マリモ」の名で販売されているものは、地元漁協が釧路湿原国立公園内のシラルトロ湖で採取したマリモ糸状体を人工的に丸めただけのものであり、実際には「養殖」し増やしたものではない。材料を採取しているシラルトロ湖ではこのマリモの販売のため、マリモが減少し、絶滅の危機に瀕している。販売されているマリモは天然のマリモに比べて形が壊れやすいといわれている。一方で、札幌で土産物産や養殖マリモの製造・販売を行っているマルシャンは「マリモの枯渇を予測し、10数年に渡る研究の結果養殖に成功した」とし、この養殖されたマリモは商品化できるようになったと企業サイト内で述べている[7]

富士五湖周辺で「富士まりも」などの商品名で販売されている養殖マリモも、実際には上記のシラルトロ湖のマリモを丸めたものであり、富士五湖に生息する「フジマリモ」ではない。「天然まりも」と称している商品は当然阿寒湖のマリモではなく、ロシアなど海外から輸入されたものである。

保護上の位置づけ

マリモと歌謡曲

阿寒湖のマリモを題材にした歌謡曲『毬藻の歌』(作詞:いわせひろし、作曲:八洲秀章)を安藤まり子が1953年に発表し、大ヒットした。これは元々、コロムビアの全国歌謡コンクールの課題曲歌詞募集の入選作であった。この歌は阿寒湖のマリモを存在を全国に知らしめるのに貢献した。阿寒湖畔(ボッケ遊歩道)に歌碑が建てられている。その後、芹洋子九条万里子水森かおりらがカバーして発表している。その際、題名を漢字の「毬藻」をカタカナに改め、「マリモの歌」としている。

脚注

  1. ^ a b c d 「マリモの大型化 細菌が一役/遺伝研など解析 阿寒湖、保全に応用も」日本経済新聞』朝刊2021年7月11日サイエンス面(2021年7月23日閲覧)
  2. 羽生田岳昭:マリモの分子系統学的研究:その起源、分類、生物地理 金沢大学博士学位論文要旨 2002年9月 pp.235-239
  3. 「マリモは日本が起源、渡り鳥が運搬か?釧路の研究員ら、遺伝子調査で確認」日本経済新聞ニュースサイト(2012年1月7日掲載)の共同通信記事/2021年7月23日閲覧
  4. 「マリモ:日本起源で世界に分布? 釧路市教委が解析、渡り鳥が介在か」[リンク切れ]『毎日新聞』2012年1月9日
  5. 照本勲(1959):マリモの凍害と乾燥害 北海道大学低温科学研究所『低温科學. 生物篇』第17輯 1959年10月24日 0439-3546 AN00149635
  6. 照本勲(1964):マリモ節間細胞の耐凍性 II 北海道大学低温科学研究所『低温科學. 生物篇』第22輯 1964年10月20日 AN00149635
  7. 株式会社マルシャンまりもについて

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、マリモに関連するカテゴリがあります。

外部リンク



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