2020年8月18日火曜日

利用と搾取の経済倫理 2013/4/5 山口拓美

利用と搾取の経済倫理 (神奈川大学経済貿易研究叢書) (日本語) 単行本 – 2013/4/5

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  1. 第3章 エクスプロイテーションと剰余価値率
    そのエクスプロイテーション度とは、相互に同じ単位で計量される大きさ
    ではなくなる?。」
    この一節の最後の文はあまりにも簡潔であるため、その意味するところを
    正確に読み取るのは容易ではない。とはいえ、この一節には、剰余価値率が
    労働力のエクスプロイテーション度の表現として機能しえなくなる場合が記
    されていることは確かである。 マルクスによる剰余価値率の定式は次のよう
    なものであった。

    剰余価値 (m)
    ______=
    可変資本(v)

    剰余価値
    _____  =
    労働力の価値

    剰余労働3)
    ______
    必要労働

    先の引用文は、このような定式が成り立たないケースについて述べている
    と考えられる。すなわち、 引用文のような過度な長時間労働の場合、労働力
    の価格は労働力の価値を下回るだけでなく、労働力の価値という概念を無効
    にしてしまう。というのは、労働力の価値は労働力を再生産するために必要
    な生活諸手段の価値であるが、労働時間が度を超えて延長されると、労働者
    の健康状態が不可逆的に悪化し、生活諸手段の量をどれほど増やしたとして
    も労働力の再生産そのものが不可能となってしまうからである。だからこの
    場合、仮に労働力の価格を使用して可変資本の大きさを計算し、これを分母
    ではないから、
    剰余価値
    にして剰余価値率を計算したとしても、これは弱働力の価値
    これを剥余労働。
    一すなわち労働力のエクスプロイテーション度に変換するこ
    必要労働
    とはできないのである。つまり、 過度な長時間労働が続く場合、労働力の価
    格を用いて剰余価値率を計算したとしても、それは労働力のエクスプロイ
    テーション度の表現とはならないのである。
    『資本論」の理論展開は、価値と価格とが一致することを前提とするから、
    上のような現象は例外となる。しかし、現実の資本主義社会において、労働
    力の価格のその価値以下への低下が例外的なものではないこと、長時間労働
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