L'antinomie ne se resout pas; (アンチノミーは解消されない)1858
書評:
ベンヤミン『パサージュ論4』岩波文庫(2021全5巻)
同書内のサン=シモン、フーリエ、マルクスのように章立てされていないが、
プルードン関連の孫引き(マルクスの章内)が特筆される。
《ヘーゲルについてプルードンは言っている。「二律背反は解消されない。そこに
ヘーゲル哲学全体の基本的な欠陥がある。それを作り上げる二つの項は、相殺されて
いる。収支(バランス)は総合(ジンテーゼ)ではない。」「長い間、プルードンが経理
担当者だったことをわれわれは忘れてはならない」と、キュヴィリエ[20世紀仏の
哲学者・社会学者]は付け加えている。ほかの箇所でプルードンは、彼の哲学を決定
している思想は、「基本的な考え方で、簿記にも形而上学にも共通した考え方」で
あると述べている。アルマン・キュヴィリエ「マルクスとプルードン」(『マルクス
主義に照らして』II、パリ、一九三七年、一八〇~一八一ページ)
[a19, 4]》430頁
他にジンメル『貨幣の哲学』(主に第五章)についての批判的引用が興味深い。
第5巻に索引がつくそうだ。元になった現代文庫版より解説他細部のつくりが親切。
柄谷の『世界史の構造』以降、断片的というだけでベンヤミンを持ち上げることは
できないが刺激的ではある。例えば、
《コレラが流行したとき、人々は感染の原因を酒屋のせいにした。[U14a, 2]》81頁
ただし信用貨幣論(プルードン、ジンメル)を唯物論者は理解出来ないのではないか?
という疑念はますます深まった。
kindle原語版全一冊が安価なのでおすすめ。これだと検索が楽。
Das Passagen-Werk(German Edition) Walter Benjamin
千のプラトー
1 序──リゾーム
われわれがモデルの二元論を用いるのは、ただあらゆるモデルを斥けるような
プロセスに到達するためである。われわれは二元論を作ろうと欲したわけでは
なく、それを通過するのにすぎない。そのたびに、もろもろの二元論を解体
する頭脳的訂正装置を持たなければならない。われわれみんなが求めて
いる〈多元論〉=〈一元論〉という魔術的等式に、敵であるすべての二元論を
経由して到達すること。しかし敵といっても、これはまったく必要な敵、
われわれがたえず移動させる調度なのだ。
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