円座標系(平面における極座標系)
次元空間ユークリッド空間上に存在するそれぞれの点の位置を特定するために、点に対して付与される数の組をの座標(coordinates)と呼びます。上の点に対して座標を付与する方法は一意的ではありません。それぞれの点に対してどのようなルールのもとで座標を付与するか、そのルールに相当する概念を座標系(coordinate system)と呼びます。ここでは、平面における極座標系(polar coordinate system)について解説します。なお、以降では列ベクトルと行ベクトルを同一視した上で、主に列ベクトルを用いて議論を行います。
平面に直交座標系にもとづく座標を導入すれば直交座標平面が得られます。直交座標平面における原点の座標はですが、平面に極座標系にもとづく座標を導入する場合には、この原点を極(polar)と呼びます。極を始点とする形で右側へ伸ばした水平線を極軸(polar axis)と呼びます。これは直交座標系における軸の正の部分に相当します。
平面上に存在する点が与えられた状況を想定します(上図)。線分の長さがであり、線分と極軸のなす角がである場合、極座標系のもとでは、点の座標を、と定めます。このような座標を点の極座標(polar coordinates)と呼びます。極座標の第1成分であるを動径(radial coordinate)と呼び、第2成分であるを偏角(angular coordinate)と呼びます。
平面上の点が与えられたとき、線分の長さは非負の実数として定まるため、点の動径は1つの非負の実数として定まります。一方、線分と極軸のなす角を測る方法は2通り存在します。1つ目は、線分と極軸のなす角の大きさを反時計回りに計測する場合であり、その場合には偏角を正の実数で表記します。2つ目は、線分と極軸のなす角の大きさを時計回りに計測する場合であり、その場合には偏角を負の実数で表記します。反時計回りにだけ回転させることと、時計回りにだけ回転させることは等しいため、先のルールより、任意のについて、以下の関係が成り立ちます。
点が極と一致する場合の動径はですが、この場合には偏角は任意の値をとるものと定めます。つまり、極の極座標を、と定めるということです。
点の極座標がである場合、偏角にの整数倍を足しても点の位置は変わらないため、任意の整数について、以下の関係が成り立ちます。
これまでは点の動径が非負の値のみをとり得る状況を想定しましたが、動径が負の値もとる形に極座標系を拡張することもできます。具体的には、点の極座標がである場合、極を挟んで点のちょうど反対側の位置にある点の極座標はですが、これをと表記できるものと定めます。つまり、以下の関係を満たすものとして負の動径を定義します(下図)。
以上の定義を踏まえると、点の極座標が与えられたとき、動径の符号を逆にした上で偏角にを加えることにより得られるもまた点の極座標になります。したがって、が成り立ちます。
極座標を直交座標へ変換する
平面に直交座標を導入した場合の原点および軸と、極座標を導入した場合の極および極軸をそれぞれ同一視します。
点の直交座標がである一方で極座標がであるものとします。ただし、であるものとします(上図)。この場合、正弦および余弦の定義より、がともに成り立つため、を得ます。
点の直交座標がである一方で極座標がであるものとします。ただし、であるものとします(上図)。この場合、正弦および余弦の定義より、すなわち、が成り立つため、を得ます。
他の場合についても同様の議論が成立するため、任意のおよびについて同様の主張が成り立ちます。
命題(極座標を直交座標へ変換する)
平面上に存在する点の直交座標がであり、極座標がであるものとする。このとき、以下の関係が成り立つ。
例(極座標を直交座標へ変換する)
平面上に存在する極の極座標は、であるため、先の命題より、原点の直交座標は、です。
例(極座標を直交座標へ変換する)
平面上に存在する点の極座標が、であるものとします。先の命題より、これを直交座標に変換すると、となります。
例(極座標を直交座標へ変換する)
平面上に存在する点の極座標が、であるものとします。先の命題より、これを直交座標に変換すると、となります。
直交座標を極座標へ変換する
平面上に存在する点の直交座標がであり、極座標がである場合には、以下の関係が成り立つことが明らかになりました。すると、すなわち、が成り立つとともに、である場合には、すなわち、が成り立ちます。
命題(直交座標を極座標へ変換する)
平面上に存在する点の直交座標がであり、極座標がであるものとする。の場合には、以下の関係が成り立つ。
点の直交座標がである場合、これを極座標へ変換する際には、上の命題中のから動径を特定し、から偏角を特定することになります。ただし、先の議論から明らかになったように、極座標の動径および偏角は一意的に定まりません。そこで、動径を正の実数として表現する場合には、を得ます。他方で、正接関数は単射ではないため、を満たすの値、すなわち、は一意的に定まりません。以上の条件を満たすを特定した上で、その中から何らかの値を選ぶことになります。
例(直交座標を極座標へ変換する)
平面上に存在する点の直交座標が、であるものとします。これを極座標へ変換します。動径を正の実数として表現する場合には、となります。また、を満たすは、です。点は第1象限上に存在するため、動径として、を選びます。以上より、は点の極座標の1つであることが明らかになりました。
例(直交座標を極座標へ変換する)
平面上に存在する点の直交座標が、であるものとします。これを極座標へ変換します。動径を正の実数として表現する場合には、となります。また、を満たすは、です。点は第4象限上に存在するため、動径として、を選びます。以上より、は点の極座標の1つであることが明らかになりました。
演習問題
問題(極座標を直交座標へ変換する)
平面上に存在する点の極座標が、であるものとします。これを直交座標に変換してください。
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問題(直交座標を極座標へ変換する)
平面上に存在する点の直交座標が、であるものとします。これを極座標に変換してください。
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