2021年11月18日木曜日

コロナの初期対応を間違えた医系技官とはどういう官僚か?~上昌広氏に聞く - 佐藤章|論座 - 朝日新聞社の言論サイト②/4

コロナの初期対応を間違えた医系技官とはどういう官僚か?~上昌広氏に聞く - 佐藤章|論座 - 朝日新聞社の言論サイト

コロナの初期対応を間違えた医系技官とはどういう官僚か?~上昌広氏に聞く

コロナ対策徹底批判【第二部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー⑦

現場より管理職の医系技官

――検察官は検事を辞めた後、、弁護士の仕事ができる。検事を辞めた後の保障があるわけですね。医系技官も医師免許を持っているので診療すればいいんだけど、彼らはしない。どうしてですか。「かったるい」とか「面倒くさい」とか、考えているわけですか。

 いや、医系技官というのは現場の仕事より、管理職の仕事に憧れているんです。コンプレックスの裏返しです。

――官僚なのに、コンプレックスですか?

 東京地検特捜部の検察官はエリートです。だけど、こう言っては悪いが、医系技官は、その集団の歴史として三流というイメージが強い。だから、統制したがるし、威張りたがる。

 高級官僚なのに、東大出身とかはほとんどいません。東大だからどうと言いたいわけではありませんが、医系技官も局長や課長に昇進すると長くてあと数年です。医師免許を持っているので、腹を据えてやれるはずなのに、そこでやる仕事は大体、天下りが前提です。そのあたりは、その集団の歴史と言うか価値観ですね。自ら手を汚したがらないんです。

 初代医務技監をやった鈴木康裕さんは、国際医療福祉大学の副学長に天下りました。自分が予算をたくさんつけたところですよ。これは普通はやりません。鈴木さんは慶應の医学部出身ですが、福沢諭吉先生が最も嫌悪するタイプですよね。

 鈴木康裕氏は2017年7月から20年8月まで医系技官のトップである医務技監をつとめ、21年3月に国際医療福祉大学の副学長に天下った。

 国際医療福祉大学は17年に医学部を開設したばかりだが、その医学部の2教授に対して20年度にはそれぞれ2億2434万円と475万円の研究費が厚労省から支給されている。この厚労科研費については、総額の1割から3割が間接経費として大学本部の使用が認められている。

 国際医療福祉大学は1995年の開学以来、医系技官幹部の天下りを受け入れてきたが、この科研費支給と鈴木氏の天下りの関連について厚労省内部では「持参金付き天下り」とささやかれている。

 鈴木氏は13都府県で緊急事態宣言が発令中だった今年8月21、22の両日、同大学の理事長、高木邦格氏とともに大分県・湯布院温泉にあるゴルフ場でゴルフに興じていた(『FRIDAY』9月10日号)。

 8月17日には、国際医療福祉大学の成田病院から30~40キロしか離れていない千葉県柏市で、コロナに感染した妊婦が入院できず、自宅で出産した新生児が亡くなる事件があった。同大学はこのような感染者妊婦について、本来であれば受け入れるべき病院だった。事件後すぐに「ゴルフ三昧」をしていたことには、批判の声が強い。

――しかも、あの天下りはほとんど直接じゃないですか。普通はできないですよね。

 おかしいと思いますが、ああいうことはうまくやるんです。初代の医務技監には鈴木さんが就任したんですが、事務次官級のこのポストを作ったのは自民党内閣の塩崎恭久さんです。その塩崎さんも「失敗した」と言ってましたよ。

 医務技監は医系技官のトップですが、世界中どこでも、科学界の一流の人を登用する時には試行錯誤しているんです。アメリカでもNIH(米国立衛生研究所)のフランシス・コリンズ長官が辞職を表明しましたが、あれはバイデン大統領が大臣級で登用したエリック・ランダーという人と合わなかったのが理由だと言われています。ただ、エリック・ランダーもコリンズもノーベル賞候補ですよ。

 フランシス・コリンズは世界的な生命科学者で、人間の遺伝子の全塩基配列を解析する「ヒトゲノム計画」の責任者を務めた。科学者としての無神論者からキリスト教に帰依したことでも有名になった。

 エリック・ランダーは、バイデン米大統領が閣僚級の地位に昇格させたOSTP(米科学技術政策局)の初代局長。科学を軽視していたトランプ前大統領を批判し、バイデン大統領の科学技術顧問も務める。

 もう一つ言いたいのは、たとえば中曽根康弘元首相は政治学者の佐藤誠三郎・東大名誉教授をブレーンとしていました。ポリティカル・アポインティ(政治任用)に近かったと思います。今後、厚生労働大臣というのは、首相を目指す政治家の登竜門となっていくでしょう。中曽根さんが佐藤誠三郎さんを政治任用したように、独自のブレーンを持つことが重要だと思いますね。

 役人があげてくる人ではなくて、ちゃんとした外部のブレーンを持つことが大事です。そのほうが、大統領や首相にとってメリットがあるんです。韓国の鄭銀敬さんは現場の研究者で、韓国の政権がちゃんと任用しているんです。

拡大上昌広・医療ガバナンス研究所理事長

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