2021年11月22日月曜日

【ディランを追いかけて~ヘッケル】11/19-21NYビーコンシアター・ライヴレポート! | HIGH-HOPES(洋楽ロック)

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【ディランを追いかけて~ヘッケル】11/19-21NYビーコンシアター・ライヴレポート!

【ディランを追いかけて~ヘッケル】ボブ・ディラン:2021年11月19、20、21日ニューヨーク、ビーコン・シアター・ライヴレポートby菅野ヘッケル

ヘッケルさん、何と今ニューヨークに!!

と昨夜連絡ありまして、早速ビーコン・シアターのレポートを書いていただきました!久々の「ディランを追いかけて~ヘッケル」です!


ボブ・ディラン・ラフ&ロウディ・ウェイズ・ワールド・ワイド・ツアー2021ー2024:ニューヨーク、ビーコン・シアター:2021年11月19、20、21日

世界中で猛威を振るうコロナウィルスのパンデミックによって、あらゆる活動が停止した。ディランも2020年4月の日本ツアーがキャンセル、6-7月の夏のアメリカツアーもキャセルとなり、ファンの間では2019年12月8日のワシントンDC公演が最後のコンサートになってしまうんじゃないかと心配する噂まで流れはじめていた。

しかしボブはちがった。フランク・シナトラに代表されるアメリカン・ソングブックをカバーした3枚のアルバムに別れを告げ、2020年6月にすばらしいニューアルバム『ラフ&ロウディ・ウェイズ』を発表、80歳を迎えた2021年になると、7月にヴィープスで『シャドウ・キングダム』をストリーミング配信、いわゆるTV放映はMTVアンプラグド以来だ。9月には『スプリングタイム・イン・ニューヨーク(ブートレッグ・シリーズ第16集)』をリリース、そして10月ついに新しいツアーが発表された。 

ファンが親しみを込めて呼んでいたネヴァーエンディング・ツアーに別れを告げ、『ボブ・ディラン・ラフ&ロウディ・ウェイズ・ワールド・ワイド・ツアー2021ー2024』と正式名のついた新しいツアーは、11月2日ウィスコンシン州ミルウォーキーをスタートし、アメリカ中西部から東部へめぐり、最後日を12月2日ワシントンDCで迎える21公演と発表された。とりあえず、ぼくはニューヨークからワシントンまで10公演を見ることにした。



ビーコン・シアターは7時会場の予定だが、遅れると嫌なので早めに日本で発行されたワクチン証明書、パスポート、チケットを手に列に並ぶ。果たして日本発行の証明書でも有効なのか心配していたが、何の問題もなくあっけなく、すんなり入ることができた。

開演前にステージを見ると、じつにスッキリしている。床一面に畳のように照明装置が敷き詰められ、ケーブルなどもその中に隠されているのだろう。天井に吊るされた照明も、床に置かれた照明装置もない。もちろんマネキンも、彫像も姿を消した。今回のツアーではハーモニカも用意されていないようだ。もともと奥行きのああるステージなのに、ボブの特設ステージは奥の半分ほどにしか使っていない。ステージの左端にドラムセットが置かれ、中央に2本のマイクスタンド、やや右寄りに縦型ピアノ(今まで使っていたグランドピアノとちがって、客席から見えるのはピアノの薄汚れた木製背面だ、右端にペダルスティールという配置だ。ステージ両サイドと背後は黒いカーテンで覆われている。ステージ横のコンソールも隠れている。



8時2分、会場の明かりが落とされ、曲名は知らないがオーケストラの音楽が響き、ボブを含めたミュージシャンたちが暗闇のステージに登場し、それぞれの位置につき音出しを始める。やがて一つになってショーがスタートした。床の照明が点灯する。想像以上に明るい。ただし、スポットライトはないので、顔の表情などは今までと同じようにはっきりわからない。さらにドラムとピアノが床からの明かりを遮るので、ドラマーの顔に明かりが届くことはない。同じようにピアノを演奏しながら歌うボブの顔にも微かな明かりしか届かない。ボブ・ディランのショーなのに、ステージにいるミュージシャンで顔がはっきりわかるのは、中央に並ぶ二人のギタリストと右端に位置するドニー・ヘロンだけいう奇妙な結果だ。

 

Watching The River Flow
カントリー・ストンプ風の軽快なアレンジでオープニングにぴったりだ。ボブのヴォーカルがすばらしい。
途中でボブが単音で独特のピアノを弾く。

When You Go Your Way, I'll Go Mine
60年代を思い出させるような若々しく力強いヴォーカル。途中のブレイクではスローに変調し、ボブの説得力のあるヴォーカルを聴かせる。

I Contain Multitudes
お待ちかねのニューアルバムから。イントロが始まるとすぐに観客が声援を上げる。みんなボブのファンだ。ボブがピアノを離れ、ステージセンターに立ってハンドマイクで歌い出す。ようやく表情が見えた。元気そうだ。ステージセンターと言っても、前に出てくるわけではない。奥に引っ込んだままだ。歌が始まると会場が静まり返る。一言も聞き漏らしたくないのだろう、ほとんどドラムレスのバックで、心に刺さるフレーズが歌われるたびに歓声が上がる。ボブは最初の数フレーズを歌うと、すぐにピアノに戻ってしまった。  

False Prophet
この曲でも、ボブは最初の数フレーズをピアノの横に立って歌ったが、すぐにピアノの背後に戻ってしまった。吐き出すようなボブのヴォーカルに魅了される。力強いロックに仕上がっている。とても80歳を超えたとは思えない。90年代のボブはギターで3連音符のソロを弾くことが多かったが、今はそれをピアノで再現しているようだ。シンコペーションの効いたリード・ピアノ・ソロといった感じ。  

When I Paint My Masterpiece
ドニー・ヘロンがヴァイオリンを、ボブ・ブリットがアコースティックギターを弾き、これも軽快なカントリー・ナンバーに仕上がっている。ボブのピアノのリードに合わせて、ヴァイオリン、ギターでジャムセッションを繰り広げる。  

Black Rider
ボブは新曲を歌うときは、できるだけ頭の数フレーズをハンドマイクで歌おうと決めているようだ。この曲では不気味な雰囲気が醸し出され、語るように歌うボブのヴォーカルが会場を満たしていく。アメリカン・ソンングブック時代に高めた歌い方が活かされている。こんなヴォーカリストはほかにいない。最高だ。

I'll Be Your Baby Tonight
オリジナルとはまるで違うアレンジ。リズムを効かせたチャック・ベリー風のロックンロールだ。間奏のボブのピアノ・ソロを聴きながら、ハイスクール時代のボブはこんな感じだったのかなと思ってしまった。  

My Own Version Of You
ストーリーテラーとしてのボブの本領が発揮される。不気味な物語が伝わって、ゾクゾクさせれる。それにしてもこれほど明瞭なヴォーカルを聴かせるボブは何年ぶりだろう。

Early Roman King
ギターを強調したヘヴィーなブルースロックに生まれ変わった。チャーリー・セクストンがバンドを去ったことは悲しいが、ボブ・ブリットとダグ・ランシオのツインギターも悪くない。

To Be Along With You
ピアノ、ヴァイオリン、アコースティックギターを効かせたホンキートンクナンバーにアレンジされている。ここでもボブの単音ピアノ・ソロが愉快に響く。 

Key West
ニューアルバムの中の最大注目曲の一つなので、イントロが始まると歓声が上がる。9分近い大作だが、ボブの歌によって観客は酔いしれるようにいつしかパラダイスに誘われ、夢見心地の世界が広まる。ドニー・ヘロンのアコーディオンが効果的に流れる。ボブはピアノから離れずに歌い続けた。  

Gotta Serve Somebody
これもまた、オリジナルとはまるで違うリズムを効かせたボ・ディドリー風のロックンロールにアレンジされていいる。新しいメンバーのチャーリー・ドレイトンのドラムがすばらしい。観客が大歓声を上げる。3日目では、ボブが歌い終わると観客の一人が「プリティ・フロイド」とリクエストの声を上げた。ボブは「場所をまちがえたようだな。スプリングスティーン・オン・ブロードウェイ見たかったのなら、ここに来たのはまちがいだ」と答えた。場内に爆笑が湧きあがった。  

I've Made Up My Mind To Give Myself To You
時にボブは美しいメロディも生み出す。この曲もそうだ。Make You Feel My Loveのようにだれかカバーするといいかもしれない。

Melancholy Mood
シナトラ時代のレパートリーの中のお気に入りなんだろう。何度聞いても、やさしく、憂鬱なムードが心地よく響く。長いイントロでボブがめずらしくピアノを弾き続ける。ハンドマイクを持ったボブが中央で短いコーラスを歌う。短すぎる。毎回、もっと長く続けばいいのにと思ってしまう曲だ。  

Mother Of Muses
祈りを捧げるようにボブはことばをていねいに歌う。ほとんどドラムレスのサウンドで、トニー・ガーニエの弓で弾くベースが効果的に響く。

Goodbye Jimmy Reed
ボブが得意とする典型的なエレクトリック・ブルース。ボブのタイミングとリズム感の良さが際立つ一曲だ。これだけは、だれにも真似できないだろう。観客が総立ちになる。

バンド紹介
ドラマーのチャーリー・ドレイトン、ギタリストの二人ボブ・ブリットとダグ・ランシオを紹介した後、ボブは紹介を中断して「ビッグアップルに戻ってきてとてもうれしい。ブロードウェイ、自由の女神、ウォールストリート、タイムズスクエア、エンパイア・ステート・ビルディング、フィフスアヴェニュー・・・・どこも元気に再開したのでうれしい」と語った。その後、スティールギターのドニー・ヘロン、そして最後に「トニー・ガーニエが今もまだベースを弾いてる」と笑わせて紹介を締めくくった。 

2日目は、バンドを紹介すると言っておきながら、ニューヨーク出身の有名人たちの名前を列記しただけで、肝心のメンバー紹介は飛ばしてしまった。
 
3日目も「ハンフリー・ボガート、ジャッキー・0、ハーマン・メルヴィルはこの町で生まれた。シルヴェスター・スタローンもそうだ。彼は偉大な俳優だ。最新作を見たか? タイトルは『ラスト・ブラッド』のはずだ。オスカーを取ってもよかったのに、取れなかった。偉大な人物といえば、ここにドラマーのチャーリー・ドレイトンがいる」ギターのボブ・ブリットには「背中で弾いてみたらどうだ。引かない時も背中にかけておくがいい」とからかう。トニー・ガーニエについては「この男はすばらしい。ずっと長い間」と褒め称えた。トニーもうれしそうに笑顔で答えた。何やらジョークを交えながら、ていねいに一人づつメンバー紹介をした。コンサートでこれほど饒舌に話すボブは何年ぶりだろう。きっと気分も体調もいいのだろう。

Every Grain Of Sand
調子が合っているのかなと疑問を感じるような独特なボブのピアノだ。ボブが言葉を必要以上に長く引き伸ばして強調したり、時にはアップシンギングを取り込んだり、自由なヴォーカルを聴かせてくれた。ドニー・ヘロンがマンドリンを弾いた。 

これが最後の曲だった。演奏を終えるとステージ後方にボブを中心にミュージシャンたちが横一列に並んで観客を見回し、いつものように左手を腰に当てて「どうだ!」と言いたげに得意げなドヤ顔を見せる。そして一言も発せず、そのままステージを去っていった。アンコールを求める観客の嬌声や拍手が鳴り止まなかったが、ボブが会場を後にしたのだろう、1分ほどで場内の明かりが点灯して今夜のショーが終了した。

会場を去っていく人々はみんな笑顔で満足そうな様子だ。それにしてもボブは変わっている。今回は「ボブ・ディラン・ラフ&ロウディ・ウェイズ・ワールド・ワイド・ツアー2021ー2024」と名付けられているので、コンサート全体の半分をニューアルバムから8曲歌うのは理解できる。しかし、そのほかの選曲はどうだろう。かなりのファンなら知っている曲ばかりだが、「ライク・ア・ローリング・ストーン」も「風に吹かれて」も、いわゆる一般的に代表曲と呼ばれるものは1曲もない。むしろ、オブスキュアな曲が多く選ばれている。あいかわらず不思議な人だ。でも、ボブらしいとも言える。ぼくは大満足だ。

インターネット、ユーチューブ、フェイスブックなどおかげでボブのライブはほとんど聞くことができるようになった。今回もニューヨークの初日はコンサート終了の数時間後にネットに上がっていた。今回ぼくは同じセットリストのショーを10回見ることになるだろうが、問題ない。ライヴ会場でしか感じられないヴァイブレーションがある。ボブが歌い続ける限り、ぼくも聴き続けるつもりだ。

追加余談
ホテルに戻って1時間、向かいのスーパーに行って食べ物を買おうと外に出て、とりあえずマスクを外して路上でタバコを吸っていたら、マスクをかけた見知らぬ男が声をかけてきた。無視していると「ヘッケル」と言って男が黒いマスクを外した。なんと、その男はトニー・ガーニエだった。ヒゲを剃ったためかとても若く見える。少しだけ立ち話をした。トニーは「日本ツアーがキャンセルになって寂しい」と、今回のツアーがラフ&ロウディ・ウェイズ・ツアー2021-2024と名付けらているから、来年に予定されているんじゃないのかと聞くと、まだ、何も話は聞いていないと笑っていた。とにかく、来年は無理かもしれないが、2024年までにはかならず日本ツアーが実現するだろう。

菅野ヘッケル、ニューーヨークにて

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