iPS心筋シート移植、8人全員の重症度改善…大阪大チーム「新しい治療法として十分な手応え」
iPS細胞から作った心臓の筋肉(心筋)の細胞シートを重症心臓病患者8人に移植した治験について、大阪大などのチームは、8人全員の重症度が改善したとの結果をまとめた。これまで治療の安全性を確認したことは公表していたが、患者の経過を観察し、具体的な症状の改善についても明らかにした。
治験は2020年~23年に阪大と順天堂大、九州大、東京女子医大の病院で実施された。8人は心臓の働きが悪くなる「虚血性心筋症」の患者。国内の心不全診療指針で採用されている4段階の重症度分類で2番目に重い「3」(軽度の活動でも疲労や
健康な人のiPS細胞から心筋細胞を作り、厚さ0・1ミリのシート状に加工し複数枚を心臓に貼り付けた。
チームによると、シートの移植から1年後、4人は通常の活動では症状が出ない重症度「1」、別の4人は安静時には無症状の「2」にそれぞれ改善した。心臓に負荷がかかるような運動をどこまでできるかの目安となる運動時の酸素摂取量は、8人平均で2割ほど増加した。6分間の歩行距離も同様に1割程度増え、運動機能の回復がみられた。
心臓から全身へ血液を送る能力の改善は各患者でばらつきがあったが、不整脈など重篤な問題はなかった。
チームの澤芳樹・阪大特任教授(心臓血管外科)は「患者の生活の質は大幅に良くなった。新しい治療法として十分な手応えを持っている」と話した。
このシートの製品化を担う阪大発新興企業「クオリプス」は、治験結果を受け、製造販売承認を4月に国へ申請。iPS細胞を使う心臓病の治験は、慶応大発新興企業や、京都大発新興企業も行っている。
吉川泰司・鳥取大教授(心臓血管外科)の話「症例が少ないため、市販後の大規模調査の結果が重要になってくるが、大多数の人に有効な治療法だと示せれば、その意義は大きい」
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