日本航空123便墜落事故 続1 ◉CVRとDFDRの時刻の誤差
CVRとDFDRの時刻の誤差
CVRとDFDRを照合する場合は. 時刻の誤差を考慮して1秒未満の事象は原則として比較することはできない。この誤差がある為に寸秒で進行した垂直尾翼とAPUの損壊過程が曖昧のままとなっている。
CVRの時刻に対してDFDRがどの程度進んでいるか又は遅れているかを詰めることで異常事態発生時の事象をより緻密に検討したい。
🔳 CVRとDFDRの時刻の誤差について
報告書P75.76
上記からDFDRにはキーイング信号が入力されてから1秒以内の誤差で記録されること. またDFDRの時刻はACCの時報信号から約6秒間の遅れが生じていたため6秒を加算したことからCVRとDFDRには最大1秒間(厳密には0〜1.5秒未満)の誤差があることが分かる。
ここで. *CVRの時刻は日本標準時に準じているので正確であるとしてこれを基準とする。
◉ CVRの記録から
先ずCVR音声に於いては. 最初のインシデントの衝撃でCVR本体が強い振動を受けたことによる電源周波数[400Hz]の漏洩が磁気テープに✴︎擬似信号として記録され. それが400Hz付近の✴︎音の変動として再生された。
この変動は18:24′35″23から始まっている。
CVR.DFDR本体はL5ドアの上方に設置されていたので機体尾部に極めて近い。よって最初のインシデント発生時刻は✴︎18:24′35″23としてよい。全てはここから始まった。
◉ DFDRの記録から
種々の記録の中で. 異常事態発生直後に優位に表れた変化の中では. 機体の動き(各加速度や角度の変化)よりも副操縦士の操舵による反応が最も早く記録された。
付録5.付図-1
異常事態の発生で副操縦士は即座に操舵で反応した。操縦桿や方向舵ペダルへの異常な入力に対する反応. または視覚情報による反応と考えられる。
人間の反応速度はトップアスリートレベルでも0.100秒以上とされている。一般男性の平均は0.3〜0.4秒なので操縦士の反応速度は特に優れているとして、異常を感知する迄のタイムラグを含めて0.3秒と設定する。
付録6. P96.97
上記PEDは方向舵の機能を失ったのでLATG(横方向加速度)との比較は不要である。
DFDRにはCCPに✴︎24′35″25から操縦桿の優位な引き舵が記録されたとある。異常事態発生は24′35″23であるから0.02秒で反応するのは不可能である。
これを設定の0.3秒で反応したものとすると0.28秒間の誤差となった。
[注記]
この時点ではまだ自動操縦モードだが. 操縦桿操作によるオーバーライドの有無. また動翼の反応の有無に拘らずマニュアル操舵量は記録される.
🔘 考察1
*報告書のDFDRの時刻はCVRより約0.28秒進んでおり0.28秒(加算する)遅らせると実際の時刻により近くなる。
僅かなことだが垂直尾翼の損壊は寸時の事象であった為. 少しでも補正しておきたい事項である。
🔳 異常事態発生から機体の初動までの時間
DFDRの記録上. 機体の初動が最も早かったのは18:24′35″45からの前後方向加速度の+0.047G. 及び垂直加速度の微増である。これに誤差分の0.28秒を加えて35″73とすると. 機体尾部での衝撃発生35″23から約0.5秒後に機体が反応したことになる。これは細長い胴体のピッチ方向(曲げ)弾性と圧縮弾性の成すモーメントの振動特性になる。
そしてほぼ同時に機首を0.4°下げてから. その後重心回りの運動として機首を5°上げて戻った。
衝撃から寸秒の0.326秒後に垂直尾翼が倒壊し始めたことになっているからには機体胴体[弾性体]の弾性モードの解析は少なくとも入力が大きいピッチ方向と圧縮に関しては必須事項であり. これを省略して解析した事故調の圧力隔壁破断と垂直尾翼損壊のプロセスの調査結果は信用に足らない。
✴︎垂直尾翼には衝撃荷重が加わったが. 尾翼を介して緩衝した偏心荷重が. ①胴体を軸方向に圧縮させながら押して前向きの加速度+0.047Gを生じさせた。
LNGG: 前後方向加速度
✴︎②同じく胴体にピッチ方向(曲げ)モーメントを生じさせて機体尾部.後部が反り上がり. 加速度センサー(3軸acclerometer)が上がって垂直加速度は微増したと考えられる。この①.②の初動はほぼ同時である。
VRTG: 垂直加速度
これは垂直尾翼が受けた衝撃荷重が. 座屈により緩衝した偏心荷重力の仕事として胴体の内部に弾性エネルギーとして蓄えられ. そのピッチ方向の曲げと軸方向の圧縮による歪みエネルギーは胴体尾部から機首に順次伝達されたことになる。その加速度センサーまでの所要時間がどちらも約0.5秒間と同様の振動特性を持つ。
(下図) CVRとの時刻差を補正後のDFDR
縦揺れ角は1サブフレーム(1秒間)に1つのプロットと間の空いた記録であるが. ほぼ初動の機体尾部.後部の反り上がりと同時に機首下げが始まったと推測する。
🔘 考察2
副操縦士の操舵は少なくともこの異常な機体運動を察知して対処したとするには反応が早過ぎる。
初めの引き舵は昇降舵を押し下げようとする異常な力に抗するものであろう。その後の急激な押し舵と方向舵ペダルの右への踏み込みは機体の制御とは見受けられないため. 視覚情報による回避操作と推察される。
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