2021年10月15日金曜日

宇宙に始まりはなく過去が無限に存在する可能性が示される (2/3) - ナゾロジー

宇宙に始まりはなく過去が無限に存在する可能性が示される (2/3) - ナゾロジー

時間と空間とはなんなのか?

今回の研究チームの一人、英国リバプール大学の物理学者ブルーノ・ベントー氏は時間の本質について研究を行っています。

彼は宇宙の始まりを考えるという今回の研究において、「因果集合理論」と呼ばれるものを採用しました。

あまり聞き馴染みのない理論ですが、「因果集合理論」とはどのような理論でしょうか?

現在の物理学では、時間や空間はなめらかに連続した布のようなものとして捉えられています。

こうした連続した時空では、2つの点は空間的に可能な限り近くに存在し、2つの事象は時間的に可能な限り近くで発生します。

しかし、「因果集合理論」では空間と時間をなめらかな連続につながったものとは考えていません

この理論では、時空を極限まで分解していくと原子のような離散的(飛び飛びの値で変化する)な塊になると解釈しています。

つまり、時空には最小の基本単位が存在するというのです。

映像が小さな画素の集合であるように、時空間も最小単位が因果で結ばれた集合かもしれない
映像が小さな画素の集合であるように、時空間も最小単位が因果で結ばれた集合かもしれない / Credit:canva

今この記事を読んでいる画面も、なめらかな一枚の画像に見えるでしょうが、当然虫眼鏡などで拡大すれば、それは小さな1ピクセルの画素が並んでいるものだとわかります。

空間も同様に分割されていて、その最小単位以上にはお互い近づくことができないかもしれないというのです。

この考え方の何が重要なのかというと、この理論に従った場合、ビッグバンやブラックホールのような特異点の問題がきれいに取り除くことができるからです。

なぜなら、この理論では時空を無限に小さく圧縮することが不可能だからです。

時空には最小単位の「時空の原子」があり、その大きさを超えて小さくなることはありえないため、特異点が存在しなくなるのです。

では、ビッグバンに特異点がない場合、宇宙の始まりはどのようなものになるのでしょうか?

ベントー氏は、因果集合理論が宇宙の最初の瞬間をどのように表現するか、インペリアル・カレッジ・ロンドンのスタブ・ザレル氏と共同で研究を勧めました。

従来の因果集合理論では、因果集合は無から生じて現在の宇宙まで成長したとされています。

しかし、彼らは、そもそも因果集合に始まりが必要かどうかということを検討しました。

すると、彼らの研究では、因果集合は過去に向かって無限に続き、常に前に何かがある状態となり、ビッグバンという始まりは存在しないことがわかったのです。

彼らの理論によれば、私たちがビッグバンと認識しているものは、この常に存在する因果集合の進化における特定の瞬間に過ぎず、真の始まりではなかった可能性があるとのこと。

ビッグバンは進化の通過点に過ぎず、宇宙の過去は無限に続いている可能性がある
ビッグバンは進化の通過点に過ぎず、宇宙の過去は無限に続いている可能性がある / Credit:NASA,ナゾロジー編集部

ただ、この理論はまだ少数の物理学者が注目する理論でしかなく、論文も査読付き科学雑誌への掲載はまだ決まっていません。

宇宙の過去が無限にあるということが、物理的に何を意味しているのかも、まだよくわかりません。

とはいえ、宇宙に始まりがないということは、少なくとも数学的には可能なことなのです。

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