【イベント情報】kukkameriのフィンランドに行きたい気持ちを満たそう2021『Suomen kesä on kaunis! フィンランドの幸せな夏の暮らし』
— 地域通貨花子1 (@TiikituukaHana) July 17, 2021
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鳥の声と波の音に包まれて ムーミン作者が愛した夏の島
北欧・フィンランドの魅力を紹介する、新連載が始まります。フィンランドといえば「ムーミン」の故郷。まずは「ムーミン」の作者トーベ・ヤンソンの愛した小さな島のお話から。見過ごしがちな自然の小さな変化に目を凝らすと、心を満たすヒントが見つかるかもしれません。
四季の美しい自然、アートやデザインを楽しむ暮らし。ライターの内山さつきさんが、フィンランドで日々を豊かにするヒントを見つけ、"幸せ"を感じたスポットや人々の営みを紹介します。
水も電気もない岩の島へボートで
生涯忘れられない旅は? と問われたら、迷うことなく、「クルーヴハル」という名前の小さな島で過ごした一週間のことを挙げると思う。
クルーヴハルは、「ムーミン」シリーズを生み出したアーティスト、トーベ・ヤンソンが夏の間暮らした、フィンランド湾の群島のなかのひとつ。トーベは50歳のとき、パートナーのトゥーリッキ・ピエティラと、この岩礁の小さな島に自分たちの力で小屋を建て、以降20年以上の夏をそこで過ごした。
トーベ・ヤンソン生誕100年の2014年8月、私はジャーナリストとして、イラストレーターの友人とともにこの島に一週間滞在する機会に恵まれた。そしてその旅は、その後の私の旅と進む道をすっかり変えてしまったのだった。
クルーヴハルには、水も電気もなく、人の住む島もすぐ近くにはない。もちろん公共交通手段もないので、地域の船乗りのカイさんにボートを出してもらうことになっていた。私たちを島まで連れて行ってくれるのは、アルベルティーナという名前の美しいボートだ。
「アルベルティーナは、私の父親から取った名前で、この船は父が造ったんだよ。アルベルティーナのネームプレートは、トーベがデザインしてくれたんだ」
カイさんは誇らしげにそう紹介してくれた。アルベルティーナに乗り込んで、いざ、出発!
アルベルティーナは島々の間を抜けると風を切り、飛ぶように走っていく。40分くらい進むと、遠くに島影と小屋の屋根が見えてきた。島は次第に大きくなり、アルベルティーナは、ゆっくりと速度を落とし、カイさんがロープで係留。ボートのエンジン音がやむと、潮の音と鳥たちの声が聞こえるようになった。
フィンランドでは8月は夏の終わり。白夜の余韻が少しずつ消えていく頃だけれど、日没は午後10時くらいなので、到着した午後6時ごろでも、まだまだ明るかった。
いよいよこれから滞在する、トーベたちが暮らした小屋へ。中には、今もまだ彼女たちが使った家具や食器などが残されていた。部屋のそこここに置かれたものたちが、トーベたちの思い出をささやいているようで、ひとつずつ何を語っているのか耳を傾けたくなる。
小屋の部屋には窓が四つ。近づいてくる嵐やよそから来るボート、島の中央にある池のようなたまり水に映る月明かりを眺められるように、すべての壁に一つずつ窓が作られた。開け放たれた水色の窓からは、潮の流れる音が絶えず聞こえてくる。
窓辺には一輪のひまわりの花。訪れた前日はトーベの100回目の誕生日だった。ひまわりは、彼女の作品を愛する人たちが、トーベの誕生日にお墓に手向ける花だという。
「ムーミン」シリーズの成功によって世界的に著名な作家となり、常に来客に追われていたトーベにとって、この島は、煩わしい世界から逃れて制作に打ち込むことのできるよりどころだった。トーベが77歳で体力の衰えを理由に島を引き揚げた後は、地元の人々が今も大切に守り、保全している。
「じゃあ、6日後に迎えに来るからね。もしも嵐が来なかったらだけど」
小屋の使い方を説明してくれた後、カイさんはちゃめっ気たっぷりにそう言い残して帰っていった。嵐を愛したトーベは、その作品に魅力的な嵐をたくさん描いている。凶暴な風やうねる波、目まぐるしく様相を変える空、そして不思議な陶酔と高揚感。
もしも、キャンプの経験もほとんどない日本人女性2人だけがいる、この島に嵐が来てしまったら? そう考えると、少し怖いような気もしたけれど、その嵐さえも体験してみたいという好奇心がむくむくと湧いてきてしまったのだった(でも、結局嵐は来なかった)。
短縮版
返信削除https://youtu.be/8fmX4lGe_n8