2021年7月12日月曜日

坂口安吾『勝負師』(1949):再掲

坂口安吾の木村義雄×塚田正夫名人戦を扱った 『勝負師』(1949)という観戦記?に 
対局中のお茶のユーモラスな描写がある。参考までに   

https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/43166_23712.html
《塚田が便所から戻つてくると、木村が記録係に、オ茶、とさゝやいた。記録係の
方へ、グッと上体をねぢりよせて、さゝやいたのである。…記録係が戻つてくると、
毎日新聞のオバサンが礼儀正しく、畳敷きの外側の板の間だけをグルッと一周して
オ茶を捧げて持つてくる。
…茶菓がでる。木村すぐ菓子を食ひ終つて、お茶をガブガブとのみほしてしまふ。》

 《塚田は、また、長考をつゞける。
 木村、今度はヒソヒソ声ではなく、茶を一杯ください、とハッキリと云つた。
山本七段が立つて、しばらくすると、毎日新聞の係りが私をよびに来て、
「一番むつかしいところださうですから、ちよッと席をはづして下さい」》

ちなみにタイトルの勝負師とは木村塚田のどちらということでもなく、
最後に出てくる大山康晴のこと。
ちなみに升田も出てくる(安吾は升田論?も書いている)。

《升田もアクターであるが、ちよッとアチャラカのアクターであり、大山は本舞台
のアクターといふ感じであつた。》

 《木村と塚田は自動車で帰つた。私と大山は肩をならべて、まだ人通りのすくない
濠端から東京駅、京橋へ歩いた。私たちは毎日新聞の寮へ行つて、酒をのんだ。
私はまだ二十七の風采のあがらぬこの小男の平静な勝負師が、なんともミズミズ
しく澄んで見えて、ちよッと一日つきあひたい気持がしたからであつた。 了》

『勝負師』の題材 1949年名人戦第5局(木村前名人 対 塚田名人)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm25034202?cp_webto=share_iosapp
https://youtu.be/ZVJ-sTQbNCI
安吾の肉声
https://youtu.be/UUN1m6unyVU?t=10m54s 将棋の話題


坂口安吾 将棋の鬼
http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42828_26846.html
《 将棋界の通説に、升田は手のないところに手をつくる、という。理窟から
考えても、こんなバカな言い方が成り立つ筈のものではない。
 手がないところには、手がないにきまっている。手があるから、見つけるの
である。つまり、ほかの連中は手がないと思っている。升田は、見つける。
つまり、升田は強いのである。》

坂口安吾 升田幸三の陣屋事件について
http://shogikifu.web.fc2.com/essay/essay021.html

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