安田洋祐★
https://nam-students.blogspot.com/2019/11/vickrey-william-1996-15-fatal-fallacies.html
- The Economics of Control: Principles of welfare economics, 1944. A.P.Lerner
ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀: 公正な社会への資本主義と民主主義改革 (日本語) 単行本 – 2019/12/20
エリック・A・ポズナー (著), E・グレン・ワイル (著), 安田 洋祐 (翻訳), 遠藤 真美 (翻訳)★★
[ヴィックリーの]論文は1961年に発表された。タイトルは「投機への対抗措置、オークション、競争的封入入札」というもので、すぐに忘れられるだろうと思われた。しかし、10年後に再発見される。ヴィックリーの論文は、社会の問題を解決するオークションの力を示した最初の研究であり、「メカニズムデザイン」と呼ばれる経済学の領域を切り拓くことにつながって、1996年にノーベル賞を受賞した。
正義の経済学―規範的法律学への挑戦 (日本語) 単行本 – 1991/6/1
ヴィックリーに言及
1991 ロナルド・コース 取引費用経済学
ゲーム理論___________________________________
1994 人間行動・制度 I I
ハーサニ/ナッシュ/ゼルテン 行動ゲーム理論 I
\ 実験ゲーム理論 I
\インセンティブ・制度設計 I I
\ I I
/\___情報の非対称性 I I
/ \ 1996マーリーズ/ヴィックリー I I
/ \ 2001アカロフ/スペンス/スティグリッツ I I
/ \ I I I
/ \ I 行動経済学/実験経済学I
対立と協力 \ I 2002 I
2005 /\ I カーネマン/スミス I
オーマン/シェリング / \ I I I
/ \ I I I
マーケット・デザイン メカニズム・デザイン I I I
/ \ 2007 I I 経済ガバナンスの理論
/ \ ハーヴィッツ/マスキン/ I I 2009
サーチ理論 \ マイヤーソン \ I I オストロム/
2010 \ \ I I ウィリアムソン
ダイアモンド/ \ \ I I
モーテンセン/ピサリデス \ \ I I
マッチング理論 \ \I I
2012 オークション理論 契約理論 I
ロス/シャープレイ (未受賞) 2014 I
ミルグロム ティロール I
2016 行動経済学 ナッジ理論
ハート/ホルムストローム 2017
リチャード・セイラー
ヴィックリーに言及
序章
…
「モラル・エコノミー」という小さな共同体
かつて、ほとんどの人は、小さくて結びつきの強い共同体で暮らしていた。そこには道徳的な衝動、社会的な恥、噂話、共感といったものがあり、個人が共通善に貢献するように振る舞う最大のインセンティブになっていた。経済学者や社会学者は、こうした共同体を「モラル・エコノミー」と呼ぶときがある★23。もちろん、人間は利己的に振る舞うものだし、それは避けられないことだったが、繁栄の源とはみなされず、堕落した人間の本性がもたらす残念な結果だとされた。そうした逸脱をことあるごとに抑える役割を果たしたのが、宗教だった。農民、職人、兵士、勇敢なる騎士は善良な者たちであり、自分の良心に従い、あるいは神を喜ばせるために、昔ながらの生活様式を守っていた。商人や金融家など、「商取引」から富を蓄えた者には、19世紀になってからも、不信の目が向けられた。
今日でも、モラル・エコノミーは都市以外のところで近似的な形で繁栄し、親しい友人や家族との関係に影響を与えている。そうした社会の理想化された姿が、1946年のフランク・キャプラの古典的な映画『素晴らしき哉、人生!』に描かれている。ジェームズ・ステュアート演じるジョージ・ベイリーは、自分の利益を後回しにして生まれ故郷の小さな町のために尽くす銀行家である。ベイリーは町の人たちのことをよく知っているので、低い金利で住宅融資ができる。大恐慌が起きて、資金難に陥ると、かつてベイリーに助けられた貧しい人たちが、今度はベイリーとベイリーの銀行を窮状から救う。これに対し、貧しい人から高い家賃をしぼり取って食い物にする、強欲で道徳心のない敵役の銀行家、ポッターが体現するスミス型資本主義は、共同体に対する脅威として描かれる。モラル・エコノミーの経済効率が高いのは、ベイリーの銀行と町の間に見られる助け合いの精神があるからだ。それはモラル・エコノミーに固有の価値観でもある。
★23この区別は、偉大な社会学者エミール・デュルケームの1893年の著作TheDivisionofLabourinSociety(Simon&Schuster,1997)(邦訳デュルケーム著、田原音和訳『社会分業論』筑摩書房、2017年)と深く関連している。
…
この章では、民主主義で使われている伝統的な投票システムの病理を治すためには、投票力を貯める能力と平方根関数という二つの要素が何よりも必要なものであることを示していく。このシステムを「二次の投票」(QuadraticVoting=QV)と呼ぶことにし、これが政治のラディカル・マーケットを生み出すことを、この章で明らかにする。
…
ペロポネソス戦争でアテナイが負けると、多数者が誤った意思決定をしたことが敗北の一因だとされ、アテナイ人はもっと穏やかな民主主義を導入した。法律を提案する委員会をはじめとする独立した機関の力が大きくなり、民会が成立させているが法律に違反する法令を無効にする権限が、民衆裁判所に与えられた。こうした機関のメンバーはすべて籤(くじ)で選ばれた。この新しいシステムでは、さまざまな集団が何度も多数決を繰り返さなければならず、やがて何を決めるにも圧倒的多数が必要とされるようになった。民主的政府が多数決の原則を制限しようと試みる伝統は、このときに始まった。
…ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀: 公正な社会への資本主義と民主主義改革 (日本語) 単行本 – 2019/12/20
エリック・A・ポズナー (著), E・グレン・ワイル (著), 安田 洋祐 (翻訳), 遠藤 真美 (翻訳)
自由な社会をどうつくるか?
若き天才経済学者が描く、資本主義と民主主義の未来!
支配なき公正な世界のデザインとは?
富裕層による富の独占、膠着した民主主義、巨大企業によるデータ搾取……
21世紀初頭の難題を解決する、まったく新しいビジョン!
「私はずっと、テクノロジーと市場の力を用いて平等な社会を実現する方法を探してきた。本書こそが、その方法を示している」――サティア・ナデラ(第3代マイクロソフトCEO)
「深淵かつオリジナルな本書の分析は、あなたの世界観を根底から覆すだろう」――ジャン・ティロール(2014年ノーベル経済学賞受賞者)
経済の停滞、政治の腐敗、格差の拡大。この状況を是正するには、発想を自由にして抜本的な再設計を行わなくてはならない。社会を成立させるための最良の方法は市場と考えるが、最も重要な市場が今は独占されているか、存在していない。
だが、真の競争が可能な、開放的で自由な市場を創出することによって、格差を縮小し、繁栄をもたらし、社会の分断を解消できるはずだ。すなわち、オークションを要とするラディカル・マーケット(競争原理によって誰もが参加できる自由な取引市場)である。
私有財産は本質的に独占的なものである。そのため、私有財産を廃止し、財産をより高く評価する者の手に渡らせ、彼らに財産を有効活用させればよい。これを実現するのが、著者たちの主張する「共同所有自己申告税」(COST)だ。
また、現行の投票制度では、多数者が大きな影響力を持ち、少数者の利益は守られない。そして、ある問題に関する関心の強さは人によってまちまちだが、その関心の強さを票に反映することは不可能だ。著者たちの主張する「二次の投票」(QV)を導入すれば、投票者は自分の関心の強さを投票に反映することが可能となり、強い関心をもつ少数者が多数者の支配から守られる。これこそが本書で述べられる「ラディカル・デモクラシー」である。
本書は、移住の自由化への反感、機関投資家による市場の独占、巨大なプラットフォーム企業によるデータ労働の搾取といった、21世紀のさまざまな問題を解決し、繁栄と進歩を可能にするために、古い真理を疑い、物事を根底まで突き詰め、新しいアイデアを提案する「ラディカル」な提案の書である。
著者について
エリック・A・ポズナー
法学者
シカゴ大学ロースクールのカークランド・アンド・エリス特別功労教授。The Twilight of Human Rights Law(未訳)、『法と社会規範』(太田勝造監訳、藤岡大助[ほか]訳、木鐸社)など著書多数。シカゴ在住。
E・グレン・ワイル
経済学者
マイクロソフト首席研究員で、イェール大学における経済学と法学の客員上級研究員。ボストン在住。
安田 洋祐(ヤスダ ヨウスケ)
経済学者
大阪大学大学院経済学研究科准教授。1980年生まれ。東京大学経済学部卒業後、米国プリンストン大学へ留学しPh.D.を取得。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年4月から現職。専門はゲーム理論、産業組織論。編著に『学校選択制のデザイン』(NTT出版)、監訳に『レヴィット ミクロ経済学 発展編』(東洋経済新報社)など。学術研究の傍らマスメディアを通した情報発信や、政府での委員活動に取り組んでいる。大阪在住。
遠藤 真美(エンドウ マサミ)
翻訳家
主な訳書にティム・ハーフォード『50(フィフティ) いまの経済をつくったモノ』(日本経済新聞出版社)、リチャード・ボールドウィン『世界経済 大いなる収斂』(日本経済新聞出版社)、マーヴィン・キング『錬金術の終わり』(日本経済新聞出版社)、リチャード・セイラー『行動経済学の逆襲』(早川書房)、マーティン・ウルフ『シフト&ショック』(早川書房)、フェリックス・マーティン『21世紀の貨幣論』(東洋経済新報社)、ジャスティン・フォックス『合理的市場という神話』(東洋経済新報社)などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ポズナー,エリック・A.
シカゴ大学ロースクールのカークランド・アンド・エリス特別功労教授。シカゴ在住
ワイル,E.グレン
マイクロソフト首席研究員で、イェール大学における経済学と法学の客員上級研究員。ボストン在住
安田/洋祐
大阪大学大学院経済学研究科准教授。1980年生まれ。東京大学経済学部卒業後、米国プリンストン大学へ留学しPh.D.を取得。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年4月から現職。専門はゲーム理論、産業組織論。学術研究の傍らマスメディアを通した情報発信や、政府での委員活動に取り組んでいる
遠藤/真美
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
殿堂入りベスト10レビュアー
5つ星のうち5.0 新しいオークション資本主義!
2020年2月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
未来社会へのアイデアが満載の新資本主義論である。オークション資本主義である。
①オークションとは、出品商品に最高高値を付けた人に落札される仕組みである。これでは高所得者が商品を独占するのではないかと懸念される。
②しかし、そうはならないと著者は言う。出品された商品は、高所得者→中所得者→低所得者へと回り、すべての者が落札された商品を購入出来る。
③高所得者が手にした商品は、二回目には中所得者が入手する。そして三回目には低所得者に落札される。こうして落札価格は下がり、最終的には、低所得者が買えるまでに下がるのである。これはアダム・スミスが発見した市場(価格)メカニズム=市場原理と完全自由競争を前提した仕組みである。
④しかし、住宅などは、サブプライムローンが失敗したように、低所得者には負担があまりに大きい。最も高額な商品である。高級自動車などもそうである。低所得者が入手できない高額な商品である。だとすれば、住宅や自動車は所有せず、複数の人間でシェアし、所有者に低額なレンタル料(家賃)を支払う仕組みを作り、オークションに出品すれば良い。
⑤こうしたオークションの徹底によって、私有財産は否定され、必要な者同士がシェアする仕組みが未来社会における資本主義の原理となる。こうして所有と私有財産は否定され、格差社会は解消していく。しかし、そう簡単には行かない。政府の役割は重要である。
新しいアイデア満載の本署は資本主義の市場原理を徹底させることで得られるのだ。
お勧めの一冊だ。
5つ星のうち5.0 資本主義を超えるアイデア(共産主義ではない)
2020年4月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まず最初に、本書は社会を良くするためのアイデアが描かれている。
ではその良い社会とは。貴重な資産が死蔵せず有効活用される。民主的な投票だが少数の意見も汲み上げる。一時滞在の移民を多く受け入れても地元の人が不利益を被らない。
こういう、従来はトレードオフと考えられてきた問題を仕組みの改変で解決しようとしている。
それぞれかなり根本的な手法であり、また既得権益を脅かすことから、実際にはなかなか実現しないだろう。しかし現在の資本主義や民主主義が決して究極の姿ではないということを再認識させてくれる。
得てしてこういう論は共産主義の焼き直しだが、本書はあくまで資本主義の延長であって、それ故の面白さと、それ故の分かりにくさを有していると思う。
ただ、例えば著作権におけるクリエイティブ・コモンズのように、どこかで始まって徐々に拡大する可能性を秘めている。決して考える価値がない訳ではない。
文句なしの星5つ。
役に立った
コメント 違反を報告
Mkengar
5つ星のうち4.0 思考実験の良書
2020年4月14日に日本でレビュー済み
タイトルに明示されているように、本書は、21世紀の一般的な人々からすればラディカル(急進的)だと思えるような提案が多数盛り込まれている本です。しかし思考実験としては良いきっかけを与えてくれます。彼らが提案する制度が導入されるとどんな世の中になるのだろう、という想像です。本書は所有権の部分共有による切り崩し(1章)、投票制度の改革(2章)、移民制度の改革(3章)、機関投資家の力の切り崩し(4章)、データを労働力としてみる(5章)、というような構成になっていますが、特にインパクトが大きく、著者らが特に力点を置いているのが前半の所有権の切り崩しと選挙制度の改革でしょう。
私は特に2章の投票制度について関心を持ちました。投票制度の問題は以前から議論されていて、アローの一般可能性定理やアマルティア・センが指摘したパレート最適の毒性問題があります(詳細は、たとえば『「きめ方」の論理』ちくま学芸文庫を参照のこと)。パレート最適の毒性問題を回避するための一つの方法は、「自分が関心の低い事案については投票しない(意見表明を差し控える)」ことです。これは自己抑制的という意味でアジア的な解決策と言えるのかもしれませんが、本書が提示しているQV方式と呼ばれるものはその逆で、「自分の関心が高い事案については、他人より多くの票を投ぜよ」という解決策です。私はこれを自己主張的な欧米型の解決策ととらえました(人間は自己主張しなければならないという欧米的な強迫観念が背後にあるとも言えます)。この場合、少数のその事案に高い関心がある人の意見が、多数のあまり関心がない人に勝つ可能性があるわけです。
その意味で、本書は確かにラディカルな制度提言が盛り込まれていて興味深く読みましたが、いずれも自己主張、競争、対立といった価値観が著者らの背後に見え隠れしており、そのような価値観に社会が覆われているという意味できわめて欧米的であります。つまり、逆に自己抑制、協調、和合の社会設計という選択肢についても可能性がないのだろうかと本書を読んで思いましたが、いずれにせよ頭を柔らかくする、想像力を働かせるという意味で面白い本でした。
既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方
若き天才経済学者が「ラディカル」に提言
学部生ながら大学院生に教えた「天才経済学者」
既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方
若き天才経済学者が「ラディカル」に提言
現代世界が直面する問題とその解決策
既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方
若き天才経済学者が「ラディカル」に提言
私有財産制度がもたらす問題
2. その価格に対して一定の税率分を課税する。
3. より高い価格の買い手が現れた場合には、
3─i. 1の金額が現在の所有者に対して支払われ、
3─ⅱ. その買い手へと所有権が自動的に移転する。
既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方
若き天才経済学者が「ラディカル」に提言
現代によみがえるジョージ主義やハーバーガー税
ただし、この非効率性は悪い面ばかりとは限らないのではないだろうか。非効率性の正の側面として、3つの可能性に思い至ったので書き留めておきたい。
既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方
若き天才経済学者が「ラディカル」に提言
「スタグネクオリティ」を解決する卓越したアイデア
ヴィックリー・オークションまたは2位価格封印入札(2いかかくふういんにゅうさつ)は、封印入札で入札価格1位の入札者が入札価格2位の価格を支払って落札するという方式の競売である[1][2][3]。ウィリアム・ヴィックリーが考案した[2]。入札価格一位が入札価格一位の価格を支払う方式と比べて、参加者各自が思う真の価値で入札する動機づけが強いとされる[4]。
歴史
1870年代のイングランドで切手やワインなどのオークションで、郵便を通じて入札を行う2位価格方式がとられた[3]。これはヴィックリー・オークションの前身にあたると考えられる[3]。
ウィリアム・ヴィックリーは1961年の論文で2位価格封印入札オークションの均衡解の初の理論的解析を行い[7]、そのイングリッシュ・オークションとの等価性を証明した[3]。以後、この方式が経済学でヴィックリー・オークション(英語 Vickrey-auction)と呼ばれるようになった[7]。
原理
競売の対象である商品に対して、入札者はそれぞれの考えで異なる価値を感じる。その商品に v という金額の価値があると思っているある入札者(購入希望者)に注目すると、その入札者にとって最適な入札価格は次のように決まる[1]。
他者の入札価格のうちの最高額が M だったとする。以下のように場合分けして考える。
- v > M の場合、この入札者は正直に自分の思う価値を入札価格として表明すれば、それが1位価格となり、2位価格 M で落札することができる。その場合、価値 v があるものを価格 M で入手することができるので、差引 v - M の得をする。M より高い範囲で v 以外の入札額にしても結果は同じであり、得や損はない。
- v ≦ M の場合、落札しないように、M を下回る入札価格を表明することが最適な戦略である。そのために v を入札価格とすることができる。もし M を越える価格で入札すれば、落札することはできるが支払う金額が v より高いため、損をしてしまう。M より低い範囲で v 以外の入札額にしても結果は同じであり、得や損はない。
このように、ヴィックリー・オークションでは v > M と v ≦ M のいずれの場合も(つまり、いつでも)正直な入札が最適となり、不正直な入札を行うインセンティブがない[1]。
出典
- ^ a b c 小塩隆士『サピエンティア 公共経済学』52-53ページ
- ^ a b c 山本哲三 編著 「コンセッションの勧め ─理論と事例から学ぶコンセッションの成功条件─、解題 コンセッションの勧め」
- ^ a b c d David Lucking-Reiley Vickrey Auctions in Practice: From Nineteenth Century Philately to Twenty-first Century E-commerce
- ^ Vickrey Auction -- Math Fun Facts
- ^ オークション理論の基礎(6) 第二価格封印入札に脚光 横尾真 九州大学教授 やさしい経済学 コラム(経済・政治) 2018/3/2 2:30日本経済新聞 電子版
- ^ カルテルの実態調査と経済理論分析 公正取引委員会 競争政策研究センター 2008 年 3 月
- ^ a b Axel Ockenfels and Axel Ockenfels The Timing of Bids in Internet Auctions: Market Design, Bidder Behavior, and Artificial Agents AI Magazine, Fall 2002, 79-88
34歳天才経済学者が私有財産を否定する理由 | 政策 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
返信削除https://toyokeizai.net/articles/-/328937?page=3
34歳天才経済学者が私有財産を否定する理由
データ搾取から移民までラディカルに考える
筆者たちは本書を「ウィリアム・S・ヴィックリーの思い出に捧げる」としている。ヴィックリーとは何者だろうか。
彼は1961年に「投機への対抗措置、オークション、競争的封入入札」という論文を発表した経済学者で、この論文は社会問題の解決に資するオークションの力を示した最初の研究とされる。
ヴィックリーの研究によって「メカニズムデザイン」と呼ばれる経済学の領域が生まれ、彼は1996年にノーベル経済学賞を受賞した。筆者らによると、「ラディカル・マーケット」とは、市場を通した資源の配分(競争による規律が働き、すべての人に開かれた自由交換)という基本原理が十分に働くようになる制度的な取り決めであり、オークションはまさしくラディカル・マーケットだと言う。
ラディカル・マーケットというメカニズムを創造するために、新しい税制によって私有財産を誰でも使用可能な財産とすることや、公共財の効率的市場形成についても本書では詳述される。
なかでも移民労働力についての章では、「ビザをオークションにかける」や「個人が移住労働者の身元を引き受けるという個人間ビザ制度」というアイディアも出てくる。こうした移住システムに関するアイディアは、今後の日本にとっても、従来なかった新しい風景の見える思考実験として興味深いのではないだろうか。
効率的な資源配分のために私有財産制をやめる
本書で筆者らが一貫して主張するのは、私的所有は効率的な資源配分を妨げる可能性がある、ということである。工場設備であれ、家庭内のプリンターであれ、個々に私的所有されているがゆえに不稼働となっているような、非効率なモノは多数存在する。
昨今、先進諸国の若者、いわゆるミレニアル世代のトレンドは「モノより経験」となっていることも後押しになって、車や家のシェアリングエコノミーがデジタルテクノロジーの進展とともに進んでいる。
こうした最先端のサービスでなくとも、古くは美術館の高価な絵画は公共財になっているために、市民が時間ベースで使用(鑑賞)することが可能となっていた。筆者たちの主張は過激かもしれないが、ビジネスにおいてもサブスクリプションはトレンドであり、ヴィックリーが生み出したオークションの概念は通信インフラの電波オークションからインターネットのアドテクノロジーまで世に浸透しているのだ。
グローバルな格差の拡大、成長の鈍化の中で資本主義に代わる選択肢が不在のなか、本書のクリエイティブで骨太なアイディアは読み手の思考方法をラディカルにすることだろう。
塩野 誠さんの最新公開記事をメールで受け取る(著者フォロー)
返信削除https://toyokeizai.net/articles/-/328937?page=2
34歳天才経済学者が私有財産を否定する理由
データ搾取から移民までラディカルに考える
・都市全体を売りに出す(土地が有効に活用されるようにする)
・世の中の全ての財産を共有化して、使用権をオークションにかける(私有財産制をやめてみる)
・自分の財産評価を自己申告制にして税金を支払う。より高い財産評価をする人が現れたら所有権が移転する(独占の弊害を取り除く)
・投票権を貯められるようにする。そして、自分にとって重要な課題のときに、貯めた投票権を集中的に投票する(一人一票よりも投票者の選好の強さを反映できるようにする)
どれも、「それは思いつかなかった!」という声が聞こえて
きそうなクリエイティブな政策の数々である。
都市全体を見渡せば、もっとも景観のよい丘の上にスラム街ができていることがある。これでは観光客も呼びにくい。ある人がいったん土地を私有してしまうと、別の人がその土地のより有効な活用を思いついても、それを実現できなくなる。環境問題にとても関心があって、その課題に強くコミットしたい人も、選挙ではそうでない人と同じ一票しか投票できない。
このような事態は非効率ではないだろうか。これは、市場の失敗なのだろうか。より強い公的な介入がなければ、解決できないのだろうか。そうではなく、よりラディカルに市場の力を使うことで状況を改善できるというのがこの本の面白さだ。
では実際どうやって、という疑問が当然わくだろうが、これらの提案には経済学の詳細なロジックが伴っている。そして、読み手が「それはうまくいかないのでは」と思った次の瞬間には、その反論が用意してあるという形で議論が進む。
私有財産制の問題、独占の問題、投票制度の問題などについて、思考が行き詰まってしまった方々には、クリエイティブなアイディアを得るためにぜひ、一読していただきたいと思う。
「データ労働者組合」を作ろう
近年、GAFAなどのデジタルプラットフォームがその巨大化とともに、ビジネスだけでなく、社会に大きな影響を与えている。そうしたデジタルプラットフォーマーとビジネスや社会でどう付き合っていくべきか、誰にとっても関心のあるところだろう。
本書によれば、フェイスブックが毎年生み出している価値のうち、プログラマーに支払われる報酬は約1%にすぎないそうだ。そして価値の大半は、「データ労働者」であるユーザから無料で得ているのだという(一方でウォルマートは生み出した価値の40%を従業員の賃金に充てている)。
この問題をどう考えればいいだろうか。個人情報の保護を強化しよう、あるいはプラットフォーマーという優越的な地位の乱用を規制しよう、というのが従来的なやり方だろう。
一方本書の著者らは、デジタルプラットフォーマーに供給されるデータはわれわれの「労働」であると説く。となると、われわれは、データ提供という「労働」から対価を得るために、「データ労働者組合」を作ってはどうかという。非常に興味深い概念である。
34歳天才経済学者が私有財産を否定する理由 | 政策 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
返信削除塩野 誠 : 経営共創基盤共同経営者/内閣府デジタル市場競争会議WG委員
2020/02/10 5:40https://toyokeizai.net/articles/-/328937
34歳天才経済学者が私有財産を否定する理由
データ搾取から移民までラディカルに考える
『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』では、デジタルプラットフォーマーに供給されるデータはわれわれの「労働」なので、データ提供という「労働」から対価を得るための「データ労働者組合」が必要だといいます(写真:metamorworks/PIXTA)
昨年12月に発売された、『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』。本書はシカゴ大学ロースクールの教授エリック・ポズナー氏と、マイクロソフト首席研究員でもあり法学・経済学の研究者であるグレン・ワイル氏の二人が世に問うた、クリエイティブな思考実験の塊のような本だ。とくにワイル氏は、プリンストン大学を首席で卒業したのち、平均で5、6年はかかる経済学の博士号をたった1年で取得して経済学界に衝撃を与えた、34歳の若き俊英としてその名を知られた人物である。今回、経営共創基盤の塩野誠氏に、本書について解説してもらった。
デジタル市場の未来を考える必読書
世の大学に「経済学部」は多く、そこで学んだ方も多いことだろう。しかし、日々の社会生活の中で、自分は大学で学んだ経済学を使いながらビジネスをしている、と断言できる方はそう多くはないのではないだろうか。
『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)
この本は、GAFAのデータ独占の問題や、移民問題、機関投資家による市場支配など、昨今話題の幅広い問題を取り上げている。一見、既存の経済学の分析範囲を超えているようにも思えるが、実はこれらの問題は経済学で考えていくことができるし、よりよい答えを導き出せると主張している。経済学を現実の問題に適用してみたいと考える人にはうってつけの本だ。
私はいま、デジタルプラットフォームの透明性と公正性に関して検討する政府関連の会議に出ている。GAFAに代表されるデジタルプラットフォームのデータ独占や公平性・透明性がテーマだが、こうした新しい事象をそもそもどう捉えて、どんなフレームワークで考えるべきなのか、そこから考える必要もあり、考え方の指針となるようなものに関心がある
そうした立場から、この本を大変興味深く読むことができた。経済学の考え方を使って社会制度を設計しようと考えている官僚の方々はもちろん、進歩しつづけるITやフィンテックを使って社会課題の解決に取り組もうとしている方々に本書を推薦したいと思う。
では、本書は実際にどのような提案をしているのだろうか。本書が提案する「ラディカル(過激)な改革」の例として私が面白いと思った例は次のものだ。