2020年5月16日土曜日

オークンの法則(Okun's law)

OKUN's LAW Can we have more equality AND more efficiency?
2015


平等か効率か―現代資本主義のジレンマ (1976年) (日経新書) 新書 – 古書, 1976/1/1 


QUOTES BY ARTHUR MELVIN OKUN | A-Z Quotes

https://www.azquotes.com/author/26356-Arthur_Melvin_Okun


フィリップス(フィッシャー)カーブは金融寄り、オークンの法則は財政出動寄り


★★ 
 実質GDPの変化 (実質 GDP 成長率) と失業率の変化のあいだには統計的に直線で近似される関係が観測されるという経験則である。かれがこれを発見したのは 1960 年代初期で、失業率が1%下がると実質GNPが 3% ほど上がる、という関係がアメリカ経済では見られていた。また現在の日本では、失業率が 1% 下がると GDP 成長は 6% になるという関係が見られている。
 この法則はすばらしくよく成立していて、同僚トービンをして「マクロ経済で最も信頼のおける経験則の一つ」と言わしめたものではあるけれど、なぜそうなるのか、という因果関係の説明はまったくない。オークンがデータを見ていて発見した関係でしかない。オークン在籍中の CEA は、このデータを使って失業率を下げるメリットがいかに大きいかを大統領に納得させ、これがケネディ政権の大幅な減税策につながっている。


オークンの法則(Okun's law)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87 ★
アーサー・M・オークン (Arthur M. Okun), 1928-1980
https://cruel.org/econthought/profiles/okun.html ★★

新型コロナで失業者の41万人増加が予想される | 若者のための経済学 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
末廣 徹 : みずほ証券 シニアマーケットエコノミスト
2020/04/17 5:05
https://toyokeizai.net/articles/-/344140

新型コロナで失業者の41万人増加が予想される

「オークンの法則」で成長率から失業率を推計

10日に発表された日本経済研究センターのエコノミスト調査(筆者も回答者の1人)によると、日本の実質GDP(国内総生産)成長率のコンセンサス予想は、2020年1~3月期は前期比年率でマイナス4.06%、4~6月期は同マイナス11.08%と大きく落ち込むが、7~9月期はプラス5.11%と、プラス成長に回帰するというものになった。
もっとも、20年10~12月期はプラス3.90%、21年1~3月期はプラス1.74%と、19年7~9月期のピークには戻らない水準で伸び悩むという予想となった。
これは、今回の新型コロナウイルスの感染拡大による影響(以下、新型コロナ・ショック)は、感染の終息が徐々にしか期待できないことや、当面は再拡大への警戒感が続くためインバウンド消費の戻りが鈍いことが想定されることなどが反映されているとみられる。

終息後は個人消費、可処分所得がカギに


この連載の過去記事はこちら
一部では、今回のショックは東日本大震災時と比較して資本ストック(既存の設備)が毀損していないためにV字回復が可能だという見方があるが、筆者はまったくの逆だと考えている。東日本大震災の後はむしろV字回復した。これは、当時は毀損した資本ストックを修復するという明らかな需要があったからである。毀損した設備を修復するだけだったとしても、GDPを押し上げることになる。
一方、今回は個人消費を中心とした需要が回復しなければ、V字回復とはならない。個人消費を抑制している新型コロナウイルスの感染の終息がゆっくりにしか進まないのであれば、GDPの回復も緩やかだろう。また、その間に雇用が失われて個人消費を持ち上げる「原資」である可処分所得が減少すれば、回復のペースはV字から遠のいていく。
今回のコラムでは、GDP成長率と失業率の関係を考察することで、今後予想される失業率の上昇幅を推計した。
新型コロナ・ショックは「景気が落ち込む角度は東日本大震災級、落ちる深さはリーマン級」といわれている。セーフティーネットの確保などの各種政策対応が間に合わないリスクや、さまざまなボタンの掛け違いによって経済の落ち込み以上に失業者を増やしてしまう可能性があるため、注意が必要である。急激に資金繰りが悪化している中小企業が多い中、金融機関の手続き上のキャパシティの限界も指摘されている。

新型コロナで失業者の41万人増加が予想される

「オークンの法則」で成長率から失業率を推計

なお、政府が7日に発表した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」は事業規模が約108兆円と、巨額なものとなったことが注目されたが、景気を今の水準から持ち上げる効果はほとんどないとみられる。これは、足元の日本経済は感染拡大防止のための外出や営業の自粛により、通常の消費活動すら困難な状況にあるため、対策の内容がダウンサイドリスクを軽減すること(セーフティーネットの確保)を主眼に置いたからである。
政治的なアピールもあって巨額な事業規模に注目が集まったが、これは対策がなかった場合の「期待損失」を防ぐというバーチャルな数値であり、終息後のV字回復を約束するものではない。

成長率と失業率の関係を示す「オークンの法則」

「成長率が悪化すれば、失業率は上がる」という経験上当たり前とも言える関係性は、オークンの法則(Okun's law)という立派な法則として知られている。法則の名前は、1962年にこの関係を提案した経済学者アーサー・オーカン(en:Arthur Okun)にちなんでおり、実際に多くの国で失業率の変化と成長率は経験的に負の相関関係があることが確認されている。
そこで、日本のデータについても2000年以降のオークンの法則の関係を示すと、やはり負の相関関係を見出すことができる。最近の経済構造を反映している2009年1~3月期以降のデータで考えると、実質GDP成長率が1%ポイント悪化すると、失業率が0.11%ポイント悪化(上昇)するという関係がある。
なお、米国のデータを用いて同様の分析をすると実質GDP成長率が1%ポイント悪化すると、失業率が0.51%ポイント悪化(上昇)するという関係があることから、雇用の調整は日本が米国の5分の1にとどまるといえる。そのため、日本の場合は雇用の数の変化だけでなく、正規・非正規の変化や賃金水準、残業時間の変化などさまざまなデータを複合的に見る必要があるものの、今回のコラムでは失業率にしぼって考察している。
https://toyokeizai.net/articles/-/344140?page=3

新型コロナで失業者の41万人増加が予想される

「オークンの法則」で成長率から失業率を推計

日本における2000年以降の負の相関関係を用いると、仮に新型コロナ・ショックの影響によって実質GDP成長率のマイナス幅がリーマン・ショック時(前年同期比マイナス8.8%)と同程度となった場合、失業率は約0.9%ポイント上昇することになる。20年2月の完全失業率は2.4%だったことから、3.3%になる。労働力人口が6850万人であることを考慮すると、約64万人が失業するという結果だ。

コンセンサス予想どおりなら失業者は41万人増加

また、前述したエコノミストのコンセンサス予想どおりの成長推移となった場合は実質GDP成長率が4~6月期に前年同期比(前期比年率ではない)で年率マイナス5.6%になることが織り込まれているため、完全失業率は約0.6%上昇し、3.0%になる。その結果、約41万人が失業することになる。
なお、エコノミストのコンセンサス予想では完全失業率が2.88%まで上昇することが織り込まれているため、コンセンサス予想はおおむねオークンの法則にしたがって予想されているといえる。当面は、このコンセンサス予想どおりに40万人前後の失業にとどまるのかが試金石となる。
最後に、オークンの法則から想定される実質GDP成長率と完全失業率の関係を表にまとめた。
成長率のマイナス幅が大きくなれば、それに伴って一定の失業が発生することは避けられない。しかし、オークンの法則が示すよりも失業率の上昇を限定することができれば、回復のペースも速くなる。回復ペースのカギを握る失業率の変化に注目が必要である。

★★

アーサー・M・オークン (Arthur M. Okun), 1928-1980

Portrait of Okun
 オーカンという表記もある。オークンの法則で有名、というか実質的にこれしか知られていない。ジャージー・シティ生まれ、コロンビア大学に入ってそのまま博士号を取得した後にイェール大で教鞭をとり、後にケネディ政権下の Council of Economic Advisors で活躍している。著作を見ても経済予測や政策と経済の関係など、理論よりは政策よりのものが多く、理論家というよりは政策エコノミストに近いかもしれない。
 実質GDPの変化 (実質 GDP 成長率) と失業率の変化のあいだには統計的に直線で近似される関係が観測されるという経験則である。かれがこれを発見したのは 1960 年代初期で、失業率が1%下がると実質GNPが 3% ほど上がる、という関係がアメリカ経済では見られていた。また現在の日本では、失業率が 1% 下がると GDP 成長は 6% になるという関係が見られている。
 この法則はすばらしくよく成立していて、同僚トービンをして「マクロ経済で最も信頼のおける経験則の一つ」と言わしめたものではあるけれど、なぜそうなるのか、という因果関係の説明はまったくない。オークンがデータを見ていて発見した関係でしかない。オークン在籍中の CEA は、このデータを使って失業率を下げるメリットがいかに大きいかを大統領に納得させ、これがケネディ政権の大幅な減税策につながっている。
 またかれは、社会の経済格差の是正も重大事項と考えており、その手段として累進課税の強化を訴えていた。

アーサー・オークンの主要著作

アーサー・オークンに関するリソース














1947年から2002年までのアメリカの四半期データ(年率ではない)を用いたオークンの法則の差分形式のグラフ。GNPの変化率(%) = 0.856 - 1.827*(失業率の変化)。 R^2 = 0.504。他の推計結果との違いは、部分的には四半期データを使っていることによる。
経済学において、オークンの法則(Okun's law)とは、一国の産出量と失業の間に経験的に観測される安定的な負の相関関係のことである。この法則の「乖離形式」(gap version)は、一国の国内総生産(GDP)が潜在産出量より1%小さくなる度に失業率が約0.55%上昇することを述べる(米国の場合)。「差分形式」(difference version)[1]は、実質GDP成長率と失業率の差分の間における関係を表す。この法則の正確さは議論の的になっている。法則の名前は、1962年にこの関係を提案した経済学者アーサー・オーカン(en:Arthur Okun)にちなむ[2]。 

経験則編集









日本の完全失業率と実質国内総生産成長率の推移
オークンの法則は、理論から導かれた結果ではなく主として経験的観測なので、より正確には「オークンの経験則」と呼ばれる。産出量と雇用の間の関係に影響する、生産性などのその他要素は考慮されていない。オークン自身の元々の法則は、3%の産出量の増加は、1%の失業率の減少、0.5%の労働力率の減少、0.5%の従業員一人当たり労働時間の増加、1%の時間当たりの産出量(労働生産性)の増加に対応する、ということであった[3]
この相関の度合いは、対象とする国や時期によって変わる。
この相関はGDPまたはGNP成長率と失業率の変化を用いた回帰分析によって検証されている。Martin Prachownyは失業率が1%上がる度に産出量が3%下がると推計した(Prachowny 1993[2])。産出量の変化に対する失業率の感応度はアメリカでは時間と共に上がっているようである。Andrew Abelとベン・バーナンキは、近年のデータを使って失業率の1%上昇が産出量の2%減少に対応すると推計した(Abel and Bernanke, 2005)。
失業の減少または増加より、GDPの増加または減少の方が速くなりうる理由はいくつかある[要出典]
失業が増加すると、
  • 従業員からの資金循環の乗数効果が減少する
  • 失業者が労働力から退出する(求職活動を止める)ため、失業の統計には含まれない
  • 雇用労働者の労働時間が短くなる
  • 雇用者が必要以上の雇用を維持する等の理由で労働生産性が下降する
オークンの法則の含意の1つは、労働生産性が上昇したり労働力人口が増加したりすると、失業率の純減なしで産出量の純増がありうるということである(雇用なき成長現象)[4]。これはまた、少なくとも失業率の変化ゼロに対応するだけのGDP成長が無ければ、たとえGDPがプラス成長であっても失業率が上昇することを表している。

オークンの法則の数学的記述編集








オークンの法則の乖離形式は次のように書ける(Abel & Bernanke 2005):
{\displaystyle ({\overline {Y}}-Y)/{\overline {Y}}=c(u-{\overline {u}})}
アメリカ合衆国では、1965年頃からcの値が上述の通り3から2程度になっている。
上に示したオークンの法則の乖離形式をそのまま検証するのは難しい。\overline {Y}{\displaystyle {\overline {u}}}は推計するしかなく、測定することはできないためである。「差分形式」または「成長率形式」として知られている形式の方がよく使われており、産出量の変化と失業の変化とを次のように関連付ける:
{\displaystyle \Delta Y/Y=k-c\Delta u\,}:
  • Y と c の定義は上記の通り
  • {\displaystyle \Delta Y} はある年から翌年までの実際の産出量の変化
  • {\displaystyle \Delta u} はある年から翌年までの実際の失業率の変化
  • k は完全雇用状態での産出量の年平均成長率
アメリカでは現在kがおよそ3%でcがおよそ2である。従ってこの式は次のように書ける。
{\displaystyle \Delta Y/Y=.03-2\Delta u.\,}
この記事の一番上にあるグラフは、オークンの法則の成長率形式を図示している。これは一年毎ではなく四半期データを基に計測されている。

オークンの法則の成長率形式の導出編集








オークンの法則の第一形式から始める:
{\displaystyle ({\overline {Y}}-Y)/{\overline {Y}}=1-Y/{\overline {Y}}=c(u-{\overline {u}})}
{\displaystyle -1+Y/{\overline {Y}}=c({\overline {u}}-u).}
両辺の一期間の差分をとり、次式を得る:
{\displaystyle \Delta (Y/{\overline {Y}})=(Y+\Delta Y)/({\overline {Y}}+\Delta {\overline {Y}})-Y/{\overline {Y}}=c(\Delta {\overline {u}}-\Delta u).}
通分して次式を得る:
{\displaystyle ({\overline {Y}}\Delta Y-Y\Delta {\overline {Y}})/({\overline {Y}}({\overline {Y}}+\Delta {\overline {Y}}))=c(\Delta {\overline {u}}-\Delta u).}
左辺に{\displaystyle ({\overline {Y}}+\Delta {\overline {Y}})/Y}(ほぼ1に等しい)を掛けて, 次式を得る:
{\displaystyle ({\overline {Y}}\Delta Y-Y\Delta {\overline {Y}})/({\overline {Y}}Y)=\Delta Y/Y-\Delta {\overline {Y}}/{\overline {Y}}\approx c(\Delta {\overline {u}}-\Delta u)}
{\displaystyle \Delta Y/Y\approx \Delta {\overline {Y}}/{\overline {Y}}+c(\Delta {\overline {u}}-\Delta u).}
自然失業率の変化{\displaystyle \Delta {\overline {u}}}は、ほぼ0に等しいと仮定する。また、完全雇用状態での産出量の成長率{\displaystyle \Delta {\overline {Y}}/{\overline {Y}}}は、その平均値kにほぼ等しいと仮定する。すると、最後に次式を得る:
{\displaystyle \Delta Y/Y\approx k-c\Delta u.}

脚注編集








  1. ^ Knotek, 75
  2. a b Martin Prachowny, "Okun's Law: Theoretical Foundations and Revised Estimates", The Review of Economics and Statistics, 1993, 75, (2), 331-36
  3. ^ Gordon, 2004, 220
  4. ^ Gordon, 2004, Chapter 8 and 9, p 223

出典編集








  • Abel, Andrew B. & Bernanke, Ben S. (2005). Macroeconomics (5th ed.). Pearson Addison Wesley. ISBN 0-321-16212-9.
  • Baily, Martin Neil & Okun, Arthur M. (1965) The Battle Against Unemployment and Inflation: Problems of the Modern Economy. New York: W.W. Norton & Co.; ISBN 0393950557 (1983; 3rd revised edition).
  • Case, Karl E. & Fair, Ray C. (1999). Principles of Economics (5th ed.). Prentice-Hall. ISBN 0-13-961905-4.
  • Knotek, Edward S.  "How Useful Is Okun's Law." Economic Review, Federal Reserve Bank of Kansas City, Fourth Quarter 2007, pages 73–103.
  • Prachowny, Martin F. J. (1993). "Okun's Law: Theoretical Foundations and Revised Estimates,"  The Review of Economics and Statistics, 75(2), p p. 331-336.
  • Gordon, Robert J., Productivity, Growth, Inflation and Unemployment, Cambridge University Press, 2004

関連項目編集








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